第6話 供託金300万円は高すぎます
私は! 芽生ちゃんと! 付き合いたい!
「私、芽生ちゃんの恋人に立候補してもいい?」
気持ち悪い笑みを浮かべて問いかける私に、芽生ちゃんは呆れた様子で答えます。
「勝手にすれば?」
うん、勝手にする!
『桜木芽生恋人選候補者、無所属、横浜青葉。年齢非公表。小説家になろう底辺作家。では、横浜青葉さんの政見放送です。公職選挙法第150条の2の規定をふまえて、文章を一部削除しています』
私は、芽生ちゃんにしてほしいことがある。
猫耳付けてさ。
猫なで声で「もっと構ってにゃん」ってさ。
もう最高だよね!
あ~、今夜は寝られないな!
『桜木芽生恋人選候補者、無所属、横浜青葉さんの政見放送でした』
「その真っ白な行間で、私は一体何をさせられていたの? ゾッとしたのだけれど」
「いやぁ、芽生ちゃんのあんな姿、一度は見てみたいなぁ」
私が妄想を膨らませてニヤニヤしていると、その間にセリーヌちゃんが余計なことを言ってくれました。
「あの行間を簡潔に説明する。桜木殿は下着姿で猫耳を付け、招き猫のように青葉殿をベッドに誘っていた」
きゃ~っ! 濃厚な百合の妄想が公衆の面前に!
「青葉、安心なさい。殺しはしないから」
笑いながら怒ってる……。
どうやら芽生ちゃんの逆鱗に触れたようです。
芽生ちゃんは魔法を唱え、私に向かって刀を構えました。
でも、ただで斬られるつもりはありません。
「芽生ちゃん。本当に勝てると思ってるの? 作者であるこの私に……!」
私が武器も持たずに駆け出すと、芽生ちゃんは勢いよく刀を横薙ぎに払いました。
シュバッ!
しかし、刀は私の身体をすり抜け、芽生ちゃんはバランスを崩してしまいました。
「どういうこと……?」
芽生ちゃんは刀を見つめながら焦っています。
「信じられないって顔してるね~。私の身体は干渉不能オブジェクトなの。だからね、芽生ちゃんには絶対に殺せないんだよ!」
「まさか、あなた本当に……」
「ね? だからずっと言ってるでしょ?」
私は人生で一番のどや顔をしたのでした。