第5話 ピンク髪は淫乱という風潮、私は嫌いじゃない
桜木芽生。
私の処女作にして累計七千PV超えを記録した『魔法災害隊』のキャラクター。
ピンク髪でツインテール、合理主義者でちょっぴり冷たい。
でもそこが良い。
その落ち着いた声で罵られたい。
その澄んだ瞳で見下されたい。
そのおみ足に踏まれたい。
「青葉殿。それ以上妄想を続けるようなら、その心の声を桜木殿に伝える」
待て待て、それはまずい。
私はセリーヌちゃんに抱きついて、必死に懇願します。
「いや、それは勘弁して下さい。マジで」
「それは伝えてほしいという意味に聞こえるが」
私の妄想が知られれば、きっと芽生ちゃんは毒舌を浴びせてくるはずだ。
ああ、それも悪くないだろう。
(突然のぺこぱ)
「青葉殿、ここで時間切れ。桜木殿に伝えてくる」
「あ~っ! お待ち下さいセリーヌ様~!」
騒いでいると、芽生ちゃんが目を覚ましました。
「ねぇあなた達。ここは一体どこなの?」
おっと、いきなり慌てているご様子。
「ここは異世界だよ。そして私はあなたの作者」
私の答えに、芽生ちゃんは顔をしかめます。
「真面目に答えて。私はあれからどうなったの? 飛行機から海に落ちた私を、助けてくれたんでしょう?」
ああ、その時点の芽生ちゃんなんだ。
ラスボス戦近くじゃん。
「芽生ちゃんは病院で寝てるよ。だからきっと、これは夢みたいなものだと思う」
「これが、夢……? 確かに、かなりの悪夢ではあるけれど」
「そうそう。響華ちゃんがペンダントを首にかけてくれるまでは、ゆっくりするといいよ」
ここで私は、大きなミスを犯しました。
「ちょっ……! 何であなたが魔法結晶のことを知っているの?」
そうです。
芽生ちゃんの超機密情報に、思い切り触れてしまったのです。
「だから私は作者だから……!」
「いつまでもおかしなことを。あなた、誰の差し金?」
刀の切っ先が喉元に突き付けられます。
殺される……!
でもまあ、芽生ちゃんに殺されるならいっか。
その時、セリーヌちゃんが声を上げました。
「青葉殿の言っていることは事実。桜木殿、刀を納めて頂きたい」
「はぁ、仕方ないわね……」
刀を消滅させると、芽生ちゃんは大きなため息を吐きました。
「はぁ、芽生ちゃんに刺されたかったな……」
同時に、私も大きなため息を吐きました。
芽生ちゃんが飛行機から落ちたとか言ってるのは、魔法災害隊第60話「対空光線」の話です。
暇なら魔法災害隊も読んでみてね。完結済みだし百話あるから結構時間は潰せるよ。