一歩前進(知鶴編)
一条知鶴
誕生日
10月7日 現在(当時)17歳
身長 163cm
体重 ???
特徴
古風な腰まである長い黒髪。目の色は赤。
60年前の高校生。明るい性格で、明名とは親友。空襲前夜に宮坂神社の祠に行った際、落ちてきた爆弾と共に姿を消した。
“想造”
脳内に描いたものを具現化できる(非生命体のみ)。
<ショカン>
「アイスティーですね、かしこまりました」
知鶴はマスターに採用され、早速仕事をしてもらうようにした。ここの店員は、驚くことに捺美と新人の知鶴の二人しかいない。つい最近まで、男性店員がいたのだが、ある事情で辞めてしまった。
だが、知鶴を雇って正解でもあった。客ウケは良好、仕事もテキパキとやり遂げる。
「ねぇ知鶴ちゃん、もしかして前にどっかで接客やってた?」
あまりにも手慣れているその捌きには、捺美も疑問に思った。
「あ、ここに来る前に、幾つか…」
「やっぱり?通りで手慣れていると…」
「すいませーん、注文いいですかー?」
「あっ、はーい、直ぐ行きまーす」
隅でマスターが
「よく働くコねー」
自前のオカマ口調で知鶴を褒める。前にいた男性店員が辞めた理由として、このオカマ口調が原因となっている。
「ほんと。前にいたヤツとは大違いね」
二人はどうしても元いた男性店員を責め立てた。
〜close〜
ショカンの閉店は八時。やはり店員が足りないので、閉店時間までフルでやっていた二人は、それでもまだ体力が残っていた。
「ところで、知鶴ちゃんて昂介くんとどういう関係なの?」
そういえば、いつから昂介くんと知り合ったんだろう…、何故だか、ふとそんなことが疑問としてわいてきた。
「…………」
知鶴は黙ってしまった。どう答えればいいか迷ってしまった。先日の翔一のように、過去から来たと言っても、安易には信じてはくれないだろう。
…………!
「従兄妹です。昂介くんは兄で…」
「あ、なんだーそうだったのかぁ」
いっきに疑問が晴れ、満足している捺美に、胸をなでおろした知鶴であった。
カラン……
「あ、もうお店は閉店……」
言葉は途切れ、知鶴には見覚えのあった、同じ制服を着た少女が現れた。
「明名……?」
そこには、知鶴の記憶を辿る人物が現れた。
「明名…?明名だよね!?」
「あなたは…知鶴…?はわっ!」
久しぶりの再会に、知鶴は思わず抱きついた。よろけている少女に構わず、力強く抱きしめる。
「あらあら…」
「こっ…こら知鶴!はしたないわよ!」
「えへへ…」
「もう閉店だし、上がっていいよ、知鶴ちゃん」
「あっはい。お疲れ様でしたー」
「お疲れさまー」
カラン…。
―――――
「おっどろいたー。明名も、私と同じだったんだー」
「私だけだと思ったけど、まさかあなたも同じだったなんて…」
「てことは、明名もみんなの日記を探しに?」
「ええ。あれは五人の大切な物ですからね」
「今まで何処にいたの?」
「何処って…毎年学校にいたわよ」
「学校って…横峯章陽学院?」
「ええ、あなたこそ何処に?」
「みんなで行ったあの祠」
「そう」
そういって、明名は懐から一冊のノートを取り出した。
「あっ…その日記って…」
「ええ……空襲が来る前の…最後の日記よ」
パラパラと流し読みをする。しかし日記は、途中で焼けてなくなっていた。よく見ると、ある一ページだけが焼けてなくなっていた。