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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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遊園地の内部に戸惑いつつ探索する件



 思ってたのと違うねと、呑気な感想を呟きながら進む子供たち。ハスキー軍団はいつものように先行しつつ、敵を露払いして次の層への階段を探している。

 ただしラプトルの機動力は侮れず、簡単にチームの背後を取って来る。その時には慌てず騒がず、護衛の護人と姫香が相手をする感じだ。


 紗良も攻撃魔法を覚えたし、ミケも本当に危なくなったら猫の手を貸してくれるし。最近出来上がった新フォーメーションは、安全に機能しているっポイ。

 フロアもジャングルが続いたと思ったら、急に建物が出て来て違和感が凄い。建物だけならまだしも、突然目の前にメリーゴーランドやお化け屋敷が出現するのだ。

 ただし、どちらも入れなかったし動かない仕様みたいだけど。


「もうっ、全然動いてないし入れないじゃんっ! ちょっとくらいは、遊べる場所があってもいいのにっ!」

「ダンジョン内で遊ぼうって、その考えの方が怖いわよっ! そんなに乗りたいんなら、あそこの観覧車に乗ったら、香多奈?

 きっと、天にも昇る気分を味わえるわよ」


 背の高い大観覧車は敷地内のどこからでも見えて、しかもゆっくりと動いていた。さすがダンジョン、訳が分からないよねと姫香が呟いている。

 そんな施設の周辺には、決まってパペット兵士が数体集まっている。武器は特に持っておらず、このダンジョンの中では雑魚に相当する敵である。


 硬い敵はコロ助とルルンバちゃんで倒して行き、ツグミも最近覚えた『土蜘蛛』を使ってお手伝い。茶々丸も、性能の良過ぎる両手槍の扱いに最近慣れて来た様子。

 それから単独行動も影を潜め、強そうな敵には複数で当たる事を覚えて来た。良い兆候には違いなく、レイジーの指導の賜物であろう。

 お陰で前線は、ますます安泰となっている。


 後衛も、別に呑気について行ってるだけでは決して無いのだが。特にこんな広いフィールド型だと、どこから敵がやって来るか分かったモノではない。

 現に飛行型の恐竜の群れが、空中から襲い掛かって来た。それを察知した護人と姫香、それぞれ得意なスキル技で危なげなく駆逐して行く。


 派手な羽根を持つ、人より倍は大きなサイズの翼竜は次々と撃墜されて行く。鳥に見えてギザギザの歯を持つ凶悪な敵なのだが、大柄だけに機動性は今一つみたい。

 それを全部片づける頃、ハスキー軍団が報告に戻って来た。突入してまだ15分程度だけど、どうやら次の層への階段を発見したとの報告らしい。

 フィールド型にしては早いが、まぁ順調って事で良い感じ。


「回って無い所もあるけど、10層くらいが目標だと先に進んだ方が良いよね」

「そうだね、それにしても……何でこんな派手に、階段の存在をアピールしてるの? ネオンで飾らなくってもいいのにね、護人叔父さん」

「う~ん、変な仕掛けって訳でも無さそうだしな……ダンジョンもきっと、探索者にどんどん奥に進んで欲しいんだろう。

 しっかり注意だけはして、先に進もうか」


 護人の言葉に、は~いと元気な子供たちの返事。それを聞いて、ハスキー軍団と茶々丸も争うように階段に突入して行く。遅れじとルルンバちゃんも続いて、いつもの風景。

 そして2層の景色も、そんなに変わらずジャングルと遊園地の融合だった。既にハスキー軍団は、ラプトルとパペット兵士の混成軍と戦闘中で。


 数が意外と多かったので、それに護人と姫香も加わっての乱戦となったけど。その騒ぎも、モノの数分で終焉して敵の群れは綺麗サッパリ消え去った。

 階段を出た場所は広場みたいになっていて、地面はタイル張りでとってもファンシー。良く見れば周囲をレールが通っており、そこを小型の蒸気機関車が走っていた。

 それを胡乱うろんな目で眺める、騒がしい音が嫌いなハスキー軍団。


 玩具仕様の機関車は、子供なら後ろを曳くカゴ台車に何とか乗れそう。それに乗って敷地内をのんびり回るのも、それはそれで楽しそうではある。

 もっとも、モンスターのいるフロアでは、そんな娯楽も楽しめないだろうけど。昔のナタリー遊園地に、こんな遊具があったのかも全くの不明。


 ところが、急に視界に入って来たこの機関車に、香多奈が大声を上げて止まってと追い駆け始めた。釣られて一緒に走り出すハスキー達は、ちょっと楽しそう。

 驚いてアンタこそ止まりなさいと口にする姉の姫香だが、妹が慌てている理由は瞬時に把握。ミニ蒸気機関車の荷台の1つに、宝箱が乗っていたのだ。

 なるほど、愉快と言うか悪趣味な仕掛けだ。


 姫香は馬鹿正直に追ったりせずに、ツグミに宝箱の回収をお願いした。その途端に、ツグミの足元の影から闇がぐわんと膨れ上がって荷台へと殺到する。

 これにて追い駆けっこは終了、息を切らして止まる少女とハスキー軍団。遅れて走り出していた茶々丸も、ご機嫌に香多奈の元まで全力疾走を披露する。


「みんな元気よね、本当に……ご苦労様、ツグミ。香多奈、息が整ったら中身の確認させてあげるよ?」

「何であんな力業がまかり通るのよっ、もうっ! レイジーもツグミも酷いよね、元は普通のハスキー犬って言っても誰も信じないよっ」

「あぁ、その気持ちは分かるな……ハスキー達が凄すぎて、俺たちがオマケに感じる事がたまにあるよ。集めた情報によると、ペットがスキルを覚えるのは凄く稀らしいからな」

「みたいですよね……本当にレイジーちゃんやミケちゃんは、映画の主役を張れますよ。最近は茶々丸ちゃんも前線で活躍してるし、私ももっと頑張らなきゃ!」


 紗良お姉ちゃんが頑張ると、ハスキー達が敵を取られて目が点になるのが面白いよねと香多奈の言葉。だからと言って、前衛に遠慮して手を抜く事も出来ないけど。

 確かに護衛している相手が、急に強くなって敵を一気に倒すとビックリもするだろう。ハスキー軍団の心情はともかく、チームのパワーアップは割と急務。


 護人に関しては、紗良の強化は大歓迎ではあるのだが。お調子乗りの香多奈だけは、そんな強力なスキルを覚えないで欲しいってのが本音だったり。

 とにかく釈然としないまま、香多奈は大人しく宝箱のチェック。中には金貨十数枚と銀貨がその倍くらい、それから鑑定の書が4枚に魔石(小)が5個。


 薬品もポーション500mlとMP回復ポーション700mlがペットボトルに、他にも短剣と大き目のスノードーム、キャラクター人形が塩ビ製と超合金が数個ずつ。

 そして最後に出て来たのは、だいだい色のコインが5枚。


 金貨や銀貨とも違うし、コインにナタリーと英字での刻印がわざわざされている。どう言う意味かなと、それを見付けた香多奈は小首を傾げるも。

 一緒に覗き込んでいた姫香も、ダンジョンで使用するタイプのお金かなと推測を述べて。そんな感じのダンジョンも、過去にあった筈とちょっと楽し気。


 それもその筈、そんな交換品には価値の高いアイテムが目白押しのパターンが多かった。そんな話で、2層目で早くも盛り上がっている姉妹である。

 ご主人の機嫌が良いと、自然とハスキー軍団も調子が出て来るいつものパターン。そんな訳で2層の攻略も、滞りなく終了の運びに。

 変化と言えば、パペット兵士が色々と武器を使い始めた程度。


 そしてハスキー軍団が再び発見した階段も、やっぱりネオンと飾りで派手に主張されていた。見付けたハスキー達も、これには少々戸惑っている様子。

 そして辿り着いた第3層、相変わらずゆっくり動く大観覧車が密林の中に見え。しかも今回は、ジェットコースターのレールも木々の上に飛び出していた。


 それを見てテンションの上がる子供たち、まぁ乗りたいって意見は出て来ないけど。これは何かの仕掛けかなと、逆に警戒して遊具を眺めている。

 そんな事をしていると、わらわらと木々の間から敵が出て来た。そして派手な銃声が上がって、来栖家チームの面々はビックリ仰天。

 どうやら、パペット兵士が武器に銃を持ち出して来たらしい。


「うおっ、銃持ちの敵が出て来たっ……!? みんな腰を低くして、木の陰に隠れて! ルルンバちゃんは前に出て、先に銃持ちパペットを倒してくれ!」

「あっちの方角だよ、ルルンバちゃん……良い場所取りしたら、逆にルルンバちゃんの銃で倒しちゃえっ!」


 危険な存在をさっさと倒せるなら、それもアリと小型ショベルの進行に続く護人。銃弾をものともせず、勇ましく前に出るルルンバちゃんだが。

 他にも敵が集まって来て、地上からはお馴染みのラプトル恐竜が半ダース。それから、こちらは初見の豹顔の翼人が空中から。どうやら、あのジェットコースターとセットらしい。


 レールを進行する座席に座って、どうやら敵の進出を待っていたみたいで。そんなジェットコースターの速度は、本物とは程遠くとってもスローリー。

 それでもこの豹顔翼人、皆が剣と盾を装備していて結構強そうだ。そんな敵が空から半ダース飛んで来て、現場はややパニック模様へと突入しそうに見えたのだが。

 護人の号令で、紗良の《氷雪》が本日初解禁!


 そのダメージで、バタバタと地上に墜ちて行く翼人の群れ。ただし、派手な戦闘音を聞きつけて、翼竜の群れも参加を決め込んだようだ。

 戦いの推移は予断を許さないが、地上ではいつの間にかパペット銃士は姿を消していた。どうやらルルンバちゃんが、香多奈のアイデアをそのまま遂行していた模様で。

 しかも、たった一発ずつで敵を射抜いた腕前は素晴らしい。


 ハスキー達も、前線でラプトルを屠って次の敵を見定めているけど。新たな翼竜は、護人とルルンバちゃんが射撃で落として、姫香が止めを刺して回っていた。

 来栖家チームは、人員の多さが最近は最大の売りになっている気がする。人間の数は護人と子供達で4人しかいないのだが、ペット勢が何と6匹と1機もいる。


 内訳は古参のハスキー軍団が3匹と猫のミケ、それからAIロボのルルンバちゃんで1機。それから新参者の茶々丸と萌が、これからどうなるかなって感じ。

 これを人間と足すと、何と11名と言う大所帯の探索者チームとなっている。まぁ、香多奈と萌を戦力として数えるかは微妙な所ではあるけれど。

 とにかくそんな感じで、3層の最初の戦闘は終了。


「空を飛んで来てた顔が豹のモンスター、ジェットコースターに乗ってたねぇ……ひょっとしたら、その中にも宝箱が置かれてるかもっ?」

「レールがあんな高い所を通ってるからねぇ……ゆっくりのスピードでも、コースターの中身拝見はちょっと無理じゃない?」

「そうだな、最初の層から無理する事も無いだろう……おやっ、あれは何だ?」


 香多奈の宝箱探しの執念に、姫香と護人が何とか待ったを掛けていたら。そのジェットコースターの去った方向の空から、割と大きな風船が幾つか飛んで来た。

 色とりどりのそれらは、綺麗と言うよりこんな所でって感じでちょっと不気味。何か括り付けられているのもあって、それはそれで好奇心を刺激して来る。


 特に香多奈は、あれは何か良いモノ入ってるんじゃないかと願望が剥き出しに。ほぼ9割は罠だと思う護人と姫香は、果たして感覚が正常なのか性格がれてしまっているのか。

 そんな事を話しいる内に、風船に意志でもあるんじゃないかって感じで、幾つかこちらに流れて来た。その中の1つを指差して、あの箱は大きいよと嬉しそうな少女。

 その風船が、落雷で不意に割れて地上に落下する。


 ボトッと言う感じで墜ちた箱の中身からは、何と粘塊スライムが這い出て来て。呆気に取られてそれを眺める香多奈と、槍でさっさと始末してしまう茶々丸。

 それから嬉しそうに、他のも落としてと催促する仔ヤギの茶々丸。


「うん、まぁ……概ね予想通りと言うか、爆弾物じゃ無かっただけ良かったかな? ミケは相変わらず冷静だな、怪しいモノは近付く前に破壊するって言う」

「そうだねぇ……ある意味正しいよ、ミケは。ダンジョンなんだから、安全第一は当たり前だよ、香多奈っ!

 レイジー、風船落すの手伝ってあげて」


 お年寄りのミケばかり働かせまいと、姫香はレイジーに声を掛けると。頼まれたレイジーは、近くの木に登って炎のブレスで近付く風船を片っ端から割って行く。

 その回収の仕方に、不満げな香多奈ではあったモノの。その内の1つの箱から、魔結晶(小)やら魔玉やらが出て来ると、現金な事にすぐに機嫌を直してしまって。


 茶々丸と一緒に、競うように回収ごっこに興じ始める始末。一応スライムなどの罠もあるよと、護人の忠告に姫香が護衛役に付き添う形に。

 何だかんだと言って、叔父の言葉には敏感な子供達である。そしてさり気なく妹をフォローする姫香も、以前よりは人間的に成長が窺える気も。

 そんな感じで、回収作業は数分で終了。


 結果は、魔玉(風)が5個に魔結晶(小)が4個、乾電池の単三が8個に単二が5個。それから例の橙色のコインが7枚と、残りはスライムトラップだった。

 更に1個だけ、罠モンスターのボックスイミテーターが混じっていて。ソイツは、いち早く気付いたミケが《刹刃》でズタボロにしてしまった。


 それから探索の再開、例の如くモノの5分で次の層への階段を見付けてしまうハスキー軍団。フィールドの大半は素通りだが、無視して次の層へと進む来栖家チーム。

 ここまでまだ1時間掛かってない、そして次が4層目。





 ――B級ダンジョンとの触れ込みだが、今の所探索は順調だ。









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