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真・恋姫†無双~三人の御使い~  作者: 泣き虫
蜀編
3/35

第二話「やらないで後悔するより、やって後悔した方がいい」

キャラの登場時期が異なっているのは、仕様です

俺こと北郷一刀が、桃花達と出会ってそれなりに日が経った。


愛紗「民を苦しめる賊どもを逃がすなぁ! 全軍突撃ぃ!」


今は、友人である公孫賛の元に身を置いていた桃花(劉備)達と一緒に、独立して戦場の真っ只中にいる。

現在、三国志有名な黄巾の乱。張角、張宝、張梁の兄弟・・・いや、この世界だと姉妹らしい・・・三名が賊を束ねている。

のだが、黄巾党の殆どが統率力がなく、罪のない人々を襲い、村を焼き払い、無法を繰り返していた。


桃花「ご主人様。愛紗ちゃんたちが戻ってきたら、これからどうするの?」


一刀「襲われた村に寄って、怪我した人がいないか調べよう・・・あとさ、その"ご主人様"っていうのやめない?」


桃花「? だって、ご主人様は天の御使い様でしょ? じゃあご主人様だよ」


まったく合理的じゃない理由なのだが、彼女はこれを本気で言っている。

俺が知る劉玄徳とは、似ても似つかない人物だ。

そしてそれは、劉備こと桃花に限らない。


愛紗「ご主人様。ただいま戻りました」


鈴々「ただいま~、なのだ!」


綺麗な長い黒髪の関雲長こと愛紗。

天真爛漫、純真無垢の言葉が合う雰囲気な少女、張飛こと鈴々。

劉備、関羽、張飛・・・桃園の誓いで有名なお三方だ。


一刀「よし、二人とも戻ってきたし移動しようか。朱里、この辺の地図出せる?」


朱里「は、はい!」


急ごしらえで建てられたテント内の長机に、地図が広げたのは"伏龍"と称された諸葛孔明。

この世界では、鈴々と同様に風貌は幼く、女の子なのだ。


桃花「距離はあるけど、ここに村があるね。朱里ちゃん、兵のみんなは今すぐにでも動ける?」


朱里「さきの戦闘で疲弊しきっています、ここで今すぐ兵を動かせば、士気に関わります」


一刀「なら、俺が一足先に村に行こう。愛紗、付いてきてくれるか?」


愛紗「分かりました。ご主人様の護衛、誠心誠意努めさせていただきます」


一刀「桃花達はあとから来てくれ」


鈴々「鈴々もお兄ちゃんと行くのだぁ!」


愛紗「お、おい鈴々! ご主人様の意向に───」


さっと手を出して、愛紗を静止させる。

まだ付き合いは短いが、鈴々は言いだしたら引かない。

ここは愛紗のように叱るのではなく、諭すように説得をしたほうが、何より鈴々の将来のためになる。

俺は、鈴々と同じ視線の高さにまで、膝を曲げた。


一刀「鈴々まで俺達と来れば、ここにいるみんなを誰が守るんだ?」


守る、という単語にピクっと反応する鈴々。


一刀「みんなには鈴々の力が必要なんだ。だから、愛紗が居ない間は鈴々が頼りなんだ」


必要、頼り・・・この言葉を浴びせる度に、鈴々の表情が一転して自信に満ちていく。


一刀「やってくれるな?」


鈴々「もちろんなのだ! 鈴々にどーんっ!と任せるのだ!」


真っ平らな胸を叩き、鼻歌交じりにテントから出て行く。


愛紗「・・・鈴々が失礼な事を。申し訳ありませんでした」


一刀「いいって。さぁ、早く準備をしよう。雛里も連れて行きたいんだけど、大丈夫かな?」


朱里「は、はい。雛里ちゃんなら、兵糧の調整のために外にいます」


一刀「ありがと。行こっか、愛紗」


雛里は、伏龍と並ぶ"鳳雛"・・・龐統だ。

正直、一番ギャップを感じたのがこの子だった。

龐統は風貌が醜いって話だったけど、この世界じゃ───


一刀「おーい、雛里ー!」


雛里「あわわっ!?」


魔女っ子みたいな三角帽が特徴的な、可愛らしい女の子なのだ。

雛里はオーバーなリアクションで驚くと、被っていた帽子のツバを掴んで、とことことやってきた。


雛里「な、なんでしょう・・・?」


帽子で顔を隠すようにしている雛里。まだ完全に心を開いているわけではない。

予想外の事態が起きても対応できるように、軍師を傍に置いておきたいっていうのが本来の目的だが、この機会に仲良くなろうという魂胆もある。

それは後ろで控える愛紗もそうだ。


一刀「俺たちは一足先に襲われた村に行くんだ。そこで雛里にも来て欲しくてさ。道中何かあった時、居てくれたら心強いし」


雛里「わ、わかりました・・・お供します」


緊張のせいか声が小さく、最後まで聞こえなかったが、どうやら大丈夫のようだ。

二人を引き連れ、馬に乗る。

馬に乗り慣れていない俺は、身体を馬に預ける。


愛紗「どうやら、ご主人様にはいずれ乗馬の練習をしなければなりませんね」


一刀「め、面目ありません・・・」


抱きつくように馬に乗る俺を、冷たい視線を送る愛紗は、一応「ご主人様」と慕っているものの、それは義姉の桃花に従ってるからだ。彼女からの信頼を失えば、同時に愛紗は容赦なく俺を斬り捨てる事が出来るだろう。

人見知りの雛里と違い、こっちの懐柔は難しそうだ。


愛紗「ご主人様、見えてきました」


一刀「あそこか・・・」


遠目から見ても、襲われた事後が垣間見える村を見つけた。

村に入ると、どこからもすすり泣く声や、悔しさのあまり乱れ暴れる村人が視界に入る。

その誰もが、俺たちが村に入ってきたことに気に留めない。

内、燃え尽きた家の前で立ち尽くす女の子もそうだった。


一刀「・・・」


愛紗「ご、ご主人様? 何を?」


俺は馬から降りて、女の子の隣に立つ。

静かに俺の方を見上げた女の子が、疲れ果てた声で尋ねてきた。


女の子「だれ?」


一刀「普通の高校生だよ。この家にお母さんとお父さんがいるの?」


女の子「うん。お母さん」


一刀「そっか」


幼い女の子には、この家で埋まっているお母さんの状況が理解していないから、普通に反応ができるんだろうな。

俺は、こういう反応をする子供を"知っている"。いや実際にその場に居た事があるんだ。

女の子との会話はそこで終わり、俺は何も言わずに燃えた家の木材をどけ始めた。


愛紗「ご主人様! 何をしてらっしゃるのですか!?」


急な行動に離れて観察していた愛紗が走ってくる。その後ろを雛里も必死に、しかしトテトテという感じに近づいてきた。

その間にも、生地が白い制服が燃えかすで汚れ、熱が残っている木材に触れることで、軽いやけどの痛みが強くなっていく。


愛紗「お止めください! 何を成そうとしているか分かりますが、この現状を見る限り・・・もう・・・」


チラッと愛紗は女の子を見る。

だが、純真無垢な女の子は首を傾げるだけだ。


一刀「そうかもね。でも、やらないで後悔するより、やって後悔した方が俺は納得しないんだ」


愛紗「あなた様は大事な御方なんです! ここで怪我をされては───」


一刀「舐めないでくれるかな?」


愛紗「っ・・・」


一刀「確かに、俺の立場は君達にとって重要なのは分かる・・・けどね、安全なところで何もしない"ご主人様"をやるつもりはないんだ。第一、こんなやけど程度で騒がれるほど、やわじゃないよ」


愛紗「・・・」

雛里「・・・」


やっと追いついてきた雛里と一緒に、愛紗は押し黙っていた。

時代が時代だけに、俺の考えはこの時代に合わないもの。

しかしこの時、愛紗が本気で俺に仕えようと思うキッカケになったことを知るのは、後の話になる。


一刀「それに俺は───っ?」


息遣いが聞こえる・・・。


一刀「大丈夫ですか!? 聞こえますか!?」


俺の問いかけに反応を示したのは、愛紗、雛里、未だに立ち尽くしていた女の子だけではない。

悲しみに明け暮れていた村人、絶望に自暴自棄になっていた村人全員が、木材を取り除く俺たちのもとへ寄ってきたのだ。


女の子「お母さん!! お母さん!!!」


ようやく感情を表に出した女の子が、泣きながら俺と同じように木材を取り除こうとする。

小さな手でも必死に母親を救おうとする姿に、他の村人たちも動き出した。


村人1男「くわでも何でもいい! 掘り起こせる物かき集めてくれ!」


村人2女「私、村に残ってる包帯とか探してきます!」


村人3女「私も行きます!」


先ほどまで意気消沈していた村人が、ひとつの命のために立ち上がった。

これに驚いたのは、俺自身だった。

ここは小さい村。だから、村人同士の絆は深く、家族同然のように思っているのかもしれない。

俺の世界じゃ、こういう救出劇は手で数えられる程度しかないと思う。


一刀「っ! 手が出てきたぞ!」


出てきた手は、血の気が悪く若干青くなっていて、冷たくなってきている。

掘り起こすための道具が丁度持ってこられ、女の子の母親は木材の瓦礫から救出できた。


村人1男「まだ息はあるぞ! おい、しっかりしろ!」


母親「───ゴホッ! ゴホッゴホッ!」


救出された母親に大量の水がかけられ、気を取り戻した。

咳き込む母親を見た女の子は、無意識にせき止めていた涙が決壊し、まだ混乱している母親に抱きつきに行った。


村人1男「・・・ん? 先ほどの旅人達はどこへ?」








雛里「え、えっと・・・何も言わないで、出てきてよかったのでしょうか?」


一刀「いいんだよ。それに、"何も言わずに立ち去る"・・・これ格好よくない?」


愛紗「馬にしがみつきながら去る姿で言われても、説得力はありませんが」


一刀「うぐっ・・・」


愛紗「それに目的はまだ果たされておりません。村の偵察はどうしたのですか?」


確かにそれが訪れた理由だったけど、一致団結してひとつの命を救ったんだ。


一刀「それなら大丈───」


雛里「それなら、大丈夫かと」


俺のセリフを雛里に横取りされたが、雛里の根拠は俺と違って筋が通ったものだった。


雛里「まだ遠いですが、"曹"の旗が見えました」


曹・・・? それってまさか───


一刀「確か、黄巾の乱じゃ劉備と一緒に協力して、賊を討つエピソードがあったな」


愛紗「え、えぴそーど? ご主人様、どうかされたのですか?」


一刀「え? ああいや、何でもない。じゃああの村は安全だな」


雛里「はい・・・ですが、その、少し問題があります」


ん?と俺と愛紗が雛里に注目すると、雛里は申し訳なさそうに俯く。


雛里「兵糧が残り僅かで、とても公孫賛さんのところまで着く余裕がないんです」


一刀「そんな・・・朱里が量を間違えたのか?」


雛里「い、いえ! 朱里ちゃんが間違えるはずありません! お、おそらく・・・」


愛紗「・・・鈴々だな」


雛里「は、はい」


そういえば、戦闘前に景気づけにいつもの数倍食べていたな・・・。

あの時はみんな盛り上がっていて、誰も止めなかったのが仇になってしまった。


雛里「曹の旗の軍・・・曹操軍に頼るしかありません」


愛紗「ご主人様。どういたしましょう?」


一刀「野垂れ死ぬ訳にはいかない。会うだけ会ってみよう・・・これは賭けだ」


蜀の劉備・・・そして魏の曹操。

さらに三国志の歴史の奥深く入っていく。俺たちは一旦、桃花達の元に戻り、このことに関して話し合うことにした。

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