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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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遊園地の仕掛けが段々と面白くなって来る件



「あぁ、確か前もこんな感じだったねぇ、護人叔父さん……大きくて強そうな恐竜なのに、敵意がスッポリ抜け落ちてて酷かったよねぇ?

 アレもひょっとして草食恐竜なのかな、でもサイやカバは割と狂暴なんでしょ?」

「どうだったかな、縄張り意識は強いって聞いた覚えはあるけどな。そもそも連中、こっちをちゃんと認識してるのかな?

 サイズが違い過ぎて、蟻んこ程度にしか思って無いってパターンもあるぞ」


 スルーされてるなら、いつもの先制でやっつければいいジャンと。香多奈に限っては、見栄やプライドなどどうでも良い様子で意見を述べて来て。

 それもそうかと納得した紗良が、それじゃあと一番手に名乗り出る。相手は巨大な恐竜2体で、片方は見事な2本の角と張り出した襟巻に特徴のあるタイプ。


 そしてもう1体は、背中に剣のような背ビレを持つ、尻尾がハンマーのような恐竜だった。アレで殴られたら痛そうだねと、最後尾の香多奈は飽くまで呑気だけど。

 それを言うなら、あの角の立派な恐竜のチャージなど、間違っても喰らいたくない。姫香も金のシャベルを持って、用意は出来たよと合図を返して。

 そんな訳で、来栖家チームお得意の速攻のスタート。


 それじゃ行きますと、まずは紗良が最近すっかり定番になった《氷雪》を発動。魔法の選択は別にも理由があって、あまりにサイズが違い過ぎてハスキー軍団に近接戦をさせたくないので。

 これで決めてやるとの気概は強く乗っかって、それ故かこの魔法スキルの威力は割と凄かった。それを言うなら護人や姫香でも、直接殴り合うのはサイズ的に無理があるし。


 恐竜は寒さに弱いかもねと、蛇や爬虫類の変温動物と一括りな香多奈の呟き。そうかも知れないとの期待は、しかし見事に適えられた模様である。

 みるみる動きが鈍り、凍ったように動かなくなる2体。


 今までの恐竜戦では、魔力節約と言う訳では無いけど、ハスキー達の先行で活躍の機会の無かった氷魔法。使ってみたらこの効力、ただし魔力は半分以上持っていかれたけど。

 あのサイズに効果を及ぼすようにと、少々気張り過ぎたかも知れない。しかしその甲斐あって、2体の大型恐竜は接敵する前に虫の息。


 勢い付いた姫香のシャベル投擲は、まぁ完全にオマケのとどめ刺しみたいな感じに。それでもあの巨体が粒子となって消えて行く様は、なかなかに見応えがあったかも。

 そして呆気なく入手する魔石(中)が2個、それからスキル書が1枚と恐竜の鱗と言うかヒレ部分が数枚。ご機嫌な声を上げながら、それを回収する香多奈である。

 今回の中ボス戦も、取り敢えず全員無事に切り抜けられた。


 余力も充分だし、もう5層くらいは無理せず探索出来そうな感じ。そんな事を思っている護人に関係なく、子供達は宝箱の回収に忙しそう。

 今回は銀箱だったと、興奮した香多奈の嬌声が中ボス部屋に響き渡る。大型恐竜がいただけに広い空間なのだが、元気な子供の声はそんな事はお構いなしだ。


 そして中からは鑑定の書(上級)が5枚とオーブ珠が1個、魔結晶(中)が4個に木の実が4個。それから薬品は、エーテル900mlと中級エリクサー800ml。

 もう1つ、牛乳瓶に入った液体は過去に何度か見た事のある色合い。確か媚薬とかその類いだった筈、それが500mlほど回収出来た。


 他にも恐らく恐竜の皮のベストや、恐竜の骨らしき素材のハンマーが。後は玩具的なモノが数点、恐竜のソフビやブロック玩具、プラモデルや双眼鏡などが。

 それから既に恒例となった、橙のコインが12枚ほど。これはどこで使うんだろうねと、姫香は首を捻ってるけど。隣の紗良も、同じくどこだろうねぇと不思議そう。

 お店とか出て来るなら、区切りの5層かなと思ってたようなのだが。


「もっと奥で使うとしたら、本当に誘い込みだよねぇ……さすがB級の仕掛けだね、欲を出し過ぎると危なそうだよ」

「本当にそうだよね、変に期待しないでおこうっと。でももう少し進む予定ではあるんだよね、護人叔父さんっ?」


 それに関しては肯定の頷きを返す護人、頑張ってるハスキー軍団を休憩させつつMP回復させて。護人自体も、ここまでほとんど消耗しておらず余力は充分。

 香多奈もまだ2時間経ってないよと、もっと探索するよ感をアピール。今回の回収率もまずまずなのだが、意外とオモチャ系が多くてガッツリ儲かった気がしない。


 元が遊園地の特性なのかもだが、青空市で売るとしても微妙な感じだ。そんな訳で、休憩を終えた来栖家チームは目指せ10層を合言葉に再び探索を再開する。

 そして相変わらず先行するハスキー軍団と茶々丸、6層もジャングルと遊園地の複合系は変わらず。明るいタイル張りの通路は、一行を誘うように続いている。

 それ以外は密林なので、そこ以外にルートは無いのだが。


 先行チームは、さっそく敵との遭遇戦を始めている様子だ。見えた限りでは、お馴染みとラプトルやパペット兵士の群れらしい。後衛陣にも、豹顔の翼人が襲い掛かって来て。

 いきなり賑やかな戦闘風景が各所で、護人や姫香も出番を貰って張り切っている。ルルンバちゃんも同様に、空の敵は任せとけと言わんばかり。


 翼竜の姿もチラホラあったので、その点は有り難い。香多奈の頑張れ~との声援を受けて、そんな局地戦は約5分程度で終了の運びに。

 先行のハスキー軍団も、同じく20匹以上の敵の殲滅を終えた様子である。ツグミが影を伸ばして、ドロップ品を回収に励んでいる様子。

 それを茶々丸もお手伝い、そこだけ見たら和むのだが。


 改めて見ると、とんでもない戦力を有しているには違いなく。どうやら中ボス戦で出番が無かったのが、不満だった様でストレス発散の戦いだった模様だ。

 そんな彼女たち、こちらの無事を確認すると再び進行を開始して。どうやら向こうにある、目立つ建物を目指しているらしいハスキー軍団と茶々丸である。


「茶々丸もすっかり、ハスキー軍団のスビートに馴染んじゃったねぇ。私だったら、到底追いつけない進行速度なのに凄いよね。

 仔ヤギからの変身時間も、段々伸びて行ってる感じもするね?」

「一番伸びてるのが茶々丸かもな、レベル的にもスキル慣れの点でも……茶々丸も元からスキル持ってたからな、ミケと同じく知らない内に。

 そう言うタイプは、やっぱり図抜けて戦闘センスがあるんだろう」

「動物ってば、毎日の生存が既にサバイバルだもんね。例え家畜やペットでも、野生の本能の部分で言えば人間よりずっと上なんだろうね」


 そんな家畜やペットが、従順に主人の探索に追従するのが既にレアケースなのだけど。そんな先行ペットチームは、順調に快進撃を続けている。

 そしてしばらく進むと、後衛陣がハスキー軍団に追いつく事に。どうやら待っていたと言うか、このフロアにはアトラクションの入り口があるみたい。


 しかも『お化け屋敷』らしく、その古めかしい館の外観は否応も無く中の恐ろしさをあおっている。子供達も、香多奈以外はここに入るのとやや及び腰。

 末妹に限っては、チケット代タダだってとちょっと嬉しそう。護人は中の仕掛けがそっち系なのかなと、ハスキー達に戦闘準備を言い渡している。

 つまりは屋内なのと、アンデット系が出ますよと。


 まるでリーダーと言うより引率者だが、ハスキー達も理解はした様子。何しろゴースト系の敵も、来栖家チームは何度か対戦済みなのだ。

 厄介なゴーストやら臭いの酷いゾンビやら、そんな敵は思いっ切り彼女らの苦手属性。姫香は白木の木刀を取り出して、私と叔父さんで先頭かなと隊列変更を提案している。


 護人も頷いて、魔断ちの神剣に武器チェンジして姫香と2トップの態勢に。紗良に限っては、お化け屋敷の雰囲気に呑まれて香多奈と手を繋いでいる始末。

 周囲に護衛についている、ハスキー軍団の存在がとっても心強い。


「うわぁ、中は結構本格的かも……廃ビルだか廃病院って感じだね、薄暗いし不気味で怖いかも。脅かし役は、やっぱりゾンビやスケルトンかな?」

「それが定番だろうな……おっと、早速お出ましみたいだ。油断するなよ、姫香……アトラクション仕様だと、どんな仕掛けがあるか分かったもんじゃないぞ!」

「了解っ、護人叔父さんっ!」


 廃ビルみたいな薄暗い通路の先から、団体でやって来たのはゾンビの群れだった。腐臭漂う敵の群れに、明らかにハスキー軍団は嫌そうな仕草。

 護人と姫香も、当然こんな属性の敵の相手は真っ平御免である。ある意味機械的に、淡々と敵を屠る作業を真面目にこなして行って。


 幸い、倒して魔石に変えてしまえば臭いの酷さからは解放される。敵の強さは雑魚レベルなので、2人が手古摺てこずったりピンチになるような事もない。

 そうやって、最初の脅かし役を簡単に退けて行って。突き当りの部屋の中には、香多奈の予想通りにスケルトンの群れが。こいつらの退治には、ハスキー軍団も勇んで参加。

 狭い室内の敵は、あっという間に消滅して行く。


 そして次の和室っぽい場所で、案の定のゴーストの襲撃が。どうでも良いが、ビルの内部風の通路に突然の和室とか違和感バリバリなのだが。

 割と怖い演出に、冷静に突っ込む者は誰もいない状況である。ちなみにゴーストは、ただの脅かし役に過ぎず全く強敵では無かった。


 それでも透明の人型の霊が、苦悩の表情で向かってくる姿はかなり来るモノがある。姉妹では比較的に強心臓の姫香でさえ、この攻撃には小さく悲鳴を上げてしまった。

 心配そうに見守る後衛陣と、フォローに入ろうとする相棒のツグミだったけど。それより素早く、護人の日本刀が霊体モンスターを一刀両断してしまった。

 その後に起きた絶叫は、やっぱり心臓に悪かったけど。


「ひあっ、せめて静かに昇天して欲しいなぁ……いや、モンスターだから魔石に変わるだけなのかな? どっちにしても性悪な仕掛けだよね、護人叔父さん」

「まぁ、出て来たゴーストも弱かったしな。消滅前に脅かすくらいは、勘弁して……うおっ!?」

「わわっ、天井が崩れちゃった!? 一緒に何か落ちて来てるよっ、うわっ……あれって、スライムの群れっ!?」


 香多奈の推測は大当たり、天井と一緒に落ちて来たのは薄緑色のスライムの群れ。危うく先頭を歩いていた護人と姫香は、それに呑み込まれそうになって。

 咄嗟に避けれたのは、運もそうだが運動神経の賜物たまものだったかも。それとも護人の《心眼》が勝手に作動した成果なのかも知れない。


 とにかく護人は姫香の手を取って、咄嗟に後ろへと転がるように回避する事に成功して。その途端、繋がっていた廃墟風の部屋の一角からスケルトン恐竜が飛び出して来た。

 どうやらこちらも、瓦礫みたいな場所に隠れていたらしい。タイミングが良過ぎるので、恐らく仕掛けが作動してこちらが慌てる隙を窺っていたと見える。

 とは言え、来栖家チームも数だけは負けていない。


 素早くその不意打ちに気付いた香多奈が、咄嗟にコロ助に声を掛けての『応援』飛ばし。巨大化したコロ助は、その体格で骨モンスターに体当たりをかます。

 恐らく上手に《韋駄天》のアクセル効果も乗せたのだろう、その威力は骨を粉砕するのに充分なパワーを備えていた。脅かし役のスケルトン恐竜は、哀れにその出番もほんの少しの有り様だったり。


 それよりスライムの塊に呑み込まれそうな前衛は、大慌てで対処に奔走している。スライムなんてと以前までは思ってたけど、人を丸呑みするサイズはさすがに怖い。

 陸で溺れたくない一行は、レイジーの『魔炎』で焼却処分する流れに。周囲の建物に配慮して、火力を調節するレイジーはとっても器用かも?

 何しろ『魔炎』は、彼女が最初に取得したスキル技である。


 その扱いも、上手くなっているのは当然とも言いたげなレイジー。護人と姫香も後半のスライム退治には参加して、これでようやく目に見える危機は脱した感じ。

 そんな仕掛けが満載のお化け屋敷だけど、そろそろ終焉が近そうな雰囲気。最後は廃病院の死体置き場って感じの演出、ただし置かれていた死体は大半が恐竜だったけど。


 ゾンビ恐竜は最大で3メートル級、残りは恐らく小型のラプトルみたい。薄暗くて陰湿な空間は、暴れ回るにはやや不十分な広さではあるけど。

 ここはドローン形態のルルンバちゃんが、率先して魔銃で退治して行く流れに。何しろ腐敗臭の酷いゾンビは、人間もハスキー軍団も余り直で殴り合いたくはない相手。

 香多奈の応援を背に、割と孤軍奮闘のエース機である。


「おおっ、ルルンバちゃんのドローン形態も随分と火力が上がったねぇ……江川さんに感謝しなくちゃ、改造に凄く親身になって手伝ってくれてたし。

 ルルンバちゃんも器用だねぇ、護人叔父さんみたいな『射撃』スキル無いのにほぼ命中させてるよ。まぁ、当たる距離まで近付くのはご愛敬かな?」

「そうだな、おっと……あの大きいのは手伝ってやらないと」


 そんな訳で、最後の大物は護人と姫香もお手伝い参戦の流れに。雰囲気だけは怖かったお化け屋敷だが、戦闘成分がバリバリに入っていて趣旨は全く違うダンジョン仕様だった。

 そしてようやくの出口、何と言うか宝箱も無くてガッカリだったねと香多奈の感想だけど。ちゃっかり中で、ツグミが橙のコインを5枚ほど回収していてくれた。


 その使い所だが、何と出口の売店らしき場所でようやく判明した。と言うかそこは本当に売店で、しっかりパペットの売り子もいる始末で驚きの一行。

 ソイツは律儀にぺこりとお辞儀をして、目の前の商品を指し示して来た。色々と並べられているが、お土産や実用的な商品の品揃えみたいである。

 しかしまぁ、ちょっと場違い感は酷いかも?





 ――それでも子供達は、興味津々に店の商品を眺め始めるのだった。









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