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桃源

 葦で作られた垣根が風景を区切っている。

 人が自然に手を入れるようになって幾年月が流れたのだろうか。

 田園風景に連なる桃の木々は、よく手入れをされているように見えた。

 桃色、と称されるほどに花の色彩は鮮やかだ。とりどりついた花弁からは、やわらかさのある甘い匂いが漂っていた。

 遠く、オレンジ色の屋根の家屋から子供の声が聞こえる。

 山稜が音を吸い込むより大きく、空の青さよりも深く、その声は響いた。

 子供の声に応える農夫は、まあるい桃の実を手にしていた。

 それはすべて、垣根の向こう側の営みだ。

 舗装された道路に立つ私には、何ひとつとしてふれることのできない風景だ。

 私は視線を外した。

 たとえ、目に焼きついた景色だったとしても、その場所から離れることはできる。

 旅は続く。

 連れ添う桃の香りが私の獲得した慰めであり、だから、すぐに消えた。

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