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<第28話>道すがら

 「ところで、一つお伺いしても宜しいでしょうか?」

 姫子が黒川に話しかけていた。



  二人は、光さんとの待ち合わせ場所の、彼の職場に向かっていた。



 「昨日黒川さんは、私と一緒に会いに行くことがカモフラージュになると仰っていましたよね。


  今向かっているのは、グループホーム。

  

  という事は、私が入居希望者で、あなたがその付き添いという二人組の演出なのでしょうか?」

 姫子が少しキョトンとした表情を浮かべながらたずねてきた。



 「ええっ!

  そんな事、考えていませんでしたよ。


  自分は、一人で行動するとこの風貌のせいか、いかにも捜査をしている様に見えるらしいんですよ。

  だから、少しでもその雰囲気が消せればと考えて言ったまでです。


 


  大体、純情さんが入居希望者に見える訳無いじゃないですか。

  今から行くのは、グループホームなんですよ。」

  黒川が驚きながら答えた。




  初対面の時は、話しかける事も緊張していた黒川であったが、昨日の喫茶店での作戦会議を経て、随分と二人の距離は縮まったようだった。




 「ええ、だから言ったんですよ。

  私も将来お世話になるかもしれないじゃないですか。

 

  このまま長い人生を一人で暮らすよりも、その方がいいのかもしれないと思ってもおかしくはないでしょう?」

 姫子が答えた。



 「でも、そういう事はもう少し人生を色々経験してから考える方がいいんじゃないですか?


  まだこの先、どんな事があるか分からないじゃないですか。



  ご結婚だってこれからされるかもしれませんし…。」

 黒川が少し照れながら答えた。




 「結婚!?


  黒川さん、私の事を一体幾つだと思っているのですか?


  もう私は50歳ですよ。」

 姫子が困惑するように答えていた。




 「ええ~っ!

  純情さん、それは冗談か何かですか?


  そんな…、自分よりも年上だったのですか?」

 黒川が驚きを隠せずに答えた。

 



 「そんなに驚かれる事ですか?


  私は、黒川さんが私よりも年下の男性だと、ちゃんと認識していましたよ。



  黒川さんは、私の事をそんなに若いと思っていて下さったんですね。


  ふふっ…、それはどうもありがとうございます。」

 姫子が笑顔で答えた。





  (50歳…。

 

   この顔つき、体形で本当なのだろうか…。

   まだ信じられないが、本人がそう言うのだから嘘ではないだろう…。




   いやぁ、女性というのは、やはり未知の生物だ。)

 

  姫子の年齢を聞いた黒川は、あまりの衝撃で動揺を隠せなかった。


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