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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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改めて元鉱山ダンジョンにチームで挑む件



「さてっ、お昼まであと1時間くらいだね、護人さん……中途半端だけど、何とか5層まで進めるか頑張ってみようかっ!

 洞窟タイプだし、そんなに分岐も無い筈だもんね」

「でもB級クラスだし、そんなポンポンとは進めないと思うけど、姫香ちゃん。探索スピードより、やっぱり安全を重視すべきじゃ無いかな?」

「そうだよっ、情報はあったけど今はランク上がってるんでしょ? まぁ、ウチのチームも洞窟型ダンジョンには潜り慣れてるけどねっ!」


 良く分からない香多奈の言葉に、先頭を行く姉の姫香は笑いながら適当に進むよと進言して来る。そんな訳で、今回の探索もいつもの布陣で臨む来栖家チーム。

 つまりはハスキー達&茶々丸が先行して、その手綱は姫香が握る感じ。後衛からは、護人とルルンバちゃんが主に遠距離支援でサポートに徹する。


 洞窟タイプは道幅が狭いので、前衛が増え過ぎても武器を振るうスペースが無い。まぁ、色々と試した結果のベストな形が、この現在の布陣となった次第である。

 他の組み合わせも、前回の遠征では色々と試したのだけれど。ハスキー達が先頭でないとストレスに感じるらしく、いつの間にかこの陣形に落ち着く形に。


 そんな訳で、入ってさっそく真っ直ぐ続く洞窟内で最初の遭遇戦が。出て来たのは巨大なゲジゲシ型の敵で、蟲型のモンスターの出現は予習済み。

 他にも地底獣人と言う、目が退化した土竜もぐらに似た大柄な人型のモンスターも出て来るらしい。洞窟の広さも思ったよりあるし、これならルルンバちゃんも暴れられそう。

 その点では、探索に不便は無さそうな雰囲気かも。


 道もほぼ真っ直ぐだし、どことなく人工物な感じは確かにする。坑木が張り出している場所があったり、たまに狭い脇道が見付かったりもする。

 そこは大ムカデやワーム型の敵が出て来る程度で、今の所はB級ランクの片鱗へんりんは窺えない。ハスキー達も物足りない感じで、出て来た敵を簡単にほふって行ってる。


 そして気がつけば次の層への階段を発見、姫香が提示した通りのスピード攻略である。10分程度しか掛かってないので、確かにこのペースだと5層突破でお昼に丁度良いかも。

 休憩もいらないよねと、自身もあまり戦闘していない姫香はそのまま2層へ向かう許可を護人に貰う。その返事を聞いて、ハスキー達は元気に階段へと殺到して行った。


 この辺はいつもの手順で、彼女達が勝手に階層を渡る事は絶対にない。ダンジョンの階層渡りは、時には別次元と思う場所に飛ばされる事もあったりするのだ。

 その辺の危険を、ハスキー達も熟知している模様。


 そして2層に降りて、ようやく噂の地底獣人とご対面した一行。なかなかのパワーと、恐らく嗅覚か聴覚に頼っての戦闘能力はかなり強いかも。

 例えるならオーガやトロル級で、オーク兵よりは確実に強い感じ。皮膚も頑丈で、途中からほむらの魔剣に持ち替えて討伐に当たるレイジーである。


 そのお陰で2体出現した地底獣人は、数分後には討伐完了。護人やルルンバちゃんも、何発か遠隔攻撃を当てたのだが、なかなか倒れないタフネスさは噂通り。

 これは確かに、低ランクの探索者の手には負えないねとは姫香の発言。確かにそんな強敵が、2層目から複数体出て来るのは大変かも。


 来栖家チームにとっては、まぁ良い準備運動だった。ハスキー達も、既に先へと進み始めている始末。姫香もそれを追いながら、探索のギアを上げて行くよと盛り上がっている。

 そして少し進んだ先に、ちょっと変わったオブジェを発見。先行組は歩みを止めて、線路とトロッコを何だこれはって顔付きで嗅ぎ回っている。


 洞窟内にトロッコは、日馬桜町駅の近くのダンジョンにもあったような。ただしこちらのトロッコは、線路に沿ってかなり先まで進んで行けそう。

 末妹はそれを見て、乗ってみようよとノリノリで提案して来る。それを護人は当然の如く却下して、壁際に置かれたその乗り物をチェック。


 ルルンバちゃんも手伝ってくれて、中に何も入っていないのは完璧に確認出来た。ただし、その箱状の乗り物をいじっている内に、トロッコの死角に隠された穴を発見。

 そこに置かれてあったズタ袋の中には、各種宝物が仕舞われていた。


「やった、最初の宝物を見逃さずに済んだねっ! さすがルルンバちゃん、角っこの隅々にまで気配が行き届いてるよねっ!」

「まぁ、そう言う褒め方もあるか……そもそもこんな重いトロッコを、こんな簡単に動かせるのが凄いけどな。

 とにかく良くやったぞ、ルルンバちゃん」

「あんまり褒めると、後が大変そうだけど……まぁルルンバちゃんなら、調子に乗って変な事にはならないか」


 そんな勘繰りを入れる姫香だが、表情は至ってのんびりな感じ。紗良が中身を確認して、鑑定の書や薬品類や魔玉(土)を順当に回収して行く。

 他には、良く分からない鉱石が幾つか……このダンジョンの当たりは砂金の袋らしいので、これは外れかなぁと香多奈の呟き。そして次は当てようねと、ルルンバちゃんと張り切る末妹である。


 この“美川ムーダンジョン”は、隠された宝箱の多さも人気の秘密だったらしい。ランクの低かった頃は、それ故に結構な人気だったそうである。

 そしてその仕掛けは、ランクが上がった今も変わっていない様子。次は私たちで見付けるよと、姫香は相棒のツグミに発破を掛けて末妹と競う構え。


 どうでも良いけど、喧嘩には発展して欲しくない護人は程々になと声を掛けるのみ。そうして2層の探索も、15分程度で終了の運びに。

 突き当たりに階段を発見して、本当に順調な洞窟探索である。



 そして3層目の構造も、さっきと同じで特に戸惑う事も無く進行する一行。ハスキー達は順調に蟲型モンスターを退治して、茶々丸もシャドウ族の不意打ちを返り討ちにしている。

 そんなのも出て来るんだと、驚いた様子の姫香だが鼻高々の茶々丸の快進撃は止まらない。この層でも出て来た地底獣人に突進をかまして、そして跳ね返される始末。


 慌ててフォローにと前へ出る護人だが、今回出て来た地底獣人は3体だったので丁度良いかも。姫香とレイジーで1体ずつ受け持って、ツグミとコロ助でそのフォローに回っている。

 それで良い勝負なので、奴らの岩のような皮膚の硬さはさすがなレベル。護人も長剣で無理に斬りつけず、サブ武器のシャベルを使って対峙している。


 さすがに護人の『掘削』は、硬い敵にはピカ一の効力を発揮する。他の面々は苦労しつつも、敵のパワーと硬度に長期戦の様相をていしており。

 レイジーなど特に、体格ではどうやっても敵わないので大変である。その点、コロ助のハンマー持ちでのフォローはなかなか堂に入っている。


 姫香もツグミとの毎度のペアで、安定の討伐戦を繰り広げており。この1年でかなり強化を繰り返して、愛用のくわはもはや原型も留めていない程。

 お陰で、少々硬い敵が現れても武器の持ち替えをしなくて済む姫香である。頭を使わずにゴリ押しとも言うけど、少女のしょうに合っているのも確か。

 2度目の地底獣人との戦闘も、ほぼ圧勝と言う結果に。


「ふうっ、さすが高ランクのダンジョンだな……定期的にあの獣人モンスターが出現するなら、俺も素早く前に出る感じにした方がいいかな」

「そうだね、今の奴みたいなタフ系の敵も多いみたいだし……エリアの構成は単純だけど、出て来る敵の数は結構多いかもね。

 まぁ、大半は弱っちい蟲型の奴らだけど」

「魔素濃度も割と高かったもんね、入る前のチェックでも。洞窟って言うより、廃坑って感じの通路は変わっててちょっと面白いかも?

 あっ、あそこにもトロッコ置かれてるよっ!」


 香多奈の見付けたトロッコは、さっきの層のと同じ形状で廃路線に廃棄された感じ。動かないのはちょっと見ただけで分かるが、中身も土しか入っておらず。

 お宝はどこと騒がしい末妹に、ルルンバちゃんがまた褒めて貰おうとちょっかいを掛ける。そしてトロッコの後ろから現れた穴から、巨大な蛇が襲い掛かって来た。


 それに仰天して大騒ぎする香多奈と、大蛇に反応して討伐に武器を振るう姫香と言う構図。ハスキー達もスキルを使ってお手伝いして、巨大な鎌首の大蛇は何とか仕留める事が出来た。

 嫌な仕掛けだったけど、騒いだせいで引っくり返ったトロッコの土の中から再びズタ袋が出現。実は宝物は、そっちに入っていたという見事なオチを回収出来た。


 それを見て、叱られずに済んだと安堵するルルンバちゃんであった。中からは鑑定の書や薬品類、それから魔玉(光)や魔結晶(小)が6個など。

 それから待望の砂金袋が2つ、直に見た砂金はキラキラ光っていて綺麗。


 それに気を良くした香多奈は、ルルンバちゃんの不手際を不問にしょす構え。そして騒がしくしたせいで寄って来た、大コウモリ数匹をみんなで仲良く倒しての安全確保。

 そこから探索を再開して、すぐに階段を発見の流れに。これで4層へと到達したけど、お昼も近付いていて休憩をどのタイミングで取るべきか。


 ハスキー達は、リーダーの制止が無い限りはどんどん先へと進んでしまう。そうして暗闇に潜んでいる、蟲型のモンスターや大コウモリをサクサク倒して行く。

 姫香も大物の出現に警戒しつつ、そのすぐ後に従う構え。そして4層の廃坑エリアを進む事10分余り、またしても地底獣人の群れが3体ほど出現した。

 巨体での通せんぼに、護人も素早く前へと出ての対応。


今度の対戦も割と熾烈だったが、戦闘は何とか3分少々で全て終了した。相変わらずワイルドな戦い振りの地底獣人は、硬い外皮も合わさって強敵認定間違い無し。

 それから少しの休憩を挟んで、分岐まで歩を進める来栖家チーム。支道は段々と増えて来ており、ただ特に突き当たりに何か用意されている訳でも無し。


 それでも4層の最後の支道の突き当りは、何となく怪しい匂いがプンプンと漂って来ていた。ツグミが周囲を嗅ぎ回っているのを察知して、姫香も何かあるかなと壁のチェック。

 そして見事に隠し扉の仕掛けを発見、さすが元アミューズメント施設である。そう喜んでその仕掛けを作動させると、壁がバカっと開いて小さな部屋が出現した。


 そしてそこに溜まっていた、大量のシャドウ族が一斉に襲い掛かって来てチームはパニック状態に。茶々丸の突進だけでは到底処理出来ない、終いにはミケも『雷槌』で討伐のお手伝い。

 その余波で茶々丸がちょっと焦げてしまったけど、それ以外は被害も無くシャドウ族は全て退治終了した。香多奈が拾った魔石によると、全部で11体もいたらしい。

 その仕掛けには、作動させた姫香もひえ~っと絶句。


「もうっ、お姉ちゃんったらもう少し罠とか色々うたがってよっ! ツグミも怪しんでたから、扉の前であれだけ躊躇ちゅうちょしてたんじゃないのさっ!」

「ごめんゴメン、仕掛けのスイッチを見付けてちょっと浮かれちゃったよ。ツグミもゴメンね、せっかく仕掛けを解こうと頑張ってくれてたのに」

「まぁ、みんな無事だったから良かったけど……今後は気をつけてくれよ、姫香」


 緩い性格の護人のたしなめで、この件は一応ケリがつく格好に。末妹の香多奈などは、叔父さんは甘過ぎるよねとブツブツ小声で呟いている。

 それより小部屋に宝物があるよと、紗良の言葉にすっかり不服は彼方へと吹っ飛んで行く末妹であった。姉と一緒に覗き込んだ小部屋には、様々な鉱石のインゴットや武器装備品が展示されていた。


 中でも重オーグ鉄製の剣や槍、それに装備品は久々に見たけどかなり質が良さそう。それなりの鑑定眼を持つ妖精ちゃんにそう言われ、盛り上がる子供達である。

 他にも属性石やら魔結晶(中)が10個以上、それから金の腕輪やネックレスが少々。腕輪は魔法アイテムらしく、当たりの部類だろうか。


 それらを嬉々として、力を合わせて鞄に詰め込む子供達であった。ペット達はそんなご主人たちの側でくつろぎながら、再出発の時まで休憩中。

 オンオフの切り替えが上手なのも、長丁場の探索ではとっても大事には違いなく。護人も茶々丸を大人しくさせるのに苦労しながら、時間を確認してどのタイミングで昼休憩にするか頭を悩ませる。

 それから巻貝の通信機で、外と連絡を取るのも忘れない様にしないと。





 ――あと1つ下れば中ボスの間、そうすれば探索も折り返しだ。






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