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雨天にて
旅行雑誌をめくれば見ることができそうな、言うなれば退屈な風景であった。
高い丘に囲まれた湖は、両端に突き出た陸地によって窮屈そうだ。生き物の息遣いは感じられない。
湖面に手を差し込んで揺らしてみる。丘のかたちが歪んで、この景色が模型ではないと実感した。
そうするとなぜだか、湖面の景色だけが本物のように思えた。
結ばれた像など指先の動きひとつで歪んでしまう曖昧な世界が、自然な在り様であると。
目の当たりにする光景より、鏡像に真実が宿って見える。
世界は不完全で不安定であると信じたいかのように。
そんな心を湖は透かし取ったのか。空模様の変化を映して、曇っていく。
世界が鈍色の曇天一色になる。
揺らしてみても、変わっているようには見えなかった。
取り残された気分になる。
世界の一部である実感がほしかったのだと気づくのに、そう時間は要さなかった。
世界のように変われるだろうか。
そんな不安を、降り始めた雨が拭ってくれることはなかった。