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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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1日の休養を経て再び広域ダンジョンへ潜る件



 今回も朝早くからの攻略で、前回に引き続きの6チームでのレイド攻略予定だ。その仲間に指定されているのは、護人としても複雑な胸中なのだが。

 何しろつい前回のA級ダンジョンで、死にそうな目に遭った身としては。積極的に行くぞとはならない、それは当然だし今回も似たような難易度らしいし。


 “三段峡ダンジョン”は、中型~大型モンスターが数多く生息する、A級に近いB級ダンジョンとの事で。しかも名物モンスターがワイバーンで、野良でも良く見掛けると言う。

 ベースとなっていた宿での作戦会議で、来栖家チームも色々と協議はしたのだが。まずはルルンバちゃんが、山道に合わない為に小型ショベル形態を断念する破目になって。

 それだけで、チーム戦力がかなり不利になるのは否めず。


 中~大型モンスターが徘徊するダンジョンで、それはかなり不安な点には違いなく。それでもそのチーム編成で行くしかない、既に各チームは巨大なワープ魔方陣の入り口前なのだ。

 ただしチーム員には、直前の“もみのき森林公園ダンジョン”での激闘で、各々レベルアップした感覚がある。それだけが、まぁ辛うじて期待出来る点だろうか。

 そんな感じで、広島の北の地での探索開始である――




「うわっ、山道だ……他のチームが、確か山頂方面を担当してくれるんだっけ?」

「ああ、ウチは山の麓近辺の探索でいいらしいよ。さっそく他のチームは、山頂目指して上って行ったな……事前の取り決めでは、広島市の2チームが山頂で、吉和と岩国の3チームが中腹を担当するって話だ。

 ウチの担当範囲は広くなるけど、移動は少なくて済む筈だよ」


 その取り決め通り、他の5チームは声を掛けて元気に山道を登って行く。来栖家チームが担当する麓近辺も、既に渓谷模様で移動はそれなりに大変そう。

 山道の幅も当然広くなくて、景色は良いけど戦闘となると大変そう。


 辛うじて良い点は、ここも気温が温かくて過ごしやすいって所だろうか。ハスキー軍団も元気に周囲を探索し始めて、子供達も山道を進むべきかなと話し合っている。

 今回はドローン形態で参加のルルンバちゃんも、空を飛んで探索に参加している。そして子供たちの話し合いは、沢の方に降りてみようで決定した模様。


 1層の山道は5チームが移動した後なので、敵はいないだろうと踏んだ結果みたいだけど。何故か沢の方にも、木板やら何やらで立派な階段や渡しが造られている。

 まるで探索者を戦いの舞台に招いている様だが、それが川の流れと絶妙にマッチしていて意外と綺麗。時にはその通路、川沿いの通路になってたり渡し橋になってたり。

 更には、広い舞台のような踊り場まで存在していて。


 その労力には恐れ入るが、今の所モンスターは配置されていない。とか思って進んでいたら、山中から飛行物体が3体ほどやって来た。

 探索開始からようやくの戦闘だ、張り切るハスキー軍団の勢いが凄い。いきなりツグミの『影縛』から地面に落とされた岩生物、護人と姫香に一振りで倒されて行く。


 今のガーゴイルは小柄だったが、ここは普通に中型の奴も出て来るようだ。いや、むしろ中型の方が多いと説明を受けていて、次に出て来た奴がまさにそう。

 巨大な大蛙が、木板の桟橋をよじ登って来て。獲物を見定めたのか、嬉しそうにこちらへと近付いて来る。長い舌は、ハスキー達を丸呑みしたそうに伸び縮みして。

 サイズ的に、それがありそうなのが怖い。


「うわっ、学校の遊具みたいな大きさのカエルが来てるよっ、誰かやっつけて!」

「でっかいね、近付きたくないけど……ええいっ、女は度胸っ!」


 香多奈の言葉に反応した姫香が、えいやっと真正面から突っ込んで行く。それに反応した大蛙が、案の定のベロ伸ばしで捕獲に走る。

 それを叩き切ろうとした姫香だが、どうやら速度に誤算があったようで。思いっ切り捕まって、丸呑みされそうに。それを見て、慌ててフォローに回る護人とハスキー達。


 今回のやらかしも、何とか救助が間に合ったようで何よりである。姫香はさすがにぐったりしていて、消化されそうになったダメージを表情にこびりつかせている。

 それにしても立派な補強通路と言うか、木板の渡しは川沿いにずっと続いている。そこから見上げる景色は、峡谷を体感出来てとっても素敵かも。

 ダンジョンなので、マイナスイオンより魔素に溢れてそうだけど。


 子供たちはこの景色と言うか、通路が気に入ってこのまま進もうとの意見が多数。川沿いは敵に水生生物系のモンスターが多いけど、まぁそれだけだ。

 さっきみたいな蛙やら蟹やらは、ダムダンジョンでも散々相手にして来ているし。そのまま進む事に否は無いと、チームの方針は決定して。


 峡谷の崖沿いに襲って来る大蜘蛛やら、川から這い出して来る大蛙を退治しながら川を上流へと上って行く。ちなみにこの川は“横川”と言うらしい。

 天然記念物のオオサンショウウオも、生息しているとかいないとか? とか思ってたら、普通にモンスターサイズの奴に遭遇してしまった。

 それを容赦なく、倒してしまうハスキー軍団。


「ああっ、天然記念物を倒しちゃった……でもまぁ、モンスターだったし怒られないよね? 魔石は小粒より大き目だ、さすが大きい敵が多いダンジョンだねっ!」

「今のもワニくらいは大きかったもんね、それでもワープ魔方陣は出ないんだね?」

「この先に“女夫淵”ってのがあって、そこにワープ魔方陣があるらしい。変な場所に沸かしたワープ魔方陣の使用は、もう懲り懲りだからな」


 確かにそうだねぇと、子供達も護人の言葉には同意を示して。周囲の景色を楽しみながら、川辺の道をハスキー達の先導で進んで行く。

 それにしても、1層から敵の種類が多いのは広域ダンジョンだからだろうか。挙句の果てには、半ダースのオーク兵まで出て来る始末。


 それも数は少ないけど、体格は“もみのき森林公園ダンジョン”の奴らより大きい気が。このダンジョンは5年物らしく、それ故に年季が違うとの見方もあるらしい。

 立地のお陰もあって、ここから旅立った野良の数も数知れず。特に飛行型のモンスターは、周囲に散らばって大変な被害をもたらしているそうな。

 とは言え、広いだけあって間引きも大変なのは確かで。


 最近は大きなダンジョンばっかり潜ってるねぇと、香多奈の愚痴ももっともかも。端から端を10分で踏破していた頃が懐かしい、いや懐かしいとまでは言わないが。

 子供たちが順応して、文句の一つも言わないのがひたすら有り難い護人である。そして辿り着いた目的地の“女夫淵”だが、確かに雰囲気のある淵が拡がっている。


「おおっと、ワープ魔方陣みっけ♪ あっ、そっちの通路の下の窪みに宝箱もあった!」

「あっ、本当だ……先行したチームは、通った道の下だったから見逃したっポイね」


 確かにこの道順は、レイド参加の5チームが通り過ぎた筈。上の道はコンクリ舗装はされていて、一応歩きやすくはなっているが山道だけあって細い。

 恐らく先行チームは、下を確認する暇もなく通り過ぎて行ったみたい。さっそく姫香が、岩の窪みに鎮座した古惚けたチェストを回収しに向かっている。


 その側には、飛行ルルンバちゃんが心配そうに滞空しているけど。運動神経の良さを発揮して、姫香は何事もなくチェストの回収に成功した。

 そしてチームに合流しての開封作業、中からは鑑定の書4枚と木の実が2個。それからポーション700mlとエーテル800ml、魔結晶(小)が3個入っていた。

 それから、何故か大量の小銭が箱の底に敷き詰められていて。


 アレッと、一斉に首を傾げる家族一同である。ダンジョンで現金を入手した事など、今までに1度も無いのだから当然の反応なのだけど。

 どう言う意味だろうねと、この小銭の意味合いを頭を突き合わせながら考え込む一行。その内、景色をもう一度眺め直した紗良が何かに気付いたように声を上げた。


 それに釣られて顔を開ける面々、少女の指差す方向には石の祠に入ったお地蔵さまが。つまりこれは、山道の安全を見守るお地蔵様のお賽銭らしい。

 これは盗っちゃ駄目でしょと、子供たちはこの妙な罠に憤慨模様。


「護人叔父さん、あそこのお地蔵さまに全部返して来るねっ、ちょっと待ってて!」

「ああ、そうだな……それが終わったら、みんなで2層に行こう」


 そんな訳で、無事に大量のお賽銭を返し終わった姫香は、満足した表情で戻って来て。それから家族でワープ移動を果たして、第2層へと無事に到達。

 ここまで約30分と、広域ダンジョンにしてはまずまず順調な道のりか。ところが集めた魔石を見てみると、明らかに他と違う異変が窺えて。

 何と魔石(微小)と魔石(小)のドロップ数が、ほぼ同じなのだ。


「何か凄いね、雑魚だと思って倒してる奴らも普通に大きいサイズの敵だもんね」

「そうだねぇ、多分動画を観た感じだと、今後もそんな感じが続くかも?」


 真面目に動画予習をして来た紗良は、そんな言葉で一行の気を引き締めるけど。そんな話の最中にも、巨大なオオサンショウウオが川の中から襲来して来る。

 コイツも結構獰猛で、とは言え大きな口で食らい付くしか、攻撃手段は無いのだけれど。下手したら手や足を持ってかれる可能性もあるし、大型の敵は侮れない。


 ハスキー達に限っては、丸呑みされる可能性も大いにあるし。それは大蛙にしても同様、とか言ってる側から出現すると言う不思議サイクル。

 ただまぁ、倒すのは比較的簡単と言うか、囮役がいれば横の守りはガラガラなので。ただし、ハスキー達は水生生物独特の表皮のぬめりを嫌って、噛みついたりはしない様子。

 その分、MPを消費するのは仕方が無い事か。


 話し合った結果、山の麓部分を担当している来栖家チームは、今度は川沿いに下って行く事に。この上下のルートを繰り返せば、チームの間引き目的は果たせるだろう。

 この“三段峡ダンジョン”は、付近の山も全てダンジョン化している訳では無い。登山ルートのみが、ダンジョンになっていて山越えはどうやっても出来ないそうだ。


 そう言う訳で、全面積的には“弥栄ダムダンジョン”や新しく出来た“もみのき森林公園ダンジョン”の方が、恐らくは広いだろうと思われる。

 本当の所は分からないが、取り敢えず来栖家チームの行動方針は決定した。後はこの単純な行き来を、10層かそこらまでこなせばオッケーな筈。

 最初の取り決めも、10層かお昼の2時位までと決まっているので。



 今回の探索は、無理はしないで行こうとチームに通達もしてある護人。何しろつい一昨日に、大規模ダンジョンを探索した疲れも残っているだろうし。

 このダンジョンにしても、大型のモンスターが生息していると分かっているのだ。無理して変な事になるのは、なるべく避けるべしと注意されたばかり。


 ただまぁ、収穫無しはつまらないので、間引きはキッチリやるとは決めている。それから紗良の新しく覚えた《氷雪》が、どの程度の戦力になるのも見てみたい。

 護人はそう思うのだが、まぁ無理だけはさせたくは無いので。実戦で無理なら、別に実家に戻ってからボチボチ試して行けばそれで良いと考えている。

 ただ今回は、周囲に強烈なチームがいて調子が狂った感が。


 そこは上手く調整して、今回の探索も切り抜けて行こうと思う護人である。経験を積むのは大事だが、過度の期待にうために背伸びをするのもちょっと違うし。

 そんな事を考えている間に、ハスキー軍団がオーク兵の群れを撃破してくれていた。相変わらず頼もしい限りだ、2メートルを超す獣人がほぼ一方的に倒されて行く。


 それを手助けした姫香はともかく、乗り遅れたルルンバちゃんはやや不満そう。それを笑って見ていた香多奈が、突然空から何か来ると警戒の声を発した。

 慌てて迎撃態勢を取る一行、上空を支配しているのは大トンビか何かのよう。それが急降下で狙っているのは、どうやらルルンバちゃんみたいである。

 取り敢えず護人は、『射撃』での迎撃で撃ち落とせるかチャレンジ。


 その攻撃は何射かはヒットしたが、撃ち落とすには威力は足りず。身の危険を感じて必死に逃げるルルンバちゃん、香多奈の『応援』を浴びて割と必死な退避行動。

 それが地上に近付くにつれて、ミケの視線が剣呑になって行く。彼女に肩を貸している紗良も、魔法での迎撃を頑張ろうとしているが形にはなってくれない様子。


 結局は、ミケの『雷槌』がその両翼6メートルと、巨体の怪鳥を迎撃してしまった。相変わらずの剛腕だ、そして身勝手な程の博愛振りと言うべきか。

 身内を虐める奴は、何があろうと許さないその母性は相変わらず強烈。それでも子供たちに褒められて、どことなく嬉しそうなミケである。





 ――何にしろ、ミケがいれば飛行モンスターもへっちゃらだと思う一行だった。









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