表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
509/868

しばらく難関の密林地帯を進む事に決めた件



「ええっと、来栖さ……護人リーダー、我々の方からも先行戦闘チームを出した方が? 一応はそちらの作戦に従いますけど、少しは役に立ちたいかなと。

 鬼島と舞戻はそれなりの腕前ですから、前に出しても良いでしょうか?」

「ああっ、それじゃあ右辺の探索を頼もうかな? 姫香、『シャドウ』チームに右辺の先行探索を頼むから、姫香は左辺を集中してくれないか。

 レイジー組には、このまま中央を頼もう」

「了解っ、行くよツグミ……今日は後衛も多いから、萌も前衛に来て貰おうか、護人さん?」


 向こうのリーダーの三笠みかさの提案に、それは良いねと護人は返事をして。姫香の案も取り入れて、2チーム追加の探索編成の振り分けを着々と進めて行く。

 そして決定された3組に、ペースは遅めで頼むとの言葉を掛けて探索はスタート。


 心得たとばかりに進む、中央のレイジー組はコロ助と茶々丸がサポートをになう形。左辺は姫香とツグミと、それから萌のトリオで進む事に決定した。

 それから右辺は、『シャドウ』チームのアタッカーの鬼島と舞戻が担当する流れに。何チームかで合同探索の経験は、来栖家チームも何度かあるので戸惑いも無い。


 ハスキー達的には、獲物を取られてなるモノかって感じで意気は高めをキープ。そのせいか、気を抜けば後衛組との距離は段々と離れ気味に。

 そして最初の敵との遭遇は、やっぱり中央のレイジー組だった。対するのはラプトルの群れで、どうやらここは恐竜タイプのモンスターが出現するらしい。


 そんな気がしたよと、左辺の姫香は呑気に観戦モードで手出しはしない構え。戸惑う『シャドウ』チームだが、後衛の護人達も特に支援はしないのを見て驚き顔に。

 それでも戦闘音を聞きつけて、空から飛来した飛竜の相手は受け持つよう。護人とルルンバちゃんの撃ち落とす速度に、完全にド肝を抜かれている。


 そしていつの間にか、最初の戦闘も終わって再び進み始めるレイジー組であった。隣の三笠は、完全分業パターンですかと呆然と護人に訊ねる。

 それに対して、こんな浅い層で慌てる必要無いよねとの末妹の突っ込みに。軽く頷いて、ハスキー達をガス抜きさせないとねと、護人は通常モードをアピールする。

 つまりは、これが来栖家のいつもの探索パターンだと。


「ハスキー達にもプライドはあるし、自分の持ち場はきっちりこなすって言う気概は尊重しないとな。逆に言えば、長丁場なんだから対応は各自でした方が効率が良い。

 そっちも、ペース配分には充分気をつけてくれ」

「な、なるほど……了解しました、さすが探索についてはベテランですね」


 そんな三笠の返しに、ウチはまだ探索1年ちょっとのキャリアなんだけどなと、護人は微妙な表情。そう言う『シャドウ』チームこそ、何と言うか不気味な底の深さを秘めている気がする。

 同行するのに異を唱えなかったのも、それなりの実力をみ取ったからに他ならない。その辺の感覚は、ムッターシャに鍛えられたせいか鋭くなった自負のある護人である。


 それにしても、さすがに広いエリアを誇る3コア複合ダンジョン。そのせいで、幾つも下の層へのワープ通路が存在するって話は突入前に聞いている。

 それをこの密林エリアで探すとなると、なかなか大変でハスキー達の鼻に頼るしか無いかも。とか思っていると、再び前方で戦闘の気配が。


 今度は鬼島&舞戻ペアも、敵と対面しているようで激しく遣り合っている戦闘音が。すかさず笹野が遠距離武器でサポートに入ろうとするが、密林が邪魔で射線が取れない。

 これには同僚の三笠も慌てるが、護人の指示は至ってシンプルだった。フリーの姫香組がサポートに向かったから、こちらは慌てず後衛を押し上げて行こうと。

 事実、前線はそこまで慌てる必要も無い状況。


 レイジー組の方にアルマジロ型の恐竜が3体、鬼島&舞戻の方に2体出没した程度だった。ただし、戦闘音を聞きつけて新たに接近中の恐竜の群れがいる模様。

 そいつ等の足止めを頼まれたルルンバちゃんは、勇んでそちらの方向へと向き直る。つまりは後方寄りからの襲撃だったけど、《心眼》の冴える護人にはバッチリ視えて対応も万全。


 その撃退にしても、護人も戦闘に参加して時間を掛けずして終了してしまった。ルルンバちゃんの前衛能力は、滅多に使わないけど錆び付いてはいない様子で何より。

 そう末妹に褒められて、ウキウキ模様のルルンバちゃん。香多奈と一緒にドロップ品を拾いながら、魔石もちょっと大きいサイズがあるのを見て浮かれている。

 何とも人間臭いAIロボだが、何故か精神年齢は低い模様。


「あっ、護人リーダー……たった今『ヘブンズドア』チームから連絡が入りました。向こうは、次の層へのワープ魔方陣を発見した模様ですね。

 休憩後に2層へと、『グレイス』チームと進むとの報告です」

「了解、こっちも間引きは順調だけど特に報告する事も無いかな。それにしても1層からモンスターの数が多いけど、ひょっとして密林エリアのせいかな?

 今度は樹の上から大蛇が来てる、飛行タイプも混ざってるから気をつけて」


 巻貝の通信機で会話をしていた三笠は、護人の言葉に慌てた様子で戦闘準備に入る。今回も前衛だけでなく、後衛陣も戦闘が忙しくて大変だ。

 立ち向かおうとした笹野だったけど、それより先に紗良の《氷雪》が発動した。いかにも寒さに弱そうな変温動物、大蛇はそれを浴びた時点でノックダウン。


 意外と機動力のある飛竜の群れも、半数が範囲に入って墜落してくれた。ソイツ等の止めを刺す笹野と、討ち洩らしを弓矢で追い詰めて行く護人。

 出遅れたルルンバちゃんも、魔銃を放ってなかなかの撃墜率を示して行く。何より香多奈の声援に、1層でいきなりヤル気マックスのAIロボである。


 その甲斐もあって、様子を見に戻って来た姫香組の出番は全く無しの結果に。向こうも大ネズミや大ゴキブリの小さな襲撃があったようで、本当に雑魚とは言え敵の数が多いと報告して来る。

 三笠は、密林エリアを好んで進むチームがいないせいかもと、その原因を分析する。間引きするには丁度いいよねと、子供達は至って呑気な返答振り。

 ついでに姫香から、レイジー組が空き地を見付けたよとの報告が。


「多分だけど、2層へのゲートもあるんじゃないかな? 変な仕掛けや敵の待ち伏せは無いみたい、このまままっすぐ進めば自然とつくよ、護人さん。

 『シャドウ』の前衛も、今は一緒にそこにいるね」

「了解……ご苦労様、姫香。それじゃあこっちも移動して、前衛陣と合流しようか。それから少し休憩して、次の層に向かおう」

「は~い……それはそうと、レイジー達はちゃんとドロップ品拾ってくれてるかなぁ? ツグミは問題無いけど、レイジーはそう言うの苦手だよね」


 来栖家のエースのレイジーに文句を言うのは、世間広しと言えど末妹くらいのモノかも。護人は、犬の手はそんな風には出来てないからねと、フォローしながら先へ進み始める。

 三笠も同じく、自分のチームもドロップ品の確保は万全ですと何故か説明口調。変なあら探しをされたくないと、その瞳は雄弁に語っている。


 そんな顛末をはさみながら、無事に前衛と後衛は姫香の言う空き地で合流を果たした。そこにはちゃんとゲートがあって、他には特に目立つ物は無し。

 それじゃあ小休憩に入ろうかと言う護人と、魔石を拾ってない文句をレイジー組に述べる香多奈に。冷や冷やしながら、それを離れた場所で窺う『シャドウ』の面々だったり。


 紗良が何とか取り成してくれて、魔石の件は曖昧になった。それから恒例のペット勢の怪我チェックをするも、幸い負傷した者はいないようで何より。

 姫香もMP回復ポーションを用意して、ペット達の回復のお手伝い。もっともまだ探索は始まったばかりで、各々そんなに消費してはない模様。


 完全にくつろいでいる来栖家チームに較べて、『シャドウ』の面々はどこか居心地が悪そう。舞戻のみが、紗良の肩に乗っかるミケを眺めて幸せそうな表情。

 そんな彼女を、熱心に撮影する香多奈と言う。まぁ、今回の依頼内容には沿っているので、誰も何も言わないけど。絵面を見ると、かなり変で緊迫感の欠片も無い。

 それも来栖家クオリティ、慣れて貰うしかないなと達観する護人である。




 それから第2層へとワープ移動を経て、改めて周囲を見直す一行。1層と違ってどちらに向かうかの指標も無いので、迷子になりそうで怖い。

 ただし、ハスキー達はそうでも無さそうで、さっさと進むべき方向を定めていた。出発するよと主に目で合図して、それからさっきと同じ配列で進み始める。


 レイジーの出発を見て、姫香もリーダーに声を掛けて前衛位置で出発する。『シャドウ』の面々も同じく、ただし今度は後衛も少し距離を詰めてついて行くようだ。

 先ほどの戦闘の修正を経ての配置らしく、その点は護人も変に口出しをしない事に。チームにはそれぞれやり方があるし、彼らの後方防御は自分達がすれば良い。


 そして2層のモンスターも、やっぱり恐竜タイプが多くてラプトルが高速で近付いて来る難関エリア。他にもアノマロカリスとか三葉虫とか、やたら大きな節足動物も茂みからワラワラと出て来て割と大変。

 さっきの大ゴキブリも酷かったが、コイツ等も見た目の衝撃は似たり寄ったりだ。ハスキー達はほぼ顔色を変えず、いっぱい出て来たなと殲滅に精を出している。


 その中でも、特に茶々丸のひづめアタックは、地を這う連中には容赦のないレベル。さっきの大ゴキブリもそうだったけど、華麗なステップで次々と敵を魔石に変えて行く。

 その戦闘スピードは、茶々丸にしては上出来かも。


 少なくとも一緒に組んでるレイジーは満足そう、自身は『針衝撃』で敵を弱らせてのサポートに徹している。しばらくそんな感じて戦ってると、敵はいつの間にか全て消えていた。

 後方からも戦っている気配を感じるが、レイジーに特に焦った気配は無し。雑魚モンスターで崩れるようなチームでは無いし、家族の強さは信頼している。


 しばらくは、気配を読んで歩みを止めていた前衛陣だったが、無事に戦闘音が止んだのを見計らって再出発を始める。そして前衛の主目的である、ゲート場所の確定に勤しむレイジー達。

 彼女たちの仕事は、そこまでの安全路の確保に他ならない。こんなに障害物が多いエリアだと、完全に敵の群れを排除するのは不可能だけど。


 なるべく大物は仕留めて行く予定だし、チームの安全には常に気を配っている前衛陣である。ただし、経験値の総取りは良くないし、皆の活躍の場も欲しい所。

 そのバランスを取るのはとっても大変、まぁ彼女のあるじは優秀なのでその辺は任せて大丈夫とは思う。後はダンジョン探索だけど、宝箱の発見を含めて落ち度の無いようにしないと。

 でないと、群れに所属する小娘がギャーギャーうるさいので。


 こればっかりは、どう仕様も無いしあるじも半分諦めている案件のようだ。ダンジョンとは戦って力を得る場所に他ならないのに、つまらないドロップ品に心を奪われるとは。

 しかもさっきは、小さな魔石まで拾って歩けとのお達しである。娘のツグミはその辺を上手くこなすけど、レイジーはそう言った細かい作業はとっても苦手。


 最近貰った首に巻かれたペンダントは、とっても気に入っている彼女だけれど。まさかこれを、ちっこい魔石の回収に使わされるとは思ってもいなかった。

 などと考えていると、再びラプトルの群れと遭遇した。コイツ等はたまに少しだけマシな魔石を落とすので、それなりに強敵である。


 今ではすっかり、レイジーはドロップした魔石で敵の強さを確認する方法を身に着けていた。そしてダンジョン内の気配を読んで、階段やゲートの場所を確定するのにも慣れてしまった。

 宝箱を見付ける能力は、まだまだツグミの方が上だけど。あるじが喜ぶならともかく、娘っ子たちの機嫌取りのために、回収作業に力を入れる気なんて更々(さらさら)無いレイジーである。

 そう、ダンジョンの本分は経験値稼ぎに他ならないのだ。





 ――来栖家のエースは、実は意外と体育会系だったり。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ