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縁の旅人  作者: ネギ田。
3/32

正体

辿堂深空(テンドウミソラ)


誕生日

8月4日 現在(当時)19歳

身長 162cm

体重 ???

特徴

ショートカット、目付きは鋭いが透き通った瞳をしている。


昂介と同じく大学二年生。容姿は申し分ないのだが、性格上、男口調なのが玉に傷。演劇派で、高校時代は演劇部に所属していた。

カレー好きで、カレーを食べるなら限界を知らない。



「じゃあ、おばさん晩ご飯の用意しなくちゃいけないから!後はヨロシクね!」


「はい、分かりました」


そういって、昂介の母親は退室した。目の前には、見知らぬ女の子が顔を覗きこんでいた。

見れば、一瞬、高校の後輩の一条知依奈に見間違えてしまったが、よくよく考えてみれば、知依奈の赤髪のショートボブだし、この女性は古風な感じの黒髪ロング、そして昂介がなんとなく見違える理由は、彼女の澄んだ瞳と、雰囲気がどことなく知依奈に似ていた。

けど、やはり違うようだ。


「あ、目、覚めたんだ」


薄目を開けたことに気付いた少女は、優しく微笑んだ。


ガバッ!


包まれていた布団から勢いよく起き上がる。

少女は少し身を引いた後、再び微笑んだ。

辺りを見回すと、積み上げられた週刊誌、机の上に散らばった人気グループのR.SのCDアルバムがばらまかれている。そうか、ここは僕の部屋……。てことは、ここは実家か……。



「ここ……俺の……部屋……?」


「うん。さっき祠で気を失ってたから、ここまで運んできたんだよ」


「誰が?」


「私が」



会話が途切れた。さっきからどうしても聞きたかったことがあったような……、気を失っていたからか、頭がボヤけている。



「まぁ、今日は疲れたでしょ?もう寝ちゃいなよ」



そういって僕の肩を押し、僕を寝かした。そして、静かに目を閉じ、自然と深い眠りに入ってしまった。





夢の中で………ようやく思い出した………。




―――彼女は……誰なんだ……?―――




―4月27日―




「やぁ〜〜と終わったぁ〜〜」



長く続いた講義が漸く終わり、歓喜の一息をついていた。今日は、大学生の生態調査と3コマ続けての講義の上、現国の一時間テストがあって、今なんとかそれも乗り越えた。

いくら秀才と呼ばれる昂介でも、勤勉づくしで一日を過ごすとなると、さすがに堪える。



「ぼ、僕もークタクタだよぉ〜〜」



翔一が落胆の声をあげながら机に突っ伏している。



「ところで昂介、朝から非常に気になっていたことがあるんだが……」



隣に座っていた深空が、いつになく真剣な眼差しで見ていた。思わず身を引いてしまう。



「な、なんだよ……?」



前の一段下の席にいた翔一が、ニヤけた表情で、



「昂介も人が悪いよね〜。そうならそうと早く言ってくれればいいのに」



???、さっきから二人の話についていけない。一体何の話をしてるんだ?

すると、いないはずの反対側から、トントンと肩を叩かれた。

その方へ顔を向けると………、



「……………」


「……………」


見覚えのない女性の悪戯に微笑んだ顔を、昂介は数秒間見入っていた。


そこには、昨夜一度だけ見た少女、昨夜と同じ制服を着ていた。



「うおぁぉ!!!!?」


夜見た名も知らぬ少女は、昂介の顔を覗き込むように見た。



「昨日知り合ったんだから、そんな大袈裟なリアクションとらなくてもいいでしょ……」



冷めた目で見ながら、彼女は呟いた。

知り合った、というより、昨日顔を合わせたくらいで、まだ彼女の名前すら聞いてない。



「あ、そういえば自己紹介してなかったっけね。私の名前は一条知鶴。こう見えても、君達の大先輩なんだよ」



そういった彼女は、昨日と変わらない同じ制服を着ていた。白い今ならどこでもありそうな制服……。胸元には綺麗な金色のバッジを着けていた。


―――――――






「ちょっと片付けやったほうがいいよーこの部屋」


「ていうか、なんでまだここにいるんだよ!!」



いつまでも自分の部屋に知鶴が居座っているのが気に入らなかったのか、軽い怒声を放った。



「あれ?聞いてなかった?ちょっとご厄介になるって」


「は?」


「知鶴ちゃーん!夕食の準備手伝ってぇ!」



下から、昂介の母親の声が聞こえた。いやそれより、知鶴ちゃんて……。



「あ、はーい」



返事をして彼女は部屋を出て階段を降りていった。



「……………」



そういえば彼女……いつからここにいるんだ?そんなことを考えながら、ふと自分の机の上を見ると、



「これって……」



昂介が手にしたのは、あの時見たあの花柄のノートだった。確か、祠の中にあったやつだよな……。

そう思いながら、恐る恐るノートを開いた。

そこには、一ページごとに日付が付けられていて、色んな人の筆跡のもとに、ページは埋め尽されていた。



「これって……日記……かな……」



次々に捲っていくと、日付が変わるにつれて、書いてある内容も変わっていった。まぁ文字が不思議なもので読めないので、そんな感じがしただけだが…。



「昭和……20年……!?」



何故だか、年代だけは読めた。驚いたのは、日付の年代である。左上の隅に、『昭和20年』と書かれていた。昭和20年といったら……、昂介は頭の記憶を蘇らせた。学問で学んだ知恵……知識は豊富なつもりだが。


今からしたら、60年前だよな……。

て……空襲や戦争の真っ只中じゃねえか!!

もしこれが本当なら、彼女はこの時代から来たことになる……。まさにタイムトリップである。

まぁ………この日記が“本物”ならの話だが、



「昂介ー!ご飯出来たらから下りてきなさいよー」


「………今行くー」



色んな疑問を胸に抱きながら、僕は階段を降りていった。


――――――



「過去から……」


「やってきたぁ?」



知鶴が自分の正体を暴くと、二人には胡散臭く聞こえたらしく、鼻で笑っていた。



「まぁ……君達からしたら、信じがたい話だろうけど……」


「そりゃそうだよ、もしホントに過去から来たってことは、タイムトリップ?」



三人の口論を、昂介は黙って離れて見ていた。

確かに信じがたい話である。人が時を越えてこれるはずがない。それができるとしたら、もはやSFの領域である。

しかし昂介は、少しながらも知鶴の正体を信じていた。それはあの時、見てしまったから………。信じざるを得なかった。



「よくわかんないけど、そんな感じかな」


「じゃあ、それを証明してみなよ」



無理な要求を出した深空に、知鶴は悩んだ。


「証明って……どうすればいいのかな?」


「そうだな……」



腕を組んで考えた後、再び知鶴の姿を見て、



「ねぇ……それって、横峯章陽女学院の制服じゃない?」



知鶴の制服を指差し問いた。



「そーだよ。よく知ってるね」



意外そうな顔をして、知鶴は微笑んだ。すると深空は、珍しそうな目で見回していた。少し触れたりいじったりと……。



「どうかしたのか?深空」


「これって……本物……?」



わなわなとした顔で知鶴に問いた。



「うん。そっか、この制服、今は知らされてないんだ……」



状況がよく呑み込めてない昂介と翔一は、頭を傾げていた。



「嘘……ホントに……」


「ちょ、深空ちゃん……?」



深空の声は既に震えていた。



「ホントに……過去から来たんだ……」


「そーだよ。信じてもらえたかな」



あっさり深空は信じた。宇宙説とかSF系はまったく信じてなかった割には、案外潔く認めてしまった。

「み、深空ちゃん!?」



あまりに意外な状況に翔一は、声が裏返っていた。すると深空は、うつ向いて静かに呟いた。


「横峯章陽学院はね……空襲で無くなってしまった……謎の多い学校なの……奇妙な怪奇現象や、生徒が行方不明になることが多かったらしい……」



冷たい説明口調ではなし始めた深空に、僕らはかすかな悪寒を感じた。



「それにもともと高校なんて、知鶴さんのいた時代は、家柄や地位がそれなりにないと入れなかったらしいわ……」


「そこに……知鶴さんも入っていたわけだ……」



僕も軽く頷いた。しかし、翔一は納得のいかない顔をしていた。



「そ、それがなんだっていうのさ!それとこれとは話がちが……」



バン!


校内に、一発の銃声が流れた。それを合図に、黒ずくめの集団が校内に押し寄せてきた。



「静かにしやがれ!!おい野郎共!!さっさと捜すんだ!!」



中央にいた男の怒声で、他の男達が動き出した。その影響のせいか、まわりの生徒はパニックになっていた。



「来た!!」

「なっ、何!?なんなのさ!!?」



パニックに陥っていた翔一の手を、知鶴が引っ張り走った。



「二人とも走って!!ここじゃ危ないよ!!」



その言葉に、僕たちは無言で知鶴さんについていった。






「はぁ…はぁ…はぁ…」

「はぁ…やっぱり追い掛けてきてたんだ……」



汗を拭いながらそんなことを垂れた。



「知鶴さん……アイツらは……?」

「私たちの日記を狙う悪い奴らよ。うまく撒いたかと思ったけど、そうでもなかったみたい……」

「日記を……奪う……?一体何のために……?」

「それは……」

「!!見つけたぞ!あそこだ!」



不意に、背後から黒ずくめの男が迫っていた。目的は知鶴さんか?



「もう来ちゃったか……みんな!早く逃げて!」



そういうと、どこからかあの花柄のノートを取りだし、構えた。



「ち、知鶴さんは!?」

「私は……コイツを食い止める。その間に逃げて!」

「どうやって!?ダメです!一緒に逃げましょう!」



そういって、僕は知鶴さんの手を握り、一緒に逃げようとした。その時……



「え……?」

「え……?」



二人が触れた瞬間、辺りは一瞬の光に包まれ、二人の影が消えた。


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