表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
縁の旅人  作者: ネギ田。
9/32

続・手がかり

室井健(ムロイケン)


誕生日

3月18日 現在21歳

身長 179cm

体重 61kg

特徴

長い茶髪でポニーテール。


花坂荘の住人。青隆学園の卒業生で、元陸上部でスプリンターをやっていた。

胡散臭い感じがするが、他人のことになると親身になる性格。大家に内緒で犬を飼っている。

<図書室>



「意外に遠かったな、図書室」



遠いというか、迷ったと言った方がいいのか。てかやっぱり寒いな、一月だし……。



「さっさと済ませて帰りたい…」



書物はまだ真新しいのが幾つかあった。しかし、昭和時代の文字は読みにくい。逆読みだしな。



「どわっ!」



ドサドサ!……


本棚から抜いた本を拍子に、積もっていた本の山が雪崩のように落ちてきた。



「いたたた……」


本崩に埋もれ、身動きがとれなかった。これじゃ何のために来たんだか……



「ん…?」



本の本崩の中に、一冊興味深い本があった。

『ゴルバドの矢』

という神話。

表紙には、青銅器でできたような、ふるびた立派な矢が描いてあった。

作者は……棺…庄…郎……途中でかすれていて読めない。内容を読んでみると、悪を貫くという力を持ったゴルバドの矢の話が書かれていた。魔除け等に使われていたらしいが、その効果はあまりに強力で、見るものを圧倒させたらしい。



「…ふーん…」



最初は興味を示したが、今はそんな場合じゃないことに気付いた。



「ふぬぐぅ〜…」



必死に本をどかそうとするが、辞典並の大きさの書物が上にのしかかっていて、唯一動かせるのは頭だけ…。まいったな……。



「知鶴さ〜ん…」



弱々しい声で叫んだが、知鶴さんは来るハズもなかった。


「何してんだ?」



突然、あの写真に写っていた銀髪の青年が、昂介の前に現れた。



―――――――――――



「ふぅ……」


「大丈夫か?」



突然現れた青年のおかげで、なんとか本の一部にならずにすんだ。そして、この青年に、昂介は見覚えがあった。



「助かったよ、ありがとう」


「最近は図書委員の手が足りていないらしくてな、ちゃんと整理しきれてない所があるんだよ」

「な、なるほど…」




少し息がきれていた。

長い間本の中生き埋め状態が続いていたので、呼吸をしなければ。



「スーハースーハー…」


「…ところでお前、見たことないな。この学校の生徒じゃないよな?」



その言葉を聞いて、昂介は肩を揺らした。

なんて言えばいいんだろ…。

『未来から来ました』

なんて言っても、信じてくれないよな…。よし、ここは……



「なんだ?もう忘れたのか転校生の顔を」


「は?」


「都築だよ。ついこの前転校してきた」


「…………」



あたかも忘れられていた友達を装った。青年は疑いながらも、深く考え込んでいた。よし、あともう一押し!



「なんだよ?疑ってるのか?」


「…何故だか、お前の顔が頭に覚えがなくてな…」



そりゃそうだ。

僕だって、ここに来るのは初めてだし…。学生を見たのも初めてだ。でも…この人は見たことある。

まぁ、これでなんとかこの場は逃れそう…。



「じゃあ、俺の名前、分かるか?」


「え…?」



…し……しまったぁぁ!!!!

そう来たか!!まぁ予想はしてたけど……



「え…〜と」


「…………」



青年が疑いの眼で僕を見ている。考えるより感じるんだ!!………!!そういえば……名前は……



「神木涼輔」


「?」


「お前の名前。合ってるだろ?」


「…………」



少し目を見開いた感じで、青年は驚いていた。

思った通り、彼の名は神木涼輔。さっき見た写真に書いてあった。けど…神木って名字…どこかで聞いたことあるんだがな……。



「そうかそうか、お前が転校してきた都築か。すっかり忘れてたよ」


「おいおい、いいかよ…」



なんか…言ってる自分が恥ずかしくなってきた…。



―――――――――――



<二階南廊下>



「う〜ん…」



各教室を回った知鶴は、軽いため息をついた。

それは“手がかりが見付からない”からではなく、“何をしに来たか忘れた”のである。

非常に物忘れのヒドい知鶴は、明名も見てて呆れるほどだった。

既に、昂介が何処に向かったかも忘れていた。



「あ゛〜…どうしよう…」


「何を……してるの……?」


途方に暮れていた知鶴の前に、銀髪の少女が現れた。かすれた声で、少女は問いた。



「え〜と…実は私も…何しに来たのか忘れちゃって…」



ナハハとハニカンで笑うが、少女は笑おうとはしない。それを見て、知鶴は困ってしまった。



「男の人なら…ご本のいっぱいあるところに…いるよ…」


「え…?」



そう言い残し、少女は風のように消えていった。



「………ご本がいっぱいって……もしかして図書室かな…?」



少女の言葉を頼りに、知鶴は図書室に向かい歩き始めた。



―――――――――――



「けど都築、最近は警報がひっきりなしに鳴ってるから、早めに帰った方がいいぜ。まぁ警報なんて、連日だしな」


「わかった、ありがとう」



そういって、神木は去っていった。



「………ふぅ……」



緊張の糸がプツンと切れた。あの写真を見ておいてよかった…。危なかったな…。

すると、自分の体の異変に気付いた。



「…何だ…これ…」



体から…砂のような気体が沸き上がっていた。サー、という音と共に、体が透けていくのがわかる。



「これって…時間が迫ってるってことかな…」



確か、滞まれる時間は数時間って言ってたな…。

てことは、早く帰らないと……。



「消えちゃう…のかな…」



そんなことより…。



「知鶴さーん!!」



僕は知鶴さんを探すため、図書室を後にした。



――――――



<一階北廊下>



「!!」



今、微かに…昂介くんの声がした……。そう感じ、知鶴は走り出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ