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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の春~夏の件
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新造ダンジョンの後始末と次の日の顛末の件



 こうなると自分たちの現状のレベルが知りたくなるが、まだダンジョンを脱出したばかりなので気が早い。先ほど姫香がコアを破壊すると、例の振動がダンジョンに響き渡って。

 これは外で待機していた人たちにも感じた模様で、出て来た来栖家チームを見てホッとした表情の自治会長たち。こちらも軽く成功の報告をして、これでお役御免。

 ……とはならず、後始末に時間を割かれる護人だったり。


 とは言え、子供たちは早い段階でキャンピングカーに戻る事が出来たので。女の子同士でわちゃわちゃしながら、今回の収穫を吟味する。

 このダンジョンではキノコや肉などの、食材が多くて管理が大変だったけど。それを含めて、結構な収穫があったねとアイテム管理役の紗良の一言。

 車の冷蔵庫にお肉を入れながら、仕分けに余念が無い。


「でもウチだけで消費するには、食材多すぎるよね……学校の関係者の人達はもう避難していないけど、自警団の人とかはまだいるんでしょ?

 おすそ分けとかしようよ、護人叔父さんに確認してさ」

「あ~っ、それはいいねぇ……タッパーは無いけど、ビニール袋は割と置いてあるかな。護人さん近くにいるのかな、取り敢えずは仕分けておこうか」

「こらっ、コロ助……食べちゃダメだよっ!」


 山盛りになった食材が気になるのか、顔を近づけて来たハスキー犬をブロックしつつ。香多奈はそれ以外の収穫を指し示して、何を鑑定しようかとウキウキ模様。

 慌てなさんなと、姫香は護人が戻って来るまでは事を進めない方針を提示して。ちなみにラスボス部屋の宝箱は鈍い鋼色で、ここにも何と食材が入っていた。

 しかも高級品、季節を無視した立派な松茸が4本である。


 その価値を余り理解していない香多奈が、それを無造作に食材の山に加える。ってか広島は山も多いので、付近の山で採れたりする事も普通にあるのだが。

 他に当たりとして、スキル書が1枚と熊の革のマントらしき装備品が1つ。さすがに新造ダンジョン、これで今日得たスキル書は3枚目になる。

 後は牙の首飾りと、笹の葉に包まれた木の実が7個。


 今回はそっち系の素材は、スキル書を除くと極端に少なかったかも知れない。鑑定するとしても、マントと首飾りしか無いねと姫香の分析。

 それじゃあコアも破壊したし、人の鑑定をしてみようよと香多奈の提案に。今回は普通の鑑定の書は5枚と、それに加えて金の縁取りの豪華な鑑定の書が2枚ゲット出来た。

 妖精ちゃんの説明では、確かこれは詳しい鑑定が可能だとか?


「それは凄いね、そしたらHPがあるかの鑑定とかも出来ちゃうんじゃない? あと不思議なのはルルンバちゃんとか、今回は合体前の普通バージョンだったけど、合体後とかでステータス結果変わるのかな?」

「姫香お姉ちゃんとか、2回もコアを壊してるもんね。きっと、凄いレベル上がってるんじゃないかな……最近ゲンコツされると、凄く痛いもん!」


 香多奈の軽口に、それは悪かったわねとちっとも反省していない姉の返し。姉妹喧嘩になりそうな雰囲気を、紗良のさり気ない話題転換で事なきを得て。

 今回は魔石の集まりはそこそこだったけど、ポーションはたくさん集まったねぇと。今度は誰の探索カードでのランク上げするのかなと、次に待つイベントで気分を盛り上げて。

 それに簡単に乗っかる、素直な少女である。



 そうこうしている内に、ようやく護人が戻って来た。他の大人も一緒で、どうやら今から『探索者支援協会』日馬桜町支部へと皆で寄るらしい。

 『白桜』団長の細見も当然いて、新造ダンジョン周辺での後始末は一応終わった様子。彼らも一緒に、協会での報告会に参加するとの事。

 協会に用事のある来栖家チームとしては、願ったりな展開だ。


 家長の帰還に、ハスキー軍団もテンションアップ。外で待機していた彼女たちは、護人が車の運転席に収まるのと同時にキャンピングカーへと乗りこんで行く。

 子供たちも後始末の結果を聞こうと、車の前へと移動して。逆にハスキー軍団はリラックス、それぞれの場所で寛ぎ始めている。

 ただ護人としては、特に語る事も無い様子。


「まぁ、懸念した通りにポーションや食材が取れるダンジョンだったから、コアを破壊したのは正しい判断だったかなぁって議論だよ。

 でも日馬桜町は、それでなくてもダンジョン数と探索者チームの数が合って無いからね。管理し切れないのが目に見えてるなら、コア破壊は間違ってないって話で落ち着いたよ。

 どの道欲しけりゃ、半年で復活するんだからさ」

「それもそうだね、ポーション足りなくなったら半年後にまた潜ろう! それより食材が多過ぎるから、自警団とか他の人に分けてあげようって話になったんだけと。

 いいかな、護人叔父さん?」


 それは良いねとの護人の返事、確かに食材の山をチラッと見るに、家族4人で消費するには多過ぎる。自警団の面々も、地上に散らばった野良モンスターの追跡を頑張ったのだし。

 素材の分け前を得るには、充分な働きをしたとも言える。そして子供たちの優しさを無碍むげにする気は、護人には当然無かったりする。

 そんな事を考えている内に、キャンピングカーは協会支部に到着。


 日曜日だと言うのに、探索協会は通常営業していた。ここも確か、モンスター対策等の性質上、ほぼ休みなく運営していた筈。大変な仕事である、しかも3人で支部を回すとか。

 車を出る前に、子供たちは素早くスキル書の相性チェックを護人に強請ねだる。今回は3枚もあるから大変だが、まぁ素早く回せば他の大人も待たせないだろう。

 そんな訳で、慌しいスキル書の相性チェック!


 そして残念ながら、今回は反応する人間は皆無という結果に。その代わり、ペットの中で唯一レイジーだけが反応して。辛うじて1枚だけ、スキル獲得との結果に。

 既に強過ぎるレイジーだが、今回覚えたスキルは『歩行系』のナニかだとの、妖精ちゃんの鑑定結果だった。戦闘系でなく補助系のスキルに、何となくホッとする家族一同。

 ミケみたいな無双ペットは、家族に1匹いれば充分?


 残された2枚のスキル書は、勿体無いけど売りに出す事に。他にも今回は、魔石こそ少なかったけどポーションは3ℓも持ち帰れた。

 もっと大きいのは、同じくMP回復ポーションが3ℓの方だけど。これで今後の探索で、MP不足に陥る確率はグンと減る事だろう。

 それはもちろん、売らずに家族で保管である。



 回収品の処理を終えて、ようやく車から降りるチーム『日馬割』の面々。探索を終えたばかりなのに元気いっぱいで、お待たせと外にいた大人たちに声を掛けている。

 向こうからはご苦労様とか、学芸会が中止になった事へのねぎらいを口にされるけど。香多奈は別段に残念そうって感じでもなく、どの道ほとんど終わり掛けてたとあっけらかん。

 恐らくだが、再リサイタルも行われないだろう。


「それは残念、アンタなかなかの迷女優振りだったのにねぇ?」

「お姉ちゃんはうるさいのっ、茶化さないでっ!」

「あっ、それより皆さん……探索中に、結構な食材を入手してしまったんですが。ダンジョン産で良ければ、お裾分けしますので持って行ってください」


 護人の申し出で、駐車場に集まっていた自警団の皆さんはおおっと言う表情に。それから紗良が持ち出した食材を見て、明らかに嬉しそうな表情に。

 ちゃっかり物の紗良が、あらかじめお肉の大半と松茸は別にしまっていたとは言え。それでも大量のお裾分けに、それじゃあ遠慮無くとの声が飛び交う。

 そしてあっという間に、大半の食材が持ち去られる事に。


 残った食材は、自治会長と支部の職員さんに振る舞う事で食材問題は全て終了。恐縮する仁志と能見さん、今日はもう1人の中年職員はお休みらしい。

 2人とも、ダンジョン産の食材の取り扱いにも熟知しているようで。コアが破壊された報告には、ちょっとがっかりした表情に。

 それでもチーム『日馬割』の、無事な帰還を喜んでくれて。


「本当に皆様、ご苦労様でした……今回の探索は、突発的な事情でこちらの協会を通していなかった訳ですが。協会の依頼と言う形を取らして頂いて、報奨金も出す予定です。

 その辺はしっかり形式を踏みますので、どうぞご安心を」

「それは助かります、ええっと……報告の動画はこちらのスマホから、それから今回もE‐動画への編集アップ作業をお願いします。

 今回の魔石とポーション販売は、紗良のカードで良かったかな?」

「順番だとそうですね、私のカードどこにやったかなぁ……? あっ、財布の中だったよ……はいっ、ランク上げお願いします」


 今回の販売実績で、果たしてランクが上がってくれるかは不明だけど。前回は紗良と姫香が1度の販売で、両者とも見事にEランクへと上がったので。

 今回も、何とかなるんじゃないかなとの期待はある。


 実際は、Dランクには実績が足りなかったそうだけど。残念がる姫香だったが、香多奈の興味は既に今回のドロップ品の鑑定にと向かっていて。

 机の上にアイテムを拡げて、どれが怪しいか仁志や能見さんの意見を伺っている。今回は食材以外では、ほとんどそっち系のアイテムは出なかったので。

 仕分けもあっという間、結果は2つの装備品を鑑定する事に。



【牙の首飾り】装備効果:腕力+脚力up・小

【熊革のマント】装備効果:腕力up・中



 金の縁取りの鑑定の書は使わず、普通のタイプでの鑑定結果を出して。これはもし売る時の為の、保証書にもなるからと勧められた手段である。

 実際は、2品とも魔法の品で前衛にはかなりの良品となっているので。恐らく家族で使うだろう、結構なパワーアップにはなる筈である。

 分配は、まぁ後に家に戻ってからすれば良い。


 それから上級の鑑定の書だが、これは割とレアらしく売るとしたら1万円以上になるだろうと言われた。普通の品の2倍以上の価値で、これの使用でアイテムや人物の詳しい鑑定が可能なのだそう。

 ひょっとして、これを使えばHPの記載が分かるかも?


 そんな可能性を感じるものの、護人は特に数値にこだわりは感じない。ただまぁ、ハスキー軍団も既にHPを纏っているのかは、知っておきたい所である。

 それから、ミケとルルンバちゃんも同じく鑑定が必要かも。同じチームで探索をしていても、何故かレベルに差が生じているので変に苦労する。

 それを把握するにも、良いアイテムを入手した。


 考え込んでいる護人の隣では、香多奈が今回の探索の様子を仁志と能見さんに話して聞かせていた。ルルンバちゃんの新装備のお披露目に至らなかったのを、少女は凄く悲しんでいて。

 次こそルルンバちゃんが無双するよと、次回の探索に期待を膨らませている少女。姉の姫香は、それよりアンタは女優を目指したらと、午前の学芸会の演劇を茶化している。

 そして再び、姉妹喧嘩の様相をていして来て。


 それを上手にいなしながら、そろそろ家に帰ろうかと家長の一言。は~いと元気な返事が子供たちから、能見さんはいつもの事務口調で動画の完成は2日後あたりだと告げて来た。

 その視線の先には、イチゴのショートケーキを完食しそうな勢いの妖精ちゃんが。能見さんの3時のおやつだったらしいのだが、特別な来客につい出してしまったらしい。

 その甲斐あってか、小さな淑女はとっても幸せそう。


「うちでもケーキとか、たまには作って上げようよ、紗良姉さん……あっ、能見さんも牛乳や卵が欲しかったら、是非うちに言ってください。

 ちょっと遠いけど、新鮮さだけは保証しますよっ!」

「まあっ、それは有り難うございます……本当によろしいのでしょうか、もちろんお代は支払いしますけど」


 全然構わないよと、相変わらず全く人見知りをしない姫香である。護人が心配せずとも、彼女なら方々の行く先で親しい間柄の友人を作って行きそう。

 実際、護人が気を揉むより姫香はずっと幸せそうである。





 ――それならそれは良い人生かも、或いは保護者が思うよりはずっと。










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