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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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トロルの砦やワイバーンの巣にお世話になる件



 目の前の砦はトロルの歩哨が立っていて、それが3メートルを超すサイズの毛むくじゃら巨人。中にも結構な戦力がいそうで、いかにも手強そうな雰囲気。

 それでも間引きに入った探索なのだ、行けそうなら殲滅に動くべし。何より前の層で宝箱をゲットしていないと、香多奈の後押しがうるさいので。


 どうやって攻略しようかと、子供達に作戦を窺う護人だけど。戦力をまず増やそうよと、レイジーを撫でながら姫香の提言。なるほどと、薪を集め始める子供たち。

 ちなみに初期の頃は、ダンジョン内の間引きを火攻めで行おうなんて提案もされたそう。特にこんな自然満載のダンジョンなどで、行われた前例があったみたいだけど。

 ダンジョンルールのせいなのか、全く燃え広がらなかったそうで。


 そう説明する紗良は、普通の山で火遊びは駄目だよと香多奈への注意に忙しそう。は~いと素直な返事の末妹は、起きた焚き火にじゃんじゃか薪を継ぎ足している最中。

 そこは不安な護人だが、少女の常識に期待するしか。そして事態は進行中、上がる炎に向こうの敵陣も気が付いた様子で騒ぎ出している。

 そしてトロル兵の何体かが、様子を見に来た様子。


「来たっ、レイジーお願いね……前に出て来た奴らは、私たちで相手するから!」

「姫香お姉ちゃん、頑張って!」


 護人も盾を構えて前進、慌てて前に出て来たトロル兵と対峙して戦闘へと突入する。姫香もツグミのサポートを得て、敵の1体と斬り結んでいる。

 コロ助も今回は好きに動いて良いと言い渡され、一緒に攻め入る気満々である。そのサポートに、ルルンバちゃんが鞭を振り回して挑んでいる。


 砦の周辺は途端に騒然となり始め、それに止めを刺したのがレイジーの《狼帝》だった。香多奈も魔玉(炎)でお手伝い、その結果過去最高に産み出される炎の狼の群れ。

 燃える炎のせいで、ハイテンションで『応援』を振り撒いてる香多奈をいさめる紗良。MP切れを心配した紗良は、レイジーと香多奈にMP回復ポーションを用意している。

 そんなサポートもあって、出現した炎の狼は何と10匹と過去最多!


 それが群れを成して砦攻めに参加を始めると、混乱は更に高まった模様で。レイジーもMP回復を悠然と済ませると、その群れを統率するために最前線へと参加を決め込む始末。

 突進して来たトロルをようやく倒した護人と姫香は、そのままの勢いで砦攻めへと参加する。トロルの砦は岩垣も取り入れられて、強度は今まで見た中で一番かも。


 炎の狼に続いて2番目に砦へと突入したのは、コロ助とルルンバちゃんのコンビだった。砦の扉は開け放たれたままで、中の集落は既に混乱模様。

 こちらに気付いたトロル兵と、巨大化したコロ助が戦闘に突入する。


 続いて姫香とツグミのコンビが、入り口付近にいたトロル兵を始末しながら殴り込みをかけて。入り口が混まないようにと、すかさず左の通路を選択する。

 トロルの集落はどの道も広く、建物もやたらと大きな造りだ。住人が巨人揃いなので、その仕様は仕方がないとは言え。どこか自分が縮んだ気がして、不思議な気分の姫香。


 その後に続いて、護人とレイジーも砦への侵入に成功していた。今では集落の各所で戦闘の気配が、炎の狼は頑張ってくれている様子。

 その内の1体が消滅する気配を察して、レイジーはそちらへと駆けて行く。それに続く護人だが、前方の集落中央に大物の気配を感じて警戒態勢に。

 そこにはトロルのボスらしい、4メートルを超す巨人が。


 肌の色も違うし、装備も立派である。向こうもこちらに気付いたようで、戦闘の火蓋は切って落とされた。巨大な大斧が、護人へ向かって振り下ろされる。

 それを辛うじて盾で受け流し、大きく出来た隙を突いての“四腕”での反撃。レイジーの加勢で、更なるダメージを与えられたボストロル。


 思わず大斧を取り落として、そこに追加で突っ込んで来る炎の狼が3体と言う豪華リレー。顔面や胸元に大きな火傷を負って、たった1分も持たずに戦意喪失のボスだったり。

 このボスが意外と見掛け倒しだったのか、それともレイジーがパワーアップしているのか。定かでは無いけど、考える間にサクッと止めを見舞う護人。

 敵はまだ周囲にいるのだ、時間を掛けている暇はない。


 とは言え雰囲気は掃討戦で、レイジーが産み出した炎の狼もまだ半分は生き残って奮闘中だ。姫香たちも順調に、敵兵を減らして集落を移動している様子。

 その反対側のエリアは、コロ助とルルンバちゃんのペアが善戦を繰り広げていた。いつの間にか砦の入り口に後衛陣が詰めていて、ミケも掃討戦のお手伝いに参加している。

 とは言え、向かって来た敵を雷でしばき倒しているだけだが。


「香多奈、危ないからそれ以上はまだ進んじゃ駄目だ。敵を退治し終わるまで、大人しくそこで待ってなさい」

「は~い、叔父さん……コロ助っ、頑張って宝箱探し出してっ!」


 丁度オーク兵の1体を倒して、中央広場に出て来たコロ助に向けて。ご主人からのご無体な命令が、それに反応するのは何故かルルンバちゃんの方が先だったけど。

 コロ助も、負けてたまるかとすかさず身を翻して去って行く。もうしばらく、この砦の制圧には時間が掛かりそうだ。護人とレイジーも、掃討戦へと加わって行き。


 暫く後に、ようやく制圧したよと後衛に安全確保の声が掛かって。同時に宝箱発見の報告が、執念を発揮したコロ助から。それを残念そうに、上空で見守るルルンバちゃんだったり。

 ちなみにトロルたちは、ほとんど魔石しかドロップしなかった。ボスのみ巨大な大斧をドロップしたが、大き過ぎて持ち帰りを断念する姫香。

 その分、宝箱の中身には期待が大である。


 そんな宝箱からは、金貨が28枚に銀貨が35枚、それを数えながら鞄に仕舞い込む幸せそうな姉妹である。ついでに薬品はエーテル700mlに未知の色合いの奴が1瓶出て来た。

それから腕輪が1つに、これまた未知のプレートが1枚。後は懐中電灯やピッケル、ザイルロープひと巻きや登山用ヘルメットなどの登山用品が。


 腕輪とプレートは魔法のアイテムらしく、妖精ちゃんの報告に子供達はご機嫌模様。紗良も誰も大きな怪我も無く砦攻めが終わった事に、ホッと胸を撫で下ろしている。

 ここまで既に4時間ちょっと、時間的には午後の1時を過ぎた辺りだ。10層に到達するのが早いか、攻略限界時刻の2時が来るのが先か。

 微妙な所だが、焦らず進む事に決めている護人である。




 そんな訳で、攻略の終わったトロルの砦には、しっかりワープ魔方陣が湧いていたのだけれど。それを無視して、下りの山道を歩き始める一行である。

 この広域ダンジョンは、少なくとも20層以上あるのが確定しているそうなので。幾らA級ランカーのいるチームでも、たった半日で攻略は不可能である。


 つまり間引きは念入りに、山道を下る間にも大猪やらオーガやらに遭遇して割と大変な道中だったり。本当に出くわすモンスターがほとんど中型以上、侮れないダンジョンである。

 それでも8層の下り道は、何とか20分と少しで定期湧きのワープ魔方陣に到達出来て。大熊と出会った時には、香多奈が招いたと批難轟々を浴びる少女だったけど。

 どの道、出会う敵はそんなサイズ感の奴らばかりだったとも。


「それでもさっきの熊のサイズ感は異様だったよ、香多奈が呼んだせいでしょうが! あれならまだ、トロルの群れを相手してた方がマシ!」

「そんなの私のせいじゃないじゃんか、お姉ちゃんのアンポンタンっ!」

「う~ん、まぁ……でも香多奈を責めるのは筋違いだぞ、姫香。ってか下らない事で喧嘩は止めなさい、2人とも」


 隙あらば喧嘩を始めようとする姉妹を宥めつつ、休憩を終えていざ9層へと移動をこなして。いよいよ終盤戦だぞと、チームの気を引き締めるのを忘れない護人。

 今度はどっちの道を行くか、束の間迷う素振りを見せるハスキー軍団に。今度は川沿いの木板の通路を進もうと、元気に告げる末妹である。


 何にせよ、ルートが決まったのを喜びつつ先導を始めるハスキー軍団。再び出現を始める、水の中からやって来る大蛙やオオサンショウウオに加えて。

 崖の草木の隙間からは、大蜘蛛が不意を突いての襲撃を仕掛けて来て。更には10メートルサイズのワイバーンも、間隙をついて襲い掛かって来る始末。

 それも何とか、チームで分担して退治して行く。


 一番酷かったのは、やはりミケの《魔眼》を喰らって墜落死したワイバーンだっただろうか。空の王者の威厳形無しである、その死に様に何となく黙とうを捧げる子供たち。

 ミケへの抗議が無いのは、ある意味天晴(あっぱれ)かも知れない……彼女の気紛れに掴まるのは、事故に遭遇するのと同じようなモノ。


 そしてようやく辿り着いた、定期湧きのワープ魔方陣前へと到着した一行。その“女夫淵”の崖の上に、前の層には見慣れないオブジェを発見して一同騒然。

 どう見ても何かの巣だ、それが崖から突き出した岩の上にデンッと乗っかっている。ワイバーンの巣かなと呟く少女だが、その主がどうなったかは敢えて口にはせず。

 ってか、恐らくはミケが墜落死させた奴じゃなかろうか。


「あ~っ、あの巣の中に何か宝物があるかも……お願いっ、見て来てルルンバちゃん!」

「……主はきっと死んでるし、まぁいいか」


 単独行動は危険だよと、諭そうとした姫香だけど恐らく巣の主は昇天している筈と。念の為にレイジーに同行して貰って、これで警戒態勢は万全だ。

 そしてルルンバちゃんが運んで来てくれたのは、金貨や銀貨が一杯入った袋やら、宝石やら財宝的な宝飾品の入った袋が1つずつ。


 何だかそれだけで凄そうなお宝だけど、他にも別の袋にルビーとダイヤの装飾品が。同じ袋に初級エリクサー900mlと解熱ポーション800mlの入った瓶も発見。

 それから綺麗に装飾された木箱から、宝珠が1つ出て来て。


 主のいない巣からにしては、存外に良品ばかりの回収となってビックリな子供たち。まさか宝珠まで出て来るとは、しかも換金性の高い宝石類もゴロゴロ出て来ている。

 さすが難関ダンジョンの深層である、或いはこれもミケ効果なのかも知れない。ルルンバちゃんを労いながら、儲かったねぇと喜んでいると。


 途端にハスキー軍団が一斉に吠え出して、緊急事態をチームに告げて来た。何事かと戦闘準備をする前衛陣、敵は今度は水中から飛び出て来た。

 空中からの敵襲で無かった事は、何と言うか壮大な肩透かしを食らった感じ。想像通りに、あの巣の主は結局墜落死していたワイバーンだった模様。

 そして新たなこの大型モンスターは、何と双頭の大蛙だった。


 今まで出て来た大蛙より、更にサイズが増している。しかも双頭で、左右に2つ並んだ顔は凶悪な面構え。そいつが木板の舞台に上がって来ながら、いきなり毒のブレス!

 慌てる護人だったけど、同じく前衛に出張っていた姫香は全く怯まなかった。何しろ《毒耐性》のスキルを得たばかり、それを試したくて仕方が無いのが本音と言うか。


 明らかに身体に悪そうな紫色のガスが漂う中、大蛙は目の前の小柄な人間を2つの舌で捉えようと仕掛けて来る。それを鍬の一撃で撃退し、接近戦で猛威を振るい始める少女。

 もっと前へと進みたいのに、通せんぼされてしまった双頭の大蛙は不満そう。小さな人間を踏み潰そうと、その場で大暴れを嚙ますのだけど。

 クルクルと独楽のように避けられて、逆に喉元をバッサリやられる始末。


 そこにガスマスクを装着した護人と、『魔炎』を纏ったレイジーも左右から戦闘参加。再び毒ガスのブレスを吐こうとする相手に向かって、先制のアッパー攻撃。

 そしてがら空きになった柔らかい腹の部分に、姫香の《豪風》混じりの旋回攻撃が叩き込まれ。哀れな双頭の大蛙は、2つの口を有効に使う事もなく倒される破目に。



 大型の敵を倒した後も、周囲は厳戒態勢と言うか、ガスが薄まるまで近付かないようにと護人の指示が。代わりに元気な姫香が、ドロップ品の回収作業を行っている。

 双頭の大蛙は魔石(中)に、スキル書1枚と液体の入った容器をドロップ。それを眺めていた紗良が、これは前にも拾ったガマの油かなぁと自信の無さそうな鑑定の言葉。

 それが本当なら、2ℓ近くのレア素材は超貴重である。


 もっとも、来栖家的には3度目の遭遇なのでなんだかなぁって感じなのだけど。何なら半分程度は、売ってお金に換えても良いかなって感じ。

 子供たちは束の間、舞台のガスが薄まるまでそんな話で盛り上がって。そしてようやくのゴーサインに、張り切って10層へのワープ魔方陣を潜って行く一行である。


 時刻は午後の2時過ぎ、丁度このまま下って行けば恐らく10層の中ボスに巡り合える。そいつを撃破して、ダンジョンを出てしまえば都合良く探索を終えられる。

 そんな青写真を描きつつ、元気よく川辺を下って行く来栖家チーム。





 ――意外と長く感じた遠征探索も、これで終わりが見えて来た。












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