文学少女の超科学
続編を書くつもりはない予定ですが、多少でも気に入ってもらえればそれでよしです。
「見て。今日も美香様はお美しいですわよ」
「本当ですわ。本を読む姿が知的で心奪われてしまいますわ!」
お嬢様方が教室の窓際でカーテンたなびく中を、静かに読書する可憐な私を見て、キャーキャーと噂している。
まぁ、私も一様お嬢様なのだが、それは建前で。
この本も外側だけ洋書っぽくカバーをしているだけで、中身は『科学書』だ。
初めからこんな感じだったのではない。最初は私も乙女だった。
ナイフとフォークの使い方とか、しゃべり方とか、相応しい読み物とか、楽しみ方とか、お茶会とか……。仕来たりにうんざりしていた帰り道、高校生の男子が落とした『ラノベ本』で覚醒してしまった。
「な、何んという読み物なのかしら!」
自室で読み明かし、心躍り思わず声が出た。
特に『無鉄砲な魔法少女が爆裂魔法を炸裂させる』シーンが何とも愉快で、爽快感溢れた。
「私もこんな魔法を使いたい! いえ、使うのよ!」
そう自分に宣言してから、実現の為にありとあらゆる科学書を読むようになった。
そして、遂にこの日が来た。
私はぱんっと本を閉じると、席を立つ。
「もうお帰りですか? 美香様」
「ええ。野暮用で。失礼しますわね」
お嬢様方に手を振られて校舎を出ると、直ぐに飛行場へと向かい、東京ドーム5個分の広さの試験場へとチャーター機を飛ばした。
到着すると、私はエンジニアの元に駆け寄った。
「鈴木、準備はどう?」
「美香様、万端ですよ。玩具と言う名目上、予算が組めず、一部はスクラップ品ですが、稼働には支障がないかと」
あらゆる工業部品を組み合わせてできた砲塔がそこに鎮座している。
「よし! では、作動よ。ニッサン!」
「ニッサンではなく仁藤な、お嬢! あいよ!」
仁藤はEV車の充電ケーブルを引っ張り出す。
「これで、バッテリーに充電したらいつでも行けるぜ!」
私はコードをプラグに差し込んだ。エネルギーが溜まっていく。
「エネルギーゴリゴリMAX!」
充電完了のアナウンスが聞こえた。
パトランプが回転し、キュインキュインと甲高い音が高鳴る。
画面上に『ボタンを押せ!』とレインボー色に表示された。
「うぉりゃぁ~!」
私は握り拳を思いっきりボタンに目掛けて振り下ろした。
ちゅどーんという轟音と共に凄まじい風とレールガンが放たれる。
「はぁぁぁっ! 最高~!」
私はハイテンションで叫んだ。
この爽快感、溜まらない。
まさかこの技術が、日本の危機を救うことになるなんて。
この時の私は考えてもいなかった。
ありがとうございました。