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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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4つ目の扉をチームは順調に進んで行く件



 そんな訳で、2層の進軍も程々のペースで進んで行く。敵が硬いこの無生物フロアだが、来栖家チームの進軍スピードにはいささかの衰えも無い様子。

 何しろルルンバちゃんが張り切っているし、コロ助もハンマー攻撃で思い切り味を占めているし。更にはツグミまで、新しく覚えた『土蜘蛛』が良い感じに作用して。


 硬い筈のゴーレムやパペットは、この土属性のトラ挟みに為す術もなく破壊されて行く。レイジーが逆に、今回は手出しを控えて後衛に下がって来るほどで。

 保護者の観点から、子供達に見せ場を譲ったと見えなくも無いけど。どちらかと言えば、適材適所だと一歩引いたようにも護人には見える気も。

 レイジーもそう言う点では、策略家と言うかリーダー気質が窺える。


 そんな事などお構いなしに、今回も茶々丸は前衛で張り切っていた。そのフォローを護人に仰せつかったのは、この層からは姫香だった。

 チームとしては、取り敢えず色んなパターンをこなしておきたいって事情もあったけど。ぶっちゃけると、茶々丸のみでは不安だと言う認識が大きかったり。


 そんな感じのペア決めで、その戦う姿を後方から見守ってる家族の面々は。後ろからの支援を弓矢や魔法で維持しながら、真面目に状況を眺めていた。

 敵はそんなに強くは無いけど、何しろ相変わらず数が多いので。油断すると、囲まれて危なくなる局面が訪れる場合だってあるのだ。

 特に茶々丸が、調子に乗って前に出過ぎるのが怖い。


「茶々丸っ、張り切り過ぎないのっ! 前に出過ぎるとメッだよっ!」

「姫香お姉ちゃん、苦労してるねぇ……」


 ヤンチャな仔ヤギを相手に、躾けに忙しそうな姫香だけど。訓練中もそんな感じなので、問題は無いとも。茶々丸も注意されたのに気付いて、慌てた顔になっている。

 そんな事をしてる間にも、最初の集団はどんどん数を減らして行って。心配して見ていた香多奈だったけど、幸いに大きく崩れる事も無く戦闘は終了。


 この遺跡の広場にも、恐らくは50体程度のゴーレムやロックやパペットが詰めていた筈。魔石を拾い始めている香多奈は、律儀に数える事はしていないようだが。

 ルルンバちゃんもそれは同じ、落ちてる物を吸い込んで紗良の元へと届けるのみ。少女にお礼を言われると、機体を震わせそれに応えるルルンバちゃん。


 見ていてちょっと面白い、後は動力の魔石を強請ねだる時のアクションも同じく。今の所、それは香多奈にしか判別不能なのが悲しいけど。

 護人も《異世界語》を習得して、ちょっと期待はしたのだけれど。さすがにペットやAIロボとは、意志の疎通は出来なくて悲しいようなホッとしたような。

 そう言う点では、末妹の『友愛』は物凄い能力なのかも知れない。


「休憩終わったら、奥に進もうよ護人叔父さん……ツグミが面白がって、『土蜘蛛』の魔法でMPガンガン使うようになっちゃってるからさ。

 燃費が悪くなっちゃってるの、注意した方がいいのかな?」

「う~ん、スキルも使えば使う程、身体に馴染んで能力アップする事が分かってるしな。覚え立ての魔法だし、今はツグミも面白くて使ってるんだと思うけど。

 ポーションも余り気味だし、そこは別に良いんじゃないか?」

「そっか、そう言う考え方もあるんだ……叔父さん、私も新しいスキル使ってもいい?」


 その話に乗っかって、何故か立候補して来るヤンチャな末妹である。胡乱な視線を姫香から浴びるも、練習は大事との言質を護人からしっかり取っていて。

 紗良まで誘って、後衛もどんどん魔法を使って行こうと変な盛り上がり。チームの底上げを掲げているリーダーの護人としても、その方針に特に反対はせず。


 そんな訳で、次の敵影が見えての戦闘はまた前回と少し違う感じに。まずは香多奈の『応援』を貰った、紗良の《氷雪》の範囲魔法からの派手なスタートと。

 ルルンバちゃんも調子に乗って、ライフル魔銃での遠隔攻撃の練習を始める始末。その威力は絶大で、たった1射で凍り付いたゴーレムは無残に崩れ去る結果に。

 いや、ここまでの威力だとは思って無かった護人と子供たち。


「わおっ、何か凄いね……私も飛び道具欲しくなっちゃう。やっぱり《豪風》を派手に竜巻にして飛ばす練習、頑張ってみようかなぁ?」

「姫香お姉ちゃんは前衛でしょ、茶々丸と前に出て敵を殴って! 今から私が敵を弱らせるからね、ちゃんと弱った奴を殴ってよね!?」


 そう言って香多奈が敵に投げ掛けたのは、コラーッと言うお叱りの言葉。それに見事に『叱責』スキルの効果が乗っかって、確かに敵は弱体化している様子。

 誤って姉に掛けて以来、ほぼ使っていなかったスキルだったけど。それを使われた敵の感触は、姫香の報告によるとなかなか弱ってくれていてグッドらしい。


 ボス戦とかに掛けると、殲滅時間が短く済んで良いかも知れない。強化系のスキルはともかく、弱体系のスキルなど余り出回ってない事実をかんがみても。

 少女の覚えたこの『叱責』スキルは、実は割と有効かも?


 そんな実験を交えつつ、この階段前の集団戦も続いて行く。今回も姫香は茶々丸を連れて、コンビでの戦いを教え込もうと躍起になっている模様。

 その左右では、ハスキー軍団とルルンバちゃんが縦横無尽に暴れ回っていて。お馴染みとなったゴーレムやパペット兵士は、最初の《氷雪》の奇襲もあってヘロヘロ。


 範囲攻撃は、集団の敵相手には本当に強い。無生物モンスター相手だから、効きはどうかなと懸念していた紗良だったけど、問題は全く無かった模様である。

 後衛からは、護人も今回は弓矢で参戦して。ハスキー軍団の付近は誤射があると怖いけど、ルルンバちゃんの周辺なら例え味方に当たっても怖くないと気付いて。

 もっとも、スキルの万能性で誤射もほぼ無いのだけど。


 そして《氷雪》で冷却されている無生物モンスター、かなり脆くなっている模様で。安物の矢弾でも、相応の威力で当てれば崩壊してくれると言う。

 今回の広場にも、台座の上にはしっかり宝箱が設置されていた。あれもミミックかなぁと、香多奈が嫌な先読みを披露しているけど。


 コロ助が、ハンマーの振り回しの操作ミスでうっかりそれをゴツイてしまい。怒りの本性暴露のミミックだったが、その時にはコロ助は別の敵へと向かっていて。

 誰もタゲる者がいないと言う、何だか間抜けな事態に。仕方なく台座を転げ落ちたミミックは、近くにいたルルンバちゃんに絡もうとするのだが。

 何とキャタピラに巻き込まれ、うっかり轢死れきしの憂き目に。


 ルルンバちゃんは、アレ何かいたかなってリアクションで、すぐに戦闘に戻って行った。それを見ていた後衛陣と、その護衛の護人は掛ける言葉も無く。

 何となく、心の中で合掌しつつミミックの冥福を祈るのだった。いやまぁ、もう既に魔石に変わってしまっているけど。その側には、彼のドロップのポーション瓶が数本転がっていたり。


 再びルルンバちゃんに轢かれたらコトだと、護人の同伴でそれらを回収に向かう香多奈。その頃には、前線の頑張りで敵の数はあと僅か。

 転がっていた薬品は、上級ポーション800mlとMP回復ポーション800mlだった。他にも木の実が3個と強化の巻物が2冊ほど転がっていたけど。

 その割には、全く活躍出来なかったミミックはやはり哀れ。


「おっと、姫香が今やっつけた敵で最後かな……やっぱり先制の魔法効果か、戦闘時間は思いっ切り短縮されてるかな?」

「本当ですか、それなら頑張って次も先手で魔法を打ち込んでみますね!」

「私も頑張って、モンスターを叱り飛ばすよっ♪」


 末妹の香多奈の宣言はアレだが、まぁスキルを使って悪い事は何も無い筈。幸いにもMP回復ポーションも回収出来たし、回復手段のあるうちはケチる必要もない。

 そんな訳で今回の階層攻略は、前回より好調と言うか時間的には短くて済んでいる気も。次の層は中ボス確定の筈、休憩を取りながらそんな事を話し合って。


 それはともかく、今回も萌とミケは目立った活躍は無し。ミケは最終兵器だから良いけど、萌も少しは経験値を積ませようと言う案も香多奈から出て。

 とは言え敵は集団で出て来るので、それもなかなか難しい。そんな訳で、また別の機会にと言う事で話は落ち着いた。香多奈は納得していないが、茶々丸だけでも前線のフォローは大変なのだ。

 他の子の面倒を見るのは、無理だよと姫香からの意見が。



 そんな訳で、推定中ボスの待つ3層へと一行は階段を降りて行って。そこで待つのも、やっぱり最初はゴーレムとパペット兵士の大集団だった。

 今回は、大振りの壺とかドローン兵器も混じってるけど、戦況にどう影響を及ぼすかは定かでない。紗良の初っ端の範囲吹雪魔法で、それはより分からなくなって。


 それでも先制打撃を浴びて、遅ればせながら動き出す敵兵団。大振りな壺からは、どうやらシャドウ族がモアっと吐き出されて行ってる様子で侮れないかも。

 いや、続いての香多奈の魔玉の投擲で、それは派手に割れて粉々になってしまった。ロックの群れも悲惨な状況で、辛うじて進み出ているのはゴーレムとパペットのみ。

 それも味方の前衛陣が、次々と破壊して行って。


 このルーチンもすっかり慣れたのか、今日の探索で最短記録を更新したかも。相変わらずルルンバちゃんとコロ助の打撃は凄まじいし、キルマークはこのペアが最多。

 ツグミもご主人から、遠慮なくMPを使っていいよと言い渡されて。喜んで『土蜘蛛』を使用しているけど、やはり慣れない魔法だけあって連打はムリ。


 それでも硬い敵を簡単に屠る魔法を得て、ツグミは上機嫌である。そんな各々のテンションの高さから、この最短記録は生まれたのかも知れない。

 この奥が推定ボスの間だと言うのに、何とも遠慮の無い一行ではある。護人は多少呆れながら、それでも休憩を挟んで進行を指示する。

 まぁ、探索の時間が短くて済むのは良い事だと納得して。


「でも今回は、まだ1時間掛かって無いよ、護人叔父さん……やっぱり前回新しく覚えたスキルの影響かもね、それか敵との相性がよっぽど良かったとか?」

「多少はその影響はあるかもなぁ、チームの地力がついて来たってのもあるかもだし。さて、みんな休憩はもう良いかな?

 次はダンジョンの構造的に、ボス戦の可能性が高いな。何がいるかは、おおよそ想像はつくけど」

「間違いなくゴーレムだよね、あとは宝箱は絶対にミミックだよ、叔父さん! この萌の額の宝石を賭けてもいいよっ、絶対に間違いないからっ!」


 賭けの対象にされた萌は、哀れにクゥーンと鳴き始める始末。仔ドラゴンって鳴くんだなと、護人は何となく感心しながら。末妹をたしなめつつ、前進を告げる。

 それに張り切って応じるハスキー軍団、萌の足取りは心なしか重そうだったけど。とにかく遺跡の最奥の間にいたのは、派手な赤褐色のゴーレムが3体。


 どいつも3メートル以上と巨体だが、集団を見慣れた一行には物足りなく映ったのは確か。そして奥に置かれた宝箱に、胡乱な視線を投げ掛ける子供たち。

 今回は前に出るかなと、護人の宣言に追随するルルンバちゃんとコロ助。戦闘はしかし、その1人と1匹と1機で3分と掛からず終了してしまった。

 その後に、武器を構えて宝箱の前へと進み出る姫香とツグミのペア。


 香多奈も姉に『応援』を送って、さあ来いと宝箱に語り掛け。宝箱イミテーターは、そんな求めに応じて已む無く奇襲を捨てての戦いに身を投じるも。

 こちらも結局、3分も掛からず潰される破目に。何しろ、末妹のバーカとかアンポンタンとかのヤジが酷かった。あれでも一応、『叱責』効果はあったみたい。


 そんな中ボス達からは、赤レンガの束とか魔石(中)がドロップ。宝箱ミミックからは、鑑定の書が4枚にスキル書が1冊、魔結晶(大)が3個。

 更に魔玉(風)と魔玉(闇)が7個ずつと護りの玉石が2個、硬化ポーション800mlとエーテル800ml。それから長剣が1本と大きな鍵が1個ドロップした。

 鍵については、これで無事に4つ目の入手である。


「おおっ、これで鍵が4つ集まったね……これでようやく、真ん中の扉が開くのかな?」

「そうだろうな、恐らくはこのダンジョンの大ボスがいると思うけど。どの程度の強さなのかは、まぁ……中ボスの倍くらいを想像しておくべきかな?」


 それなら大した事無いねと、無慈悲な通達をして来る末妹。まぁ、護人も言い方が悪かったかなと反省するが、これ以上の上手い言い回しは思い付けない。

 油断しちゃダメだよと、ミケを抱っこしながら紗良の忠告。姫香はまだ雑魚の群れは出て来るのかなと、道中の大変さを予想しているみたい。


 確かに、そっちの方が大変ってパターンもあるかも。それなら気を引き締めないとねと、香多奈も納得模様。ペット勢も、まだ揃って余力はありそうだ。

 そんな訳で、一行は退去用の魔方陣を使って、5つの扉が並ぶフロアへと舞い戻って。準備が整ったら、推定ボスの層へと突入するよと護人の言葉に頷きを返し。

 2日掛かりでの攻略で、ようやく推定ボスの間へ。





 ――はてさて、そこには一体ナニが待ち受けているのやら?








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