昼下がりの事件
つい出来心で書いてしまいました。
ざっくりしたあらすじは考えていますが、ほとんど何も考えずに投稿しています。
今回は小学生時代の昭君たちに起きた、ちょっとした事件。
メインで動くのはさくま(仮名)君になります。
また、この作品はシリーズ物になります。
このお話だけ読んでも意味がわからないという方は、同シリーズの作品を参照していただけると幸いです。
ある晴れた昼下がり。
学校からの帰り道。
三人の小学生が、横並びに仲良く下校していた。
黒いランドセルが二つ、赤いランドセルが一つ。
携帯ゲーム機を操作している少年が一人、その少年に一所懸命に話しかける少女が一人。
そして覆面が一人。
幼稚園から交流が続く、仲良しさん達だ。
今日もいつものように、いつもと同じ通学路を歩いていた。
だけどいつもと違うことが、一つだけ。
一つだけ、発生した。
ふぉんふぉんふぉんふぉんふぉん……
「あ、昭君、あれ……!」
「昭殿! 昭殿、空から謎の円盤が!」
「お山の向こうから凄い速さでやってくるよ!?」
突如、上空から接近してくる大きな謎の影。
得体の知れない空飛ぶ円盤を目撃し、少女と覆面少年が左右から少年の体を揺さぶった。
ちらり、上空を見て。
昭君は携帯ゲーム機の電源を落とし、ケースにしまってランドセルへ放り込む。
そしてじっくりと円盤を眺めて言った。
「ロYKンゲP-ルマX社の宇宙船、星環歴194年製RW-ZZ79型だね」
「え、何言ってるの昭君」
「昭殿は、あれが何かご存知なのでござるか……?」
「隣の家のおじさんがアレの模型持ってた」
「うちのお父さんが……!?」
「あ、小夜とは反対隣の家ね」
すらすらとつっかえもせず真偽の程もわからない蘊蓄を披露し始めた昭君に、予想外の反応だった為か二人の注意が昭君に集中した。
その、不意を突かれた。
元より逃亡する隙も、空飛ぶ円盤が相手ではさほどなかったのだけど。
ある晴れた昼下がり。
学校からの帰り道。
三人の小学生が、『空飛ぶ円盤』に拉致された。
円盤へと取り込まれる前に睡眠ガスをかがされて、三人は深い眠りへと落ちる。
円盤内部へと運び込まれた三人は、真っ直ぐに実験室へと運ばれた。
だけど運び込まれた三人を見て、円盤の乗員は戸惑いも露わに狼狽える。
『うわ、やっべ……これ幼体だよ。地球人保護条約の規定に引っかかるじゃねーか!!』
『だから自動選別装置に任せきるのはまずいって言ったじゃないですか、先輩! どうするんです、もー攫っちゃいましたよ!?』
『うーん、けど攫っちゃったものは仕方ないしなぁ……主任、どうします?』
『諸君も知っての通り、地球人の幼生体を物理的に害することは保護条約で禁止されている。それに反して意図的に傷をつけてしまった場合、我々の地球人生体調査・実験に対する許可は取り消されることだろう。場合によっては重い罰則が科せられることもあり得る』
『ひぇ……っ』
『ど、ど、どうするんすか主任!? 俺らもう攫っちゃった後なのに!』
『攫うまでなら、ちゃんと元の場所に戻せばセーフだ。確か生育環境から地球時間で24時間以上引き離してはならない、と条約には記載されていたはず。つまり、24時間以内ならセーフだ』
『お、おお……さすがは主任。しっかりと条約の規定を把握していらっしゃる』
『俺なんか斜めに流し読みしたしなー。条約規定』
『先輩は反省してください。ちゃんと熟読するように調査旅行前に言われてたっすよ!?』
『お前だって細部怪しかったくせに偉そうに言うなよな! 主任に比べりゃ五十歩百歩だ!』
『お前たち、揉めるのも大概にしないか』
『『すんません、主任!』』
『しかしまあ、せっかく連れてきてしまったんだから肉体が傷つかない範囲で、この幼生体達には実験に付き合ってもらうとするか。確か来週に予定していた行動心理実験のプランはもう完成していたな?』
『あ、大丈夫っす。きちんとプログラムも組み終わって後は細々とした調整ぐらいで』
『なるほど。確かにアレなら無駄な怪我をすることもありませんね! 地球人の心理データを取るのに、様々なパターンでの被験は望むところですし。幼生体のデータは条約で取りづらいし、せっかくだから彼らに体験してもらいましょうか』
そうして、その日。
うっかりな宇宙人さん達の行動心理実験とやらに付き合わされることになり。
昭君達は「ゲームの世界に入ってキャラクターとなってしまった時、その人はキャラ設定通りに行動を起こすのか」というネタ臭の凄まじい体験をする羽目になった。
宇宙人がプログラムを組んだ、得体の知れない謎の機械によって。
『確か既存のゲームを使うと言っていたな。地球人の』
『あとはソフトをセットするだけって説明書には』
『なんか二種類あるっすね……ええと、ゾンビゲーと、乙女ゲームかなこれ……?』
『お、おとめげぇむ……?』
『平たく言うと女性向けの恋愛シミュレーションっすよ、主任』
『あ、ゾンビの方CERO:Dじゃんか。この幼生体、ショウガクセイとかいうのだろ。全年齢にしとこう全年齢に』
『先輩、この乙女ゲーム、CEROの表記がないんすけど』
『指定されてないっつうことは、全年齢対応って考えて良いんじゃねーの?』
『CERO……?』
『平たく言うと年齢制限っすよ、主任』
『お前ら、妙に地球産のゲームに詳しくないか』
『『気のせいっすよ、主任!』』
やると決めたら、躊躇いは消えるらしい。
てきぱきと準備を進めた宇宙人達によって、捕らわれた小学生達は夢の中から直接仮想現実の世界へと送り込まれていく。
行動心理実験の計画を立て、実施要項を作成した宇宙人のチョイスした、ゲームの世界に。
……暇を持て余し、R18なゲームにも飽きた数名の有志(※大学生男子)によって世に送り出された、乙女系同人ゲームの世界に。
ちなみにゲームのパッケージには、こう書かれていた。
『きゅんふわ学園ホワイトストロベリー物語 ~恋する乙女は世界の絶対正義!~』――と。
『――ところでゲームを基盤とする仮想世界に精神を送り、観察するというのがこの実験の趣旨な訳だが』
『そうっすね。何か疑問点が、主任?』
『観察するのはわかるが、どのキャラクターを観察対象に設定すれば良いのだ……?』
『実験プログラムの仕様説明書によると、一度の稼働ごとに重要度の高いキャラクターから被験者の精神投影先として割り振っていくよう組んであるようなんで……まず一人はゲームの主人公っすね』
『他、二人は……そも、このゲームからしてどういうゲームなのかよくわからんのだが。重要度の高いキャラというと、どれになるんだ』
『あー……難しく考えずに、そうっすねぇ……そうだ主任、妹さんいましたよね。女の子の好きな童話の世界を思い浮かべてください。お姫様物の。地球で有名どころだと、シラユキヒメとか』
『ああ、思い浮かべたぞ』
『じゃあ物語の登場人物を、お話の構成上重要だと思うものから列挙してみましょう』
『ふむ、シラユキヒメだったな。まずシラユキヒメだろう』
『それから?』
『……魔法の鏡?』
『それはアイテムっす』
『では、魔女か』
『そう、悪役。物語を盛り上げる重要な要素っすね』
『次に……コビトさんか?』
『お助けキャラに行きましたかー……』
『そこは王子を上げてほしかったですねぇ』
『王子? アイツ、ちょいキャラだろ』
『確かに出番は少ないけども! ああ、俺らが悪かったっす。回りくどく理解を求めたのが悪かったっす』
『ざっくり結論を言うと、主人公、悪役令嬢、攻略対象(複数)、最後にサポートキャラの順で割振られるようになってるみたいっすね』
『今回は三人なんで、主人公、悪役令嬢、メイン攻略対象が実験対象になります』
『なるほど。ではその三名のキャラを観察の焦点に設定しておこう』
こうして、昭君たちは。
謎の同人乙女ゲームの主人公・悪役令嬢・メイン攻略対象へと配役を割振られた。
さて、いったい誰がどれかな……?
誰がどれになったとしても、まともに物語が始まる予感はあまりしない。
登場人物
昭くん
本シリーズの主人公。
高レベルのスルースキルを有する鉄壁のマイペース少年。
趣味はゲームと多分料理。
いろいろと底知れない人物。
小夜ちゃん
昭君の幼馴染で、彼に思いを寄せる女の子。
おうちはお隣さん。
昭君と恋愛的な進展があまりにもないため、民間療法的なハーブや薬草へ手を伸ばし始めた。
さくま(仮名)くん
昭君や小夜ちゃんとは幼稚園から一緒の仲良しさん。
人里離れた忍者の隠れ里出身。
一般的な社会に適応できるようにと普通の幼稚園に編入するが、自分の家(※忍者)より輪をかけて特殊な家庭環境ですくすくと育っている昭君とお友達に……。
宇宙人(主任)
バツイチ三児の子持ち。
面倒見は良いし仕事もできるが、「良い人なんだけどね……」とフラれるタイプ。
宇宙人(先輩)
私生活はそこそこ乱れたナンパ野郎。
三か月前に結婚詐欺にあって懐が寂しい今日この頃。
宇宙人(後輩)
地球に来て「メイドさんロボ」という概念と運命の出会いを果たす。
いつか本物の「メイドさんロボ」を作ってやろうと、マジで研究しだした。誰か止めろ。