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田舎の町興しにダンジョン民宿を提案された件  作者: マルルン
1年目の秋~冬の件
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家族がようやく勢揃いして10層を超える件



 護人とレイジーは現在、3体目の大型モンスターとの戦闘を繰り広げていた。レイジーの遠吠えには、どうやら周囲の敵を挑発する効果も混じっているようで。

 何故か怒り狂った大型モンスターが、引き寄せられるように近付いて来る始末。ちなみに2体目は、例の巻貝モンスターの本体だった。


 そいつはトカゲ騎乗の巻貝モンスターを、巨大な巻貝の中から何体も召喚する厄介な敵で。何度も絡まれるのが厄介と感じた護人は、これを破壊してしまう事に。

 その硬さには苦戦したが、レイジーの『魔炎』で中身をこんがり焼いてしまえば呆気無く昇天してくれて。コイツも魔石(中)と素材と、それからワープ魔方陣を放出してくれたのだが。

 ワープ移動は、最後の手段と割り切っている護人。


 子供たちの事を思うと気が気では無いが、下手に階層移動してしまうと永遠に出会えない気がして。しかもどうやら、ここは10層じゃ無いかと思い始めている護人である。

 そもそも小型のモンスターは、さっきの召喚された巻貝しか出会って無いのだ。他は全部大型モンスターで、つまりそれは5層や10層の特性に一致する。


 って事は、護人とレイジーは罠のワープによって、8層から10層へと飛ばされた事になる。子供たちも同じ層なら、レイジーの遠吠えが届いてもおかしくは無い筈なのだけど。

 このダンジョンの構造的に、浅層への移動は出来ない仕様なのが残念でならない。それが出来たら、最悪罠の魔方陣のあった集落まで戻ってしまえるのに。

 そんな事を思いつつ、今回も無事に戦闘は終了。


 大型の亀型モンスター相手に、割と余裕をもって勝ててしまった護人&レイジーのコンビである。レイジーにほむらの魔剣を持たせて以降、彼女の攻撃力は飛躍的な上昇を見せ。

 嚙みつきが届かない大型の敵相手にも、無双し始めるとんでもない護衛犬が爆誕した模様。飼い主の護人も、実は戸惑いを隠し切れないと言う現状である。


 休憩を挟みつつ、移動を続ける護人は未だに子供達との合流を諦めてなどいない。最悪でも全員の無事な脱出を念頭に入れ、刻々と変わる状況に対応して行かねば。

 護人はそんな訳で、時間を区切って作戦を推移して行く事に。時計を見れば、今は午後の2時過ぎである。あれから1時間が経過してしまったが、もう1時間はここで待とうと思う。

 それで駄目なら、11層に行くかダンジョンを出るか改めて考えるつもりだ。


 ここはどうやら、“弥栄やさかダムダンジョン”の入り口に近い南西側の突き当りらしい。とにかく中央か入り口に近付かないと、今後の作戦も儘ならない。

 そして移動する事10分、そこで既に何度目かのレイジーの遠吠えを披露して貰って。同じく何度目かの期待を込めて、反応を待ちびる護人とレイジー。

 その耳に、ようやく聞き慣れた2匹の遠吠えの返答が!


「うおっ、やっと返事が来た……! 皆は無事かな、どっちの方向だレイジー!?」


 思わず絶叫する護人に、レイジーも尻尾を振って喜びを表現。それからコッチだよと、ご主人をダム底の中央方面へと誘導して行く。

 その移動中に、5mを超す巨大マッドマンに絡まれたのはご愛敬と言うべきか。コイツも手下の泥ハンドを次々と召喚して、厄介極まりない相手だったのだが。


 家族にやっと会えると言う希望は、そんな障害など物ともしない。ってか、確実にさっきまでとは勢いが違って見えるのは、気のせいなどでは無い筈である。

 愛用のシャベルは、マッドマン相手には物凄く相性が良い。瞬く間に本体を粉微塵こなみじんにして、迫り来る泥の手は薔薇のマントが次々と粉砕して行って。

 レイジーが手伝うまでも無く、護人のみで大物ボスを撃破する無双振り。


 レイジーも、自分のご主人ならその位出来て当たり前と言う表情。さあ行くよと、戦闘が終わったばかりの護人を促して、どんどんと先へと駆けて行く。

 そして10分後、もう1度遠吠えを送り合ってのようやくの家族の巡り合いに。感激した子供たちは、護人に抱き着いて再会を喜んでいる。

 泣き顔の姫香と、はち切れんばかりの笑顔の香多奈と言う構図に。


 紗良も本当に安心して、思わず腰が抜けてしまいそうに。再会出来て本当に心から良かったと思うし、こんな思いは二度としたくはない。

 何にしろ、ようやく無事に再会を果たした来栖家チームだった。




「それで、これ以上深層へ進むかどうかを、今から話し合おうと思うんだけど……あんな罠もあったし、あまり深く潜り過ぎるのもウチのチームの実力には合って無い気もするんだ。

 時間は……もうすぐ3時になる感じかな?」

「あと3時間だね、確かにこんなに長い時間をダンジョンで過ごした経験は無いからさ。変に疲れてる気もするし、私も無理し過ぎないに1票かな?」

「そうですね、私も姫香ちゃんに同意かなぁ? あと残りの3時間ほど、ここか次の層で無理せず間引きしてれば、恐らく義務は果たせるんじゃないかと」

「あっ、でも……12層にあるって噂の、伝説の剣は見に行きたいかもっ!? 剣を抜けたら、私達きっと大金持ちだよっ!

 姫香お姉ちゃんなら、きっと抜けると思うんだ!」


 またもや香多奈の頓狂とんきょうな提案が為されるが、ここまで来れば1層も2層降りるのも一緒かも。紗良も12層の剣が刺さっている場所は、地図で貰ってると口にして。

 結局は、そこまで家族チームで進んでみる事に。


 それが決まっても、来栖家の面々はなかなか腰を上げずにおやつタイム。ってか、夕食用のお握りを既に食べ始めている姫香と香多奈である。

 ハスキー達も欲しがって、どうも探索の道中で結構なエネルギーを消費してしまった様子。ついには護人と紗良もお握りを頬張って、ちょっと早い夕食の風景に。


 その間も、香多奈のマシンガントークは止まらない。自分がコロ助と妖精ちゃんと一緒にはぐれてしまったシーンから、詳細な冒険譚ぼうけんたんを多少脚色しながら語りまくっている。

 そして水の精霊を召喚してしまった場面で、姉から待ったが掛かっての質疑応答。そんな成長は急には無理でしょと、姉の姫香は戸惑うモノの。恐らくそんな常識は、末妹には当てまらない気がする護人。

 何しろ相手《香多奈》は、勝手にスキルを覚えてしまう常識外生命体《不思議な子》なのだ。


 それはともかく、呼んでも無いのに勝手に来ちゃったとの話はいかにも香多奈らしい。そのお陰で紗良とも素早く合流出来たし、推定(トラップ)エリアを短時間で突破出来たのだ。

 ここはいちゃもん付けずに、素直に褒めておいた方が良い話なのだろう。そこから偶然に姫香が合流を果たして、イチかバチかで階層ワープに踏み切ったとの事で。


 何と言うか、運も多分に味方につけた素晴らしい動きには違いなく。それでも全員が合流するのに、1時間以上掛かってしまっていて。

 話の途中に、スマホのバッテリーが切れそうと、再び香多奈が騒ぎ出した。操作に詳しい姫香が、ようやく食事を終えて充電作業を手伝っている。

 ついでにルルンバちゃんに搭載されている、小型カメラのバッテリー交換も。


「これって最後に返すんだっけ、既に結構ボロボロになってるんだけど……失敗したよね、今回はルルンバちゃんが前衛ばっかりやってるのにさ。

 まだ香多奈の頭に引っ付けてた方が、損傷少なかったかもね?」

「何で私の頭にくっ付けるのよっ、嫌だよそんな重そうなのっ!」


 まぁ、向こうも探索者に貸した時点で、多少の損壊は覚悟しているだろう。そう思う事にして、敢えて付け替えはしない事で姉妹喧嘩を軽くいなして。

 食後の休みを充分に取って、残り3時間余りの探索を頑張ろうと気合いを入れて。ラストスパートで、あと2~3層を探索する感じでのんびりと進む事に。


 生憎と、護人が幾つも発生させたワープ魔方陣は、既に場所も良く分からなくなっていた。そんな訳で手頃な大型モンスターを見付けて、全員でボコりに掛かる。

 哀れな中ボスは、全員の容赦ない攻撃で3分余りでぼつ


「わっ、この中ボスってば、スキル書落としてくれたよっ! ようやく運が向いて来たね、叔父さんっ!」

「……俺がこの層で3匹倒した時には、魔石と素材位しか落とさなかったのにな。やっぱり幸運値の高い、ミケの存在が大きいのかな?」

「それか家族集合パワーなんじゃないかな、護人叔父さん。それより叔父さん、レイジーとのペアでここの中ボスを3体も倒したのっ?

 凄いね、私とツグミのペアじゃちょっと無理だよっ」


 それはまぁ、勢いと言うか確かに単独行動中にパワーは上がった気がしないでもない。そんな事を話し合いながら、一行は移動を果たして11層へ。

 周囲を窺うも、特に変わった気配も獣人の集落の類いも見当たらない。ここからは地図も無いけど、噂の12層の伝説の剣は中央付近の弥栄湖辺りにあるそうだ。


 探索者の間では結構有名な話らしく、B級ランカー辺りの有名人は毎年挑戦に訪れるのだとか。それがある意味、年に1度の大規模レイドの間引きで済んでいる理由なのかも。

 妹におだてられて、姫香は自分か護人叔父さんが抜くもんねと勇ましい勢い。そんなモノには毛ほどの興味も無い護人は、何故かもうひと悶着ありそうな予感がしてゲンナリな気分。

 当たらなければ良いとは思うが、こういう時の予感ほど良く当たるモノ。


 結局11層は、集落を見付けるより先に奇妙なキメラに発見されるのが先だったと言う顛末に。強引に絡まれた結果、なかなか熾烈な戦いを10分以上繰り広げ。

 そいつはカマキリと蝙蝠こうもりの双頭を持ち、尻尾は何とウナギだった。胴体はトカゲだかヤモリだかで、羽も恐らく蝙蝠のモノだろうか。


 外見からは余り強そうに見えないのだが、恐ろしくタフで魔法まで使うトリッキーさを併せ持っていて。しかも尻尾のウナギは、水のブレスまで吐く有り様である。

 魔法は混乱とか恐慌とかそんな感じだろうか、後衛の2人が掛かった時は慌てた護人だったけど。ハスキー達がカバーしてくれて、幸い遠くに逃げ出すなど大事には至らず。

 そうなると、本当に事故率が急上昇するところだった。


 ブレスに関しては、何故かムキになったレイジーが相殺してくれて助かったのだけど。蝙蝠の頭は超音波を吐き出して来て、これには護人も耐えるしか無く。

 姫香の斬撃は何度も決まっているのだが、持ち前のタフさで動きが鈍る気配も無く。ミケの『雷槌』も同じく、それでもコロ助の『牙突』とルルンバちゃんの一撃で、顔の1つが潰れてくれてようやくこちらに風が吹き始め。


 レイジーも尻尾のウナギに完全勝利して、後はもう雪崩式に主要箇所を潰して行く作業。そして倒し終わった姫香は、その場で大きくガッツポーズ。

 とどめを刺した一撃は見事だったが、それ以上にドロップした魔石は何とテニスボールサイズと言う。大物だと思ってたが、まさかレア種並みだとは思っていなかった一同である。

 他にもダム底キメラは、オーブ珠と奇妙な形状の杖もドロップ。


「ふうっ、強かったねぇ……でもオーブ珠も落としたし、結果は儲かったよ! 魔法に掛かった時は、すんごく怖かったけど……」

「本当だよね、香多奈ちゃん……魔法とブレスが使えて、殴られるのもタフな敵って嫌過ぎだよねぇ? あれ以上強い敵が出て来ない事を祈るよ、ハスキー達もボロボロみたいだし。

 回復して回らなくちゃ、MPポーションの用意お願いね、香多奈ちゃん」

「了解っ、紗良お姉ちゃん」


 激闘の後の毎度の回復作業、それが済んで一行は短い話し合い。このまま12層に向かうか、もう少しこの層で時間潰し的に間引きに勤しむか。

 子供たちは圧倒的に、伝説の剣のある12層に行きたがったのはある意味予想通り。そんな訳で多数決の結果、来栖家チームは問題の12層へと向かう事に。



 ペースを落とそうと言ってた癖に、2時間以上余して12層に到達と言う。これがいつものペースと言われれはそうなのだが、何ともせっかちには違いない。

 そして辿り着いた待望の12層、見渡すと割と近くに獣人の集落が1つ存在しており。割と立派な砦タイプで、攻め落とすにはちょっと大変そう。


 敵の密度もそれなりで、それでも全員揃ったチームの勢いは全然違う。午前中の勢いのまま、いつものフォーメーションで砦攻略にと襲い掛かって行き。

 ほんの10分程度で、毎度のルルンバちゃんの活躍で砦の扉の破壊に至って。やったーと勢い良く雪崩なだれ込む前衛陣、更にはハスキー軍団の活躍で意外と早く陥落させる事が出来た。

 慣れって怖い、ただし宝箱の開封はいつも以上に慎重だったけど。


 それはまぁ、強烈なトラウマがあるので仕方が無い。そして無事に開封に至って、鑑定の書やら木の実やらを無事に入手。薬品も2種類入ってたし、魔結晶(中)まで回収出来た。

 変わってたのはルアーが幾つか出て来た事くらい、この湖で使用されたモノかは不明だけど。嬉しそうに回収する香多奈は、過去のトラウマなど忘れ去ったかのよう。


 それから休憩中に、それじゃあ伝説の剣を拝みに行こうかと言う話になって。貰った情報を頼りに、一際高い丘を目指して移動し始める来栖家チーム。

 ところがこの層、意外と敵モンスターの密度が高い。ちょっと移動する度に絡まれて、なかなか距離を進めない有り様で。終いには、集落ごと移動中のサハギン族に絡まれる始末。

 さすがの密度に、こちらも戦力総出での迎撃態勢だ。





 ――そんな訳で、伝説の剣との相性チェックはもう少し先になりそう。







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