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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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ようやく前回の残りの攻略に勤しむ件



 “大変動”後のこの時代にも、祝日と言う概念は存在すると言うか残っていて。そんな訳で、香多奈の小学校も休みの2月の中旬の休日に。

 ようやく前回の“ダンジョン内ダンジョン”の、残りの攻略に取り掛かる事に。何しろ週末は、既に自治会依頼の地元のダンジョン間引き案件で埋まっている。


 そっちも当然大事だし、護人としても手を抜くつもりは無いのだが。探索も力を入れ始めると、何故だか忙しなく感じてしまう今日この頃だったり。

 これで田んぼや農作業が本格的に始まると、一体どうなる事やらである。来月の終わりからは、ボチボチ苗を作り始める作業も開始する予定。

 山の上だと、ちょっと早いのでビニールハウスの作業となるけど。


 そんな訳で、出来るなら妖精ちゃんのお題は2~3月で終わらせてしまいたいのが実情である。春になると予知の騒動がどうなるか不透明だし、こちらも狩り出される恐れが。

 そんな心構えで、今回は午前中からの探索活動となった次第。とは言え、さすがに1日中潜るのは、子供たちの体力が到底持たないだろうけど。


 とにかくそんな感じで、時刻は午前の10時過ぎ。良い時間になったら、お昼を食べに自宅へと戻れる立地の敷地内の“鼠ダンジョン”前に集合している一行である。

 忘れ物は無いねとチェックしながら、前回との変更点もお互いに報告し合うのは忘れない。まずは姫香が元気に挙手して、ツグミが新スキル『土蜘蛛』を覚えたよと報告。

 その表情は、相棒のパワーアップにとても誇らしげ。


「これでツグミも、派手系の魔法でバンバン敵を倒せるよっ! でもお母さんのレイジーには、まだまだ敵わないかな?」

「こっちも報告あるよっ、えっとね……茶々丸の装備を紗良お姉ちゃんが良くしてくれたのっ! それからルルンバちゃんの、小型ショベルに色々と追加装備がくっ付いたよっ!」

「茶々ちゃんの装備ですけど、飛竜の鱗を2枚ほど忍者服に縫い付けておきました。それからちょっと嫌がったけど、防御の上がるダイアの指輪を指に嵌めて貰いました」


 律儀にそう説明する紗良だけど、確かに茶々丸は指の違和感を気にする素振り。それなりに値段の張る魔法アイテムなので、無くさなければ良いのだが。

 とは言え、それを恐れて何もつけないのもちょっと怖い。来栖家的に魔法アイテムは最近は過剰気味なので、茶々丸も大いに活用して貰いたいのが本音である。


 そしてルルンバちゃんの魔改造だが、新人職員の江川の協力で割と凄い事に。まずは小型ショベルの前方下部の排土板がより大柄になって、まるで盾のように。

 それからハンドルが水平になって、そこに魔銃を2丁取り付ける事に成功。これはドローン形態でも使っていたが、ドローンの機動性あっての魔銃の取り扱いだったのだ。

 小型ショベル形態では諦めてたのだが、ハンドルなら自在に回る盲点が。


 それから割と強力な作業用ライトとか、これまた座席近くにロボット用のアームとかを強引に取り付けて。それもルルンバちゃんの《合体》スキルは、自分の腕と認識していて。

 後付けのロボット用アームで、鞭を操って見せる有能振り。ちなみにこのアーム、江川が伝手で拝借したモノらしい。


 しかも防水ペイントで、色まで統一してくれて香多奈も大喜び。3時間余りの力作は、江川が就業時間外での無償労働の結果である。

 来栖家も、家族ごと夕食に招いてその労働にむくいたのだけれど。奥さんも性格の良さげな人で、子供も3歳とヤンチャ盛りで。

 そんな彼は、ハスキー達やミケに終始大興奮してはしゃぎ回っていた。


 そんな余談は置いといて、これでチームのパワーアップ報告は終了……の前に、紗良が申し訳なさそうに護人の薔薇のマントを指し示した。

 どうやら姫香が使おうかなと言っていた“墓地ダンジョン”ドロップの『吸血のマント』なのだけど。厳重に保管していた筈が、隙を突かれて持ち出されたらしく。


 その後の顛末は、まぁ無理に語らなくても分かってしまう。つまりこの食いしん坊は、また他のマントを食べて恐らく能力を吸収したのだ。

 それを聞いた護人は、呆れた表情で自分の視界から逃れようとする薔薇のマントを睨もうとして失敗。姫香は別にいいんじゃないかなと、失った新装備に未練は無い様子。

 そんな訳で、その話は取り敢えずは一件落着の流れに。



「さて、後は装備の変更点やら忘れ物は無いかな? この前集めた鍵は、紗良が持ってるんだっけか……アレが消えてなくて、本当に良かったよな」

「また4時間以上掛けて集め直しなんて、確かに真っ平御免だもんね。それじゃあ入ろうよ、護人叔父さん」

「茶々丸に萌、今日もお仕事頑張るよっ!」


 香多奈の号令に、張り切り模様の新人ズである。ルルンバちゃんも、新色ボディを見せびらかすように先陣切って前進を始めている。

 それに促されるように、ハスキー軍団もダンジョンに突入。他の面々も寛ぎながら、まるで観光気分なのはアレだけど。とにかく辿り着く、2層の“鬼のダンジョン”。


 ここも特に言う事も無い、そのまま通称0層に辿り着いて。レイジーが一度振り返って、前回見踏破の最後のスイングドアを先頭で潜って行く。

 それについて行く面々は、ようやく探索モードのスイッチが入った様子で。周囲を覗いながら、未開の地の情報収集に余念がない。

 そこはどうやら、ゴリゴリの遺跡タイプの模様。


 鮮やかな壁やそれ程圧迫感の無い天井、柱が等間隔に並んでいて壺や石櫃せきひつまで置いてあるのが見える。香多奈が目敏く、通路の奥に宝箱が置いてあるのを発見。

 他のフロアとは、明らかに違う仕様ではある……それを素直に信じて良いかは別として。敵はどこだろうと見渡すと、その宝箱を置いてある小広場にようやくの敵影が。


「今回はパペットがメインかな、これまた数が多いけど……ゴーレムが後ろに混じってるね、どんな縛りだろう?」

「う~ん、多分だけど魔法生物とかそんな感じなのかな?」


 自信なさそうに呟く紗良だが、現時点ではそんな感じにしか思えない。とにかく敵が出たんだから蹴散らそうと、姫香が言う前にルルンバちゃんが前進を開始。

 釣られてハスキー達も前に出て、今回も手柄は早い者勝ちの風潮が。まぁ、敵が手強いと判断したら、ハスキー達はしっかり護人の作戦待ちをしてくれるので。


 つまり目の前の敵たちは、数が多いだけの雑魚判定みたいだ。護人も敢えて口出しせず、チーム員たちの活躍を見守る構え。姫香も茶々丸を伴って、戦いに参加する素振り。

 そしてやっぱり、硬い敵相手に対してルルンバちゃんは強かった。コロ助もツグミの《空間倉庫》から出して貰った白木のハンマーで、パペットに対して割と無双中。

 そしてツグミだが、新スキルの『土蜘蛛』を積極的に使っていた。


 これはどうも土系の魔法で、岩で出来た数本の捕獲顎が、地中から飛び出す感じの攻撃呪文みたい。威力はまずまずで、何より硬い敵もこれで粉砕出来ている。

 便利な支援魔法ばかりで、強力な攻撃魔法を持たなかったツグミには好ましい事態には違いなく。尻尾を立てて嬉しそうに、戦場を飛び回っている。


 敵の雑魚のパペット兵士は、瞬く間にその数を減らして行って。ゴーレムに張り付いたルルンバちゃんが、それを勢いよく粉砕し始めている。

 姫香と茶々丸も、何とか数体の敵を仕留める事に成功。ちなみに出遅れた護人は、全くのゼロと言う結果に。とは言え、背後から転がって来た壺をブロックして驚き顔。

 良く見れば、通り過ぎた石櫃も動き始めている。


「何だ、イミテーター的なモンスターが混じってるぞ! そっちの宝箱もそうじゃないか、気を付けて!」

「あっ、本当だ……楽しみにしてたのに酷いっ!」


 香多奈の批難の声が響く中、戦闘はもう少し続く様子。浮遊して来た大きな壺は、盾で抑えて薔薇のマントの拳の一撃で破壊されたけど。

 石櫃はそうも行かずに厄介そう、ただし中から何か死霊的なモノが出て来るって事は無さそう。向こうでは宝箱のミミックが、大暴れして姫香と茶々丸が戦闘中。


 壊すのが大変そうと思っていた巨大な石櫃だが、護人の『掘削』で最後は穴だらけで終了。石の棺に閉じ込めようとする向こうの動きは、かなり不気味だったけど。

 向こうもミミックを、2人掛かりで穴だらけにして勝利を叫んでいる所。姫香はともかく、茶々丸は今日もご機嫌で調子は良さそう。

 姫香の指示も、しっかりと聞いてくれている様子。


「香多奈、ミミックが財宝落としたわよ……今日も魔石は馬鹿みたいにたくさん取れそうだし、お金は儲かりそうだからいいじゃないの」

「そうだねぇ、今日も頑張って魔石拾おうっと……叔父さん、それ何持ってるの?」

「石レンガ……かな? さっきの石櫃が、1ダースほどドロップしてくれたよ」


 そのドロップはあんまり嬉しくないねと、己の欲望に忠実な末妹である。そんな文句を言いながらも、茶々丸と一緒に魔石を拾ってオッケーのサインを出す少女。

 それを見て、ハスキー軍団とルルンバちゃんは再び進撃を開始する。


 そして次の広間にも、待ち構えるパペット兵士とゴーレムの混成軍。今回は岩の塊にしか見えないロックも混じっていて、全体的に硬そうな雰囲気だ。

 『掘削』スキルを覚えた護人はともかく、白木のハンマーをコロ助に取られた姫香は思案顔。まぁルルンバちゃんもいるし、自分はパペット兵士を相手にすれば良いかと切り替えて。


 今回も、茶々丸を誘って敵部隊の左翼側から攻める構え。中央はルルンバちゃんが受け持ち、右翼はハスキー軍団が早くも蹴散らし始めている。

 姫香を追うように、護人も今回は戦闘に参加の構え。周囲を見回しても、待ち伏せ系の敵の姿は無かったので。とは言え、何かあれば知らせてくれと伝言は忘れない。

 そして今回も、殲滅速度は滅茶苦茶早い気が。


 敵は魔法生物のパペットなので、来栖家チームに容赦が無いってのも要因の1つかも。多くの敵を相手にするのを、慣れて来たってのもあるかもだけど。

 とにかくルルンバちゃんがゴーレムと殴り合いを始める頃には、パペット兵士はほぼ戦場から姿を消していた。護人とコロ助が、残ったロックを粉砕して回っている。


 ツグミの覚え立ての『土蜘蛛』は、硬いロックにはあまり効果が無い様子。もう少し慣れて魔法が洗練されて来れば、或いは威力も上がって来るだろうけど。

 今は『影縛』で、仲間のサポートに徹している様子。そして新生ルルンバちゃんだが、新装備の魔銃や新アームはここまで使わず仕舞いと言う。

 ひたすら作業用アームで、ゴーレムをしばき倒している。


「ルルンバちゃんの戦い方、前とあんまり変わらないねぇ……せっかく色々くっ付けたのに、もっとバンバン魔銃を撃っちゃえばいいのに」

「魔銃を使っても、ゴーレムには効果ないだろうしな。アームの方が効果的だって、本人も分かってるんだろう。

 そら、片が付いたみたいだぞ」


 後衛に戻って来た護人と、香多奈の会話も通常のんびりモード。敵影がいなくなったのを確認して、香多奈がさっそく魔石を拾いに駆けて行く。

 今回も敵の数は50体近くいたので、魔石を拾うのも一苦労だ。たまに魔玉(土)が混じっていて、紛らわしいなぁと少女の呟き。


 護人と姫香は、さっきみたいな不意の襲撃に備えて待機モード。茶々丸と萌が、代わりに魔石拾いのお手伝い、萌は短い前脚でなく、長く垂れた耳を器用に使っての回収作業。

 いつの間にそんな技を覚えたのと、香多奈もビックリ顔で見守っているけど。誇らしげな萌を見るにつけ、役に立ちたい思いが進化を促したのかも。

 いや、ドラゴンの進化としてはどうかなって思うけど。


 結局は不意打ちの類いも無く、魔石拾いも無事に終了。そして少し進んだ先に、次の層への下り階段を発見した。この辺は、他の扉と構成は一緒である。

 それはある意味安心だが、敵の数は安心出来るレベルでは無いと言う。そしてやっぱり、遺跡フロアに待ち構えるのはパペット兵士とゴーレムの混成軍。


 今回はそれに、ドローンタイプの兵器が数機ほど加わっている様子。先ほどの層で見た石櫃や壺も、広場の端に何かの祭壇っぽく飾り立てられて置かれてある。

 賑やかだねぇと、姫香の感想も的を射ている気が。そんな情緒もへったくれも無く、進撃を開始するマイペースなルルンバちゃん。

 そして思い出したように、魔銃を使用してドローンを1機撃ち落としに成功。





 ――この層の戦いも、熱くなりそうな気配がヒシヒシ。










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