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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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自治会依頼で“滝下ダンジョン”に探索に赴く件



 2月の第2日曜日、すっかり恒例となった自治会依頼のダンジョン間引き案件だけど。今回も、1度も潜った事のない“滝下ダンジョン”が依頼先との事。

 ここはその名の通りに、滝の近くのダンジョンである。近くにはハイキングコースとは名ばかりの山道があって、田園地帯もすぐ近くにある。


 まぁ、水が無ければ田んぼも出来ないので、この辺の因果関係は置いておくとして。とにかくそんな長閑のどかな場所に、割と間口の広いダンジョン入り口が。

 周囲はそんなに拓けてもおらず、要するに田園地帯と森の境目と言った感じの場所である。そんな場所にキャンピングカーを停車させて、護人は一息つく。

 子供達は、着いたねと元気に外へと出て行って。


 ハスキー軍団も同じく、外の寒さなど全く意にも介さずと言った感じ。香多奈などは、暖房の効いた室内から外に出て寒いと文句を言っている。

 カイロ代わりにコロ助に抱きつきながら、同じくミケを抱っこした紗良に今日の探索について最終質問。要するに“滝下ダンジョン”の難易度なのだが、その答えは至ってシンプルだった。


「水棲のモンスターが多くて、難易度は普通かな? 5層までは田んぼの拡がるフィールド型ダンジョンで、去年潜った橋の下のダンジョンに敵の種類は似てるかも」

「あぁっ……そこって確か、服を着たカエル男の騒ぎがあった所だねっ!」

「田んぼかぁ、泥だらけにならなきゃいいけど」


 姫香の懸念は、まぁ田舎住まいの田んぼ持ちとしては当然かも。護人は去年の“落合川ダンジョン”の事を思い出し、あそこの間引きも半年前かと考えていた。

 そろそろすべきなのかもだが、冬に水浸しになるのはかなり嫌である。例えダンジョン内が適温だとしても、外に出れば一気に冷えるのだし。


 それは今回も同様で、以前の動画を観るに水辺のシーンが割と多い。そんな訳で、今回は紗良に着替えやタオルを多く用意して貰っている次第である。

 なるべくなら春まで待ちたかったが、魔素鑑定の結果待てないとの自警団チームの報告らしく。そんな訳で、今回はなるべく深く潜る予定ではある。

 時刻もお昼前、ランチの用意も抜かりはない。


 張り切ってるのは茶々丸も同じ、今回も《変化》のアイテムで穂積の姿を借りている。何だかんだで、この姿が一番落ち着くみたい。ちなみに、萌は通常運転。

 ルルンバちゃんも小型ショベル形態で、既にカーゴから降ろして貰って万全の態勢である。装備もバッチリ、今日の探索も活躍する気満々だったり。


 周囲の景色は、積雪もあちこちに残っていて寒々とした冬模様。これがダンジョンに入ると、適温で過ごしやすくなるから不思議である。

 そんな訳で、子供達はさっさと中に入ろうとせっかちに移動を始めている。香多奈もようやくコロ助から離れて、スマホで動画撮影を始めてのお仕事開始。

 愛用の鍬を担いだ姫香が、それを見てお仕事行って来ますとピース。


 今日は凛香チームが別の場所で稼働して、大学生チームが自宅待機の予定。自警団と話し合って、最低1チームは有事に備えて待機する決め事が出来たのだが。

 大抵は凛香チームが稼ぎたいと言って出動を取るけど、大学生チームも稼がせてあげないと。最低限の生活は町で保証しているけど、生活に先立つモノは必要である。


 彼らは揃って研究職で内に籠る性格なので、放っておくと家から出たがらないのだ。小島博士からしてそうで、生活に危機感を覚えているのは美登利のみと言う。

 春から塾と言うか、中学校も日馬桜町内に欲しいと言う話も上がっているし。ひょっとしたら、ゼミ生も案外簡単に食い扶持を稼げるようになるかも知れない。

 何より町の子供も、遠くの中学に通わずに済むようになるし。


 今の時代、便利と言うより安全の方が大事な案件ではあるので。毎日の長距離移動のタスクの軽減は、かなりの負担軽減には違いないとの見方も。

 問題は学校の場所と、予算が降りるかなのだけど。その辺は、護人が心配しても無駄な分野である。そんな訳で、意識を探索へと切り替えて子供たちの後を追う護人。


 レイジーが律儀にも待ってくれていて、ようやく進み始めた主に軽く尻尾を振って追随の構え。ダンジョンの入り口から、子供達が護人を大声で呼んでいる。

 そんないつもの雰囲気で、来栖家チームの探索はスタート。




 入った瞬間、やっぱり突然周囲の景色が変わった違和感が一行を襲う。周囲に拡がるのは長閑な田園風景で、小川と沼地とあぜ道が真っ直ぐ続いている。

 その奥には割と広い田んぼがあって、苗がそよ風になびいていた。成長具合からして、田植えからそんなに間もないのかも。誰が植えたかは、全く不明だけど。


 そんな風景の中にも、モンスターはちゃんと生息していた。沼地にはランドセルサイズのカエルやアメンボが、小川にはバケツ大のタニシが見て取れる。

 それからあぜ道には大ネズミが、数はまずまずと言った所で間引き甲斐はあるかも。護人の号令で、ハスキー軍団が一斉に駆け出して行く。

 それに遅れじと、茶々丸もダッシュで続く。


「敵の数はまずまずだね、見た感じ強そうなのは混じってないかな……次の層への階段を探しながら、殲滅して行く感じでいいのかな、護人叔父さん?」

「そうだな、目標は10層以上だから余力を持たせつつ行こう。適材適所で、MPはなるべく温存の方向で」

「え~っ、スキルの実践練習していいでしょ、叔父さんっ! あの巻貝、あんまり動かないから萌に戦闘経験を積ませてあげたいの」


 確かに小川から顔を覗かせているタニシは、積極的な戦闘行動を起こしていない。ダンゴムシとかと同じ、戦闘能力を持たない敵なのかも。

 護人が許可を出すと、香多奈は嬉しそうに萌を引き連れてタニシの前へ。ハスキー軍団は沼地の大カエルとアメンボの殲滅に忙しそう。


 茶々丸もそっちでお手伝いをしていて、動かないタニシは人気が全くない。ルルンバちゃんも、2~3匹倒して興味を失った模様である。

 そんな訳で香多奈と萌のコンビは、少女の『叱責』からの萌の尻尾アタックでタニシを屠って行く。そいつ等が魔石に変わると、少女は大喜びで萌を褒め称え。

 仔ドラゴンも満更でも無さげで、少しずつ自信がついて来た感じ。


 10分後にはハスキー軍団も戻って来て、ツグミがあぜ道の奥へと一行を案内する素振り。どうやら階段も発見済みらしく、さすがと相棒を褒める姫香。

 あぜ道沿いに生えている大きな銀杏いちょうの木の側に、2層への階段を発見。見渡した限り、間引きも完璧に出来ているっポイ。


 そんな訳で安心して、チームは第2層へ降りて行く。そこもほぼ同じ景色で、見た感じ敵の分布も変わらず。ハスキー達が、敵を求めて駆けて行くのも全く一緒。

 姫香が田んぼに張られた水の中に、大オタマジャクシの群れを発見した。大した数では無いが、一応殴って倒して行く。萌も香多奈から『応援』を貰い、それをお手伝い。

 モンスターは逃走を知らないので、ある意味楽な作業ではある。


 ついでに先ほどと同じく、コンビでタニシの殲滅を終わらせて。水に沈んだ魔石(微小)を回収してると、ハスキー軍団も間引きを終えて戻って来た。

 ここまで1層約15分、なかなか良いペースである。


 子供達もまだ休憩は良いと言うので、そのままツグミの発見していた階段で第3層へ。今回の階段は、沼のほとりの小さな祠の側に出来ていた。

 3層に突入すると、空気に春の温かさを感じるように。そして沼の周辺には、クレソンやわらびやふきのとうが普通に生えていた。


 わ~いと喜んで、香多奈と紗良がそれを摘み始めて。萌がそれを見て、器用な長い耳で同じようにお手伝い。ハスキー軍団と茶々丸は、沼の周辺で間引きに余念がない。

 護人と姫香は、ミケとルルンバちゃんに2人の護衛を任せて、田んぼ方面の間引きに向かう事に。そちらにもポツポツと、大ネズミやタニシが散在しており。

 田んぼにはやっぱり、大オタマジャクシが割とたくさん。


「強くない敵ばっかりだけど、それなりに数が多いね、護人叔父さん。でもフィールド型にしては、間引きがスムーズにはかどってるよね」

「そうだな、ウチのチームも分担作業が慣れて来た証拠かな? 人数も増えたし、総合力もついて来たかも知れないな」


 増えたと言っても、まだまだヤンチャな茶々丸とおっとり型の萌だけど。それでも茶々丸の方は、ハスキー軍団と波長が合い始めている感も。

 レイジーの根気の良い教えの成果なのかも、群れでの戦闘に箔が出て来た気も。まぁ、それも敵が弱いからってのもあるのだろうけど。


 とか思っていたら、どうやら後衛の2人が妙な穴を発見したっぽい。そこからモグラ獣人が這い出て来て、一瞬大慌てした雰囲気が漂って来たのだが。

 護人達が駆けつけるまでもなく、ミケの雷落としによってモグラ獣人は速攻で退場の憂き目に。それから、穴の奥にルルンバちゃんが宝箱を発見。

 すぐさま掘り起こして、中身チェックを始めている。


 中には鑑定の書が2枚に魔玉(土)が4個、ポーション600mlに何故か藁草履わらぞうりが2つと風呂敷が3枚入っていた。不思議顔で、紗良はそれらを回収する。

 3層ではそれ以上に変な出来事は起こらず、10分少々で間引きは順調に終了して。少し休憩した後で、第4層への階段を目指す。


 この頃になると、だいたい階段の位置関係を把握している一行。どうやら沼地とあぜ道の往復で階層を下がって行けば良い感じみたいだ。

 今回の階段は、大きな松の木の隣に存在した。それを降りて4層へと到着、今回も春の景色の田園が拡がっている。そしてあぜ道沿いにつくしを発見、嬉々として積み始める紗良と香多奈。

 その横を元気に駆けて行く、ハスキー軍団と茶々丸。


 沼地の敵は自分達のモノだと、殲滅の手順も余念がない。大カエルは向かって来るのを噛み殺して、大アメンボは水魔法を避けて逆に魔法で始末する。

 レイジーは『魔炎』の制御はお手のモノ、弱い敵には弱い威力の炎の玉をぶつけてやる。ツグミはまだ『土蜘蛛』の制御に慣れておらず、オーバーキル気味ではある。


 コロ助は『牙突』を器用に使いこなし、その辺は既に慣れたモノ。水上の大アメンボ相手でも《韋駄天》を使用して、沼の端から端へと跳ぶ途中でアメンボを口に咥えると言う荒業まで使用して。

 ただし、この層から沼地にタガメが追加されていたようで、たまに池から鎌が飛んで来る。《韋駄天》のスピードの方が圧倒的に速いので、捕まる事は無いのだが。

 水の中から出ないこのモンスター、さてどう倒す?


 とか思ってたら、茶々丸が池の端でバシャバシャやり始めた。ハスキー軍団の殲滅は容赦が無いので、仔ヤギに倒されてくれる獲物がなかなかいないのだ。

 コイツくらいは自分が倒すと、猛アピールの彼の元へ。池のギャングの大タガメが3匹もやって来て、沼へ引きずり込もうとする。


 忍者服姿の茶々丸の、既に愛用の武器となった『黒雷の長槍』は物凄く高品質。特に黒雷を生み出す能力は、やや使い手の手に余る程の威力だったりして。

 それでも、水の中の生物に対して大いに有利に働いたのは事実。あっという間に2匹を串刺しにして、残る1匹も雷に痺れてヘロヘロの状況。

 ただし、当の茶々丸も沼の端で痺れていたけど。


 ヤレヤレと言う表情で、異変を察知したレイジーが救出に向かう。同じくツグミも駆け寄って来て、残った敵の討伐&魔石の回収を同時に行う。

 彼女の《闇操》と《空間倉庫》のコンボは、魔石やアイテム収集にも超便利。とにかく無事に水から引き揚げられた茶々丸は、しばらくして元気に復活。



 その頃、田んぼ方面の殲滅組はあぜ道沿いに建つ1軒のボロ小屋を発見していた。古い時代の納屋なのかも、中身はそんな感じの農機具ばかりだったので。

 その中から、紗良と香多奈が苦労して魔結晶(小)を4個と木の実を2個、それからMP回復ポーション600mlと解毒ポーション700mlを発見。


 薬品は古い容器に入っていたが、中身には問題はない様子。後はわらとか木の樽に入った米糠こめぬかとか古い木材が少々。

 農機具はともかく、ヌカは植松の婆が喜びそうだ。藁も昔は、御座やら草鞋わらじに加工するのに必需品だったのだし。畑に敷いて雑草抑制にも使えるし、実は割と万能である。

 そんな訳で、それらも全部持って帰る事に。


 ボロ小屋での回収作業をしていると、ハスキー軍団が元気に戻って来た。その途端に、香多奈が誰かから告げ口を耳にしたらしい。いや、何となく雰囲気を感じ取ったと言い直すべきか。

 どうもその辺は曖昧なのだが、とにかく茶々丸が戦闘中に自分の槍で怪我をしたのに気付いて。姉の紗良に、回復してあげてとせがんで来る末妹。

 その治療中、おっちょこちょいだねぇと小言が止まない香多奈である。





 ――途端に神妙になるも、その大人しさは5分と続かない茶々丸であった。







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