夢
都築昂介
(ツヅキコウスケ)
誕生日
4月7日 現在20歳
身長 176cm
体重 61kg
特徴
黒髪の爽やか系。
青隆大学に通う大学二年生。大学に入った理由はこれといってなく、ただなんとなくやることがないので受験した。深空と翔一とは昔からの幼馴染み。
祠で知鶴と出会い、“創造”の力を手に入れる。
時間は閉店間近だった。店内はがらりとしていた。まぁもうすぐ閉店だから当たり前か。
「あら、いたんだ?」
後ろからコーヒーを運んできた従業員が声をかけてきた。目の前のテーブルに注文したブラックコーヒーを置く。
「やることがないと、ヒマでしょうがないんですよ。家に帰っても勉強勉強で……」
「いいじゃない。大学生も、勉強は大事よ。あっでも、秀才君にはそんな時間は要らないか」
昂介を秀才扱いする捺美を無視して、一人ブラックを煤っていた。
相変わらず苦い。ブラックは大人の味というが、二十歳という大人の立場にたっても、大人の味がわからないとは。
まだまだ砂糖とミルクは必需品だな。
苦くてまともに飲めやしない。
「そういえば捺美さん。前に言ってた中瀬神社の話、聞かせてくださいよ。今日俺、そのためにきたんですから」
今日ここに訪れた本来の目的は、ここに引っ越してくる前に捺美から聞いた、中瀬神社に纏わる不可解な話を聞きに来たのだ。
前回の話では、なんでも、その神社の奥にある森の中の林を抜けると、違う別世界に行けるらしい。もちろん、前回の話はまだ仮定の状態で、捺美自身もその話を聞いただけであって、実際にはどうだかわからない。俗に言う風の噂である。
だが他の人に話したところ、この話はどうせフィクションだろとみんなは言うので、昂介外にこの話をするのは止めた。もっとも、捺美自身も、その話には半信半疑だったが…。
「なんだ、この間の話、信じててたんだ。みんなは信じてくれなかったのに」
「すいませんね。そういう興味がそそる話には弱いもんで」
天才には意外な盲点がある。いつか聞いた哲学者の言葉を思い出し、まさにこいつのことだと、捺美は直感を覚えた。
「ショカンに戻って来てくれるなら、考えてあげてもいいけど」
「な、捺美さん…」
「冗談よ。まぁ教えるより、実際に自分で見た方が早いんじゃない?ちょっと待ってて、もうすぐ上がるから案内したげるわ」
そういって、捺美は昂介を背にして中に入っていった。
「ここよ」
ついた場所は林が覆い繁っていて、夕日も射す隙間もないほど、上の視界は遮られていた。目の前には苔の入った小さな神社がある。
「ここの後ろにある林道を抜けると、いつの間にか景色が変わっているらしいのよ」
「へぇ……」
僕は抑えれない気持ちだった。そんな不思議な事があるのだろうか……目で見てみたい気持ちだった。
「ね、ねぇ……ホントに行くの?」
いつになく弱気な捺美がいた。自分から話したくせに……。
「捺美さんは行かないんですか……?」
「わ、私は行かないわよ。なんか出てきそうでヤだもん……」
いつもなら『男だろ!』とかいって何度もこんな感じのものを体験させたくせに……。
世の中は不条理である。
「じゃあ私帰るけど、迷子にならないようにね」
「………なりませんよ……」
子どもじゃあるまいし……。
よし。確か、この神社の後ろだったな。
ヒョイと後ろを覗いてみると、
「………小さいなぁ……」
竹で出来た林道は、意外にも頭上が低かった。子どもが一人でやっと入れるくらいの大きさ。しゃがまないと行けないな。
僕は腰を下げ、チマチマと林道を通っていった。
見えない……暗い……そんな林の中をくぐり抜け、――――
「……………」
目の前にはさっきの神社がそびえたっていた。………あれ?
「おかしいな…」
道を間違えたか?いや、そもそも一本道だったし、間違えるハズもない。けど確かにここはさっきいた場所だ。
「どういう事だろう……?」
僕は頭を抱え、深く悩んでいた。何故また戻ったんだ……?確かにここを通り抜けたハズなのに……。
「…………」
気味が悪くなってきた。帰ろうかな……。
―………マッテ……―
!!
なんだ!?今、声が………。
―イカナイデ……―
また!
「うへ、気味わりー!」
帰ろう。いつまでもここにいても、暗くなって帰れなくなるだけだ。明日も講義あるし……
振り返って足を動かした……!
ピカッ!!!!
「!!!!」
一瞬の光と共に、僕は意識を失った。
――イデ――
え………?
……――イカナ……イデ――
また、さっきと同じ、
女の人の声……。
どこからともなく……
頭に入ってくる……。
怖い……。
痛い……。
「や、ヤメてくれぇ!!」
イカナイデ……イカナイデ―――
「はっ!……」
気が付いたのは、日が暮れる前、携帯の時計を見ると、六時を過ぎていた。まったく未開の土地のような気がしてならないので、とりあえず深空に連絡をとろうと携帯を手に取った。
『おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか、電源が切られているため、かかりません』
「え゛!?」
電波を見ると、見事に圏外の文字があがっていた。ここは山の中か?確かに見回すと、周りは草木で繁っていた。
「おいおい……」
手段が無くなった昂介は、途方に暮れたまま歩き出した。とにかく、日が暮れる前に山の中を出なければ。
――――――――――
山ぁぁぁぁぁ!!!!
いくら歩いても下りやら上りやら見付からない。てゆうか、ここさっき来たような……。
再び携帯の液晶画面を見ても、未だ圏外状態。日は暮れ、近くで狼のような雄叫びが聞こえたような気がした。もし今日中にでれなかったら、
「野宿はヤだな……」
青ざめながら僕はさまよった。しかし、新たなる発展は得られなかった。
「はぁ……ひぃ……ふぅ……」
僕の精神は限界に達していた。さっきから同じ所をグルグルと……
もう……死ぬかも……、
……――コッチ――
「!!!!」
まただ……。あの声……、とうとう……幻聴まで本格的に聞こえてきた……。
コッチ――コッチ――
声のする方には、道の無い、草木が生い茂っていた。そこからは、まるで誰かが手招きをしているように見えた……。
「………行ってみよう……」
覚悟を決し、僕は歩み始めた。
――――――――――
すると、いつの間にか広い道に出ていた。
助かった!!そう思ったとき、
……―ソッチジャナイ―――
という声を合図に、さっきとは違う、見知らぬ祠のある場所に戻された。
ってうぉい!!!!
まぁいいや……。
それよりも、不思議に感じた祠を調査してみることにした。キィィィ。
開けた祠の中には、一冊の古びたノートが置いてあった。花柄模様のかわいらしいノートで、表紙の中心に何やら書いてあるが、どうやら未知の文字で書いてあるのか、一文字も読めない。
「なんだ……林が奥まで続いていると思ったら、こんな祠で終りか……」
ガックリ肩を下ろしながら、そのノートを手に取り、開こうとする。
すると………、
カッ!!!!
ノートの中から放たれた光が、一瞬にして辺りを包みこんだ……。
そして視界は遮られ、同時に音も無くなり、僕はその場に倒れた。