5.カヘラの町
カヘラの町に反乱したグループは到着していた。
町の住民たちは彼らの帰還を喜んでいた。
ボスは腐り始めている院長先生の生首を槍の先に指して、
何かを叫んでいる。アランには方言なのか、少数民族の言語かは不明のため全く聞き取れない。
町の中央の大きい建物にボスが入り、アランたちも連れられて行く。
ボスの部下らしきものたちは建物の前でまち、アラン含めた子供は檻へと入れられる。
建物の中には老人たちが6人程いる。
「戦士カルク、帰還ご苦労。さっそくだがその首を我らで確認しよう」
老人たちが腐敗を始めている首を観察を始める。
杖を持つ老人が詠唱し、鑑定魔法も使ってるようだ。
「間違いない、帝国の過激派の魔法使いの一人だ。しかも上級魔法まで使いこなせるのは奴しかあり得んな」
カルクに老人たちの視線が集まる。
2人が詠唱を始めるとカルクに攻撃魔法が放たれる。
カルクは吹き飛ばれされ、上半身に軽度の火傷を負った。
「カルク、これはどいうことだ」
老人の一人が怒鳴り散らす。
「私が、協力者を殺してしまったんですかね?」
「馬鹿もん。これほどの男を殺したというのに、何故この程度の魔法を避けたり防御ができん」
カルクは予想外の叱責で目を丸くしている。みると老人たち全員がカルクを失望の目でみている。
「一族の誇りのために戦って帰還したのに何が不満なのですか!」
「わしたちは歴史に名を残すような英雄がついに我らの一族から出たと思ったのに、
実力がないからだ。倒した詳細を報告しろ」
カルクは刑務所での反乱の経緯を話す。
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アランは連れてこられた他の子供と一緒に簡易的な檻の中にいた。
杖は取られているので、魔法は発動できないとの判断で檻の中では拘束はされてない。
町の子供たちがアランたちに石を投げてくる。
「父さんの仇だ、死ね」
「帝国兵がこなければ!」
投げてくる石の中には動物のフンまで混じっている。
監視の大人はこれらの行為を黙認する。
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長老たちは
不本意ではあるが政治的にカルクを英雄と宣伝し、帝国との取引するために院長先生の首を帝都に送ることにした。
カルクには戦利品として持ち帰った子供たちを、奴隷として所有権を得た。
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カルクは唯一の家族といえる娘の待つ自宅に来ていた。
自宅は酷い有様だった。近所の人が食事の面倒を見ていたため娘のカペラは元気いっぱいのようだ。
しかし、掃除は全くしてなくゴミ屋敷状態であった。
「カペラ、これは何だ」
カペラは不思議そうな顔をしている。
「部屋が汚れてるじゃないか」
「汚れてないよ、お父さん」
笑顔で答える。
「お父さん、帝国のとても強い魔法使いを倒したし、私も将来父さんのように英雄になる」
カペラは木製の武器を父親に対して思い切り奮う。
カルクは防御が間に合わず、それを受けて耐える。
「まるで生きていた時の母さんの幼い頃を思い出すような一撃だったぞ」
カルクは痛みを顔に出さずに笑顔で答える。
カペラとカペラの母は体質で魔力持ちで、それを無意識で身体機能強化に使えていた。
カペラはこの時点で見た目に合わない戦闘力を有していた。
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カルクはカペラと刑務所の反乱を誇張した表現で自慢気に娘に語りながら、奴隷を受け取るために歩いていた。
檻に到着すると、子供4人全員アザだらけで糞までついていた。
「おい、見張りこれは何だ」
「身内をなくした子供たちの鬱憤ばらしですじゃ」
見張りは悪びれた様子もなく事実を語る。
カルクと見張りは言い争いをしている。
カペラは檻の外に斧を見つけた。
斧を持ち、檻の中に入る。
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ロイは檻の中に入れられた子供の一人であった。
杖がないことをいいことに散々な目にあっても反撃はできなかった。
目の前では大人二人が言い争いをして、弱そうな女子が斧をもって檻に入ってきた。
ここにいては蛮族に殺されるのを待つしかない。ならば、殺される前に殺すしかない。
あの女子を道連れにしてやる。
ロイは斧を奪おうと女子に飛び掛かるが、気づいた時には床にロイ自身が倒れていた。
上を見上げると、その女子が斧を振り下ろすのが見えた。
ロイは頭を叩き割られて死亡した。
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斧が振り下ろされた音で
カルクはカペラが檻の中にいるのに気付いた。
「お父さん、さっきの話の再現できたよ。こんな感じに頭潰したんだよね?」
カペラは褒めてほしそうにカルクをみている。
「ああ、そうだ。さすがは私の娘だ」
「うん、じゃあもう1個割るね」
そういうとアランの隣にいた女子の頭を掴んで蹴り飛ばす。
倒れた女子の頭を同様に斧でたたき割る。
「話の再現できたよ」
「さすがだ。でももうこれ以上は割るなよ」
「うん」
カペラはカルクの傍にいき頭をなでなでしてもらう。
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アランともう一人の子供のロンはカルクとカペラの怒りを買わぬように従うことにした。
町を流れる小川で体を洗えと言われたら、全裸になり洗う。
そしてゴミ屋敷についた。
「お前らの初仕事だ。この家のゴミをきちんと片付けろ。見張りにカペラをつける」
カルクはどこかへ行ってしまった。
斧の素振りをしながらカペラは見張りを始めた。
アランは黙々とゴミらしきものと使えるものとを分別していく。
ロンはとにかく何でもかんでもゴミに捨てていく。
いきなりアランの足元に斧が突き刺さる。
「何をしている?」
カペラはアランに急接近する。
「これをゴミに…」
アランは穴の開いた男性の靴下を捨てようとしていた。
「ゴミではない。次ヘマをしたら、どうなるか分かるか?」
「……」
斧を片手で持ち上げると、それを振り下ろし、アランの頭を叩き割る直前で止める。
アランの目の前からカペラが消えた。
「お前もか!」
ロンも同様に脅された。
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夕方になりカルクは家に帰ってきた。
「おい、お前ら、これはどういうことだ」
「私はちゃんと見張りしてたよ」
「そうだな。カペラはとても優秀だ」
カルクは、床に落ちてる靴下を拾って穴を見ると
ゴミ箱に入れる。
「お前らはこんな簡単な雑用すらできんのか?」
アランとロンはカルクにボコされた。