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日光は目に焼き付く
黄金の太陽を覆い隠す松の木を、それは恨めしげに見上げていた。
それは色を知らない。自らの視界を遮る松についてすら知識がなかった。
わかっているのは、その場所へは届かないということだけ。
その先の太陽は、追っても追っても手に入らない。
湖面に反射する山稜は、太陽の光で染まっていた。
空気が澄み渡っている。空と水面がふれ合っているのだと錯覚するほどに、青々とした景色が広がっていた。
そうしたすべてが太陽の恩恵であると、それは知っていた。だから焦がれる。
けれど、それが近づこうとするほど、太陽は同じ距離だけ遠のいていく。
決してふれられないものに憧れた。
はるか高くそびえる松の木の先端は、太陽にふれているのだろうか。木陰だけが太陽の姿を隠してくれる。
そのまま忘れてしまればいい。
けれど、世界の美しさへの感動を捨て去ることができない。
その根源である太陽を手にしたい。
だからそれは、湖を泳ぎ出す。
水のなかで息をし続ける。
魚は、自らの姿も知らないままだった。