4.囚人の反乱
突如、凄まじい爆発音が起きた。
孤児院の職員も子供も外に出てみると、隣の刑務所内で爆発が起きたようだ。
職員の男性一人が隣の刑務所へと様子を見に行く。
子供たちは取り合えず、いつもよりも早いが、魔法の朝練が始まった。
朝練してる最中も刑務所で爆発音が続く。
そこに刑務所の様子見が終わった男性が息を切らしながら戻ってきた。
「院長先生、囚人たちの暴動です。魔法による支援要請がありました。」
院長先生はそれを聞くと、
「いつもの囚人処刑のように子供たちにやらせなさい。丁度いい機会です。」
突如囚人制圧のために、班分けが行われた。
子供4人、職員1人の計5人で1班のため4班できた。
院長先生は全員の前にたつと
「お前たちは貴族の親に食い扶持を減らすためにこの孤児院に預けられたものが多い。
今回しっかり活躍すれば、きちんとこのことはお前たちの両親に報告する。
運が良ければ、また両親と暮らせるものもでてくるだろう」
アランを除いた子供たちにやる気がみなぎる。
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看守たちは劣勢に立たされていた。
今月入れ替わった人員に裏切りものがいて、看守たちの武器庫は既に囚人たちに奪われていた。
刑務所の唯一の出入り口を守るものたちはなんとか持ちこたえていた。
「魔法使いの援軍はいつくるんだ。このままだと合流する前に前衛になる我々が全滅してしまう。」
両足にけがを負って動けない看守長はぼやいている。
孤児院から来た職員に窮状を伝えたが、1時間たっても援軍が来ない。
「魔法使いはいつもマイペースだといっても、このままでは…」
刑務所内では陥落した見張り所は自決用の爆弾にて既に半数は壊れていた。
自爆したところにいた看守は死亡していた。
「お待たせしました。朝食に時間かけずにきました。我々も加勢しましょう」
やっときた職員は緊張感のかけらもなくいう。
その後ろに申し訳なそうにしてる職員もいる。
職員も魔法が使える貴族と使えない平民とで、今回の事態の温度差があった。
「こどもたちの経験を積ませるために4班に分けてあります。
4班分の前衛をだしてください。そうだなぁ…取り合えず前衛4人を4班で16人」
「……そんなに出せるか! 見てみろ、囚人を抑えるのに既に20人はこの門の砦で戦っているし、待機部屋にいるのは負傷兵のみだ」
「なら16人抜いて4人で守ればよいのですよ。平民は計算ができないバカで困るな」
「……」
「どうした?早くしろ。こちらはお前ら愚民のしりぬぐいのために来てやったんだぞ」
「分かった。今は交戦中だから、一先ず支援して今の敵を倒してください」
職員の男性は中級魔法を唱えると、味方ごと敵を燃やした。
見方ごと燃やす職員に警戒して残った囚人たちは門から離れていく。
「2人減ったから、2人と貴方でこの門は守りなさい。我々は狩りを始める」
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アラン、ジョン、カレン、ニック、看守4人、職員の男性(平民)の計9人で動くことになった。
ジョンとカレンが中級魔法を使えるので、職員は魔法が使えないものでも戦力的には問題ないという判断だ。
移動中に奪われた武器庫にあった危険物の情報を共有していく。
職員の男性はそのリストを歩きながら紙にメモしていく。全てメモをし終わると
「今回は撤退した方が良い。返り討ちにあう恐れがある」
非情に青ざめた表情で話している。
「嫌だ」
ジョンが拒否する。看守たちは子供の駄々だと思い引き返そうとする。
「待ってください。子供の自主性を重んじるので撤退権限があるのは私ではくジョンです」
看守たちは納得はいかないという態度だが渋々従う。
ジョンに言われるまま看守たちは前に進む。
突然一番前を歩いていた看守が吹き飛ばされた。地雷が埋まっていたようだ。
前衛の看守二人が即死、残り二人が重傷で移動不可になった。
「役に立たない連中だ」
ジョンは悪態をつく。
「おいアラン、次はお前が先頭を歩け。引率のあんたは最後尾だ」
「ちょっと待ちないさよ。あんたのせいで前衛が全て死んだのだから撤退すべきよ。
私は安全なところから魔法打ちたいの。アランやこのおっさんでは前衛は無理よ」
「女のお前には決定権はない。貴族で男子の僕がこの中で一番偉いんだ!
嫌ならここから一人で帰ってもいいぞ」
カレンは渋々ながらジョンのいう通りにした。
しばらく進む。アランはあからさまに掘り返した土の前で止まる。
「おいアラン、止まるな。進め」
「しかし、あからさますぎるが、罠があるとしか…」
ジョンはアランを無言で突き飛ばす。
バランスを崩したアランは誰が見ても違和感のある土の上に倒れた。
罠が発動し、植物系のトラップにてアランが拘束された。
「これで安全だ。俺たちは先にいく。後で追いつけ。命令だ」
ジョン含めて3人はさらに進んでいく。
アランだけ残った。
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アランはトラップにかかった状態で半日は経過した。
その後も爆発音や魔法による火の玉や雷らしきものが空に向かって放たれていたのを何度かみる。
トラップの植物が徐々に締め付けてきていた。
始めは気づかなかったが、徐々に対象者の体を絞めつけてくるものらしい。
翌朝になると、両腕切断されたアランとカレンが囚人たちに連行されていた。
囚人がアランを見つけると、アランの顔面に思い切り殴りつける。
「お前はこの程度で許してやる。ここをでたら奴隷商人に売り払うからな。
でも抵抗するならこいつらのように、両腕落とすぞ」
アランは両腕を縛られ拘束される。
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囚人たちは多大な犠牲を払いながら看守と魔法使いたちを撃破・捉えていた。
「ボス、4つ目の班の連中もこれで全部ですぜい。」
晒し首のように施設の職員の大人4人首と看守たちの首が並んでいる。
その中に子供の首も混じっている。
「俺たちの同胞を散々一方的に殺してきたガキどもだ。
全く罪悪感がないわな」
囚人たちが爆笑する。アラン含めて生き残ってる子供6人は恐怖する。
ボスはジョンの前に立つと、ジョンの頭を斧でたたき割った。
「中級以上使えるやつは生かしておくと何するか分からんからな」
そういうと次はカレンの頭も同様に斧でたたき割った。
生きてる子供4人になった。
「この中で特別な子がいるならいえ。それが本当だったら助けてやる」
すると3人の子供がアランを指さして
「院長先生がこの子は特別だと言ってました。」
ボスがアランの目をのぞき込む。
「どう、特別なんだ?」
「平民出身だと院長先生がいってました」
ボスがアランの手をみる。
「確かに高貴な身分な奴の手でないな」
そういうと、3人の子供の手を思い切り足で踏みつぶした。
「これでお前らお揃いだな」
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院長先生と呼ばれていた男はため息をついていた。
どうやら4班とも全滅したのが魔法による監視で分かったためだ。
アランを特別だと嘘をいいジョンとカレンにいい刺激を与えて成長を促す
目算であったが、2人とも試練は超えられなかったようだ。
自分の後任を育てるには子供の時からこれくらいの修羅場は超える必要があると
信じて疑っていなかった。
「よぉ、俺たちは出てくから大人しく死んどけ」
唯一の出入り口の門に武装した囚人たちが来ていた。
「やれやれ、ゴミが何百人いても私には勝てませんよ」
院長先生の近くには丸焦げになっている看守の死体が複数あった。
「あんたがやったのか?」
「ええ、もちろん。私に文句をいったのでね。貴方たちも焼却してあげますよ」
院長先生が早口で詠唱すると、大爆発が連続で起こる。
密集していた囚人たちの多くはこの爆発に巻き込まれて、死亡する。
「おい、このガキどもが死んでもいいのか?」
囚人のボスがアランを持ち上げて、人質にする。
何故か院長先生は笑っている。
「そんなゴミいらないですよ。もちろん他の生き残ってる子供も才能がないゴミだからね」
そういうと、また早口で詠唱し、ボスめがけて魔法を発動する。
音速でボスめがけて飛んだ魔法であったが、アランと魔法がぶつかった際に消えてしまった。
ボスは院長先生が動揺した隙をついて近づき、ナイフを足に突き刺した。警戒して距離を置く。
「これは大恥。発音が正しくなくて、発動しなかった凡ミスでしょうね」
ボスはアランを院長先生に投げつける。院長先生はアランごとボスを魔法で貫通させるために詠唱する。
確かに魔法は発動した。本来ならアランを貫通して、ボスも貫通して終わるはずだった。
結果はアランを魔法が貫通することはなかった。アランを投げて再度接近したボスが
院長先生の首をはねていた。
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囚人たちは自由を手に入れた。
今回の反乱で600人近くいた囚人が生き残ったは30人程であった。
そのうち10人はこれで協力は終わりだと言い、解散し各々が行きたい方角を目指した。
残りの20人は故郷の少数民族の町に帰ることになった。
アランはその少数民族の町に連行された。