第4章 古代エルフの試練
街を出て古代エルフの墓へと進むため森の中を話しをしながら歩いていると、近くの茂みが突然動き出したので様子を見ていると茂みから黄色い小さな獣が現れ、とても驚いたアーヴィンが背中の弓を取り出して半ばパニック状態で弓を構えていたので、それを見ていたユレイヤが突然笑い出しハッと気づいたアーヴィンが顔を染めながら、
「な、なんだよ……」
そう言うとユレイヤは笑いながら、
「いや、そこまで驚かなくてもと思って……」
と言ってから身体を折るように笑い続けしばらくして収まると目元に溜まった涙を拭いながら、
「あの獣は〈キツネ〉と言って僕達に危害を加える事は無いので安心して下さい」
そう言ってから警戒しながらこちらを見守っている〈キツネ〉に微笑んで片手を上げると、驚いて飛び上がると一目散に茂みの中へと逃げて行き、ユレイヤはそれを優しい笑みを浮かべて見送った後ルピタ達の方へ振り向き、
「さぁ、行きましょうか!」
と笑顔で言うとまた歩きだしたのでルピタ達も慌ててついて行き、森の中を進み続けて数時間が経って少し疲れが見え始め無言で歩いていると、目の前に石像が二体建ち並ぶ不気味な洞窟が現れユレイヤが古代エルフの墓に着いた事を緊張の面持ちで伝えると、一行は唾を飲み込んでから洞窟の中へ一歩踏み出した。
その頃話し合いをしていた部屋ではラウスが一人残ってイスに座って祈るように絡めた指を顎に当てながら、深刻な表情で床を見つめながら何十回目かのため息をついていると誰かが肩に触れハッと気づいて振り向くと、そこにはエルフ女王が立っていたので安心したように息をつくと囁くように、
「女王陛下……」
そう言うとエルフ女王は彼の隣に座り遠くを見つめながら静かな口調で、
「ユレイヤが心配ですか?」
と尋ねるとラウスは俯いて目を瞑り、
「はい……」
そう呟くように答えると女王は頷いて穏やかな表情でラウスに目を向け、
「あなたはユレイヤが生まれた時からの従者でしたね……覚えていますか? 生まれてすぐのあの子を抱きながら泣いて誓った言葉を」
と尋ねられたラウスは真剣な面持ちで右拳を見つめながら、
「はい、私の命はユレイヤ様と共に……そう祖先に、神に誓いました」
と女王の目を見て言うと彼女はまた遠くを見つめながら、
「そうですね……その為あなたはずっとあの子に寄り添ってくれました、ですが……この試練は次期王と初代エルフ王が仲間と判断した者しか行けません、ユレイヤには信頼できる頼もしい仲間がいるのでわたくしたちはあの子達を信じで待ちましょう」
そう自信に満ちた笑みを浮かべて言うとラウスは安心したように微笑むと、
「そうですね」
と言って頷きユレイヤが無事に帰る事を神にそっと誓った。
場所は戻り古代エルフの墓へ足を踏み入れ一切の装飾が無い無機質だが整備された道を歩く事数分が経った一行は無言で歩いていると、奥の方に灯りが見えさらに進むととても広く豪奢な飾りが施された空間に行き当たり、華美な装飾に見とれている4人にユレイヤが真剣な顔で、
「この広場が本当の古代エルフ王家の墓への入り口です、この先で僕が王に相応しいかを見定めていただくんです」
そう言って1つしかない大きな横穴に進むとルピタ達もついて行き中へ入るのだが、ルピタはなぜか寒気を覚えたのだが気にせずに進むにつれ寒気は強くなり、途中から腕を抱えて震えながら歩いているとそれに気付いたアーヴィンが心配そうに顔を覗き込んで、
「大丈夫か? なんかすごく辛そうだけど……?」
と尋ねるとルピタは無理に笑顔を作りながら、
「平気、少し寒いだけだから」
そう言うと後ろを歩いていたプラシドも顔を覗き込むと額に手を置いて眉根を寄せて、
「本当に辛そうだよ? 身体もすごく冷たいし少し休んだ方がいいかもしれない、私が背負うから休んでいて」
と言ってしゃがむとルピタを背に乗せて歩き進めるが奥へ行くにつれて震えは酷くなっていくルピタを心配そうに見つめてプラシドが、
「大丈夫かい? 少し止まろうか?」
そう尋ねるのだがルピタは依然として震えながら、
「平気……です! 前に、進んで……ください!」
とプラシドの首に絡めている腕を強めながらいった後ルピタは気を失ってしまい、アーヴィンが何度も声をかけるが反応はなかったので、プラシドが外へ出る事を提案したが彼は首を横に振って悔し気に、
「古代エルフの墓へ一度足を踏み入れれば初代エルフ王に認められるまで外へ出られません、もし引き返せば古代の魔法が発動してここは迷宮と化し死ぬまで迷うか、魔法で創られたどんな攻撃も効かない獣に食い殺されるしかないです」
そう言って俯くがすぐに顔を上げて前を向き一同を見回すと、
「今は一刻も早く前へ進んで試練を終わらせるしかありません、行きましょう!」
と意を決しような表情で言うとアーヴィン達も頷き4人は歩き進めさらに数分後に先ほどの広場よりも広く豪奢な場所に出た4人は辺りを見回しながら中央辺りまで行くと、
「止まれ若造共……わしの住処に何用か?」
威厳のこもった声が突然響きユレイヤ以外の3人が慌てながら見回すと、声の主は目の前にいる祭壇だと気づき眺めているとそこから半透明の老人が現れ、驚愕の表情で青ざめていると老人は呆れたように顎髭を撫でながら、
「なんじゃ、霊魂を見るのは初めてかの? ファームとノーム、それにドワーフの若造共」
と言って3人に近づくとプラシドの背中で気を失っているルピタに気付くと、
「お主の背におる幼子は何もじゃ? とても強い魔力を持っておるが」
そう尋ねるとプラシドに床に寝かせるように言うと彼女を見つめてから、
「ふむ……この子はわしの気にあてられているみたいじゃの、それにしても稀な魔力と霊魂をもつ存在みたいじゃ、この先この子を失えばお主らだけではなく全種族が滅ぶじゃろうな……大事にしてあげなさい」
と意味深な事を言われ首を傾げている3人に微笑んでから真剣な表情でユレイヤに振り向くと、
「さて、お主が王に相応しいか見定めねばの……名と地位は?」
そう尋ねると彼は跪いて老人を見据えながら、
「私はエルフ王国王位第一継承者ユレイヤ・ケンナーです……初代エルフ王、私は次期王に相応しいでしょうか?」
射貫くような鋭い目つきで尋ねると老人は目を瞑って一つ唸り声を上げてから、
「ふむ、戦闘力があり統率力も備わっておる、それに加え仲間想いで心優しい性格……ほぉ、わし直径の子孫か……我が子の血を引く子孫も近くにいるみたいじゃ、技量も度量も申し分ない……うむ! 王の器に相応しいじゃろう!」
と最後に笑顔で言われユレイヤは安心したように胸を撫でおろしていると古代エルフ王は付け加えるように、
「じゃが、仲間を想うあまり自分を疎かにしない事じゃ、お主を慕う者達が嘆くことはせんように」
そう厳かに言われユレイヤは気を引き締めて頷くと古代エルフ王は満足気に微笑んだあとルピタに目をやると笑顔で、
「さぁ、外へ出してやろう、幼子も限界じゃろうしの……ルピタを、神の子を頼んだぞアーヴィン、モーゼズ、プラシド」
と最後は小さな声で言われ3人は驚愕の面持ちで古代エルフ王を見つめるが、次の瞬間には街の入り口に立っていたので呆然としているとアーヴィンが我に返り、
「お、俺達いつの間にここに? さっきまで洞窟の中にいたのに……それに、なんであの人はルピタや俺達の名前を知っていたんだ? ルピタが、神の子……?」
そう呟くように言ってユレイヤに目を向けると彼も呆然としていて、右手に見た事のない文字がびっしりと書かれた石を持っていたのを見た彼もまた呟くように、
「古代エルフの試験を終えたんだ……」
と言うのと同時にルピタが目を覚ましプラシドの背中で、
「ど、どうしてプラシドさんに背負われているの?」
そう声を上げるとプラシドとモーゼズも我に返り慌ててルピタを降ろすと、
「大丈夫かい? 墓の途中で腕を抱えて辛そうだったから……覚えてないかい?」
と優しく説明するがルピタは落ち込んだように俯いて、
「はい……でも、その時知らないおじいさんと話をしていたんです、なぜかみんなの名前を聞かれて初めは迷ったんですけど、悪い人ではないと思って話しました、その時気を失ってたんですね……」
そう言うとユレイヤがルピタの肩を掴んで真剣な表情で、
「ルピタさん、その方の特徴を覚えてますか!?」
と尋ねられたので困惑しながらもルピタは記憶をたどり、
「えっと……白くて長いヒゲを蓄えた優しい感じで、笑顔がどことなくユレイヤさんに似ていました!」
そう言うとユレイヤが口をつぐみ眉根を寄せるので心配になっているとそれに気付いたユレイヤは優しく微笑むと、
「大丈夫、怒っていませんよ……おそらくその方が古代エルフ王です、僕達エルフでも神官職のようなごく限られた者にしか会えないので、ルピタさんはすごいですね」
と少し寂しそうに言って後ろに振り返り街への入り口を開けて中へ入ると、目の前にエルフ女王とラウスが立っていてさらに後ろには街の人達が大勢いてユレイヤに気付くと歓声が上がり、驚きで固まっているユレイヤに女王とラウスが近付いて微笑むと、
「おかえりなさい、あなたの帰還を信じてわたくしたちは待っていました、初代エルフ王に認められた証の石を持っていますね……さぁ、その石を陽の光に掲げてください」
そう言われたユレイヤは緊張の面持ちで頷き石を陽に当てると、突然眩いほどの光を帯びそれが広がって行くと驚いて手を離しかけたがグッとこらえたユレイヤは、腕で顔を覆っていると光が少し落ち着き奥の方から一人の青年が現れ、困惑していると前までゆっくりと歩いて来た青年はユレイヤの顔を見てから、
「うん、彼の子孫だけあっていい顔をしているね、君たちなら奴を倒せるかもしれないね、よろしく頼むよエルフ王!」
と終始笑顔で言ってからルピタに向き直ると、
「さて……君は僕に尋ねたいことがある見たいだけど?」
そう言われたルピタは慌てながら、
「あ、あの、あなたはレイフさんですか!?」
と尋ねると青年は一瞬驚いた顔で固まった後突然大きな声で笑いだし、それを見た2人も驚いていると青年はまだ少し笑いの残る中、
「す、すまない……今の質問があまりにも面白くてつい……」
そう言った後ひとしきり笑い落ち着いたところでルピタの頭に手を置いて、
「君はカネリア・ファームの孫だったね確かルピタという名だ、まぁここは君に免じで質問に答えよう、僕の名はギルバートそう名乗っておくよ、本当は名前なんかないんだけどね……まぁ手短に言えば僕はこの世界を創った神だよ、君が言っていたレイフというのは僕の兄で理由があって生命の池に住んでいるが、この世界は彼と僕そして妹と創ったんだ」
と微笑みながら説明されたが頭がついて行けなかったルピタは放心しているとギルバートは苦笑しながらため息をつき、
「今すぐに理解をするのは難しいからゆっくり分かって行けばいい、でもこれだけは覚えていて欲しい、君の力は強大だから覚醒すれば悪魔を簡単に倒せるよ……でも二度と元の生活には戻れなくなるかもしれない」
眉根を寄せて深刻な表情で言われたルピタは真剣な面持ちで頷くと、ギルバートは笑顔で頷き跪くとルピタの手の甲に口づけをしてから、
「これで僕と君の意識は繋がれた……また会いに来るよルピタ」
そう言うと身をひるがえして光の中へ戻って行くと姿を消し気が付くと屋敷の一室にあるベッドの上に寝かされていて、横からアーヴィン達が覗き込んでいる事に気付くとルピタは起き上がり不思議そうな顔で首を傾げて、
「私、どうしてベッドで寝ているの……? さっきまで街の入り口にいたはずなのに……」
と言うとアーヴィンは困ったような表情でプラシドに目配せをすると彼が、
「ユレイヤ君が石を陽に当てた途端二人共倒れたんだけど、街の人がどうしてルピタちゃんも光の中へ入って行ったのかって騒ぎになって、女王様が機転を利かせて屋敷に連れて来てくれたけど全く目を覚まさないからとても心配していたんだ」
そう説明されルピタは驚きを隠せないように目を見開くと、
「私……どれくらい気を失ってたの?」
と尋ねるとアーヴィンはルピタを見返しため息をつくと、
「今日までで3日ほどだよ……もう、目を開けないのかと思った……」
自分の左手首を握りしめて言うとルピタはそっと手を置いて、
「ごめんなさい……心配をかけてしまって」
そう言うとアーヴィンを見つめると震えていた彼の身体は次第に治まり一つ息を吐いてルピタを見つめて微笑みながら、
「ありがとう……ごめん、もう吹っ切ったと思ってたけど、まだ怖くて……」
と言って握る手を強めたのでルピタは優しい笑みを浮かべて、
「私は今回もちゃんと目を覚ましたよ、もう二度とアーヴィンを一人にしないから……」
そう言うとアーヴィンは涙を流しながら何度も頷きルピタが微笑んでいると後ろからモーゼズが、
「おーい! オイラ達もいるんだぞー? 2人の世界じゃないからなー⁈」
と口元を両手で覆いながら言われハッとなった2人は顔を染めながら、
「ご、ごめん……」
そう同時に言って俯くとプラシドがため息をつきながら、
「君達の間にはとても強い絆が結ばれているだね」
と言うとルピタとアーヴィンはさらに赤くなって焦っているとドアが叩かれプラシドが返事をするとドアが開き、女王が入って来ると彼女は微笑みながらルピタに顔を向け、
「ルピタさんの様子はいかがですか?」
そう言われ慌ててルピタはベッドから降りると、
「わ、私はもう大丈夫です! ご迷惑をおかけしてすみませんでした」
と謝ると女王はルピタをベッドに座るように言って彼女が従うと笑顔で頷き、
「安心しました、ですが迷惑などと思ってはいません、それより大事な話があるので今からお時間を頂いてもよろしいですか?」
そう真剣な顔で言われルピタが頷くと女王はメイドに服を用意させてルピタがそれに着替えると、全員で3日前にも来た部屋へ行くとそこにはユレイヤとラウスもいてルピタ達が椅子に座ると、
「さて、これからの事を話し合いましょうか」
と言って神妙な面持ちで一同を見回した。




