第一話「北郷一刀」
蜀編、魏編、呉編と分け、黄巾の乱が平定するまで続きます。
「ぅっ・・・」
あれ? 背中が痛い・・・。
目を開くとギンギラと照りつく太陽があった。
どうやら、俺は外で地面に寝そべっているようだった。
(確か、部活が終わって制服に着替えていたら急に眠気が来て───)
「あっ、目を開けたのだ」
「ん?」
太陽を遮るように覗き込んできたのは、四つん這いしているクリクリとした目の女の子だった。
よく見れば、その女の子の周囲にも女の子が二人。三人含めて、かなり可愛い。
しかも、クリクリ目の女の子以外は、ボンッキュッボンッといった素晴らしいスタイルだった。
「えーと・・・こんなところで何をしてるんですか?」
桃色髪の美少女が、クリクリ目の女の子の隣にしゃがんで、前かがみに訪ねてくる。
「いや、俺もよく分からないというか、状況が飲み込めない、という、か・・・」
前かがみになったことで、強調された双丘に俺は目を奪われた。
こ、こんなに大きいの、生で見たのは初めてかも───と、煩悩が湧き上がった時、背筋が寒くなった。
咄嗟に寝転んだまま転がると、俺の居たところに装飾が激しい槍の刃が突き刺さった。
「な、なにすんだよ!?」
「あ、愛紗ちゃん!?」
「桃花様! お離れください! この者、今桃花様のことをいかがわしい視線を送っておりました」
あっ、バレてた・・・。
次にまた襲われるのも嫌なので、上体を起こして三人を警戒する。
よくよく見ると、三人ともコスプレなんではないか?と思う衣服を身に付け、三人とも剣や槍を携えていた。
槍で襲ってきた黒髪の美少女は、再び刃を俺に向けた。
「貴様、なにものだ? 桃花様に幻覚を見せた妖しか!」
「は? あ、あやかし?」
「とぼけないでもらおう! 着ている服からして、只者ではないことは目に見えている」
彼女の指摘で、自分の状態を確かめると、聖フランチェスカ学園の制服を着ていた。
ポケットを確認してみたが、普段入れているはずの携帯も財布もなかった。
「何をしている? 何者か吐かぬのであれば、ここで青龍刀の錆びに───」
「ちょ、ちょっと待って愛紗ちゃん!」
「退いてください、桃花様! この者は危険です!」
「大丈夫だよ。あんな可愛い寝顔してた人が、危険なわけないよ」
「鈴々もそう思うのだ」
え!? 寝顔見られたの! 恥ずかしい~!
っていうのは置いておいて、二人の根拠なしの説得に、何とか黒髪美少女を抑えられたようだ。
「あの、もしかしてあなたは"天の御使い"さん・・・ですか?」
「・・・・・・は?」
妖しの次は、御使い?
「えっと、詳しく話してくれないかな? 俺も状況が掴めないんだ」
両手を上げ、とりあえず敵意がないことを示す。
「まずは名前かな? 俺は北郷一刀。聖フランチェスカ学園の学生で、出身は東京都」
「せいんと?」
「ふらんちぇすか?」
「とうきょう?」
三人とも首を傾げる。
その仕草には、わざとらしい仕草は微塵も感じず、純粋に聞いたことがないようだ。
すると、三人は固まって仲間内で話し始めた。
「あの者の出身地が、とうきょう、と呼ばれる場所で、北郷 一刀という名だということは分かったが」
「鈴々、とうきょう、なんて言葉聞いたことないのだ」
「ってことは、やっぱりあの人は御使い様なんだよ! 戦乱の世の中を収めるために、天から遣わされたすごい人なんだよ!」
「・・・あのー、盛り上がっているところ悪いんだけど」
「あっはいっ! ごめんなさい、えへへ」
どうも、桃色髪の人はこう、ぽわんっとしている。
対して黒髪さんはキツそうな性格そうだし、三人の中で一番小さいクリクリ少女は活発で子供らしい。
「じゃあ、自己紹介しますね。私は劉備、字は玄徳と言います」
「・・・え?」
「私は関羽、字は雲長。前まで「黒髪の山賊狩り」と呼ばれておりました」
「鈴々は張飛なのだー!」
「・・・ってことは、三人のご関係は」
「我ら三人、桃園にて、桃花様を姉とし、私、鈴々と義姉妹の契りを交わした仲です」
「えええええええええぇ!?!?」
つまり、今目の前にいる三人は、魏、呉と並ぶ蜀を治める三国志では有名の三名だということだ。
俺は遥か昔、三国志の時代にタイムスリップしてしまったことに、今気づいたのだった。
ってな訳で、俺は劉備、関羽、張飛に先導され、近くの小さな村に連れてこられた。
そこに待っていたのは───
「はわわっ、諸葛亮ともうちまちゅ」
「わ、私は鳳統でちゅ───あわわ、噛んじゃいました」
伏龍鳳雛と謳われた名軍師・・・と名乗る可愛らしい女の子だった。
「ど、どうなってんだ・・・どうなってんだよ、これぇ!?!?」