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<第9話>認められなかった結婚

 「光さんには、学生時代からずっとお付き合いをされていた女性がいらっしゃいました。


  同級生のお二人は、お互いが社会人として一人前になった時に、結婚をすると約束をしていたんです。


  光さんは、当時まだ社長をされていたお父様の会社に就職しました。

  持ち前の温厚な性格も味方して、仕事を上手に教えてもらいながら、順調に会社で仕事を覚えていました。


  そして社会人として数年が経ち、ご自身が一人前になったという自信も持たれて、身を固める決心がついたのです。



  光さんは、ご自身が結婚したい相手がいる事を、お父様にお話されました。



  最初、お父様は大変喜んでいました。



  旅行中の奥様が戻られたら、早速両家で顔合わせをする日程の調整をしようとまで盛り上がっていたんです。


  ところが、相手の娘さんが一人娘で、光さんがそちらの家に婿に入りたいとお考えになっている事を話された時、事態は急変したのです。



  お父様は、自分の息子が桜井の家を出て行くような結婚は、断固として認められないと激怒されました。


  光さんは、相手の苗字が珍しい家柄なので、その名前を大切にしてあげたいという理由を話されていました。


  ですがもうお父様は、話を聞く事はありませんでした。



  

  結局、途中から話に加わった兄である剛さんも、お父様の意見に賛成をしていました。


  さらに、『そんな決意のある結婚ならば、一日も早く桜井家から出た方がいい』とまでおっしゃったのです。



  ですから光さんは、奥様が戻るのも待たずに、話をされた翌日に家を出て行ってしまわれたのです。



  あの時、奥様がいらっしゃれば、状況も変わっていたのかもしれません。」





  「清子さんは、奥様がいたら、そんな事にはならなかったと思われるのですか?」

  黒川が聞いた。



  「ええ。でもこれはあくまでも想像の話です。


  奥様は、ご家族で一番お優しい方です。


  そしてよく光さんと近い考え方をされるので、何か良い解決策を言って下さった気がするのです。


  そして理会長は、奥様の意見を大切になさいますから。」




  「それでは、なぜ光さんは味方になりそうなお母様が旅行中に、わざわざ結婚の話をお父様にされたのでしょうね?」

  黒川が清子さんの話を聞いて、自分が思った疑問を思わず口にした。



 「あらっ?言われてみれば確かにそうですね。

  今までそんな風に考えた事がありませんでした。



  理会長は、旅行から戻られた奥様に、『光さんの事は、最初からいなかった息子と思うように』ともう決まった事として話をしました。


  ですから、その決断を聞いた奥様は、ただ泣く事しか出来ませんでした。




  後日光さんは、お母さまにお手紙を送ってきました。




  ただ一文。


  『家を出る自分の我儘をどうか許して欲しい』


  という内容だったそうです。




  ですから光さんと奥様が、結婚について直接話してお互いの意見を聞く事は無かったはずです。」

  清子さんが思い出しながら話してくれた。


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