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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
2年目の春~夏の件
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梅雨の合間にレジャーの計画を立てる件



 前回の探索依頼から、明けて次の日の来栖邸である。この日も雨模様で、今年の梅雨は容赦のない感じ。もっとも来栖家の子供達は、湿気にも負けずに元気。

 今日も早起きからの、いつもの家畜の世話をこなしての朝食を済ませ。今日は何をしようかと、雨の休日の過ごし方を話し合っている。


 もっとも、協会への報告はさっさと早い内に済ませるに限る。毎回サボって後回しにするので、何故か香多奈が妖精ちゃんに怒られるのだ。

 そんな訳で、朝の早い段階で協会に換金に行こうと提案する末妹である。それを魔法のアイテムチェックが先だろうと、はりの上から飛んで来る妖精ちゃん。


 ちなみにスキル書の相性チェックは、安定の全滅……と思いきや、何と姫香がオーブ珠から当たりを引き当ててしまった。本人はまた増えちゃったと、戸惑い気味なのはアレとして。

 何しろ、既に所有している《豪風》や《舞姫》の発動も、未だにスムーズに行かないのだ。《舞姫》はともかく、《豪風》の発動は毎回苦労している姫香である。


 香多奈も《精霊召喚》は相変わらず苦労しているので、どうも魔法系は資質が大事らしい。紗良に関しては、《氷雪》の魔法スキルをほぼ完ぺきに使いこなしている。

 この辺は、モロに長女は魔術師向きだと家族内では認識している次第。そして姫香と香多奈に限っては、肉体派と言うか前衛向きの資質なのだと。

 改めてそう言われると、まぁそうかなと納得してしまう脳筋の姫香だったり。


 ちなみに新しく覚えたのは、《剣姫召喚》と言う名前の特殊スキルらしい。またまたピンと来ないスキルを取得したとの、姫香の困惑は恐らく的を射ているのだろう。

 今後の夕方の特訓で、どの程度使いこなせるようになるかは全くの不明である。召喚系だとしたら、《豪風》や《舞姫》みたいに扱いに手古摺てこずる可能性がとっても高そうで嫌になる。


 そして妖精ちゃん主体の、“車庫ダンジョン”で回収した魔法のアイテム鑑定だけど。その数は、10層潜ったにしてはとっても少なくて残念な限り。

 その代わり、召喚装置であるらしい『釣り鐘型の装置』はとっても優秀そう。来栖家の所有している『魔法のランプ』や『不死者の骨壺』より、ずっと召喚数は多そうな気配が。

 まぁ、それを使用するかどうかは全く別の問題。



【勇猛のエンブレム】使用効果:勇猛、・小

【釣り鐘型の装置】使用効果:モンスター召喚・永続

【耐熱のライダースーツ】装備効果:熱耐性up、・小

【プラグのネックレス】装備効果:雷耐性up、・小


その他:『強化の巻物』 (防御)×2




 その他の品については、ガソリンなどの液体燃料が多く回収出来た印象の先日の探索だった。今の時代でもかなりの需要があるので、魔石と一緒に定期的に集めに潜る場所としては良いかも知れない。

 そんな印象の“車庫ダンジョン”だったけど、現在は自治会も協会も持て余している感じみたい。親戚筋を探して当たってみて、今後の敷地の管理をどうするかって話になりそう。


 ハッキリ言って、ダンジョンが敷地内にある物件など、普通の神経では住み続けるのは不可能である。例えると、サファリパーク内に家が建っているようなモノ。

 そう言う意味では、来栖家はとっても特殊な環境なのかも。


「ウチは猛獣を簡単に撃退しちゃう、ハスキー軍団が家を守ってくれてるからね。敷地内に3つもダンジョンがあっても、安全だと思うけどなぁ。

 しかも知らない内に、探索者チームがお隣さんにいっぱい増えてるしね?」

「あっ、そう言えば星羅せいらちゃんチームも、この前活動を始めたらしいね? 熊爺ん家の双子と5人チームで、町内のダンジョンに潜ったそうだよ。

 5層くらいで戻ったけど、手応えはあったみたいだね」

「そうなんだ、それは良かったな……最近はムッターシャも熱心に手ほどきしてるし、彼女も本格的に探索活動を再開するのかな?

 何にしろ、町の治安維持活動もこれでずっと楽になるかな」


 そうなれば、来栖家チームの負担も減るかなと淡い期待の護人である。そして敷地内の“裏庭ダンジョン”だけは、早い内に封じてしまいたいと内心で思ってみたり。

 来栖家の家族での探索活動も、思えばこのダンジョンがきっかけとも言える。敷地内の5つの“ダンジョン内ダンジョン”をクリアしたら、ご褒美にその封じ方を妖精ちゃんに教えて貰える約束なのだが。


 小さな淑女は、まずは鬼のしきたりに従ってからだとはぐらかすばかり。そんな事をしている内に、地元依頼に奔走ほんそうされる破目に。

 まぁ、考えてみれば1年以上待ったのだ……今更焦っても仕方が無いし、鬼の再度の到来を待つのもやぶさかでは無い。その時、どんなご褒美が貰えるのか、はたまた次なる難題を言い渡されるのか。


 その辺は定かでは無いけど、こちらを鍛えるにはどちらも正統派の手段には違いない。それでボチボチ日程が決まって来た、再度の“喰らうモノ”の攻略が楽になるのなら嬉しい限り。

 そんな感じで、現状は待ちの姿勢の来栖家チームである。




 魔法アイテムの鑑定も終わり、来栖家の面々は午後の一番に協会へと出掛ける流れになった。目的は魔石の販売と動画の編集依頼、それからキャンプの打ち合わせも行う予定。

 7月は何かと忙しくなりそうなので、早めに遊びに行こうと言い出した子供達である。忙しくなる内容だが、もちろん尾道方面への家族旅行の計画だ。


 それから協会からも、今年も新人研修が広島市で行われますよとの通達があって。来栖家的には関係無いけど、ギルドとして見ると熊爺ん家の双子がギルド員な訳で。

 そしてバリバリの新人なので、是非ぜひとも出席して欲しいとの能見さんの言葉。もし不安なら、A級の護人か姫香が教員としてついて行って構わないとも言われていた。


 なるほどそんな手がと、ギルドとしても色々と考えさせられる事態に。確かに紗良と姫香が出席した去年も、友達も出来たし色々と為にもなった記憶がある。

 双子が行きたいと言い出したなら、引率するのも当然と思えて来る不思議。去年はそれで、広島市の『ヘリオン』の翔馬や『麒麟』の淳二とも知り合えたのだ。

 ギルド活動の一環として、参加も悪くは無いかも?


「それから、岩国のヘンリーさんからも、近々山口県方面でレイド依頼があるみたいって聞いてるね。それを受けるんなら、また1週間くらい家を空ける事になっちゃうかもね?

 A級探索者って大変だよねぇ、護人さんっ!」

「本当にそうだな……ウチのチームは小学生の香多奈もいるから、平日は出来たらNG出したいんだが。その辺は、本当にどうにかならないかな?

 岩国チームには、世話になってるから受けてあげたい気もするけど」


 そんな運転席と助手席での遣り取りに、私は絶対について行くからねと末妹の叫び。仲間外れが大嫌いな少女らしい、ハッキリとした決意表明である。

 護人はムウっと考え込むけど、結局は子供の方が力関係で言えば上なのだ。向こうの我がままは、大抵が通ってしまう運命で考えるだけ無駄だったり。


 それよりその後のフォローとか、そう言う事を考えた方が建設的ではある。例えば夏休みにも、しっかりゼミ生チームに夏期講習の時間を取って貰うとか。

 そうすれば、学業の遅れ程度ならあっという間に追いつく事は可能な筈。もしくは追い抜く事だって出来るだろうし、その点はお隣のゼミ生の能力を信頼している護人である。


 そんな事を考えている内に、キャンピングカーは協会支部の駐車場へ。雨はまだ降り続けており、湿った空気は如何いかんともし難く車内にまで漂っている。

 そんな事は関係無いと、外へと出て行くハスキー軍団と子供たち。ただまぁ、犬達をずぶ濡れにしておくのはよろしくないねと、今回は協会の建物に避難させて貰う事に。

 仁志支部長も快諾かいだくしてくれて、まずは一安心。


 ハスキー達も、他所の縄張りでは大人しくしてくれており、入り口付近でゆったりと寝そべっている。その貫禄は結構なモノで、犬好きな江川も気軽に撫でにはおもむけない程。

 子供達はさっさと能見さんを掴まえて、動画のチェックを始める素振り。護人も今回の換金物を江川へと渡して、仁志と世間話を始めている。


 今回の案件については、敷地の持ち主の失踪から始まったので扱いも微妙。お疲れさまでしたとの言葉と共に、依頼達成の金額も自治会と協会から出るとの事。

 相変わらず親族との連絡もつかないそうで、このまま行けば自治会があのダンジョン案件を引き継ぐみたい。儲かる場所なら、教会も定期的な間引きを視野に入れてくれるだろう。


 その辺のアドバイスも、今回の動画や何やらで協会がしっかりとレポートにして自警団チームに提出するそう。仕事とはいえ大変だなと思うが、自警団チームには有り難いだろう。

 そんな話をしている間にも、動画を観ている女性陣からはやんやの喝采かっさいが巻き起こっていた。どうやら、中ボスの変形シーンを観直して盛り上がっているらしい。


 こちらでも江川が裏から戻って来て、今回の換金が終わったとの報告。10層潜っての魔石の販売額は、今回は96万円程度でパッとせず。

 それに薬品と鑑定の書の3万を足しても100万円程度、自治会と協会の依頼額が16万円なので何とかって感じだ。その分、液体燃料系の回収が多かったと思えば、総合して収益に関してはまずまずといった所かも?


「そうですね、現在は“竹藪ダンジョン”が定期的な収益目的の間引きダンジョンとなってますけど。もう1つくらい、そちらのギルドで抱えておいても悪くは無いですね。

 当面の間は、凛香チームか土屋チームに依頼を振り分けるのが良いでしょうか」

「液体燃料は運ぶのに重いので、魔法の鞄が必須ですけど。両チームとも持っているので、問題は無いと思います。“車庫ダンジョン”は間引き終わったばかりだし、時期が来たら協会の方で提案をお願いしますね。

 それより、来週の予定はそのまま詰めても?」


 来週は、日馬桜町の探索者と協会の職員も誘っての、ドライブ&キャンプを提案していたのだが。天気の関係もあるし、何やら“浮遊大陸”もきな臭い感じ。

 どうなるか不透明な部分も多いけど、子供達はお出掛けの予定に大(はしゃ)ぎである。些細な障害では、この予定は変更とはなりそうもない。


 実際、動画チェック中だった女性陣は、今は探索動画も観終わってそっちの話へ。天気が良ければいいねとか、水浴びするにはまだ早いかなとか。

 去年は楽しかったねとか、今年は誘う人が増えて大所帯になりそうだとか。だからお昼ご飯の準備は大変そうとか、今回は夕食も食べて帰ろうよとか。


 だったら、お昼と夕食でメニューを変えないと、バーベキューだけじゃ飽きちゃうねとか。どうせなら一泊したいよねとか、そしたら護人さんもアルコール飲めるのにねとか。

 来週の川辺キャンプは、知らぬうちになかなかハードになりそう。


 一方の護人と仁志支部長の会話は、その後は至って冷静で情報交換オンリーと言う。岩国の協会から、正式なレイド依頼のオファーが来たけどどうしましょうか的な。

 それについては、吉和の『羅漢』ギルドも2チームほど遠征話に乗るそうな。西広島方面のレイドでもお世話になっているし、持ちつ持たれつと言う感じなのだろう。


 それからこの地区で一番ホットな話は、やはり宮島と“浮遊大陸”の結合らしい。オーバーフロー騒動こそ無かったが、どうやら宮島の弥山みせんの頂上と“太古のダンジョン”が繋がったとの確かな情報が。

 そんな話が漏れ聞こえて来て、不思議な事もあるモノだねと。或いは“太古のダンジョン”も、宮島の集客効果に乗っかったのだと評する者も現れる始末。


 まぁ、今の所は“浮遊大陸”の住人と噂される獣人軍やホムンクルス軍が、地上に出て来るような事態には至って無いそう。その点は安心なのだが、さて今後はどうなる事やら。

 宮島の協会は、弥山の頂上付近に前線基地みたいな施設を造ろうと奮起しているとの話も伝え聞く。今後の進展に注目ですねと、割と近場だけに仁志も興味深そうな素振り。


 護人からすれば、そんな所で騒動が起きて、お呼びが掛からなければ良いなって思いしかない。末妹の香多奈など、早く行かないと宝の地図に記されたお宝を奪われちゃうと焦っていたけど。

 そんな子供たちの圧力が強まれば、来栖家チームも近々“浮遊大陸”に再上陸を果たす事になりそう。“アビス”の宝の地図もあるし、やる事は実はてんこ盛りだ。

 そして夏休みに入っての、尾道旅行は既に決定済みと言う。





 ――そんな訳で、今年の夏もとっても忙しくなりそう。






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