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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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再稼働のダンジョン探索に凛香チームが向かう件



 2層の探索も順調で、この層から出て来た竹製のパペットをほぼ1人で倒して行く隼人。何と言うか剛腕だ、来栖家チームとは全く別の戦い方に感心する姫香。

 もっとも来栖家チームは、遊撃のハスキー軍団が優秀過ぎるって点もあるのだが。それで本体の自分達に、敵が回って来ない事も間々あったりするし。


 凛香チームは逆に、隼人に掛かる負担が大きいのが気になる点ではある。凛香も短剣の二刀流で、削り力はまずまずなのだが。アタッカーと言うよりは、足止め役って感じで。

 敵を倒すとなると、隼人の武器か譲司の『氷槍』魔法の役割になっている。


「この層も全部で9部屋かな、情報動画とほぼ一緒の間取りだね……敵の種類も今の所一緒だし、ペースも悪くないね」

「そうだな、キノコのモンスターもそんな多くなくて助かってるな。アレでも毒の胞子が、後衛まで届いたらと思うと怖いからな」

「一応は解毒ポーション持って来てるけど……小鳩の『風癒』じゃ、毒は治んないもんね」


 チーム内の情報の遣り取りも、まぁ問題無い感じで安心なレベル。それより姫香は、足止めに徹しつつも特訓でずっと試している《豪風》の単独飛ばしに挑戦中。

 今まで戦闘では、自らの身体をスピンさせて《豪風》を発動させていた姫香だったけど。それを鍬の先端の回転だけで出せるように練習していたのだ。


 今回の同行で、それを軽く試していたのだが……やっぱりこの程度の威力では、敵に致命傷は負わせられないかなって感じ。良くて足止め程度だ、練度がまだ足りてない。

 それでもモンスター相手に試せたのは収穫だと、1人で納得しながら進んでいると。ツグミも同じく、スキルの使用法を色々と試している模様なのが面白い。

 姫香の視界の端っこで、影だか闇だかがぴょこぴょこ動いている。


 それでも探索は、真面目にこなす気バリバリのこのペア。今回はサポート役だけど、凛香チームに足りてない前衛役とか罠感知の役目は果たす気満々。

 それが功を奏したのかは定かではないが、道中の敵の退治はそこそこ順調。そして3層の大猪と大きな蜂の巣トラップも、無事に退治してドロップ品を回収。


 猪肉と蜂蜜のゲットに、素直に湧く凛香チームの面々。魔石以外のドロップなんて、滅多に見た事が無いらしい。しかも食料品の回収は、素直に嬉しいと来てるし。

 まだ喜ぶのは早いよと、姫香は以前見付けた中庭の探索をツグミにお願い。ツグミは探すまでも無いよと、3層の真ん中の小部屋へと皆を導いてくれて。

 そこには敵の姿の無い、本当に中庭と見紛う風景が。


「わわっ、凄い……綺麗だけど、植生とかは滅茶苦茶なんだね? ゼンマイや細筍も生えてるけど、ミョウガやしめじも生えてるよ。

 あっ、この大甕おおかめはひょっとしてっ?」

「えっ、この中身が全部ポーションなのかなっ? 凄い量だね……でも全部取ってもいいのかな、姫香姉ちゃんっ?」

「どうだろ、私たちの時は容器が無くて持って帰れる量は少しだったけど。今日は容器も充分持って来てるし、魔法のリュックもあるもんね?」


 そう、今回は来栖家からレンタルで、魔法のリュックも貸し出しているのだ。それを背にする慎吾は、実はやや緊張気味だったり。

 それでもリュックから容器を取り出す慎吾と、大甕からポーションを掬い取り始める小鳩。他の面々も採集に熱を入れており、その表情は総じて楽しそう。


 こんな充実した探索もあるんだと、小鳩や譲司が口にしているけど。運が良ければもう1部屋くらいは見付かるからねと、姫香の言葉にポーション掬いを中止する小鳩。

 帰りにも寄れるんだし、容器を全て使うのはその時でも良いと思ったのだろう。他の面々も程々に採集を終えて、それじゃあ再スタートしようと凛香の催促に。

 チームは素直に従って、いざ次の層へ。


 そして4層は、竹槍を備えたパペット兵士が数体出現。キノコ型モンスターや大蜂に混じって、嫌なコンビネーションを発揮して来るのだが。

 隼人はさほど苦労するでもなく、その攻撃を避けて始末して行く。サポートの凛香も短刀で、サクサク敵を行動不能に追い込んで行き。


 ボウガンを所持した慎吾が、止めを刺す感じのコンピプレー。彼の『投擲』術も、遠隔攻撃の補正に役立っているようで、乱戦でも敵を外す事も無くってグー。

 そしてパペットのドロップした竹槍を前に、これは持って帰るのと尋ねる慎吾。凛香がそれを眺めて、一応は持って帰ろうと口にする。

 穂積へのお土産には良いかもねと、小鳩も横から口添え。


 このチームも、どうやら発言力に関しては女性陣の方が強いのかも。姫香は内心でそう思いつつも、余計な口出しは極力しない方向に。

 そして姫香の目論見通りに、この層にも中庭の仕掛けを発見して盛り上がる一行。ここまで来ると、ある意味で宝物庫に近いモノがあるかも。


 ここでも壁際に、子供がしゃがんで入れる程の大きさのかめが設えてあった。覗き込んで見るに、色合いからしてMP回復ポーションだろう。

 ここまで大量のポーションを、一度に見た事のない子供達は大興奮。全部売れば幾らになるのかなと、早くも金感情にはやる者も一部で始めている始末。

 ただし、随分と持って来た容器でも全て持ち帰りは無理っぽい。


「あ~んっ、姫姉に言われて家の容器を全部持って来たのに、それでも足りそうにないよっ。でもまぁ、また1か月後くらいに来れば丁度良いのかな?」

「そうだな、それでどのくらい回復するかチェックすれば良いし。ってか、久々に大当たりの探索が出来そうだな……後は中ボス部屋のドロップと、宝箱次第かな?」

「あっ、そうか……まだ中ボス部屋まだだった。何か5層前にこんなに儲けちゃうダンジョンなんて、初めてだよねっ♪」


 浮かれる小鳩と、割と冷静な隼人と言う構図は珍しいのかも。これでも隼人は“変質”の影響で、一度スイッチが入るとバーサーカー状態に陥ってしまう。

 そうすると敵も味方も無く攻撃してしまうので、チームとしては大きな負荷を抱える事に。今回はツグミがいるので、その点のサポート体制は万全なのだが。

 捕縛系のスキルが無い状態では、懸念が残ってしまうかも?


 とにかく4層の中庭も、MP回復ポーション汲み放題に加えて、アケビやビワの木々もその周辺に。少し離れた場所には、ブルーベリーの木も数本あるみたい。

 容器が全く足りないよと騒ぐ小鳩だが、更にその奥に発見した山芋や舞茸はそのまま魔法のリュックの中へ。そんな感じで、そこから暫くは採集を真面目にこなすチーム員達。


 暫くはその収穫作業に従事して、満足した感じで集合を果たす面々。ここまで1時間半ほどの経過で、戦闘に関してはそれ程に時間を掛けてはいない。

 気分的には、少々危険な山に採集に来た感じ程度な気もするけど。次の層は、いよいよ中ボスが待ち受けてるぞと気を引き締める発言の凛香である。

 チームの皆はそれに頷き、再び探索の開始。



 4層の残りの部屋も順調に踏破して、一行は5層へと到達を果たした。前回のオーバーフロー騒動からの来栖家チームの探索では、ここが最終層だった訳だけど。

 当然ながら半年の休眠中に、ダンジョンも成長を遂げている事だろうし。この更に下の層も、恐らくは出来上がっているとの推測での探索である。


 各々、中ボス戦前に装備の点検を行っていて。今回から、来栖家からの貸し出し品も少し増えている。例えば魔法使いの譲司は、『木彫りの指輪』と言うMP量がアップする魔法アイテムを借りている。

 今回は運よくMP回復ポーションをゲット出来たけど、普段の探索ではそう行かない事も多いので。単純にMP量の確保は、戦略的にも有り難いチーム事情である。

 特にまだ成長途中の譲司は、MP総量もあまり多くないのだ。


 ただし彼の持つ『氷槍』と言う攻撃魔法は、ダメージ源としてはかなり優秀で。同じ系統のスキルを得た紗良とも、最近は一緒に特訓したりもしていて。

 精密性や威力に関しては、前より大幅に成長を遂げている譲司である。それは置いといて、彼の年上の紗良に対する淡い恋心が実るかどうかは別の話。


 それから隼人も、防御力上昇にと『雪狼のナックルガード』と言う魔法アイテムを新たに借りている。耐寒アップはともかく、耐魔法と俊敏アップが優秀な有り難い装備で。

 ここまでの道中に使い心地も試せているし、防御面でも問題無し。


 そんな訳で、張り切って中ボス部屋の扉を開け放って飛び込むメンバーたち。中に待ち受けていたのは、予想通りの4本腕の強そうな大熊だった。

 それからお供の大猪が3頭いて、これをまずブロックしないと後衛に被害が生じてしまう。隼人と凛香、それから姫香とツグミが前に出てとにかく戦線を構築に動き出す。


 隼人は積極的に前に出て、中ボスの大熊を相手取るつもりの様子。大猪に得意の突進をさせないようにと、残りの壁役も前へと進み出る構え。

 あちこちで最初の衝突が起こったが、幸いにも崩れる箇所は無かったようだ。事前に『打ち出の小槌』でのステアップ付与もしているし、対策も一応は万全だ。

 そして戦況を見据えて、後衛のサポートが飛び始める。


 小鳩は分かり易く、『光導』でのピンポイントの敵の目潰攻撃だ。これを中ボスの大熊相手に仕向けていて、隼人のサポートを頑張っている。

 慎吾は、来栖家から借り受けた『混迷の杖』での混乱付与でのサポート中。特に動物系のモンスターには効果が高く、ツグミの前の大猪は攻撃を忘れる素振り。


 譲司は凛香の前の大猪をターゲティングしていて、隙あらば止めを刺そうと隙を伺っている。凛香はパワーこそ無いけど、敵を翻弄する技はチーム1高いと自負していて。

 その自信の源が『幻術』スキルと、同じく来栖家から借り受けた『鬼の額当て』の奇眼付与効果の相乗効果である。これで敵を見つめると、高確率で敵はあらぬ方向を攻撃し始めて。

 『幻術』の罠へと、すっぽりはまり込んでしまうと言う。


 そこを譲司の『氷槍』でのダメージ付与と、自身でも短刀での切り付けでの止め差し。隣の姫香はもっと単純に、『圧縮』での突進止めから愛用の鍬で首を切り落としていた。

 ツグミも大猪の首筋に咬み付いて、ひっくり返して息の根を止める所作はこなれていて素晴らしい。そして中ボスを相手取っていた隼人も、敵の片腕2本を切り落としての必勝態勢。


 手助けの必要もない感じで、数分後には大熊も魔石(中)へと変じていた。大猪は魔石(小)を落としていたし、スキル書も1枚順当に拾う事が出来た。

 大喜びで勝利を祝うキッズチーム、そして全員で大きな宝箱の前へ。姫香がツグミに確認すると、罠は無いよの何となくのサインを感じ取れたので。

 開けて良いよと、凛香へとゴーサインの通達。


 そして中から出て来たのは、鑑定の書が4枚と熊革のベストとマント。どちらも武骨と言うか素朴な装備だが、魔法アイテムなら割と嬉しいかも。

 それから魔玉(火)と木の実がそれぞれ4個ずつ、薬品では竹の筒に入ったMP回復ポーションが600mlと解毒ポーションが800mlずつ。


 後は素材らしき猪の立派な牙が3本と、笹の葉に包った猪肉が一塊ほど。宝箱が銅色だったので、そんなに期待はしていなかった面々だったけど。

 このアイテムの内容なら、まずまずと言えるかも。



 それよりやっぱり、更に下へと続く階段を発見して協議に入る一行である。ここまで2時間程度なので、キッズチームと言えど余裕はあるのだが。

 熱意はあるようで、年少の慎吾や譲司からもっと先に進もうとの声は上がっている。ただ下手に進むと、ひょっこりとダンジョンボスに遭遇する可能性が出て来る訳で。


 そんな相手と戦うのは、実は凛香チームの歴史には無い事態でもあり。中ボスとどっこいの強さなら、まぁ何とでもなる戦力は有しているとは言え。

 慎重になるなら、ここで引き返すのもアリではある。ただまぁ、凛香も隼人もどちらかと言うとイケイケの性格だったり。結局は、姫香とツグミもいるしもう少し進む事に。

 その結論に、もちろん姫香も否は無い。


「そうだね、ダンジョンボスと戦うのも1つの勉強かも……まぁ、敵のレベルが急に強くなる可能性も、実は大いにあるけどね?

 今回は私とツグミもいるし、その辺は任せておいて」

「頼りにしているよ、姫香……この先は幾つ増えてるかな? 1層って事は無いかな、2層か3層くらい?」

「その程度なら、おチビちゃん達の体力も持つだろうしな。小鳩も譲司もしっかり、MP回復しておけよっ?」


 おチビちゃん呼ばわりされた小鳩と譲司から、隼人と歳は変わらないでしょとの非難の声が。この3人は14歳と同学年で、特に仲が良い印象がある。

 その辺は訓練中に良く見掛ける掛け合いで、つまりはリラックスしている良い証拠だ。これなら後2~3層は平気そうと、姫香も安心して隣の相棒を優しく撫でる。

 撫でられたツグミは、嬉しそうに尻尾を振る仕草。





 ――休憩は終わり、ここからはデータの全く無い6層の探索だ。







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