第8章 悪魔との最終決戦!! そして再びの……
池の中から現れた女の悪魔はイメルダを睨みつけると冷たい笑みを受けべながら、
「アタシの魔力を与えたビトを倒すなんてやるじゃなぁい! さぁすが力は落ちても神なのね、まぁでもあれは魔界でも最下級だったからいつ力が暴走してもおかしくなかったしぃ、倒せて当然よねぇ?」
人差し指を唇に当てながら言うとさらに口元を吊り上げながら、
「それにしても、久しぶりねぇイメルダちゃん! 昔はよく魔力を競い合っていたけど……今はそれも出来ない程弱ってるしぃ? これはアタシの勝ちねぇ!」
と見下すような口調で言われたイメルダはずっと閉じていた目を開くと優しい笑みを浮かべ、
「確かにそうですわね……わたくしだけではあなたを倒すことはできませんわ、ですがよく見なさい! 今のわたくしには仲間がいますのよ、彼等と共に池を取り戻しますわ!」
そう言うと同時にアーヴィン達が武器を構えたので女悪魔リタは震えだし次に怒りに満ちた顔で奇声を発すると、両手を上に掲げて魔法陣を出しそこから見た事のない獣が咆哮を上げながら現れリタは勝ち誇った顔で笑いながら大声で、
「あの身の程知らずを全て始末しなさい!!」
と命令すると魔物は魔力を使い身体を巨大化させてまた咆哮を上げながら走って来たのでユレイヤとラウスは剣に魔法をまとわせてから切りかかるのだが、厚い皮膚に遮られてしまい倒せずに着地するがその瞬間に攻撃された2人は気を失いプラシドが咄嗟に獣の頭を渾身の力で蹴ると少しよろけなので、次はモーゼズがハンマーで殴りつけ獣が膝をついたのでアーヴィンが剣で切りつけるために飛ぶと同時にイメルダが魔法で剣を強化し、避ける暇もなく身体を貫かれた獣は最後に1つ吠えると黒い光の粒になり消えていきそれを見たリタは顔を真っ赤にして震えながら、
「な、生意気なっ! こうなればあんた達はアタシが直に始末してやるわ!!」
そう言って池の水を大量に浮かせて大剣をいくつも創り出すとそれをイメルダやアーヴィン達にめがけて放ち、それを避ける事が出来ないと思ったアーヴィン達は咄嗟に受け止めようと武器を上げるが突然頭の中に知らない声がして、
「下がれ!」
と言われたので後ろに飛ぶとその瞬間に光の壁が現れ黒い水で出来た大剣は粉々に散っていき、驚いて口を開けているアーヴィン達と壁の間には青い髪をした青年が、怒ったように眉間にシワを寄せて立っていたのでさらに驚きの表情で彼を見つめるアーヴィン達を振り向くと青年は微笑んでから、
「やぁ、無事みたいだね! 間に合ってよかった」
そう言うとイメルダが少し涙目で、
「お兄様!!」
と叫んでから青年に近づくと抱きつき彼も嬉しそうにイメルダの腰に腕を回しているとアーヴィンが呆然としたように、
「ど、どういう事なんだ?」
そう困惑気味に尋ねるとイメルダは申し訳なさそうに微笑むと、
「実はわたくしも神としてこの世界を創ったのですが、その途中に彼等悪魔が誕生してしまいそれを魔界に封印するために力を使ったのですが、その時にわたくしは力を使い果たして消滅してしまい、もう一人のお兄様も力を殆ど失ってしまいましたの」
と最後は悲し気に言うと目を瞑り俯いたがすぐに顔を上げ青年に笑顔で、
「それでも……待っていてくださってとても嬉しいですわ! でも今はどんな名前を使っているのですか? わたくしは昔のままイメルダなんですの」
そう言うと青年も笑顔全開になりながら、
「僕もあの時のままギルバートと名乗っているよ、それにまた会えて嬉しいよ! レイフ兄さんを助けたらまた3人で世界を創りに行こう!」
と見つめ合って言っていると横からリタが両手を胸のあたりで縦に振りながら、
「ちょっとぉ! アタシの事を無視して感動の再会をしないでくれるぅ?!」
そう叫ぶとギルバートとイメルダはリタに目を移し同じ顔で同時に微笑むと、
「それじゃあ早く終わらせようか、イメルダ」
と言って左腕を肩の高さまで上げると力を使いアーヴィン達を回復させ、さらに壁を大きくするとイメルダも左肩を真上に上げながら、
「そうですわね、今ここでリタには消えてもらいましょう!」
そう言いアーヴィン達を見やると先ほど回復したユレイヤとラウスも参戦し再び武器を構えたので、イメルダはにこりと笑ってから真剣な面持ちで前を向きリタに、
「それでは、覚悟を決めてくださいね?」
と言うと頭上で魔法陣を創りアーヴィン達が見た事のない綺麗で鮮やかな赤色の鳥を召喚すると、また呆然とするアーヴィン達に気付いたイメルダは笑顔で、
「さぁ、あのおバカさんを早く倒しましょう」
そう言って鳥をリタの方に飛ばすと気を取り直したアーヴィン達も走って近づき、ギルバートが池を固めて道を創り一気にリタに近づくとユレイヤとラウスが頷き合ってから魔法で全員の武器を強化すると、鳥に気を取られていたリタは不意をつかれて5人の攻撃を受け、断末魔の叫び声を上げながら黒い光となって消滅したその直後、黒魔力で汚染されていた空にぽっかりと穴が開くとそこから陽の光が差し込み池に届いた瞬間池の水に輝きが戻り、それが全体を包んでいって元に戻った池を見たアーヴィン達は安堵と感激のあまり涙を流していてそれを見ていたイメルダは嬉しそうに微笑んでギルバートを振り向き、
「お兄様、わたくしの力はまだ戻っていませんのでまたルピタ・ファームとして生きていきますわ、それに……彼らを見ているとこの世界は創った当初より良くなっていると思いますの、まぁ簡単な話彼らと共に暮らしたい気持ちでいっぱいですわ」
と言うとギルバートはイメルダの頭を撫でながら笑顔で、
「そうか、じゃあ僕もこの世界の神として見守っているよ」
そう言ってからアーヴィン達に目を移すと眩しそうに眼を細めて、
「ここを創って良かったとあの子達を見て思えるよ、礼を言わないとね」
と言ってアーヴィン達の元へ行き礼を言って握手を交わしていると池が突然光だし、アーヴィン達は両腕で目を覆っていると光の中から一人の青年が現れ、彼の正体に気付いたギルバートとイメルダは走って青年の元へ駆けつけると、
「レイフお兄様!」
「レイフ兄さん!」
そう同時に呼び生命の池に住む精霊レイフが2人に微笑むと、
「久しぶりだね、元気にしていたかい?」
と言って池の上から地面に降りてギルバートとイメルダの前で立ち止まると、
「皆が無事で本当に良かった……ギルバート、一人でよく神の仕事を頑張ったねとても嬉しいよ、イメルダも……不安な気持ちにさせて、ごめんね……?」
そう言って2人を抱きしめると彼等は涙を流して久々の再会に浸った後アーヴィン達に振り向き改めて3人で礼を言うと、顔を赤くしながらアーヴィンがあたふたとしながら、
「お、俺はただカネリアばあちゃんに頼まれてきたからだし、ルピタがいないと絶対来てな……」
とそこで止めると今気づいたのかイメルダに詰め寄り、
「る、ルピタはどうなるんだ?! ずっとイメルダさんとして生きるのか!?」
そう慌てたように尋ねるとイメルダは小さく笑ってから頷き、
「安心してください、ルピタは今わたくしの中で眠っていますがわたくしが眠れば彼女と交代できます、ですがわたくしとしての記憶は消えてしまうかもしれませんが」
と悲し気に微笑んで言ってから次に決意を固めた面持ちで、
「お兄様、そろそろルピタに戻りますがまたお会いしましょうね! わたくしはまだ力の回復に時間がかかりますが……きっとまた一緒に世界を創りに行きましょう!」
そう笑顔で言った後静かに目を閉じ光に包まれそれが収まるとイメルダからルピタに戻っていて、彼女はスッと目を開けるとアーヴィン達を見るなり慌てて近付き手を掴むと真剣な面持ちで、
「皆ケガは無い?! 悪魔と戦った時にケガをしたなら早く治さないと!」
と言うなり身体中を見て回り全てのケガを治すと腰に手をあて額の汗を拭いてから一息つき、
「良かった、手遅れになる前に治せて! 彼女の中で見ていたんだけど本当に無茶な戦い方だったんよ?! でも、まぁ……カッコよかったよ!」
笑顔でそう言うとアーヴィンが顔を真っ赤にしながら、
「あ、ありがとう……」
そう言っていると隣に立っていたモーゼズがにやにやと笑っている事に気付きアーヴィンはさらに顔を赤くしながら彼を見ていたのでまたニヤリと笑ってから、
「いや? オイラは何もしらないよ……?」
と言った後アーヴィンの肩に腕を回してその場から離れると小声で、
「親族での結婚は出来ないけどずっと見守ってやれよ? それが恋心ってやつだろ……?」
そう言うと彼は慌てながら両腕を振り回して、
「な……な、なに言ってんだよ! 俺は別に……」
と騒いでいるとルピタが近付き顔を覗き込みながら、
「なに? 何の話してるの?」
そう言って2人に目を合わせているとアーヴィンは顔を背けながら、
「な、なんでもない……ルピタには関係ない事だから」
と言うとルピタは頬を膨らませて拗ねたように顔をさらに近づけて、
「モーゼズには言えて私には言えない事?」
そう言われ何度も頷くアーヴィンを見て怒ったように振り返るとプラシドの元へ行き拗ねているルピタを彼がなだめ、その様子を見ていたレイフとギルバートは微笑んで眺めているとレイフが小さな声で、
「もう大丈夫みたいだね、まだ僕とイメルダはこの世界から出られないけど……あの子達やこの世界の者は信用できると心から思えるよ」
と嬉しそうに言ってから笑顔で右腕を振ると池に近づき、
「また会おう、次は厄災の無い平和な時にね!」
そう言って池に両足を入れると泡に囲まれ消えていき、それを優し気な笑みを浮かべて見送ったギルバートはルピタ達の元へ行くと、
「君達のおかげでこの世界と兄を助ける事が出来た、本当に感謝している」
と言うとルピタに目を移して嬉しそうに、
「ルピタちゃんも、妹にもう一度会わせてくれてありがとう」
頭を下げて言ってから後ろを向き右腕を上げて指を鳴らすと、
「これはささやかなお礼だ、彼女にも礼を言っておいてくれ」
そう言っている途中から身体が透けて行き最後に完全に消えたのでルピタ達は寂し気に見つめていると、誰かがルピタの肩に触れたので驚きの余り声を上げて後ろを振り返ると、そこにはカネリアが立っていたのでルピタがさらに驚いていると、
「無事に終えたようね、ルピタ! それよりもケガが無くて良かったわ」
と言い抱きしめながら背中をさするとずっと不安で涙をこらえていたルピタは滝のように涙を流しながら抱き着きカネリアの名前を何度も言っていて、久しぶりの再会に喜んでいるとそれを横で見ていたモーゼズも涙を流しながら、
「良かったなぁ、ルピタ!」
などと言っていると後ろから杖で頭を軽く叩かれたので後ろを向くとそこにはドワーフの占い師リリアンが立っていて彼女はため息をつきながら、
「全く、お前さんまで泣くことは無いじゃろう? その性格を早く直しなさい」
そう言ったのが皮切りに次々と小言を呟いていたのだがモーゼズは目を見開きながら、
「な、なんでリリアンばぁがいるんだよ!?」
と大きな声で言うと彼女は変わらぬ独特な笑い声を上げながら、
「ここの神がわしらを呼んだんじゃよ、ルピタの事をちゃんと説明しろとな、まぁここより話しやすい場所へ移ろうかの」
そう言ってカネリアを見つめると彼女は深いため息をついてから素早く瞬間移動の呪文を唱えると、次の瞬間にはあかりの森の手前に立っていて呆然とする一行の前にまた無表情のエルフが現れユレイヤに深く一礼すると恭しく、
「おかえりをお待ちしておりました」
と言うと無言で森の中へ入り一行がついて行って街の中に入るとなぜか街の人々の表情が暗く、全員が何かの言葉を呟いていたので不安になったユレイヤは、街の人に尋ねようと近づいたのだが誰も顔を合わせようともしないため心配になり急いで屋敷へ戻って文官に尋ねると、彼は顔を青ざめながらも旅の間にあった事を説明し女王の事を説明すると、ユレイヤも顔を青ざめて女王の部屋に走って行きノックもせず勢いよく扉を開けた。