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<第31話>光さんの話 1

 黒川が、質問を始めようとした時だった。


 「光さんは、とてもお仕事熱心なのですね。

  やはりホームに入居するなら、光さんのような方がいる所にしたいものです。


  ちなみにこちらのグループホームは、新規の入居者は募集しているのでしょうか?」

 姫子が光にたずねた。



 「えっ!?


  いいえ、募集はしていません。


  おかげ様で、現在は入居希望者の方にご予約をして頂いて、空きが出来たら順番にご連絡するという状況になっています。」

 家族の事を聞かれると思っていた光さんが、少し驚きはしたものの、姫子の突然の質問に丁寧に答えた。


 「そうなのですか。

  やはり人気のホームなのですね。


  こちらに来て拝見させて頂きましたが、居住スペース以外にも、リハビリの施設やコミュニケーションルームという娯楽施設も併設されていて、生活しようと思う側の気持ちに沿って作られている施設という印象を受けました。


  きっとこのような施設を作るのは、大変だったのではないでしょうか?」



 「そんな風に言って頂けると、私としても嬉しい限りです。


  実は父…、あっこの父は妻の父親の事でして、私の義父の事なのですが、その父のお世話をしていた時に聞いた話も参考にして建てた施設なんです。


  実際には、父は自宅で最期まで過ごしましたが、『家族に面倒を掛けたくはないが、閉じ込められるような所にも絶対に行きたくない』と言っていたのです。


  そんな話を聞いて、理想的なホームについて考えるようになったからかもしれませんね。」



 「そうだったのですか。

  それは良いきっかけでしたね。



  ところで光さんは、最初は桜井コーポレーションで働いていましたね。


  普通のサラリーマンから介護の仕事に変わったのには、やはり何かきっかけがあったのでしょうか?」



 「ええ。

  妻の両親の介護を経験して、自分達の力不足を実感したのがきっかけです。



  母の時は、認知症が悪化して、一人では家に居られなくなったんです。

  その世話には、日中は年老いた父だけでは手に負えず、介護の方にも来ていただきました。



  そんな時、自分も少しでも役に立ちたいと、私達は介護の勉強を始めました。


  そして勉強をすればする程奥が深く、これからの社会に本当に必要な仕事のような気がしてきたんです。


  だから妻にも相談して、私は転職をしました。

  本格的に介護の勉強をするには、やはり実際の現場で働くのが一番だと思ったからです。



  こうして、仕事でホームについて学び、自宅で両親の面倒を見た事で、どちらの側の立場にも立って考える事が出来るようになったのでしょうね。」


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