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真・恋姫†無双~三人の御使い~  作者: 泣き虫
魏編
9/35

第三話「何事もやり過ぎはよくない」

圭吾「いてて・・・高さとか、考えてなかった」


だいたい二階ぐらいの高さだったけど、下が茂みで助かった。

どうやらまだ城内・・・それどころか、城の中心に位置する広場にいるようだ。


圭吾「さっさと移動したいんだが・・・あの野郎、気付くのはえぇよ」


城内を忙しなく動き出した兵達。

あの荀彧って奴の指図だ・・・だが、人手不足のせいで厳重ではない。

人の目を盗んで茂みから抜け出し、通路の柱に身を隠す。

目の前には、兵士が三人固まって捜索状況を話していた。


兵士1「くそっ、人手が少ない時に限って脱獄かよ」


兵士2「人手が少ないからこそ脱獄するんだろう? だが、城内を事細かく調べ尽くしてたら、陽が落ちる」


兵士3「なら、城の出入り口を塞ごう。そうすりゃ、脱獄犯も逃げられないだろ」


そこまで話して、三人は駆け出した。

俺は気づかれないようについて行くことにする。

わざわざ出口に案内してくれるんだ。付いていかない訳がない。


圭吾(だけど、何かうまく出来すぎていないか?)


いや、今は余計なことを考えるな。

邪念を振り払って、引き続き三人の後を追う。

そして、城と城下町の境界にある厳かな門の近くまでやってきた。


兵士1「見張りはどうだ?」


兵士4「いや、許緒様と典韋様以外、出入りしていない」


圭吾(完全に固められてるな。一旦、戻るべき───」


兵士5「いたぞぉ! 脱獄犯だぁ!」


げっ!? いつの間に後ろにいたんだ!?

背後には三人一組で捜索に当たっていた一つのグループ。

これを皮切りに、門の近くにいた兵士達も俺に気付く。


圭吾「───ヤッベ!!」


兵士1「逃げたぞ、追えぇ!!」


門番を引いて、6名の兵士が俺を追っかけてきて、城と城壁の間にある砂利道を逃げ道に選んだ。

そういや忘れていたが、牢に入れられてジャージは没収されなかったが、スニーカーも靴下もない。

なので───


圭吾「痛いたいたいたいたい!!??」


子供の頃に、裸足で砂場を走ったことはあるが、これはその比じゃない痛さだ。

でもここで止って捕まれば、また毎日のようにあの猫耳野郎に嫌がらせを受ける。


圭吾「んっ!」


不意に上へ視線を向けると、一つの部屋の窓から黒い笑みを浮かべる荀彧が───


桂花「まぁ、精々頑張りなさい」


声は聞こえなかった。

口の動きだけで分かった。


圭吾「上等だ、くそアマァ! ぜってぇ逃げ切ってやる!」


もう痛みなんて感じなくなっていた。

踏み込む力がさらに増し、どんどん兵士たちとの距離を空ける。


兵士6「もう逃げられないぞ!」


圭吾「挟み討ちかよ!」


ガリガリと足の裏を削るように急ブレーキをかけて、再度城の内部へ。

砂利道とは違い、整備された床は走りやすい。

上の階層に続く階段を駆け上がり、とりあえず近くにあった部屋に逃げ込んだ。

机もろもろをドアに投げ込むように運び、急造のバリケードを作る。


圭吾「畜生め。もっとスマートに脱出したかったのによ・・・」


[ドンドンドンドンドンッッ!!]


圭吾「もう来やがった・・・また窓から逃げるしかねぇ」


部屋に置いてあった椅子を使って、それを破壊し窓枠に足をかける。


圭吾「やっぱ高い・・・」


さっきは茂みがクッション替わりになったけど、今度はそうじゃない。

落ちる場所は先ほどと違う広場で、学校の校庭と同じ砂の地面。


『まぁ、精々頑張りなさい』

圭吾「[イラッ]やってやるわぁ!」


着地ポイントに目掛けて両足の膝を曲げる。

窓から放物線を描いて、俺は無事に地面に着陸・・・出来たと思われたが、突然地面が抜けた。


圭吾「おわっ!?」


"ベチャッ"とヌカるんだ土がジャージに吸い付いてくる。

そういえば、昨日は雨が降っていたな・・・。


桂花「あはははははっ! 引っかかった引っかかった! なぁにが『ぜってぇ逃げ切ってやる』よ! 今の自分の姿を見て、そんなこと言えるのかしら? あはははははっ!」


圭吾「やろぉ・・・」


あいつは脱走を予想して、雨ん中で落とし穴作ってたのか・・・。


圭吾「雨の音で気付かなかったのか・・・くそっ」


悔しがっている場合ではない。

穴の中に仕込まれていた害虫を振り払い、穴から抜け出す。

周囲を見渡すと、既に俺は兵達に囲まれていた。


圭吾「万事休すか・・・」


と、諦めかけたのだが───


兵士1「うわぁ!?」


兵士2「な、なんでこんな所に落とし穴が!?」


桂花「なっ!?」


上で高みの見物をしていた荀彧は、果たしてこの広場にいくつの落とし穴を用意したというのだ。

俺を取り囲んでいた兵全てが、荀彧の用意した穴に落ちていく。


桂花「あれほど、広場に近づくなって言ったのに・・・!」


圭吾「あはははっ!! 策士策に溺れるってこういうことを言うんだな! 参考になったぜ、荀彧!」


桂花「ま、待ちなさい、豚!!」


圭吾「待てって言って、待つ脱獄犯がどこにいるってんだよ! このアホネコ!」


桂花「何ですってぇぇ!?」


広場から城壁に向かってダッシュ。

城壁をよじ登り、俺は無事城下町へ逃げ込むことに成功するのだった・・・。






桂花SIDE


桂花「くっ、これだから男は使えないのよ」


落とし穴で慌てふためている兵達を見下ろし、近くの工作員に声をかける。


桂花「あの男の監視はちゃんとついてる?」


兵士7女「はい。万事異常はありません」


桂花「そう・・・」


こういう形で逃げられたのは不本意だけど、"華琳様の意向"通り進んでいるから問題はないわね。


兵士7女「しかし、天の御使いかも知れない人物を、外に放って大丈夫なのでしょうか」


桂花「かも知れない人物、だからこそよ。華琳様は、アレを試すためにわざわざ今日まで生かしてきたんだから」


番兵にわざわざおこぼれを渡すように指示を出していたのも、脱獄させる体力を失わせないためだったのかもしれない。


桂花「とりあえず、分かった事があれば逐一報告して頂戴」


兵士7女「御意」






圭吾SIDE


何とか城下町まで逃げてきた俺は、すぐに人気の少ない裏道に入った。


圭吾「ひぃー、ひぃー・・・ここまで来ればそう簡単には見つからないだろ」


近くで荀彧の放った工作員の目があることに気づかず、俺は壁に背中を預けズルズルと地面に座り込む。


圭吾「腹減ったなぁ・・・でも、金ねぇし」


??「あの~、どうかしましたか?」


圭吾「ん?」


見上げれば、10歳ぐらいの少女二人が俺を見下ろしていた。

許緒と典韋・・・この幼い天使の登場で、俺はこの世界に来て初めて、人らしい一時を得ることになった。

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