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7.野戦病院

アランは目覚める。手足が拘束されて立ち上がれない。大人にたちに囲まれて捕まったことを思い出す。

周りを見ると、負傷兵らしき人たちが横に並べられている。

「ボウズ、目覚めたか?」

声のする方をみると、白衣ではなく血まみれで黒く変色した服をきた男が話しかけてくる。

「ああ」

「どうして蛮族たちと一緒にいたんだ?」

アランは事情を話していく。カペラが怖くて逆らわなかったことも含めて正直に話す。

「帝国男子が蛮族の女子を怖がるなんて、情けない奴だ」

優しかった男は態度が急変し、説教を始める。

アランは男に蹴りを入れられた。

その男は負傷兵を救護してるわけでなく、痛いと喚いたり、弱音をはく兵士を

蹴りを入れたり、棒で叩きつけたりしていた。

「あ…あんたは帝国兵なのか?」

「俺は帝国兵でない。俺は誇り高きゴードン将軍の直轄の兵士だ。

怪我をしても弱音を吐かない屈強な戦士を探してるところだ」

アランにはこの男の言っている意味が分からない。

「ゴードン将軍は帝国の将軍なら、その部下の兵士も帝国兵じゃありませんか?」

その男は眉間にしわを寄せると

「それは書類上の話だ。帝国兵というくくりでは戦士と呼ぶにふさわしくない連中が多い。

ゴードン兵は屈強な兵士という意味で使い分けをしてるのだ。我々を雑魚と同列に語るな」

「………」

「黙るだけか、反骨精神もないか。ゴミだな」

男はアランに思い切り蹴りをいれて、野戦病院からでていく。


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カペラは両手両足が折れているのに、筋トレをしていた。

「おいカペラ、お前はあのクソガキと違ってガッツがあるな」

カペラは返事をしない。

男は血だらけの棒をカペラに投げつける。カペラは頭突きでその棒を叩き割る。

「見どころがあるじゃないか」

男は上機嫌になっている。そして男は、ゴードン将軍のいるテントに向かった。


********************************************

ゴードン将軍は頭を抱えていた。

こんな雑魚部族でも全滅させて、帝都に帰還しても、皇帝に褒められて、金品を貰う程度で終わってしまう。

もっと戦いたい、できるなら強敵と戦いたい。しかし、強敵が存在しないことで悩んでいた。

そこに機嫌が良いノールが入ってくる。

「ゴードン将軍、子供の件です。男はヘタレで見込みなし、女は素質ありだ」

「そうか。さっき話した通り進めろ」

ノールはゴードン将軍の目の前で手を振る。無反応だ。

ゴードン将軍は全く話を聞いてないようだ。

「しっかり話聞いてくださいよ。男は素質なしだから、捨ててきましょうぜ。あんなヘタレじゃ役に立たん」

そういって、ゴードン将軍の私物の酒を漁り始める。突如、ノールは脇腹を蹴られる。

「私は正常だ、ヘタレでも連れ帰ると決めた。ノール、お前の耳は飾りか?」

ゴードン将軍はナイフをノールの耳にあてる。

「いえ。飾りではありません」

「なら、遊んでないで早くいけ」

ノールは慌てて外にでる。


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アランはノールが出て行って、体が痛む。拘束されたままのため取り合えず横になっている。

負傷兵が3人立ち上がると、隅で何かを話してるようだ。話が終わるとアランの方に向かってくる。

負傷兵2人が念のためにアランを押さえつける。残り1人が首を絞めつけてくる。

「お前たちのせいで、俺たちは辛い思いをしたんだ。死ね、蛮族」

アランは顔を振って、蛮族の仲間でないことを伝えたいが、顔を振ることもしゃべることもできない。

意識が遠くなる。中級魔法の火属性が使えたら、こんな奴らを焼き殺せるのに、と心の中でアランは思う。詠唱は無理だが、薄れいく意識の中で中級魔法の火炎放射を唱える。唱えるといっても心の中でだ。

中級魔法が発動し、負傷兵3人は火だるまになった。


********************************************

ノールは簡易的な雨避けしかない野戦病院に戻っていた。

そこには黒焦げになった負傷兵の死体3つが吹き飛ばされたようになっていた。そして包帯などに飛び火したのか、助けてくれと叫ぶ負傷兵たちの阿鼻叫喚が聞こえていた。

「おい、ボウズ、どこにいる」

返事がない。この騒ぎで死んでいたら、ゴードン将軍の命令を達成できなくなる。それは非常に不味い。

ノールは必死に火の手から逃げ回っている負傷兵が邪魔だと思ったので、とどめをさしていく。

奥の方にいくとボウズが倒れていた。

「おい、ボウズしっかりしろ」

首に絞められた跡はあるが、まだ呼吸はある。こんな時に衛生兵はどこにいってやがる。

ノールは数時間前のことを思い出す。俺が負傷兵から根性あるやつを選別してたら、うるさいから殺したんだったな。

居ないものは仕方ない。取り合えず、ゴードン将軍のところにボウズを運ぶとしよう。


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軽い火傷をしているアランがゴードン将軍のテントに運ばれていた。

「これはどういうことだ、ノール」

ノールは青ざめた顔をしている。

「いつもの癖で、負傷兵ども虐めてたにしても、ガキの首まで絞めるとわな。

それで気を失ってヘタレだと?」

「そうなんっすよ。ちと首を絞めただけで、気をうしなったんで」

ゴードン将軍はノールの首を絞める。ノールは酸欠で気を失う。

他の部下たちも集めて、

「ノールは罰として、ヘタレと呼ぶこととする」


負傷兵が死んでることや、野戦病院が火事になったこともゴードン将軍の耳には入ったが、

興味のない雑魚は何人死んでも構わないと答えて終わった。

********************************************

ゴードン将軍は帝都に戻っていた。

蛮族の討伐が終わったからだ。雑魚を倒したことを褒められるので、ゴードン将軍の機嫌はものすごく悪くなっていく。皇帝との会話も同僚の将軍たちとの会話も苦痛そのものだった。

蛮族が強敵であったというストーリーが作られ、多大なる犠牲(実際は徴兵された農民だけで、正規兵は無傷)で勝利して、ゴードン将軍がいれば帝国は安泰だということを帝都の凱旋パレードで大々的にやらされたのだった。渋々笑顔を作り民衆に手を振るゴードン将軍であった。



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