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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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天然記念物がもはやドラゴン染みている件



 そして中ボス2体は、揃って魔石(中)をドロップ。そしてガーゴイルはオーブ珠を、ワイバーンは大きな革を追加で落としてくれた模様で。

 それを嬉しそうに回収する子供たち、それから舞台の端っこに設置されている宝箱へと向かって行く。それは真っ赤な彩りの、かなり大きな箱の仕様となっていて。


 嬉しそうに開放しながらの中身チェック、まずは鑑定の書が4枚に虹色の果実が2個。それから薬品が、中級エリクサー800mlと硬化ポーション600mlの2種。

 奥にあるリュックはひょっとしたら魔法の鞄かも。それから革と爪で強化された拳ガードと指輪が1つずつ。妖精ちゃんの言葉では、これらは魔法のアイテムだそうで。

 今回も中盤に来て、なかなかの盛況振りではある様子。


 ここまで約2時間半、もうすぐお昼と言う事でお腹が空いたとの意見が子供達から。そんな訳で、雑魚が湧かないこの5層でお昼休憩を挟む事に。

 その用意を始める紗良と、何かに反応して耳をそばだてるハスキー軍団。どうやら中腹の辺りから、戦闘音が響いて来ているらしい。

 他のチームも頑張っているようで、喜ばしい限りである。


「良かった、今回も他のチームと歩調を合わせられてるみたいだね。先行し過ぎたらどうしようって思ってたけど、丁度良い位かも?」

「そうだな、他のチームは山頂へと進む時間も掛かってるしな。聞いた話じゃ、山頂の方が敵が強いらしいし。甲斐谷チームが担当は、確かに適任だろうな」

「ほむほむ、とにかく今年最後の探索なんでしょ、叔父さんっ? 頑張って10層まで辿り着いて、凄いお宝ゲットして1年を締めくくろうねっ!」


 香多奈にしては良い事言うじゃんと、来栖家チームの今年最後の探索目標はそれに決定。与えられた区分の間引きを頑張りながら、とにかく10層まで到達する。

 凄いお宝は不確定要素だが、お握りを食べながらご機嫌にお喋りに興じる子供達である。ハスキー達も、時折ご相伴に与りながらお腹を満たして行き。



 30分程度で昼食休憩は終わって、5層を後にして6層へと向かう来栖家チーム。今度は下りだねと、方向転換を口にしない香多奈を姉が揶揄からかいつつも。

 ここは危険なダンジョン内、無駄に長居もしたくないのは当然なので。慣れた隊形でのハスキー軍団の先導で、一行は木板の渡しを順調に下って行く。


 崖に巣を張っている大蜘蛛や、突如水の中から姿を現す大蛙たち。そのサイズだが、明らかにさっきまでの奴らより大きくなっている。

 より慎重に進むべきなのだが、意外とルルンバちゃんが容赦ない。鞭の扱いと魔銃での射撃に慣れて来たのか、出て来た敵を瀕死状態にしてハスキー達に止めを明け渡すと言う。

 お陰で犬達も、魔力を節約出来て大助かりの連係プレイ。


 ナイスなフォーメーションも、ここ最近でお互いの意思疎通が慣れて来たせいかも。ルルンバちゃんも飛行ドローン形態が気に入っていて、火力不足もようやく補えている様子。

 そんな感じで、思いの外に順調な6層の道中である。半分以上を踏破して、あと少しで定湧きのワープ魔方陣と言う一歩手前で。


 何だか大規模な舞台が出現し、アレっと子供達も不審顔に。崖沿いの木板の通路は、その舞台に合流して更にその奥にも架け橋のような通路は続いているのだが。

 右手に大きな崖の裂け目が出来ており、まるで自然の洞窟のような様相を呈していて。見方を変えれば、クマか何かの巣のような危険な香りが。

 そして何故か、赤いポストがその入り口に設置されている。


「……クマさ~ん、郵便ですよ~?」

「いや香多奈っ、クマって決まった訳じゃないでしょ? 例えばヤギとか、そう言う頓智トンチくらい利かせて来るでしょ、ダンジョンなんだから」

「あ~っ、白ヤギさんと黒ヤギさんかぁ」


 呑気に同意している紗良ではあるが、香多奈は大きなクマが出て来る筈だと譲らない構え。そんなじゃれ合いを無視して、偵察に向かうハスキー軍団+ルルンバちゃん。

 洞窟の暗闇を突いて出たのは、蛇でもクマでもヤギのどれでも無かった。それは巨大なオオサンショウウオで、体高はゆうに3メートルで体長は10メートル以上。


 実在するワニなんかとも比べ物にならない、ビックサイズの大型モンスター。下手なドラゴンより迫力はあるかも、ハスキー軍団も取っ掛かりが無くて戸惑いまくりだ。

 すかさず護人が盾を構えて前に出るも、巨大な口は彼すら丸呑みしそうなサイズ感。そこから放たれた水流のブレスで、まさかの前衛陣の総流れという開幕スタート。

 スッキリした舞台上で、敵の視線は後衛陣へと向く事に。


「ええっ、みんな流されちゃったよっ! 大丈夫、叔父さんにお姉ちゃんっ!?」

「うわっ、早く助けに……行きたいけど、こっち狙われてるっ!?」


 紗良の言う通り、その巨体のオオサンショウウオは舞台を横断してこちらに近付く素振り。腹を立てたミケが、《刹刃》と『雷槌』のミックス技の矢弾を飛ばして行く。

 それが突き刺さる度、体を震わせて痛がる様子を見せる巨体生物。それでもその巨体故に、大した痛痒でも無いのか歩みは止まらない。


 香多奈がひいっと、怯えたように爆破石を3つまとめて投げ付けた。その爆破にも軽く耐えて見せ、怒ったかのように身を低くして突進の素振りを見せる巨大オオサンショウウオ。

 ルルンバちゃんの魔銃の撃ち込みも、ぬめった表皮のせいか致命傷には遠い様子。川からようやく上がって来た護人が、逃げろと背後から大声で指示を飛ばす。

 それに従って、紗良と香多奈は転がるように木板の渡しを戻り始める。


 幸い、巨体オオサンショウウオのサイズではこの簡易通路を進めないだろう。ただし、そこを逸れて川に入れば幾らでも追撃は可能ではあるが。

 ミケの『雷槌』が、本格的に敵の身体を揺らし始めた。気紛れな彼女も、ようやく本気モードに移行した様子。それでも致命傷には程遠く、いよいよドラゴン染みて来た巨体生物。


 完全にロックオンされた後衛2人は、何とかこの窮地を脱しようと敵との距離を取ろうと後ずさり。相手はお構いなく、木板の通路を破壊しながらその巨大な顔を向けて。

 再び水流のブレスで、2人を吹き飛ばそうと画策している様子。


 それに咄嗟に反応出来たのは、肩に乗っかるミケが全く怯む気配が無かったからだろう。このまま流されたら、自分はともかくこの小さな生き物がピンチに陥ってしまう。

 そう思って、紗良は《結界》を選択……しようとして、内からの力強い呼応に気付いた。自分の中に無いと思っていた、より攻撃的な気持ち。

 例えばミケのような、家族を傷付ける者は許さないと言う怒りみたいな。


 凍り付くような殺気を乗せて、紗良は昨日覚えたばかりの《氷雪》を解き放つ。それは見事に期待に応えて、オオサンショウウオの口から放たれようとしていた水流を凍てつかせる。

 呆気にとられる香多奈の前で、事態は尚も進行して行く。口を塞がれ藻搔もがいている相手に向けて、護人の“四腕”で水の中から放り投げられた姫香が、武器の鍬を片手に舞い降りる。


 まるで殺戮の女神のように、その攻撃は完全に相手の虚を突いていた。一振りで脳天の急所を破壊されて、あれだけ舞台上で暴れ回っていたオオサンショウウオは活動停止。

 後には魔石(大)とスキル書1枚が残され、空を飛んでの奇襲の成功に姫香は舞い上がって喜んでいる。それから紗良のお手柄を、大袈裟かって程に褒め称えて。

 確かにやっちゃった感はあるかなと、本人の紗良も思うけど。


「やったよ、紗良姉さんっ! 凄いね、昨日覚えたばかりの攻撃魔法をいきなり使いこなすなんてっ……窮地脱出のナイスな一撃だったねっ、さすが紗良姉さんっ!

 止めは私と護人叔父さんの、華麗なコンビネーションで貰っちゃったけど」

「…………魔女っ子、紗良お姉ちゃん」

「やめてっ、香多奈ちゃんっ!」


 この歳で魔女っ娘デビューなどしたくないと、隣でじーっと見つめて来る香多奈の言葉をブロックして。周囲を見回すが、何とかハスキー軍団も無事な様子。

 それでも流された拍子に、どこか打ち付けているかも知れないと。紗良はフラフラした足取りで、みんなの怪我チェックにと歩き出す。


 ふらついたのは、どうやら攻撃魔法のMP消費が、思ったより激しかったせいみたいだ。MP回復ポーションを鞄から取り出して、紗良は腰に手を当ててそれを飲む。

 水に落ちた前衛陣は、何とか全員が木板の通路に戻って来れた模様。それから濡れた装備を脱ぎながら、どうやって乾かそうかと相談中。

 ハスキー軍団は、ブルブル震えて乾燥終了のお手軽さ。


「参ったな、このままずぶ濡れで探索を続けると風邪を引き兼ねないし。どうするかな、火を熾して焚き火に当たって乾かすか」

「そうするしかないね、護人叔父さん……そこの川岸で、試しに火を熾してみようっ!」


 そんな訳で、ハスキー達ほど器用でない護人と姫香は、装備を乾かすために焚き火に当たる事に。テキパキと協力する香多奈は、さすがにキャンプ慣れしている動きだ。

 10分後には、立派な焚き火が熱を周囲に放出していて。護人と姫香は、紗良の持って来た着替えに袖を通し終わっていた。後は装備品が、無事に乾いてくれるのを待つだけだ。


 その間に、ハスキー達を護衛に巣の周辺を嗅ぎ回っていた末妹だけど。どうやら例の赤ポストの中に、アイテムが幾つか入っていた様子。

 恐るべし少女の執念、まぁ結構怪しい現代建造物ではあったのだが。とにかくその中から、便箋セットや絵葉書セット、鑑定の書を12枚に鑑定の書(上級)を6枚。

 変わった絵本を2冊と魔結晶(中)を6個も発見に至って。


 焚き火に当たってのんびり模様の護人や姫香に、戦果を元気に報告して来る。その間のモンスターの襲撃も、幸いにして一度も無くて本当に何よりである。

 何とか乾いてくれた装備を再び着込んで、その間警護をしてくれていたハスキー達にお礼をして。30分以上の休憩時間は、これにて終わりで再び歩き出す一行である。


 休養は充分に取ったし、お陰で気力も体力もバッチリ全員回復出来た。時間は随分消費してしまったけど、まぁ何とか盛り返せる範囲だろう。

 そうして下りの6層は突破して、今度は登りの7層へ。ここでまたもや、香多奈の飽きた発言が炸裂して。たまには山道も通ろうよと、川辺でなく山道ルートを強請ねだって来る。

 だがまぁ、その気持ちも分かるかなと簡単に折れる護人。


「やったぁ、それじゃあ山道を行こうっ! レイジー、今度はあっちのルートだよっ!」

「まぁた、護人叔父さんは香多奈に甘いんだから……」


 姫香の冷たい視線も、まぁこれまた毎度の事ではある。適当にあやしながら、気分転換は必要だよと気分を乗せて行く。第一こちらなら、川に落ちてずぶ濡れになる事も無い。

 そして出て来る敵も、大蛙や大蜘蛛とは一味違ってきた模様。普通にトロルや大型のツリーマンと遭遇して、割と熾烈な戦闘になる破目に。


 ツリーマンは動き回る巨木と言う感じで、洞がちゃんと目や口の位置にあるのがチャームポイントだろうか。体力もあるし巨大だしで、かなり強い敵の部類に入るのだが。

 レイジーの焔の魔剣やら、護人の『掘削』スキルにはとことん相性が悪い様子で。ほぼこのペアで、数分も掛からず退治してしまえている現状である。

 お陰で山道ルートも、そんなに苦労せずに道のりを稼げそう。


 ただし、たまに不意打ちを掛けて来る蔦型のモンスターがちょっとウザい。しかしコイツを倒した後には、必ずと言ってよい程“採集ポイント”が出現するようで。

 そこで収穫出来るのは、『自然薯』や『百合根』『フキノトウ』『行者ニンニク』と季節の山菜が豊富と言う。挙句の果てには、『マンドラの根』『月光シダ』『属性石(土)』なんてのも採集出来てしまった。


 この採集ポイント、姫香や香多奈はともかくとして、紗良は割と楽しそうに収穫に励んでいた。新しい錬金の素材を入手出来たと、ルート変更を提案した香多奈にお礼を言っている。

 満更でも無さそうな末妹だけど、通常の川沿いルートを逸れたせいか宝箱は発見出来ず。そこを残念がっている内に、登山道を外れた山道ルートで定期湧きのワープ魔方陣を発見。

 安全を確認しつつ、これを使用して8層へ。




「あ~っ、結局前の山道じゃ宝箱が見付からなかったよっ! やっぱり普通に、川辺の道の方が良かったのかなぁ?」

「あら、山菜がいっぱい採集出来たじゃない? 妖精ちゃんも興奮してた素材もゲット出来たし、充分じゃないかなっ!」

「そうそう、文句言わない……それより護人叔父さん、ハスキー達が何か発見したみたい」


 8層で出現したのは、やっぱり細い山道の外れだったので。それを下って、一行は通常ルートに戻ろうとしていたら。山道を逸れて、ハスキー達が何かを発見した模様。

 何事だろうと、それにそっとついて行く護人と子供たち。そして木々を抜けた先には、割と立派な構えの砦がデンと構えて存在していた。

 どうやらトロルの集落らしい、3メートルを超す巨人の住処だ。





 ――それが数十体とか、立ち向かうのはかなり困難な気が?









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