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華咲く世界の探し物  作者: 海月
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転生は勇者が十八番?

──よくある転生物のストーリー


異世界転生やなんかが多くて色んなキャラと出会う

話が多い。

可愛い女の子やかっこいい騎士なんかと出会うのを

見るとなぜだか転生したいと少しばかり思わなくもない。



でももし、異世界に転生した後が違うなら?

そもそも"異世界転生"が死後ではないかもしれない。

魔法やRPGじみてない別の世界線なら……?






「転生……するなら僕はなんだろうな」



夏季休暇前最後の講習を終え、普通の男子大学生の

小春は公開されてる転生パロの映画の話を聞いて考えた。

ろくに友達も居ないので帰る支度をしつつ周りの話を聞くのがいつもの日課だった。

周りは完全に夏休みモード。騒がしい校内を抜け足早に帰宅しようとした。


帰路に着き、いつものように歩道橋の階段を登る。

あいにく天候は雨で立て付けの悪い歩道橋は足場がいつもに増して不安定に感じる。


そんな時だった──

「うわっ!?」


天候の悪さやらで小春は階段から落ちてしまい、不運にも打ちどころが悪くそのまま意識を失ってしまった。



◇ ◆ ◇ ◆



僕は小春。友達もろくに居らず夏季休暇前の日に雨の中不運にも階段から落ちてしまった。打ちどころが悪く気がついたら目の前が暗くなっていった。


僕は "死んだ" と()()()()()


だが目を覚ました先はどこか古臭くて、でも空気はとても澄んでいる。ほんのり暖かな香りは過ぎ去った春を思い出させた。

(ここは……天国?いや、ろくな事してないし…かと言って地獄……には見えないな……)


そんなことを思いつつ目を開けると、そこは木造の少し質素な部屋だった。何が起きたか分からないまま身を起こすと部屋には1人の男性がいた。


見慣れない部屋、窓からさす光からするに外は晴れている。あの日、僕が落ちた日とは違うような。いや、それだけではなくまるで時間軸すら違うように感じる、不思議な部屋だった。

唖然とする僕に気付いた彼は優しく微笑み、話しかけてきた。


「やぁ、目が覚めた?コハル」


香色の瞳が暖かくこちらを見つめる。10代後半のような青年は現代であまり見かけない髪型をしていた。彼の腰くらいまで緩く結ばれた呂色の髪がふわりと揺れる。


「えぇと……ここはどこですか?というか…なぜ僕の名前を?」


しどろもどろになりつつ聞くと彼は僕の隣に腰を下ろし話し始めた。


「ふふっコハルは変わってないね〜。いいよ、全て話してあげる。」


そう言うと僕の隣に座り、色んなことを話し始めた。


彼の話では「僕に"転生"してある世界で色々なものを救う勇者になってほしい」というざっくりした内容に反してかなり大変なことを言われていた。


「僕なんかに出来ないよ……それに転生とか…勇者なんかに僕はなれないし……」


僕は何か才能がある訳でもないし優れてる訳でもない。普通の大学生だった僕に何が出来るのか…………


「大丈夫。コハルなら出来るし、誰だって勇者になれる。」


弱気な僕に彼はそう言った。でも自己主張の弱い僕には関係ないとでさえ思ってしまった。こんな情けない勇者なんてモブくらいの弱さだ。そう思った僕を、彼は

見抜いたかのように話を続けた。


「……それに勇者が必ず完璧に世界を救うなんて思わなくてもいいじゃないか。自分の行動が誰かを救う、行動が吉と出るか凶と出るか分からないまま進むのはどんな勇者も同じだ。失敗して挫けて終わるか、そこから諦めず立ち向かい"勇気を与える者"として戦い続けるかの違い。」


彼の香色の瞳がこちらを見つめる。


「コハルの思う勇者はアニメや漫画の中の勇者でしょう?」

「え?うん……そうだけど…」

「僕が言うのは騎士みたいな敵と戦うだけが勇者では無いし第一に君に行ってもらう世界はモンスターなんて居ない人間界だ。」

「そ、そうなの?」

僕はてっきりドラ⚫エとかに出てくる世界線に飛ぶのが転生の十八番と思っていた。

「ふふっ、やっぱりコハルはコハルだ。そうやって固定観念やなんかに囚われるだけじゃ駄目だよ。」

「うぅん……そうだよね……」


弱い僕が敵を倒す、そんな世界では無いことに一息つくも、僕の辞書に勇気なんて言葉はない。


「お願いコハル。君しか出来ないんだ……頼んでもいいかな?」


自信なんてない。それにまだ状況も追いつかないくらいの展開の速さに戸惑うことが多すぎる。

……けれど、彼の様子からするに助ける他ない。


「……いいよ。やってみる」


「本当に!?ありがとう!コハル!」


僕の了承を得た途端に彼は立ち上がり、僕の手を引いて扉の前に立った。


「コハル、この扉を開いたら真っ直ぐ歩いていって欲しい。この先は君一人だ。でも大丈夫、僕らは必ず、どこかで会える。」


そう告げると僕の背中をポンと軽く叩いた。


「さぁ、行って」


恐る恐る踏み出した。その時、僕は1つ大事なことを忘れていた。

「待って!」

勢いよく振り返り彼の方を向き直す。

「どうしたの?」

「な、名前!君の……」


何故彼が僕を知っているか、その理由は少しばかりはぐらかされた。でも名前くらい知っとくべきだ。


「名前……(ハオ)。僕は(ハオ)って言うんだ。いい?」


(ハオ)と名乗った彼を僕は忘れることはあるまい。この先の世界でも……

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