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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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企業案件を無事に終えホッとする件



 その日は隣町に唯一開いてた洋食屋さんで、探索帰りに夕食を済ませて。久々の外食に、子供達も大盛り上がり。ハスキー軍団とミケは、香多奈から約束の高級ハムを貰ってこれまた大満足。

 新入りキッズ達にも、ぬいぐるみやゲーム機のお土産をゲットして、一応は大満足の結果となって。企業案件的にも、魔法の鞄を3つも確保出来たのだ。


 探索時間も3時間と少しで収まったし、今回は大成功と言っても良いのかも。何ならもう少し潜っても良かったかもねとは、後の祭りの香多奈の言葉。

 その夜のスキル書2枚とオーブ珠2個の相性チェックは、それなりに熱い歓声が上がった。何故ならスキル書こそ全滅だったけど、オーブ珠2個については何と大当たりが出て。

 姫香とツグミのペアが、揃って覚えると言う事態で大盛り上がり。


 大喜びでツグミを撫で回す姫香は、妖精ちゃんの鑑定では《舞姫》と言うスキルを覚えた様子。そしてご主人と共にテンションアップ中のツグミは、《空間倉庫》と言う便利そうな能力を得たとの報告が。

 それを聞いて、香多奈も興奮してリビングに置かれてたミカンやら爪切りやらを、ツグミに向かって差し出して。

 倉庫に仕舞ってごらんと催促すると、途端に消え失せるミカンと爪切り。


 驚いたのは香多奈だけでなく、その場にいた全員である。何だかチート化して行くハスキー軍団に、驚きを通り越して感心してしまう護人だったけど。

 姫香や香多奈は、その便利な能力を素直に喜んでいる様子。褒められたツグミも、テンション高く何度もアイテムを出し入れして遊んでいる。

 そして香多奈から、今度は姉へと無茶振りが発動。


「姫香お姉ちゃんも、新しいスキル覚えたんでしょ? 何だっけ……えっ、《舞姫》ってどんなスキルなのかなっ?

 取り敢えず踊ってみたら、お姉ちゃん?」

「えっ、そうかな……まぁ、舞う姫って事で解釈は合ってるのかな? こんな感じで踊ればいい?」


 そして姫香が踊り始めたのは、変てこな夏祭りの盆踊りモドキ。それを見て、思わず吹き出す無茶振り張本人の香多奈。護人と紗良も顔を背けて、笑っている顔を見られないように必死。

 それに気付いて、真っ赤になりながら末妹に天誅をお見舞いする姫香。とにかく今回は運が良かった、気分良く眠れそうだねとリビングで寛ぐ来栖家の皆である。

 そんな感じで、夜はゆっくりと更けて行くのだった。




 その翌日、協会に連絡したら午後の2時に来てくれとの返答で。例によっての換金やら動画依頼に加えて、企業側からも直接人がやって来るらしい。

 それまで暇なので、いつもは協会でやってる魔法アイテムの鑑定をリビングでやる事に。妖精ちゃんは協力的で、それは主に高級缶詰セットの果物目当てらしいけど。


 とにかく今回は、魔法の鞄とオーブ珠を抜かすと、そこまでの大物は発見出来なかった。ダンジョンのランクが低かったせいか、10層まで潜ったのに悲しい事だ。

 それでも、一応当たりのアイテムは存在していて。



【幸せの蝶ネクタイ】装備効果:幸運up・小

【強化の巻物】使用効果:理力強化(透明の魔石使用)

【強化の巻物】使用効果:魔法装備強化(黒の魔石使用)

【破壊の大槌】装備効果:震撃付与・中

【幸福のお福面】装備効果:幸運up・中

【隠密の忍び服一式】装備効果:サイズ補正&隠密&敏捷up・大



 強化の巻物が2種類2枚ずつ、これで装備の強化が進むだろう。それより『隠密の忍び服一式』だが、隠密と敏捷のアップする装備とはなかなかのモノ。

 誰が使うかはこれまた不明だが、売るにしても良い値段になりそうな性能には違いなく。珍しく香多奈も欲しいと言わないので、これも家族の予備としてストックされそう。


 良い装備なのに勿体無いが、まさかハスキー軍団に着せる訳にも行かず。キッズチームの誰か着ないかなと、姫香辺りは他チームへの譲渡まで言い出す始末。

 護人としても、それはちっとも構わないのだが。お金にも困って無いし、良装備で仲間のチームが安定して探索出来るのなら、そっちの方が数倍マシだ。

 それから、強化の巻物は紗良と妖精ちゃんに全て任せる事に。


 『幸せの蝶ネクタイ』は、香多奈が気に入って持って行ってしまった。大槌とお福面は、使用者不在でストックか売り候補に。景品で貰った縫いぐるみや昔のゲーム機は、キッズチームのお土産にする事で決定。

 お菓子や服もそれなりに渡して、高級ハムセットはいつの間にか無くなってしまった。ハスキー軍団は、やはりお肉が大好きだった様子。


 護人の趣味で景品交換したコーヒーセットと昔のCDは、その翌日から大活躍をみせ。初期の『安全地帯』とか、これまた初期の『久保田利伸』とか『リンドバーグ』とか聞き倒して。

 何故そんなのが景品に並んでいたのか不明だが、ひょっとしたら倒産した頃の流行だったのかも。そう思うと感慨深いなと、リビングでコーヒーを飲みながら思う護人だった。




 そして約束の時間に、来栖家チームが毎度のように全員で協会へと赴くと。既に相手企業の人は来ていたようで、制服を着た見知らぬ人物が2人ほど窺えた。

 護人が入って来たら立ち上がっての挨拶、どうやら依頼主で間違いは無いようだ。そこに仁志支部長が加わって、早速商談の開始となった。


 同じくやって来た能見さんに、能力チェックの為に3つの魔法の鞄を手渡すと。相手は驚いた感じで、3つも持って戻られたのですかとの言葉。

 若い会社員の方は、後ろに控える子供達にも尊敬の表情を崩さない。どうやら動画もしっかりとチェックしていて、取引相手の実力把握に余念がない様子。

 ただし、ハスキー達にはややビビっていたが。


 それからブースに移動して、鑑定結果が出るまで雑談で地域情報の把握など。それから能見さんが、鞄の能力の鑑定結果と大体の流通価格を持って来て。

 その能力が意外と高かったので、企業の代表は驚いているみたいだ。それに伴って、取引価格も結構上がってしまうそうなのだが、向こうはそれで全く構わないとの返事で。


 話し合いの末、5百万程度での取引が決定。香多奈などは、その額に素直に驚いている感じ。生々しい話に子供同伴はどうなのかなと、護人などは思うのだけど。

 末妹も一緒に探索に同行しているので、権利はあるし悪い事では無いのだろう。それに末妹のお金に対するおねだりなど、アイスやお菓子などでまだ可愛いモノ。

 今後どうなるかは、全く不明だとしても。


 それからアレコレの遣り取りの後、深々と頭を下げて帰って行く運送会社の2人であった。話の大半は、また機会があれば是非とのコネ造りに終始していたけど。

 護人としては、企業案件は面倒と責任が重過ぎて、それ程受けたいとは思わない。それより個人の用事を済ませてしまおうと、能見さんにいつもの換金依頼を頼む事に。


 今回は、敵も弱かったし魔石の回収も本当に少なかった。その分、魔法の鞄が3つで大きな報酬を既に貰っているけど。そんな話をしつつ、動画チェックを仁志と始める面々。

 そして始まる、香多奈の身振り手振りを交えてのご自慢トーク。今回はモノの数分で能見さんも戻って来て、更に末妹のお喋りに拍車がかかる。

 何しろ能見さんの相槌スキルは、使い込んでるだけあって凄いレベル。


「ほらっ、ミケさんの幸運の数値が凄いって、これ見てたら分かるよねっ! 幸せの招き猫だよっ、妖精ちゃんには全然優しくないのにね?」

「確かに、抱っこしてるだけで出玉が違いますねぇ……凄いな、子供がパチンコしている姿は結構な違和感があるけど」

「本当に凄いですね、検証動画としてもこれは使えますよ、仁志支部長! 小学生のパチンコ姿は、激しく違和感がありますけど……」


 そんな事を言われても、パチンコだって賭けの要素を抜いてしまえば、ただの台を使った遊戯でしかない。とか心の中で言い訳しつつ、護人も動画内の香多奈には違和感を感じまくりだったり。

 ただし、9層での家族パチンコの動画のシーンは、違和感とかじゃ片付かないレベル。何しろ小型ショベルとチビ妖精、揃ってのパチンコシーンである。


 啞然としつつ動画を眺める2人だが、その両者が一番出玉を多く稼いでいると言う。信じられない光景に、仁志の瞳が説明を求めるように護人を窺うけど。

 そんな事は護人にも分かりはしない、妖精ちゃんの幸運値なんて知りもしないので。ルルンバちゃんに関しては、恐らくはビギナーズラックか何かだろう。

 純粋な彼の事、《念動》で出玉操作とかきっと思いもつかない筈。


 そして10層の中ボスの、あっさり退治した動画とその後の顛末に。金の宝箱を引き当てた豪運は、一体誰のモノなのだろうと論議が交わされて。

 そして発見されるオーブ珠、見事に2つゲットのシーン。これは昨日、私とツグミが覚えたんだよと姫香の衝撃の告白に。

 一体幾つ目のスキルですかと、戦慄わななく仁志支部長の問い掛け。


「幾つ目だったかな、確か5個目だった気がするけど……ツグミは4つ目だね、でも《空間倉庫》なんて凄い便利そうなの覚えてくれたからねっ!

 それを使いこなせたら、これからも大活躍してくれるよっ!」


 その姫香の告白に、既に顎が外れそうな仁志支部長だったり。能見さんはもう少しだけ冷静で、出来たらちょっとその能力を見せて頂戴と姫香に頼んでいる。

 それを簡単に請け合って、テーブルの上の湯呑みを手に取った姫香。協会の入り口の扉を開けて、外で駆け回っていたツグミを呼び寄せて。

 手の上の湯呑みの収納を相棒にお願い、瞬時に消え失せる安物の湯呑み。


「ひえっ……!」

「ええっ、ハスキー犬が収納のスキルを習得……!?」


 それを見ていた協会所属の2人は、信じられない物を見る眼付きに。どうでも良いが、護人にとってはスキルを覚える上限数の方が気掛かりである。

 以前は3つ以上スキルを覚えるのは、優秀な証だとか言われていた気がするけど。何とか意識を取り戻した仁志は、護人の疑問に何とか冷静さを取り戻しての返答。

 最近は、ポツポツ3つ以上覚えてる探索者も増えて来たとの事で。


 要するに、スキル書やオーブ珠のドロップが少ないと、相対的に相性チェックの回数も減る訳で。来栖家チームに関しては動画で観た通りの豪運で、そのチェック回数が異様に多いのも関係しているのではとの推測らしい。

 要するに、スキル取得は相性チェック回数の問題も含むそうで。


「もちろん誰でもスキルを覚えられる宝珠の存在は、その確率も無視するんですけどね? それから、鑑定の書の“適合”とか“魔素”のステータス……あの数値が高いと、スキル取得確率やレベルアップも早まる傾向にあるんじゃないかとの報告が。

 何しろ、A級ランカーの甲斐谷さんは両方ともAやBらしいですからね」

「そうなんだ、ウチのチームは適合も魔素も、そんなに高い人いなかった筈だけどなぁ。香多奈に関しては、スキル書も無しに勝手にスキル覚えてるもんねぇ?

 やっぱりアンタ、変態だよっ?」

「ヘンタイとか違うもんっ、これは個性だって教授が言ってたもんっ! 姫香お姉ちゃんなんか、ヘンな盆踊りでスキル発動させようとしてたクセにっ!」


 そして暴露合戦からの姉妹喧嘩、相変わらずの仲の良さと言うべきか。相性チェック的にどうなんだと思いつつ、両者を宥めに掛かる護人である。

 まぁ、スキルをたくさん覚えられる事に不満はない……“適合”とか“魔素”の数値が上昇するよりは、まだ健康的な事象だと思いたいし。


 何とか喧嘩は収まって、最後の金の宝箱以外は魔法アイテムも全然だったよと、結果報告をする香多奈に。能見さんは、ランクの低いダンジョンだから仕方が無いですよと慰めの言葉。

 それよりと、紗良にも動画のコメで疑問があったらしく。宝箱に色んな罠が仕掛けてあって、大変みたいなコメントを良く見掛けるそうなのだけど。


 来栖家チームでは、そんな経験が殆ど無いとの独白に。えッと言う驚き顔をされて、そんな筈は無いよと顔を見合わせる協会の2人である。

 何しろ、宝箱の罠系でのトラブルは、探索でも上位に上るのだ。


「あっ、宝箱の罠とかなら大抵ツグミが解除してたよ? あれっ、知らなかったの紗良お姉ちゃんに姫香お姉ちゃん……何か知らないけど、影だか闇だかで中の仕掛けとかいつも解いてくれてるよ。

 ツグミはゲームのパーティで言う所の、シーフ役だよねっ!」

「それ本当なの、香多奈……護人叔父さんは、その事知ってた?」


 恥ずかしながら知らなかった護人だが、勝手に危険な罠を解除してくれていたとは驚きの事実。道理でこの前、ツグミがいない時に罠がやたらと作動したのかと、護人は1人で納得。

 アンタは何で知ってたのと、末妹を追求する姫香だけど。その答えは単純で、香多奈の『友愛』スキルでハスキー達のやってる事は何となく分かるそうだ。


 便利過ぎる少女の能力に、呆れた表情の仁志と能見さん。そんな2人に、今回のお土産だよと、鞄から一口チョコやらお菓子やら帽子を取り出して渡す香多奈。

 それには素直に喜んで、お礼を述べる仁志と能見さん。ちなみに今回の魔石とポーションの売り上げは、たったの46万円だった。

 ただまぁ、日給も出る仕事だったし鞄の売り上げも凄かった。





 ――それでも2度目は無いかなと、護人は企業依頼の感想を纏めるのだった。







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