第8話 若いきつねと淫らなたぬき
七海艦長の戦艦に乗せられた私は、薄暗い部屋に閉じ込められました。
「あなたは作家だそうね?」
七海艦長が問いかけます。
「なろうの底辺ですけどね」
自虐気味に答えます。
「底辺でも作家を名乗るのなら、即興でショートストーリーくらい作れるわよね? 制限時間は一時間。面白かったら解放してあげるわ」
七海艦長が条件を提示してきました。
出来らぁ!
ってなわけで、即興作り話です。
◇◇◇◇
昔々あるところに、若いキツネの娘がいました。
若いキツネは遊び盛りなので、今日も夜の街に出掛けます。
繁華街に着くと、中年のタヌキの男に声を掛けられました。
「ねぇお嬢ちゃん、一緒に飲まない?」
「えぇ、どうしよっかなぁ~?」
若いキツネは遠回しに断ろうとします。
しかし、中年のタヌキはしつこく誘ってきます。
「いいじゃん。一杯だけ。ね?」
「……わ、分かりました。一杯だけですよ?」
若いキツネは押し切られ、仕方なくタヌキと一緒に居酒屋に入りました。
注文したビールがテーブルに置かれ、中年のタヌキと乾杯します。
「ほら、遠慮せず飲んで」
「い、いただきます……」
促され、ジョッキに口をつける。
その瞬間、若いキツネの意識が遠のきました。
「あ、あれ……? おかしい、な……」
「どうしたの? もう酔っちゃった? しょうがないなぁ」
中年のタヌキがそう言ったのと同時に、若いキツネは眠ってしまいました。
気が付くと、若いキツネは見知らぬ部屋のベッドで寝ていました。
着ていた服は少し乱れていて、身体には変な感覚が残っています。
「おはよう、起きた?」
するとそこへ、中年のタヌキが現れました。
「あの、私……?」
若いキツネは状況が把握出来ず、戸惑いを隠せません。
「あれ、もしかして覚えてない? あんなに気持ち良かったのに」
「気持ち、いい……?」
ここでようやく、若いキツネは自分の身に何が起きたのか理解しました。
「すみません。失礼します……!」
若いキツネは頭を下げ、帰り支度をします。
「大丈夫? 送っていくよ」
「ご心配なく」
「おい、待て! 逃げるな!」
態度を急変させ、追いかけてくるタヌキ。
若いキツネは急いで部屋を出ると、真っ先に交番に駆け込みました。
「助けて下さい! タヌキに殺される……」
「タヌキ……?」
犬のお巡りさんは道路の方を見て、「あっ!」と指差します。
タヌキは慌てた様子で逃げ出しましたが、その後すぐに強制性交罪の容疑で逮捕されました。
警視庁によりますと、タヌキは「部屋には連れ込んだが同意はあった」と容疑を否認しているということです。また、タヌキには他にも同様の事件を起こした疑いがあり、余罪も含めて捜査が続けられています。
◇◇◇◇
「どうですか?」
首を傾げる私に、七海艦長は一言。
「つまらないわね」
そんな~!
っていうか、七海もえかの癖に七海感強すぎてもえか要素ゼロじゃん。
せめて劇場版のあのシーンみたく、優しい笑顔で「ダメです」って言ってよ~!