手がかり
一条知依奈
誕生日
7月29日 現在17歳
身長 159cm
体重 ―――
特徴
赤髪のセミロング。いつも兄の愛用していた赤い眼鏡を掛ける。
一条知佐人の妹で、青隆学園高校に通う高校三年生。極度の機械音痴と方向音痴を持ち合わせている。大好きな兄が行方不明になり、どん底に落ちていた知依奈を、昂介が救った。以後、昂介にベタ惚れ。たまに大学に遊びに来ることがある。
愛称はちぃ。
5月20日
<ショカン>
今日は日曜なので講義はなし。花坂荘にいても、いずれ知依奈が邪魔しに来るに決まっている。
取り敢えず、午後からはショカンで時間を潰そうかと思っていたが、そう思い通りにはならなかった。
「コウちゃん、飛ぶよ!」
「は?」
偶然ショカンで鉢合わせした知鶴さんに、いきなりそんなことを言われた。
てか、今日の知鶴さんはいつもと違い、巫さんの格好をしていた。元凶はあの人か…。いつの間に…。
飛ぶってことは…過去にだよな……。
ていうか、コウちゃんて…。
「あの…バイトは…?」
「今は休憩中なの!ほら!早く手繋いで!」
強引に手を繋がれ、僕たちは過去へ飛んだ。
見ていた客は、みんな唖然としていた。
捺美も、同じように開いた口が塞がらないようだ。
「ね、ねぇ…あの二人…消えた…?」
「僕たち…前に一回見ましたよ…なぜかもう慣れましたけど…」
「面白そうだよな」
「甘く見ない方がいいわよ」
再び客として来ていた明名が、深空に喧嘩腰に言った。
―――――――――――
1月3日
<梨緒通り>
「寒っ!!」
今日はたまたま、現代は少し暑かったので、薄着で来ていたのだが、行く日にちが解らなかったので、(急だから)防寒対策不完全のまま、時渡りをしてしまった。
「そう?まぁ一月だからね」
「一月!?どうしてまたそんな季節に?」うしてまたそんな季節に?」
「……ちょっとね…」
その時の知鶴さんの表情は、どことなく寂しげだった。
「ところで、今からどこに行くんですか?」
「今日は学校に行ってみたいんだ。私たちの通ってた学校」
「ああ、前に深空が言ってた横峯章陽学院ですか?」
確か、生徒が行方不明になる事件が多々あったとか。そういうのが有ったにも関わらず、空襲前夜まで残っていた謎の学校。僕も興味があり調べようとしたが、いくら文献の中を探しても見付からなかった。
「うん。もしかしたら、そこに残ってるかもって…」
「何がですか?」
「日記の行方や、何故こんなことになった手がかりを探しに」
「でも、ここにいられるのはせいぜい数時間って言ってませんでした?」
「うん。だから毎日飛んで、手がかりを見付けようよ!」
「毎日…ですか…?」
僕はげっそりとした。
町は皆、正月で賑わっていた。タコアゲや駒を回して遊んでいる人もいれば、お年玉をもらってハシャイでいる人もいた。
空襲が起きる前は、こんなに平和だったんだなと、僕は痛感した。
<横峯章陽学院高等学校>
「ここだよ」
「別に…至って普通の学校みたいですね」
「そりゃ、噂は学校内だけだったからね…」
「え…?」
「さ、早速中へ行こうか」
言われるがままに、僕はその後をついていった。
<一階廊下>
「…誰もいませんね…」「だって冬休みだもん」
「先生たちも?」
「大人は空襲に備えて色々忙しいんだよ」
そうか…もうこの時から警報が出てるんだ…。
中には誰もいなかった。すると、知鶴さんは教室へ入っていった。
「…………」
「……?知鶴さん?」
感傷に浸っていたのか、机に触れては、上を向いてうつ向いていた。
「…ゴメン…なんか久しぶりだなぁって思って…」
「ここに来たのが…ですか?」
「うん」
まわりを見渡すと、辺りは暗く、黒板以外はほとんど木造建築だった。所々では黒く腐っていた所もあった。
「……このへんだったと思ったんだけど……」
突然、知鶴さんは一番前の席の机の中を探り始めた。
「……何してんすか…?」
「ん…探し物をしてるんだけど…見付からないんだよな〜」
「それって…日記ですか?」
「あ、それとはまた別……あ、あった!」
机中から探り当てたのは、一枚の古びた写真だった。見てみると、この校舎をバックに五人の少年少女が写っていた。右隅に写っていた銀髪の青年の頭上に、『神木涼輔』と黒ペンで名前らしきものが記されていた。
「知鶴さん…それって…」
「あの空襲が来る前の…みんなの宝物だよ…今はみんなバラバラになっちゃったけど…この写真があるからね…」
「どこにいても繋がってる…ですか…?」
「もう、先に言わないでよ〜」
「ハハハッ…」
―――――――――――
「じゃあ俺は、図書室に行ってきます」
「うん、気を付けてね」
教室を出たあと、僕たちは一旦別れ、別行動をとるようにした。僕は図書室、知鶴さんは他の教室を回るようにした。
60年前の書物はどんなものだろうと、僕は胸に期待を湧かせていた。
縁の旅人を読んでくださり、真にありがとうございます。
さて、この物語をもっとよく知ってもらうために、一話毎の前書きに登場人物説明をしたいと思います。
また、序盤の方の前書きにも更新しましたので、ぜひ!見ていただけたら幸いです。