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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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動画を観たり魔法アイテムをチェックする件



 来栖家チームの借りてる部屋にやって来たのは、甲斐谷と“巫女姫”八神とヘリオンの翔馬、ギルド『羅漢』の雨宮と岩国チームのヘンリーと鈴木と総勢6名だった。

 鈴木は岩国チームの『ヘブンズドア』のチームリーダーで、見た目は全く強そうに見えない優男で。そう言う意味では、どことなく護人と雰囲気は似てるかも。


 それでも岩国どころか山口県で、相当に名前は売れているそうな。押しも押されもせぬB級ランカーで、氷系の術者として有名なのだそう。

 青空市で面識があった子供達も、いらっしゃいと普通に対応していて。もうお風呂入ったのと、会話も弾んで気楽なコミュニケーション振り。

 何しろこの鈴木、既に所帯持ちで子供もいるとの話。


 子供達も家族写真をウザい程見せられて、このリーダーの子煩悩振りは理解しているみたい。犬猫も好きなようで、部屋に入ると速攻でミケの位置を気にする素振り。

 もっとも、ミケは家族以外に容易に気は許さない猫だけど。


「それじゃあどの順番で動画を観て行きましょうか、3時間以上の長編だからなぁ。何なら、2チームとかでの同時上映の方がいいのかな?」

「そうですね、気になったポイントで映像止めて行くとか。そんな感じで、夕食時間を目処に上映会を行いましょうか。

 幸いモニターも2つありますし、階層ごとに合わせて行きましょう」


 完全に機具係となった雨宮だが、文句が無いと言うか高ランカーたちを前にして立場が弱いのも当然で。率先して、下っ端仕事をこなしている有り様。

 そして何故か、来栖家の子供達が自分たちの映像を先に見たいと言うので。A級の甲斐谷チームと同時に流す事に、比較されると気の毒だなと思うが仕方がない。

 ってか、雨宮チームが比較対象にならずに良かったと心底思う彼である。


 そんな訳で、2チームの同時上映会は良く分からない盛り上がりの中でスタート。実は今回も、ギルド『羅漢』の提供した録画装置は配られており。

 ルルンバちゃんに取り付けられていたので、いつも後ろにいる香多奈のとはかなりアングルが違って来る。時には急な旋回に、見ていると酔いそうになると言う弊害も。


 それが早々に分かって、結局は香多奈の撮影データが使われる事に。こちらだと、チームの動きがしっかり分かるし、何しろ少女は撮影慣れしているし。

 別にルルンバちゃんは悪くないよと、慰めているのはAIロボが剥れた為か。とにかく上映は続いて、順調に1層から2層へと適当な茶々入れ交じりの鑑賞会。

 それが来栖家チームの3層で、良く分からない感情が混じり始め。


「うわっ、あの巨大蜘蛛をスルーしたと思ったら……こっちには野外ステージに召喚デーモンっ!? ええっ、逃げずに討伐するのっ、何でっ!?」

「うわ~っ、雑魚のオークやゴブリンも多い中で……ひえ~っ、大丈夫なのっ!?」

「間違いなくA級の敵だよ、アレ……うわっ、まだオーク召喚士も生きてるよっ! つらいなぁ、1チームじゃ大変な戦力差でしょ、コレって!」


 いやまぁ、確かに強かったけどねと飄々《ひょうひょう》とした姫香の返しはちょっと鼻高々。倒したのは護人叔父さんとレイジーだよと、さり気なくアピールを始めてみたり。

 そのセリフを受けて、何故かその場で巻き起こる拍手。ちょっと良く分からない状況だが、動画視聴に関しては完全にA級ランカーのチームを喰っている気が。


 肝心の甲斐谷チームは、特に面白味も無く淡々と階層を間引いている。盾役の椎名しいなは、護人も顔見知りだが何とも手堅い動きで見習う箇所も多い猛者振り。

 その点、甲斐谷は片手剣と槍の二刀流で、何とも変わった動きで真似は出来そうもない。その破壊力は、さすがA級ランカーと唸りたくなるレベルで。

 スキルも豊富との噂だが、何が何だか動画だけでは判然としない。


 あっという間の敵の殲滅スピードで、回復役の“巫女姫”八神も暇を持て余す素振り。他の2名のチーム員は、それに較べるとやや見劣りするモノの。

 堅実な動きはさすがにベテラン探索者と言った感じで、サポート要員としては申し分ない。両方ともボウガンと魔法での遠隔支援で、敵に近付くのは椎名と甲斐谷のみらしい。


 一応、姫香や紗良もこの高ランクチームの動きは参考にと見入っているようだ。護人ももちろんそうで、盾役の動きを中心に参考にしようと眺めている。

 自分のチームの活躍をアピールしているのは、そんな訳で香多奈位のモノ。有り難い事に、この場のみんなは優しくて、こんな子供の対応もしっかり付き合ってくれている。

 それでも5層の移動要塞には、全員が度肝を抜かれた様子。


 甲斐谷チームは、普通に巨大蜘蛛を倒して6層へと到達している中。来栖家チームの面々は、オーク兵や何やらと壮絶な戦いを繰り広げている始末。

 そして自滅する巨大牛と移動要塞に、何だアレと開いた口が塞がらない一同だったり。あれはね、ミケさんのスキルなんだよと大威張りの香多奈の後に。


 ミケに注がれる視線は、まるで化け猫でも見ているかのような《《それ》》だったり。それも致し方が無い、そんな事が出来る猫なんて世界中探してもいない筈。

 その当猫は、護人の膝の上で呑気に丸まって夢の中。


「いやまぁ、来栖家は犬と言いネコと言い、何と言うかユニークな……たった半年と少しで、B級に上がったのも頷けるってモノですな」

「いえ、本当にペット達の恩恵が半分以上なので! あまり誤解されないようにお願いします、私たちの探索レベルはランクとは釣り合ってませんから」


 雨宮の言葉に、ここは乗っかれと護人の言い訳染みた解説が入って。動画もまさにそれを裏付けるように、アラクネの巣にワープしてのタコ殴られのシーンに。

 部屋の中はうわッと言う、悲鳴にも似た歓声が響き渡る。今見ても気持ちの良い物では無い、自分が矢襖やぶすまにされて行く場面など。子供達も同様らしく、この場は揃って悲壮な表情に。


 一方の甲斐谷チームは、巨大な蜘蛛の巣を6層で発見に至ったようで。短い話し合いの末、“巫女姫”八神がエースの甲斐谷に何らかの強化魔法を掛けたかと思ったら。

 何と単独で、小山ほどもあろうかと言うダンジョンボスに挑み掛かって行った。それはそれで、別のおおっと言う歓声が室内にこだまする事に。

 そして始まる、1人対1匹の暴虐の大合戦。


 それには子供達も大興奮、一緒に見ている甲斐谷も多少こそばゆそうな表情である。アレは何のスキルとの香多奈の問いにも、普通に答えてくれる気さくなA級ランカー。

 そして決着は、超派手な至近距離からの電解魔法っぽい一撃で決まると言う。どこのヒーローだよと、何となく呆れながらもそれを見終わる男衆だったり。


 香多奈などは、凄いねぇと素直に感心している風だけど。ダンジョンボスのドロップ見せてと、どうやら本当の目的はそっちらしい。

 同じチームの八神が軽く肩をすくめて、持参していた魔法の鞄から幾つかのアイテムを取り出して行く。ボスの魔石は大人の拳2つ分はあったし、大量の蜘蛛の糸はどんな効果の魔法のアイテムだろうか。


 妖精ちゃんが興味を示していたので、特殊効果があるのは間違いなさそう。そして蜘蛛の意匠の指輪は、何となく禍々しい雰囲気を感じる逸品で。

 オーブ珠を含めて、ダンジョンボスは3つもドロップ品があったらしい。


 そして動画の中では、ダンジョンコアを破壊する甲斐谷のシーンが流れ。画面の中の来栖家の面々は、ようやく危機的状況から解放されてホッとしている場面。

 何となく格の違いを見せつけられた気分だが、実際そうなのだから仕方がない。姫香などはポジティブに、精進あるのみと口にしているけど。


 他のチームの面々も、探索者は臆病なくらいが丁度いいんだよと、来栖家チームに助言をくれてるし。例えば3層の大蜘蛛を回避したシーン、倒せないと踏めば逃げるのは当然なのだ。

 6層も出来れば逃げるか、それとも5層の変な場所に湧いたワープ魔方陣は避けるべきだったねと突然の反省会。ってかこの動画視聴会は、そんな目的で始まったんだっけ。

 そう思い出した護人は、素直に他チームの助言に耳を傾けるのだった。




 そんな時間も長くは続かず、気付けば夕食の支度が出来たとの宿の従業員からのお達しが。大食堂に用意がしているそうで、全員支度をしてそこに集合らしい。

 来栖家もそれに倣って、支度を始めるのだけれど。もう少しだけ時間があるみたいで、それまでに魔法アイテムの鑑定をしようと言い出す末妹である。

 そんな訳で、妖精ちゃんに手伝って貰っての鑑定タイム。



【鑑定プレート】使用効果:薬品専用・永続

【黒雷の長槍】装備効果:黒雷&体力&魔力up・大

【木彫りの指輪】装備効果:MP量up・中

【雪豹の毛皮】装備効果:耐寒&耐魔&俊敏up・大

【雪狼のナックルガード】装備効果:耐寒&耐魔&俊敏up・中

【雪熊の毛皮マント】装備効果:耐寒&威圧&腕力up・中

【術者のネックレス】装備効果:召喚力up・中

【強化の巻物】使用効果:武器強化(赤の魔石使用)

【重オーグ鉄の長斧】装備効果:重オーグ鉄製の長斧

【重オーグ鉄の剣】装備効果:重オーグ鉄製の剣

【重オーグ鉄の槍】装備効果:重オーグ鉄製の槍

【鶏パペット兵】使用効果:パペット作動(黒の魔石使用)

【召喚士の杖】装備効果:MP量&召喚力up・中

【魔銃ライフル】装備効果:魔玉射出&威力増大

【冬華の球根】使用効果:冬華の球根・秘薬素材

【永久凍岩】使用効果:保冷効果・永続

【アラクネの糸】使用効果:オートMP回復付与・糸素材

【エレーネの苗】育成効果:エレーネの実収穫・大


【知の宝珠】使用効果:使用者はスキル《氷雪》を習得

【耐の宝珠】使用効果:使用者はスキル《毒耐性》を習得




 今回もやたらと魔法アイテムが多かったのは、“もみのき森林公園ダンジョン”が新造ダンジョンだったせいもあるのかも。宝珠も2つゲットしたし、儲け的には言う事無しである。

 今回は魔法の武器や防具がやたら多い気もするが、獣人系の敵が多かったせいかも。ただし重オーグ鉄製の武器は、魔法アイテムではなく高性能の素材の武器扱いらしい。

 どちらにせよ、探索者には人気が高く売れ筋には違いなさそう。


 『鑑定プレート』がまた出たが、既に持っている薬品専用なので売り案件か。他にはデーモンの落とした『黒雷の長槍』や、パペット生成の『鶏パペット兵』はヤバい装備品の香りが。

 一介の探索者が使用するのも不味い気はするが、子供たちの玩具になるのはもっと不味い。とは言え売り払って変な奴が手にするのも気持ち悪いし、迷う所ではある。


 宝珠2つは後で家族で相談するとして、素材系は紗良に任せてしまえば良い。問題は、召喚力アップの効果を持つ装備品なのだけど……香多奈が見れば、騒ぐ案件に違いなく。

 この辺の分配は、常に悩ましい護人である。


 今はアイテムチェックの結果より、スキル書とオーブ珠の相性チェックをしようと盛り上がっている子供達である。それより夕食の時間がもうすぐで、そっちも後回しになりそう。

 忙しない子供達の遣り取りだが、明日は丸一日休養日となっている。特に今日全てを済ます必要もなく、護人などはのんびりすれば良いのにと内心で思う次第。


 それでも食堂に遅れるのは言語道断、何しろ他のチーム員も待っているのだから。来栖家の到着が遅れて食事スタートが滞ったりしたら、迷惑を掛けてしまう。

 そんな訳で、子供達を急かして食堂へと赴く護人。留守番に慣れているミケに後を任して、ハスキー達に戻ったらご飯だからねと告げておいて。

 慣れない宿の通路を辿って、皆で賑やかに食堂へと到着。


 その後は、全チームが揃っての賑やかな夕食となって。取締役を担っているギルド『羅漢』の森末が、短いスピーチをして探索成功を祝ってからの飲み会に移行。

 アルコールで場が荒れる前に、食事を終えた来栖家チームが食堂を後に出来たのは僥倖ぎょうこうだった。それからペット達に餌をあげて、家族での寛ぎタイム。


「今日も大活躍だったね、みんな……たくさん食べて、疲れを癒してね。そんで明日は休みで、次の探索は明後日だからね」

「護人叔父さんも晩酌にちょっと飲む、ビール? 私が今から、食堂でお摘まみと一緒に貰って来るよ」

「ああ、それじゃあちょっとだけ頼もうかな」


 旅館の一室で旅気分を味わいながら、そんなやり取りも挟みつつ。家族水入らずで過ごす遠征の夜は、ゆっくりと更けて行く。

 のんびり過ごせるのは、しかし今夜と明日いっぱいまでだ。





 ――その次の日には、またもや難関ダンジョンが待ち構えているのだった。









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