のっとられた椅子
突然の反乱、男たちの主張。
男女同権を訴える声は国全体に広がり、やがて王都を炎に染めた。
男たちの強い後押しを受けて、いま、玉座に建国史上初の『男』の王が立つ……。
新たな制度を立ち上げ、生まれ変わった王国の新しい名は、ティーアルピージ。
以降、王国はティーアルピージ王国と呼ばれることとなる。
「――あれ? どうしてこうなったでござるか?」
はて、確か拙者の予定では昭殿を次の『女王様』にする、という計画で動いていたはずでござったのに。
何がどうして、拙者がこの赤くてふかふかでご立派な椅子に座らせられているんでござろうか?
なんだかよくわからない内に、サンバ殿たちの勢いに押されてそいやそいや担ぎだされてしまったでござる。そして何故かさっき拙者の『たいかんしき』なるものが執り行われたのでござるが。
……はて???
「なんでも何も、革命の先頭に立ってたんだからさくま(仮名)が王様になるのは当然の帰結だよね。革命始めた5人を煽り立てたって功罪もあるし」
「しかし拙者、昭殿を女王様にするつもりで……」
「とりあえず最初の王様はさくま(仮名)ってことで議会の同意は得られてるんだし、諦めて玉座温めなよ。どうせ僕らがこの国にいるのもあと数か月(※ゲーム期間)の事なんだし?」
「拙者、社会の闇に忍ぶ家業のおうちの子故、矢面に出されるのはどうにも落ち着かないのでござるが」
「諦めなよ」
「昭殿…そんな~でござるよう」
なんとなく初代国王は攻略対象者を次々と軍門に下していった王子(※忍者)が就任。
政治も何も知らない中身忍者(※小学生)が王国をまとめ上げることなどできそうにもないが、ゲームのエンディングまで残り僅か数か月となれば騙し騙しなんとかなるのかもしれない。
ちなみに二代目以降の国王についてだが、世襲制案は退けられた。
男女ともに平等な権利を、という大義名分の下、とある貴族男子が根回しを行った結果である。
そして、これまたそのとある貴族男子が更に根回しを進めた結果、これこそまさにどうしてこうなったと誰かが言いそうなものだが、ティーアルピージ王国は二代目以降の国王を任期20年の交代制とし、新たな国王は何故か『ゲームバトルで決める』という謎の掟が爆誕することになる。
自薦他薦問わず、参加者の身分も年齢も性別も問わない。
参加資格はただ、王国に籍を持つ者であること、ただその一点のみ。
一か月の間にTRPGでより多くの者を魅せる物語を作り上げることができた者……それが、ティーアルピージ王国代々の国王になる為の資格となった。
変則的な世襲制ともいえる王国の継承制度がここまで斜めに独自的な方向にひた走ったのも、全ては世論を巻き込み、同志を募って派閥を作り、意外な方向で政治的な秘めたる才能を爆発させた某貴族男子……本人曰く『宣教師』のたゆまぬ『布教活動』が生み出した功績である。
――あの国、みんな頭おかしいよ。
他国からこぞってそういわれるようになった所以だ。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
『………………これ、こういう趣旨のゲームだったっけ』
『自分の記憶が確かなら、違った筈っス』
『これは確か、あー……ええと、確か女性向けのゲーム、ということじゃなかったかな。この惑星の女性はなんというか……随分と、国家転覆に対する意欲関心が強いんだな?』
『んな訳ありませんよ、主任』
機械に繋がれ、眠る3人の小学生。
……を、見守りつつモニターの様子をうかがう宇宙人たちがいた。
彼は思ってもいなかったゲーム内の暴走ぶりにそれぞれ困惑の色が隠せない。
ゲームの内容をあらかじめ知っていたらしい者達に至っては、明らかに頭を抱えていた。
『こんなの、予想外もいいとこだぜ』
『ま、まあ、貴重で希少なパターンが得られたと思えば……』
『それにしたって限度がねえかな』
頭を抱えていた、某地球外生命体の方々は知らない。
この15分後、研究など気にしていられない事態が。
……頭を抱えずにはいられない、更なる脅威が彼らを襲うことを。
宇宙人たちを襲う、未知なる恐怖。
青い惑星・地球に巣食う現地生物の逆襲。
彼らを襲った恐怖を、地球の民はこう呼んだ。
――モンスターペアレント、と。
特殊なご家庭のお子様を、攫ってしまったこと。
小学生をうっかり攫ってしまった宇宙人たちの、不幸はこの一点に尽きた。
次回☆
海洋生物出身であることを除けばこれと言って存在感のない、某妖怪パパさんが珍しく活躍します。
具体的に言うと千年を超える寿命でこさえた人脈(妖怪脈)が仕事します。
そしてかなり前に一度だけ出てきた、あの『人造生物』再登場か――!?