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<第10話>内緒の話

「そんな事があったのですか。

 確かに大事件でした。


 辛いお話を聞いてしまったりして、すみませんでした。」

 黒川が申し訳なさそうに話した。



「刑事さんは、見た目よりずっとお優しい方なのですね。」

 清子さんが優しく微笑みながら話した。



「いいえ、見た目通りですよ。


 刑事という人間は、無骨な生き物なんです。


 そして自分は、その刑事という人間にすっかり染まった生き方しか出来ませんから…。」

 黒川が少し照れながら答えた。



「そうでしょうか?

 ご自身をそういう風に言う人間に、悪い方っていない気がします。」



「ははは…。

 ありがとうございます。」

 黒川は、清子さんの自分に対する印象に照れを感じながら、もう笑うしかないと答えていた。



「ところで清子さん、ご家族の方は、次男の光さんとは、家を出てから連絡を取ったりはしていないのですか?」

 黒川がたずねた。


「えっ?

 どうなのでしょう…。」

 清子さんが少し慌てた様子で答えた。



「会長が決めた事なのですが、ご家族の間で、光さんの話題は禁止されています。


 そして、もしもどなたかが連絡を取ったとしたら、それは家族の中での違反行為になってしまうんです。」

 清子さんは静かに答えた。



「それは、厳しい禁止事項ですね。


 やはりこういうきちんとした家柄の方々というのは、私の想像以上に厳格なしきたりが存在するものなのですね。」

 黒川が驚きを隠さずに答えた。



「刑事さんもそう思いましたか?」

 清子さんがたずねた。


「ええ、そう思います。」

 黒川がすぐに答えた。



「ふふふ、私もそう思いました。



  …そして奥様も。


 今から私が話す事は、どうか内緒にして下さい。」


「もちろんです。」



「奥様は、『それでは、家族ではない私が、光さんと連絡を取るなら、それは違反行為では無いはずです』とおっしゃいました。


そして、私に光さんと連絡を取ってくれないかと相談をして下さいました。


私は、その役割を引き受けました。


そして私は、光さんと近況の連絡を取り合う話を、送られてきたお手紙の住所に伝えました。




でも、光さんからは、


『父が禁止したのなら、自分もそれに従うべきだ。


清子さんは、自分にとって家族と同じ存在だと思う。


だからその手紙に返事をする事は、やはり違反行為になってしまうと思う。


ですから、自分から返事を送るのは、今回が最後になります。

知らせてくれてありがとう。


ただし、自分から何か知らせたい事があれば、どうにか清子さんに連絡を致します。』


こんなお返事が届きました。




 その後、結婚した事や子供が生まれた事、引っ越しをした事などが、光さんの奥様から私に連絡がありました。


 最近では、その成長した娘さんからお手紙が届くようになったんですよ。」

 清子さんが笑顔で教えてくれた。



「厳格な家族って、不思議な関係なんですね。」

 黒川が答えた。


「私もそう思います。


 今日こちらに来て下さったのが、刑事さんのような方で良かったです。




 そうそう、大切な事をまだ刑事さんにお伝えしていませんでした。


 最初におっしゃっていた、匿名の連絡の事ですが、それは私が致しました。」

 清子さんがさらりと言った。


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