第1説 ひとりぼっち
頑張って2話目も書いてみました
「今日も寒い……少しどこかで休みたいな」
静かな森の中、目に入る全ては明るく辺りを照らす太陽のような眩しいものだった。小鳥のさえずり、川の流れる音、風で揺れる木々の音、そんな気に求めない音の中に少女の声は微かに響いた。鮮やかな色の中では目立つであろう白色の髪、葉と共にたなびくと少し震えた
「森の中か……暫く、大きな街なんかは見えそうにないかな」
白い少女は足を一生懸命に歩かせると木々が生い茂り、水が湧き、まるで砂漠の中のオアシスのような場所へと足は動いた。
「水だよ!水!」
白い少女は勢いよく湧き水の側によりすくい上げた。そのまま口に流し込むとふぅ~と溜息をつき、大の字に倒れる。
「……君も飲めたらいいのにね。ただしこれは私の分だ」
そう言うと、ぐっと起き上がり水筒に水を入れる。2/3程度入れるとポーチに入れてまた大の字になった。ゆっくりと時間が過ぎ、雲が動き、鳥が飛ぶ、当たり前のことなのに何故か嬉しい気分になる。ニヤニヤと白い少女は笑うと目の前が黒い影で覆われた。
「おい!何してんだ、こんな所で!」
180cmは超えているだろうか、大柄な男が白い少女の頭の先に立ち、見下ろしている。白い少女はその瞳をパチクリさせながら大男を見つめると……
「こんな所にいたら、動物に食われちまうぞ。休みたいなら家に案内してやるから来い!」
白い少女は再び体を起こして立ち上がる。背中についた、草を払うと男に手を差し出して
「じゃあ、私を家で休ましてよ。約束だよ!」
握手を求めると大男は少し照れ「あぁ」と言い歩き始めた。
少しだけ時間が過ぎただろうか、木々は薄れきちんとした一本道になっているのは確認出来た。すると、大男は「ここだ」と言い小さな小屋の扉を開けた。
「案外中はしっかりとしてるんだね。小さいのに」
家の中は広くはないが2人と子供1人座れそうなテーブルと物を保存する為の保存庫、釜戸や調理台が置かれていた。
「小さくて悪かったなぁ、住めば都って言うだろ」
「……うーん?そうなんだね」
大男は即席で作った料理と木の匙を白い少女の目の前に出し、「食え」と言って料理のあと片付けを始めた
「へぇ~男の人なのに料理が出来るんだね。」
大男は集中しているのか黙り込んでいる。白い少女はそう言うと料理を口に運んだ。果物が使われているのか少し甘くあとからすっぱさがついてくる。
「美味しいね!ここの辺りの男は料理が得意なんだね!」
大男はまだ黙り込んでいる。白い少女は不思議に思ったのか少し疑問をぶつけた。
「あのさ?この周辺の人達はどうしたの?周りには大きな畑があるから、何人かいると思うんだけど、もしかして狩りに出かけてる?」
大男は「あぁ」と言うと片付けを続けた。それに怒った白い少女は頬を膨らました。
「もぅ、答えてくれないならもういいよ!」
少し眠くなったのかそう言うと腕を枕にして眠りについた。大男は少し息を荒くして刃物と薬らしきものを持ち白い少女に近づく
「ハァハァ……殺してやる……殺してやる」
大男が刃物を振りかぶると刃物の先には黒い液体がビシャっとついた。それに驚いたのかすかさず、調理台に戻った。大男は呼吸を少しずつ整えて、それと同時に白い少女は顔を上げた。
「少し血なまぐさいね、もしかして鹿でもその扉の奥に入れてるの?私、動物の解体とかした事あるから保存方法も教えよっか?」
大男は少し焦りながら「いや。大丈夫だ。」と言い、片付けを続ける。更にそれに怒った白い少女はまだまだ言い続ける。
「私、興味あるから少し見せてよ。どんなに保存してるか」
大男は焦りながら「だめだ」と言い、片付けを続ける。少女は男がどう言いようが関係ない様に保存庫に近づいていく。
「おい!!何をしている!!ダメだと言っているだろ!!」
大男は額に汗を浮かべながら白い少女を捕まえようと、手を伸ばすがその手は動かなくなり手首には黒いあざがついた。ゆっくりと白い少女は扉を開くと、血が石畳の間に流れこんでおり、まるで黒い水に浮かんでいるようだ。その奥には2人の人間の腐食した死体がある。出血死だろうか?刃物が刺さった箇所からは血が勢いよく吹き出したように黒く染まっている。
「これは凄いね。もしかして君の家族?」
白い少女は煽る様に大男に言った。大男は少し震えて恐れているように白い少女に向かって鋭い視線を向けた。
「なんで……なんでなんだよ!!1週間前から俺を家の周りを彷徨きやがって!!俺が妻を殺したからか?子供を殺したからか?なんでそんな事で俺が嫌な思いをしないといけないんだよ!!元はといえばあいつがいけないんだ!!俺以外を愛するから!」
大男は激しく暴れる。もはや何を言っているか分からないが何かに苛立っている事は白い少女にも分かった。
「なんで、うろついたか?それは……同じ匂いがしたから!」
白い少女は笑顔でそう言うと、大男の顔を向いて。
「自己中心的で強欲で、嫉妬が強くて頑固な君から私と同じ、貪欲な匂いがしたから」
「意味わかんねぇ事言ってないで!!くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!」
白い少女がニコリと笑うと、空のどこだろうか、そこから一気に下まで真っ白になった。テーブルも死体も小屋も自然さえも無くなっている。あるのは白い少女と大男とあとは、大男の両手首を強く握りしめている。黒い化け物。
「あ……え……なんだよ!こいつ誰だよ?!てかっ、ここ何処だよ!!?離せよ!!!」
大男はひたすら暴れた、何も無い白い空間で時間という概念があるのかどうかは分からないがひたすら暴れた。
「落ち着いた?」
白い少女はそう言った。大男は「この悪魔!」等と大声を出しながら叫んでいる。
「悪魔はそれなんだけどね。でも、君も悪魔だけどね!愛してくれた人を殺して、愛するべき者を殺して。嫉妬は本当に愚かだね」
白い少女がそう言いきると、黒い化け物は「イ”ダギマ”す」と言いながら大男に噛み付くとちゅるちゅると血を吸い出した。
「あぁー!ぁぁぁー!!ア”ァ”ァ”……痛い!!痛い、痛いイダイ!!イダイ!!ア”ァ”」
大男は黒い化け物を蹴り、倒そうとするがちゃぽんと蹴る度に音がして、ただ足が黒く染めるだけだ。
「多分、愛した人に刺された痛みはもっと痛いよ……多分ね」
黒い化け物は全て吸い取ると口の中に投げ込み、バリバリといわせて「ゴチゾゥサマ”」と言い、辺りには景色が戻り、元通りの小さい小屋、淡く鮮やかな自然、小鳥のさえずりが体に流し込まれる。
「食料だけ貰って行こうか!うん!そうしよう!」
白い少女はそう言いながら出ていった。
そこには身長180cmを超える大男の死体と小柄な女性の死体と2人に挟まれた子供の死体が今でもあるそうだ。