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いつか出会う誰かのために  作者: マコト
第一章 へんてこな出会いとなりゆきな決意
2/3

初めまして 2

やっとテンポが上がってきましたーー!

久し振りに書くオリジナルに四苦八苦してますが……ガンバリマス(汗)

「……何でついてくんだよ」


走っても走っても振り切れない少女に、少年は大きなため息を吐き出し足を止めた。

取り敢えず何故ついてくるのか理由を聞こう。

っていうか大概全力で走ったのに振り切れないとか……途中ピョンピョン飛んでたし『追いかけっこたのすぃー!』とか言ってたし、正直キモイ。

走りながら付きまとわれる心当たりを探してみるも、皆目見当がつかない。

なら聞いてみるしかない。


するとウサミミ少女はニコニコしながら少年を仰いだ。

「あのねーラビちゃんねーお礼を言おーと思って来たのー!」

「……礼?」

「うん!こないだー助けてくれたからー」

はて?

少年の頭に盛大なハテナマークが飛ぶ。

心当たりがないのだ。

「おっきな動物からーケガしててー逃げられなかったラビちゃんをー助けてくれたのー」

その言葉を聞き、少年は理解した。

そう、あれだ。

「人違いだ」

そして何事も無かったかのように歩き出した。


「やー!違うのー!」

ウサミミ少女、ラビが慌ててその背を追う。

「ついてくるなよ……」

「だからー、違うのー!」

実際少年はラビに会った記憶がないのだから仕方ない。

それでもラビは追い縋る。

「聞いてーなのー!」

「断る」

「やー!!」

そんなやり取りをかなりの時間続け、とうとう少年は目的地に着いてしまった。

小さなあまり見栄えの良くない小屋、つまり自宅である。


「お前……どこまでついてくるんだよ」

呆れを通り越し、諦めの境地を開いた少年は仕方なくラビの話を聞くことにした。

ヨッコラショと普段薪割りに使っている切り株に腰掛け、両手に持っていた荷物を下ろす。

この時少年は週に一度と決めている村への買い付け帰りだったのだ。

両手一杯の荷物を持ち全力疾走させられたのだから堪らない、ヨッコラショと言いたくなるのも頷けるというものだ。

疲れさせた犯人はやっと話を聞いて貰える雰囲気に笑顔全開、ハイテンションで少年の周りをピョンピョン跳んでいる。


「ーーで?さっきも言ったけど、オレはお前を助けたりしてないし。」

ラビが跳ぶのを止めた。

こてんと首を傾げ、不思議そうな顔で少年を見つめる。

「ウサギ、助けたでしょー?」

「ウサギ?」

「そー!ウサギー!」

暫く少年は遠くをみる目で何やら考えていたが心当たりがあったのか、何やら苦笑いを浮かべた。

「別に助けた訳じゃない。オレの獲物がたまたまあの熊だっただけだ。」

するとラビが歌いだす。

「うっそだも~ん。あのおっきいのやっつけなくっても~今日は大量だぁって~言ってたも~ん。おっきいの相手にする時は~後ろからこっそ~りするも~ん」

お世辞にも上手いとは言い難い節回しに少年はガックリと脱力し、俯きながら呟いた。

「……こっそりとか言うな」



要約するとある日少年は運良く大量となった狩りを終え、山から下りている途中足から血を流しているウサギを見掛けた、と。

ウサギの背後には、熊。

自分の両手には暫く生きていくに足りる獲物。

普段の彼ならそんな状況で熊を相手にするなんて無茶はしない。

即、逃げる。

だが彼はそうしなかった。

いや、出来なかったのだ。

その目が昔なついていたウサギにとても似ていたから。

両の手から獲物を放し、無造作に腰へぶら下げてあるサーベルへ手を伸ばしたのだ。

そんな彼を見て、熊もウサギから少年へターゲットを変える。

「……チッ!」

その舌打ちが合図だったのか、熊がうなり声をあげて少年へ襲い掛かってきた。


「どか~んっなってーザクザクーってなってーびちゃびちゃーってなってー」

「なんか凄い表現だな、おい」

ラビが身ぶり手振りでその時の少年の動きを再現する。

「お前があれを見ていたのは分かった。だが何故それ以外のオレの行動を知ってるんだ?」

そう、あのこっそり発言である。

「ラビちゃん、お兄さんのことーもーっといーっぱい知ってるよー!」

さらりと言い放たれた恐ろしいストーカー発言に、少年はまじまじとラビを見つめた。

そして目を見開いた。

「お前……まさかっ!?」

ラビの目に見覚えがあったのだ。

いや、見覚えどころか……

「そうだよー!ラビちゃんーウサギからー人間になれたよー!!」


遠い昔、金と銀のオッドアイを持つウサギに名前をつけたことを思い出した。

不吉の象徴とされ、何処へ行ってもあまり良い扱いをされない。

いつも一匹でいるオッドアイのウサギをみて、少年はポツリと呟いた。

『動物の世界でもオッドアイは不吉なのか?』


逃げもせず、小さな鼻をピクピクさせてウサギはじっと少年を見つめる。

『もしかして、ハブられてんのか?』


もの言えぬウサギはじっと、ただじっと少年を見つめ続ける。

『もしそうならオレと一緒だな。』


どこか寂しげな笑みを浮かべた少年の目も……銀とブルーのオッドアイなのであった。


それからはいつ山へ入ってもどこからか現れるようになったウサギへ気紛れにつけた名前、それがラビリンスだった事を少年は今はっきりと思い出したのである。








次、やっと少年の名前が出てきます。

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