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終末下車。  作者: Akthzこーりさくら
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一駅:始発の終末

独特な雰囲気を楽しんでくださいな~


 こつん、と小石を蹴る音。

 ごとん、とレンガが当たる音。

 ぽつん、と雫が落ち始める音。

 和の国に雨が降る。

「あー、降ってきたね」

「うわマジか、建物ん中入んなきゃ」


 46世紀頃。東西の大国同士で大戦争を勃発。周囲の国々も巻き込まれ、2つに大きく割れた。東西の国に海越しでも物理的に挟まれた和の国は、二次被害を被ることとなった。

 約40年間の戦争の末、東の国は壊滅。焦土の土地に都市の面影は現でも見えない。巻き込まれた和の国は、山も抉れ、大きな墓が遍く建つ。都市の息は聞こえなかった。

 復興は不可能と無慈悲な判断が告げられる。伴い、ひとつの国、ひとつひとつの都市が、ひたひたと床に就いてゆく。


「雨降ったんじゃあ外で行動出来ねぇなぁ」

「どうしようかー」

「とりあえず、このビル内の探索しとくか」

「いえっさー」

 辛うじて建つビルに、少年少女は居た。

 和の国は灰色。

 暗いビルの中を、懐中電灯で照らす。

「このビルは……見る限りデパート的なやつかな」

「何か探してみるか」

「アマネ、これ何?」

「見つけてくるの早いなぁ、んでこれはー……」

 パッケージを確認する。

「……おぉ、保存食だ。これ、どこにあった?」

「あの棚の中だよ」

 指差した方向の棚を開ける。缶が入っていた

「おー、ほんとだ、まだ幾つか残ってるな。ユキ、やるな」

「どや」

「……でも、食べれるかどうか分からないな。一つ開けてみるか」

「ユキ、あれ貸してくれ」

「はーい」

 ユキはアーミーナイフを渡す。

 アーミーナイフに収納されていた缶切りで、キリキリと蓋を裂いていく。

「よし開いた。えーと確認するのはー……」

「匂い、見た目、味、内側……」

「お、大丈夫そうだな。持ってくぞ」

 アマネは、背負っていたバックパックに、棚から取り出した缶の保存食を詰める。

「ユキも少し持ってくれ」

「おっけー」

 ユキもバックパックに数個入れる。

「全部入れきったな。次んとこ行こう」

「れっつごー」

 奥へ歩き出す。

「……と言っても」

「一階はほぼ何もねぇな……」

 ほとんどの棚は空となっており、棚すら無いスペースも多くある。

「俺らが来る前に、誰かが既に回収してったのか?」

「さっきの保存食以外見つからないねー」

 ユキはあっちこっち歩き回り、棚という棚を漁っている。

「あの棚だけ回収しそびれた、とかも考えられるな」

「アマネー」

 奥から声が聞こえる。

「どうした?」

「何も無いよー……」

 弱々しい声で聞こえる。

「何も無いかー」

「じゃ、次の階行こうか」

「行こー」

 エスカレーターであろう場所を登っていく。

 当然エスカレーターは機能していない。そのため階段替わりにして使う。

「そうだ、ユキ、何か欲しいものとかあるか?」

「んー」

 ユキは悩む姿を見せる。

「外で探索したいなら傘じゃないー?」

「傘か」

「今の、この服のフードと落ちてたサンバイザーだけは嫌か?」

 サンバイザーを被り、上からフードを被っている。

「嫌では無いけどー、心許ないというかー」

「そうか」

「でも、傘は片手塞がるからなぁ……」

「色々使えるし、あっても問題無いかなーって」

「……それもそうだな、じゃあ他と一緒に探すか」

「そうしましょー」

 懐中電灯をフロアの奥へ向ける。

 床と壁は照らされど、その暗さは拭えない。

「……っし、ユキ、懐中電灯持ってたよな?」

 ユキはバックパックの中に腕を入れる。。

「あるよー」

 懐中電灯を掲げた。

「今さっき、1回別々に探索してみて、お互いにめぼしいものを拾って来る方が効率が良いと思ったんだが」

「それでも大丈夫か?」

「いいよー」

「即答かよ」

「あはは」

 2人は笑う。

「じゃ、俺は上から順に隈無く探索してみる。ユキはある程度自由に歩き回ってみてくれ」

「分かったー」

「あそうそう、これ、持っといてくれ」

 アマネがバックパックから、さっと取り出す。それをユキは受け取る。

「……時計?」

 デジタルで数字が表記されている。

「そ、時計。時間が分かるようにな。120分後にここで集合、それでいいか?」

「120分……んー…………いいよ、大丈夫ー」

「よし、じゃあ行ってくるぞ」

「おー」


 こつこつ、と階段(壊れたエスカレーター)を登る。程よい長さの階段に、踊り場、そしてまた同じ長さの階段。

「……ふぅ、案外長いな」

 6階まであるデパート。階段だと少し疲れる。

 この階は、1階とは違う構造をしているものの、光を当てて見れば、ほぼ何も無いのが分かる。

「とりあえず、見て回るか」

 階段から直進した場所に位置するスペースへ向かう。

 棚は、またしても空である。

 天井からぶら下がっていたと思われる、何のコーナーかを示す看板は、落ちて、汚れて、本来の意味をなしていない。

「何のコーナーだったんだ?どうにかして読めないかな」

 手で埃を払ってみる。

「……あれ、この文字、「共通語」じゃないな」

「えっとー……」

 バックパックに手を入れ、中を掻き混ぜる。そして、1冊の本を取り出す。

「あった、「文字の歴史」。何とかして読めないかな……」

 パラパラと紙を捲る。

「……過去にそういった形は出てこない……共通語じゃ無いのか……」

「……もしや」

 数ページを一気に捲る。

 そして「共通語では無い文字」の章を開く。

 看板の文字と見比べながらページを捲る。

「これだ」

「和国語」

 和国語は、元は普通の言語だったものの、略語、共通語からの単語の輸入、それらを混ぜた略語、古語、そして何より、複雑な文法、多い字体、多過ぎる派生。

 それらが混ざり、混沌と化した結果、解読が不可能となった言語である。

「解読は無理かー……まぁ、とりあえず、探索しなきゃな。時間は有限だ」

 立ち上がり、移動を開始する。

 今いるコーナーから、時計回りに巡る。

 相も変わらず空の棚が続き、頼りの看板は読めない。時々、物は落ちているが、使い物にならない小物ばかり。一応、軍手や、プラスチック製の箱等の使えそうな小物は拾っておく。

「あっても1,2個だけか」

 大体、20分程掛けて巡ったものの、収穫は、さっき見つけた軍手とプラスチック容器、1つずつだけ。使えないわけでは無いので、ぽいぽいっとバックパックへ入れる。

 下の階へ移動する。

 やる事は大して変わらない。ただ階をぐるっと巡って、使えそうな物を拾うだけである。

 階に着いたら、目の前のコーナーへ向かい、探索する。そのコーナーの探索が終わったら、隣のコーナーへ向かう。そしてまた探索する。この単純作業である。

 この5階も、プラスチック製の箱1つだけの収穫。

 早めに巡り終わってしまい、もう一周したが、それでも1つだけしか回収出来なかった。

「……次だ」

 4階。登ってる時には既に気付いていたが、4階だけ少し構造が違う。

 この階は仕切りが少なく、開放的な階になっている。

「開放的って事は、小物が隠れるスペースが少ないわけで……」

 隅から隅まで順番に目を通したものの、やはり何も見つからない。

 埃1つ見落とさないぐらいしっかり探し回った。しかし、この階では何も見つけられなかった。

 この階は諦め、次の階へ向かう。

 次は3階。やる事は同じなので、ささっと済ませてしまう。

 何も無かった3階。

 2階。

「何も無いな……」

「……あ」

「ユキが探索し終わった可能性があるのか」

 1階は探索したが、もう1度巡ってみる。

 ……収穫は、なし。

 時間は、だいたい20分位残っている。

「……整理にでも時間を使うか」

 2階の集合場所へ戻り、集合場所近くの柱の傍に座る。そして、バックパックの中身を広げる。

「あ、傘……見つからなかったな。まぁ仕方ないか」


「あれー、アマネ、早い」

 ユキが手を振りながら歩いてくる。

「ユキが遅れてるんだがな」

「ごめんねー」

 ユキはアマネの隣に座る。

「別にいいよ、10分位なら心配しない」

「私居なくなったもいいのー?」

「それは困る」

 ユキは笑う。

「呑気だなぁ……」

「だって、こんな平和な世界、今ぐらいだよ?」

「…………あー、なるほど。確かにな」

「確かに、平和だな」

 四角い穴から曇天を見上げる。

「なら、楽しまなきゃ、でしょ」

 ユキはまた笑う。

「呑気すぎだが……間違っては無いな」

「そうだな、楽しもう」

「わーい」

 アマネはバックパックを漁り出す。

「……んでだが」

 アマネが切り出す。

「ユキ、収穫物を教えてくれ」

「分かったー」

 ユキもバックパックを漁る。

「まず、これです」

 床に物を広げる。

「プラスチックケース」

「同じやつ、俺もいくつか拾ったぞ」

 ユキは驚いている。

「沢山落ちてるんだねー」

「言うほど沢山じゃないけどな」

「次、これー」

「……紙と……ペン?」

「そうそう、貰ったの」

「『貰った』?」

「あ、言い忘れてた」

「3階で探してた時にね、非常口?みたいなの見つけてー」

「その奥で他の2人組と会ったの」

「マジか!」

 アマネは驚きを隠せない。

「なんて人達だ?」

「えっとねー」

「……なんだっけ」

 ユキはぽかんとする。

「おいおい……」

「まぁいいや、他の生存者が居るのが分かっただけでも大きい」

 ユキが少しそわそわする。

「本命、紹介していいー?」

「収穫物か?いいぞ」

「まぁ、アマネも気付いてると思うけど」

 アマネは指さす。

「アレだろ?」

「そう、見つけたの」

「傘」

 バックパックにビニール傘が刺さっている。

「やったな、ユキ」

「アマネは、何持ってきたー?」

「あんま回収出来なくてなぁ」

「軍手とかは拾ったんだが、それぐらいだ」

 アマネは数個の軍手とプラスチックケースを出す。

「でも、2人合わせたら、良い感じの収穫じゃないー?」

「……そうだな」

 アマネとユキは、広げた物達をバックパックに片付ける。

「ユキ、傘はこっちが持っとくぞ」

「んー……私が持ってていいー?」

「いいけど、大丈夫か?」

「問題ないよー」

 物を片付け終わる。

「さて……この後どうしようか……」

「どうしようかー」

 外はいまだ雨が降り続く。

「雨止むの待つか?」

「そうしよー」

「じゃあ、のんびりしてくか」

「おー」


 2人の笑い声が聞こえる。


どうも、初めまして。初投稿になります。

普段は詩ばっか書いてるので、雰囲気と表現がかなり独特になっちゃってます。それも、この小説のいい所と考えてくれるとありがたいです。

誤字脱字があったらごめんなさい。


「終末下車。発車致します。読み飛ばしにご注意下さい。」

 警笛が遠く鳴り響く。

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