続・手がかり
室井健
誕生日
3月18日 現在21歳
身長 179cm
体重 61kg
特徴
長い茶髪でポニーテール。
花坂荘の住人。青隆学園の卒業生で、元陸上部でスプリンターをやっていた。
胡散臭い感じがするが、他人のことになると親身になる性格。大家に内緒で犬を飼っている。
<図書室>
「意外に遠かったな、図書室」
遠いというか、迷ったと言った方がいいのか。てかやっぱり寒いな、一月だし……。
「さっさと済ませて帰りたい…」
書物はまだ真新しいのが幾つかあった。しかし、昭和時代の文字は読みにくい。逆読みだしな。
「どわっ!」
ドサドサ!……
本棚から抜いた本を拍子に、積もっていた本の山が雪崩のように落ちてきた。
「いたたた……」
本崩に埋もれ、身動きがとれなかった。これじゃ何のために来たんだか……
「ん…?」
本の本崩の中に、一冊興味深い本があった。
『ゴルバドの矢』
という神話。
表紙には、青銅器でできたような、ふるびた立派な矢が描いてあった。
作者は……棺…庄…郎……途中でかすれていて読めない。内容を読んでみると、悪を貫くという力を持ったゴルバドの矢の話が書かれていた。魔除け等に使われていたらしいが、その効果はあまりに強力で、見るものを圧倒させたらしい。
「…ふーん…」
最初は興味を示したが、今はそんな場合じゃないことに気付いた。
「ふぬぐぅ〜…」
必死に本をどかそうとするが、辞典並の大きさの書物が上にのしかかっていて、唯一動かせるのは頭だけ…。まいったな……。
「知鶴さ〜ん…」
弱々しい声で叫んだが、知鶴さんは来るハズもなかった。
「何してんだ?」
突然、あの写真に写っていた銀髪の青年が、昂介の前に現れた。
―――――――――――
「ふぅ……」
「大丈夫か?」
突然現れた青年のおかげで、なんとか本の一部にならずにすんだ。そして、この青年に、昂介は見覚えがあった。
「助かったよ、ありがとう」
「最近は図書委員の手が足りていないらしくてな、ちゃんと整理しきれてない所があるんだよ」
「な、なるほど…」
少し息がきれていた。
長い間本の中生き埋め状態が続いていたので、呼吸をしなければ。
「スーハースーハー…」
「…ところでお前、見たことないな。この学校の生徒じゃないよな?」
その言葉を聞いて、昂介は肩を揺らした。
なんて言えばいいんだろ…。
『未来から来ました』
なんて言っても、信じてくれないよな…。よし、ここは……
「なんだ?もう忘れたのか転校生の顔を」
「は?」
「都築だよ。ついこの前転校してきた」
「…………」
あたかも忘れられていた友達を装った。青年は疑いながらも、深く考え込んでいた。よし、あともう一押し!
「なんだよ?疑ってるのか?」
「…何故だか、お前の顔が頭に覚えがなくてな…」
そりゃそうだ。
僕だって、ここに来るのは初めてだし…。学生を見たのも初めてだ。でも…この人は見たことある。
まぁ、これでなんとかこの場は逃れそう…。
「じゃあ、俺の名前、分かるか?」
「え…?」
…し……しまったぁぁ!!!!
そう来たか!!まぁ予想はしてたけど……
「え…〜と」
「…………」
青年が疑いの眼で僕を見ている。考えるより感じるんだ!!………!!そういえば……名前は……
「神木涼輔」
「?」
「お前の名前。合ってるだろ?」
「…………」
少し目を見開いた感じで、青年は驚いていた。
思った通り、彼の名は神木涼輔。さっき見た写真に書いてあった。けど…神木って名字…どこかで聞いたことあるんだがな……。
「そうかそうか、お前が転校してきた都築か。すっかり忘れてたよ」
「おいおい、いいかよ…」
なんか…言ってる自分が恥ずかしくなってきた…。
―――――――――――
<二階南廊下>
「う〜ん…」
各教室を回った知鶴は、軽いため息をついた。
それは“手がかりが見付からない”からではなく、“何をしに来たか忘れた”のである。
非常に物忘れのヒドい知鶴は、明名も見てて呆れるほどだった。
既に、昂介が何処に向かったかも忘れていた。
「あ゛〜…どうしよう…」
「何を……してるの……?」
途方に暮れていた知鶴の前に、銀髪の少女が現れた。かすれた声で、少女は問いた。
「え〜と…実は私も…何しに来たのか忘れちゃって…」
ナハハとハニカンで笑うが、少女は笑おうとはしない。それを見て、知鶴は困ってしまった。
「男の人なら…ご本のいっぱいあるところに…いるよ…」
「え…?」
そう言い残し、少女は風のように消えていった。
「………ご本がいっぱいって……もしかして図書室かな…?」
少女の言葉を頼りに、知鶴は図書室に向かい歩き始めた。
―――――――――――
「けど都築、最近は警報がひっきりなしに鳴ってるから、早めに帰った方がいいぜ。まぁ警報なんて、連日だしな」
「わかった、ありがとう」
そういって、神木は去っていった。
「………ふぅ……」
緊張の糸がプツンと切れた。あの写真を見ておいてよかった…。危なかったな…。
すると、自分の体の異変に気付いた。
「…何だ…これ…」
体から…砂のような気体が沸き上がっていた。サー、という音と共に、体が透けていくのがわかる。
「これって…時間が迫ってるってことかな…」
確か、滞まれる時間は数時間って言ってたな…。
てことは、早く帰らないと……。
「消えちゃう…のかな…」
そんなことより…。
「知鶴さーん!!」
僕は知鶴さんを探すため、図書室を後にした。
――――――
<一階北廊下>
「!!」
今、微かに…昂介くんの声がした……。そう感じ、知鶴は走り出した。