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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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再度の中ボス大恐竜と遭遇する件



 旅行で行った因島ダンジョンを思い出すねぇと、4層を探索中の後衛陣は割と呑気。ハスキー軍団を始めとする前衛陣は、既に最初の敵との接触を済ませた所。

 この“旧ナタリーダンジョン”は、敷地はそこそこ広い筈なのだけど。やたらと敵との遭遇率が高くて、さすがB級ダンジョンである。


 敵の強さもそこそこで、戦闘で気が抜けないのも確かである。定番のラプトル恐竜やパペット兵士、剣虎や翼竜と雑魚モンスターも大型の体型をしているし。

 つまりはこの4層も、そんな敵ばかりが出没して来た訳だ。今回も割と歩き出してすぐの遭遇で、その戦闘音を聞きつけて周囲の敵が集まって来た感じ。

 慣れた護人と姫香が、それらを処理して行って。


 ルルンバちゃんも、そんな空からの敵の迎撃を率先してお手伝い。今回の彼は前衛にも加わるし、そこまで突出しない中衛的な動きをしている。

 何しろジャングルフロアは、どこから敵が出て来るか分からないと来ている。パペット兵士ならともかく、俊敏なラプトルの相手はちょっと苦手なようだ。


 そんな訳で、護人や香多奈の指示待ち的な動きを、今回はしているルルンバちゃん。それでもライフル魔銃の扱いに関しても、段々と慣れて来た様子である。

 フロアもしっかりお洒落タイルで舗装されているので、走り回るのに不自由は無い。そしてちゃんとした道も通っていて、たまに案内表示なんかも置かれていたり。

 本当に良く分からない、遊園地式ダンジョンである。


「何だろうね、遊園地なんて遊びに来てくれるお客さんあってのモノだし……そんな思いも、ひょっとして具現化しちゃったのかもね?」

「あ~っ、それで変にサービス精神が旺盛なの、このダンジョン? 階段をネオンで飾ったり、もっと奥に来て欲しいって思いが凄いもんねっ。

 それならもっと、遊べる……アレッ、何かこの先に変なコーナーがある」

「うん、確かに案内板が出てるな……どうやら“ミニチュア街セット”らしい、巨人になった気分が味わえるそうだね。

 ハスキー達も入って行ったし、俺らも続こうか」


 そんな感じで、良く分からないアトラクション広場へと突入する一行。ミニチュア街は、子供の腰程度の大きさのビルや建築物が左右に広がってとってもファンシー。

 巨人と言うより、怪獣気分だねと姫香の言葉に。ポーズお願いと、スマホの動画撮影に熱が入り始める末妹である。それにしても、細部まで良く作られている。


 感心して眺める護人と、ガオーっと変にサービスを始める姫香。どう見ても怪獣には見えない可愛さだが、香多奈は大はしゃぎで映画監督気分。

 そんなお楽しみに、水を差したのはハスキー軍団の警戒を発する吠え声だった。何事かと周囲を見渡すと、左方の木々の間から接近する本物の巨人の姿が。


 それには一同ビックリ仰天、今まで見て来た巨人の中でもとりわけ大きいかも。何しろジャングルの木々の障害物を超えて、巨人の顔が拝めるのだ。

 明らかに10メートルオーバーのモンスター、しかもペットに中型恐竜を従えている。これはやり過ぎと批判の声が上がる中、戦闘準備に入る来栖家チーム。

 いやしかし、この体格差は洒落にならない。


「正面に立つ者は防御重視で、攻撃は死角に入った連中でするぞ! お供の恐竜も厄介そうだな、こっちから倒してくれ、姫香。

 俺は何とか、巨人を引き離してキープしておく!」

「了解っ、護人叔父さん!」

「頑張れっ、姫香お姉ちゃん……茶々丸、あんまり前に出たら駄目だよっ!」


 レイジー達について行こうとしていた茶々丸は、末妹に制止されて少し不満顔。それでも中型恐竜の迫力は凄まじく、前衛陣は一瞬たりとも気が抜けない。

 そして目論見通り、“四腕”の攻撃で巨人の興味をこちらへと逸らす事に成功した護人。邪魔にならないように、ジャングルの中へと巧みに敵をおびき寄せる。


 一方の姫香たちも、明らかに肉食系の首輪をはめた恐竜にアタックを開始して。護人の指示通りに、タゲを取っている者は防御専念での安全策。

 その役目は、主に姫香とレイジーが交代で担っている感じ。姫香はすっかり慣れた『圧縮』スキルでの防御、レイジーは『歩脚術』での立体的な素早い動きで避けまくって。

 たまにツグミが、《影操》で両者をサポートする感じ。


 そしてタゲの向いていない、死角に潜り込んだ者は容赦の無い一撃を敵に与えて戦線離脱。下手にその場に留まって、踏み潰されたら堪らないので。

 その作戦は上手く行って、あっという間に中型肉食恐竜の下半身は血塗れに。怒り心頭の敵は、レイジーに咬み付こうと必死にそのあぎとをターゲットに向けるのだが。


 その隙を突いた姫香の鍬の一撃が、何と尻尾を断ち切ってしまった。バランスを崩して地へと倒れ込む中型恐竜、そこに飛び込んだ茶々丸がちゃっかりとどめを掻っ攫って行く。

 黒雷を纏った長槍が、深々と敵の目玉から脳へと潜って行って。その一撃で、敵は魔石へと変わって行った。仔ヤギの戦闘センス、恐るべしである。

 とは言え、まだ戦闘は継続中である。


 気を引き締め直して巨人討伐へと向かう姫香たちだが、こっちも既に形勢は決していた。紗良の《氷雪》とルルンバちゃんの射撃の援護で、さすがの巨人もボロボロ。

 10メートルを超す巨体も、動きはやはり鈍重だったらしく。キープ役の護人は、『射撃』で敵の顔を嫌がらせの様に狙っている始末。


 いや、これも敵の気を引き付ける作戦なのだろうけれど。それでも巨体を誇る敵だけあって、かなりタフには違いなく。どうやって倒そうかと、前衛陣は思案する。

 巨体と言うだけで厄介な敵なのだ、腕を振り回したり転がるだけでこちらに甚大なダメージが来る可能性も。頭を使うのも、つまりは当然な敵でもあって。

 結局は、護人が声掛けしてまずは巨人を転がしてしまう事に。


 そんな訳で、タイミングを見計らっての護人と姫香で、巨人の膝へと攻撃を集中させて。絶叫を放って膝から崩れ落ちたのは、まさにこちらの計算通り。

 鍬とシャベルの攻撃は、スキルの威力も合わさって膝頭を思い切り粉砕していた。そこに容赦の無い追撃が、低い位置へと降りて来た巨人の顔面へと見舞われる。


 レイジーの『魔炎』のブレスと、それからコロ助の『牙突』も飛んでいる模様。とにかく騒がしく暴れ回る巨人は、ここに来てちょっと哀れかも。

 それでも暴れた結果、木々が薙ぎ倒されたり地面のタイルがめくれて飛び散ったりと周囲は大事である。さっさと止めを刺したいのだが、暴れ回る巨人に近付くのは怖過ぎる。

 と思った途端、ピタリとその動きが止まってしまった。


「あれっ、誰か止め刺したの……? 何で急に、この巨人の動きが止まったのかな?」

「あっ、ミケちゃんのスキルの効果かもっ? 護人さんっ、今の内に大急ぎで止め刺しちゃって下さいっ!」

「おっ、おおっミケのサポートかっ、有り難いっ!」


 ミケは気紛れな為、急に飛んで来た《魔眼》でのサポートに味方が慌ててしまうと言う。それでも有り難い事に間違いはなく、護人と姫香が大慌てで巨人の首を狩りに掛かる。

 長く感じた大物退治は、これにて何とか終了の運びに。いや中ボス前に、こんな大物は狡いよねと皆が感想を口にする中。ルルンバちゃんが、見事にドロップ品を回収。


 魔石(大)と魔石(中)が1個ずつと、それから恐竜の牙素材と巨人の毛髪素材。そして待望のオーブ珠を1個、ルルンバちゃんが掲げて戻って来て。

 それを見た香多奈は大喜び、ライバル心を刺激されたツグミとコロ助が、宝箱を求めて駆けて行く。どうやら巨人遭遇の直前に、その気配は察知していたようで。

 しばらくして、こっちに来てとの催促の吠え声が。


「うあっ、ツグミとコロ助が呼んでるみたい、護人叔父さん」

「方向的には、さっきのミニチュア街だな……仕方ない、引き返してみようか」


 お礼にと、ミケを撫で回していた姫香がツグミの呼び声に反応して。護人の号令で、全員でそちらへと向かう事に。何を見付けたのかなと、相変わらず楽し気な末妹だけど。

 それはミニチュア街にそぐわぬ、人が入れそうな大きさの宝箱だった。発見した2匹は鼻高々で、自分達の手柄を前に尻尾をブンブン振っている。


 これは褒めねばと、姫香は2匹を思い切り撫で回してあげて。アンタも主人なら褒めなさいと、宝箱に直行している末妹へと言葉の拳骨を浴びせる構え。

 そんな訳で、中身の回収は紗良のお仕事に。中身はまずは大物の、おままごと用のハウスセット。お人形も何体かついていて、女の子は喜びそう。

 もっとも香多奈は、玩具よりお金! ってタイプだけど。


 他にもミニカーやら食玩やら、玩具の類いが色々と出て来て。茶々丸と萌だけが、興味津々って感じで紗良の手の中のアイテムを眺めている。

 そして次に出て来たのは魔銃……では無く、これも完全な玩具のオモチャ銃で。跳び出すのは、コントで良く見掛けるベッタン吸盤の付いた棒状の矢弾みたい。


 それを受け取った茶々丸は、楽しそうにレイジーに見せびらかしている。どうやら生みの親より、完全に育ての親に懐いてしまっている様子なのは良い事なのか。

 他には鑑定の書が4枚に魔玉(土)が5個、木の実が2個に当たりのスキル書が1枚。それから最後に、橙のコインが8枚ほど出て来た。

 コインは順調に貯まっているが、さて使い所は本当にあるのだろうか?



 褒められて大満足のツグミとコロ助を先頭に、探索は再開されて。その後を、レイジーと茶々丸が続くいつもの布陣。いつの間にやら、この型が多く採用されるように。

 コロ助の前衛は、何だかんだでスタイル的にも良いようだ。何しろハスキー軍団は元から統率が取れているし、その偵察速度に人間が付いて行くのは不可能だし。


 茶々丸で何とかって感じで、コロ助の加入で遊撃と言うか前衛の破壊力は倍加している。紗良と香多奈の護衛は、そんな訳でいつの間にやら護人と姫香の役目に。

 いや、ミケもいるし紗良のスキルもあるので、それ程べったり付く必要も無いのだが。その辺は心配性の護人、何かあったら遅いとの考えで。

 ちなみにルルンバちゃんも、ハスキー軍団の速度について行けず後衛組に。


 幸いにも、萌も歩く速度はそんなに遅くは無いので。香多奈が抱っこして移動する手間は掛からず、その点は有り難い。探索中に手塞ぎは、かなり危ないので。

 萌の探索に対するヤル気も、実はかなり高い。時折|《巨大化》スキルを使って、戦闘参加をアピールする程度には。ただまぁ、これも危ないので今回は護衛役に回って貰っているけど。


 何しろ出て来るのは、ラプトルとか剣虎とか銃持ちパペットとか強敵ばかり。さすがにB級ダンジョン、侮って良い敵は出て来ない有り様。

 ただしそんな敵も、ハスキー軍団は先行して勝手に撃破してしまっているけど。そして次の層への階段も発見してくれて、本当に至れり尽くせりなペット達である。

 そうして一行は、5層へと降りて行く事に。


「さて、中ボス部屋はどこかな……フィールド型ダンジョンだと、探すのも一苦労だよな」

「そうだねぇ、ここは半分ジャングルで見通し悪いからねぇ。でもタイルで道は出来てるから、ハスキー軍団もそれに沿って進んで行くよね?」

「ルルンバちゃんが、向こうに怪しい建物があるって……やっぱり飛べると便利だねぇ、ハスキー達も向かってるから間違いは無いみたい」


 珍しく、最初の襲撃が無かったこの5層のスタート地点。ハスキー達は、タイルの道を左へと進む事に決定したみたいで。それに続くべきかとの論争を、後衛陣でしてみたのだが。

 バッチリルートは当たってたみたいで、さすがハスキー軍団である。それから飛行ドローンのルルンバちゃんは、破壊力は落ちるモノの偵察能力は一流で。


 ついでに、飛行型の敵をおびき寄せてしまったのはご愛敬。それを後衛陣で撃ち落として行きながら、周囲を覗ってみる護人だけど。

 先行したハスキー軍団も、どうやらラプトルの群れと戦いを始めている様子。倍もいる敵の群れを、苦もなく退けるペット達はもはや文句なくB級ランクかそれより上かも?

 そんな局所的な戦いが終わったのは、ほぼ同時だった。


 そして、こちらの安全を確認して再び先行し始めるハスキー軍団である。ドロップした魔石やアイテムは、ツグミと茶々丸がしっかり回収している模様。

 頭の良さも、ひょっとして既に人間レベルなのかも。それはともかく、それ以降はモンスターとも遭遇せずに問題の場所へ辿り着いた。


 砦のような、石で造られた簡素な西洋の城のような。その門前には簡易的な防波柵が造られており、パペット兵士が1ダース以上防御網を敷いていた。

 それを挑戦と受け取ったハスキー軍団、やる気満々で突っ込んで行って。今回は数も多いので、護人と姫香も参戦を決め込む事に。

 当然の如くルルンバちゃんも追従して、そうすると今度は戦力過多の破目に。


 モノの数分で鎮圧は終わり、防波柵だけが綺麗に残っている始末である。相変わらず強いなぁと、やや呆れ口調の末妹の香多奈の呟きに同意の頷きの紗良である。

 そして休憩もそこそこに、砦の扉を開け放っての中ボス退治へと突入する一行。作戦はいつも通り、速攻で倒せればそれで行こうねって感じである。

 そして目にするのは、2体の巨大な恐竜だった。





 ――強そうなフォルムだが、やはり敵と認識されてない来栖家チームだったり。










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[気になる点] ルルンバちゃん、前の話は小型ショベルで今話だとドローンだから『どっち???』ってなりました。
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