横浜
ナレーションは昂介視点と第三者で流していきます。
<神奈川県横浜市>
「て…ここ何処ですか…?」
見慣れない土地に、目を丸くした翔一。
「え?…何処って、横浜だよ。横浜大空襲に遭った」
「横…浜…?」
「詳しく言えば1945年5月29日の昼方、磯子区から鶴見区までの沿岸部、及び中区、西区の中心市街地を爆撃機と戦闘機が襲撃された土地」
「…………」
何気に詳しくしかも説明的(憎しみ込めて)な明名さんに、一同は(俺を除いて)しばし呆れていた。しかし…
「昼?空襲って普通は夜にあるもんじゃないんですか?」
「横浜の地形は複雑だから、空襲は目視できるよう昼間に行われたのよ」
「へぇ…」
二人も納得する。今を見ると、想像も出来ない。こんなに町並みが綺麗な所が、昔醜いほど崩れていたなんて…。
「ここにいるんですか?知鶴さんたちと同じ人が」
「うん。でもまだ確定はしてないけどね」
「心当たりがあるだけ、それに賭けましょう」
「そうですね」
「その前に!」
深空がにんまりと笑って、
「横浜と言ったら…」
「???」
「そういや腹減ったな」
知鶴さんと明名さんは首を傾げていた。
<横浜中華街>
「わぁ…」
「懐かしいわね」
やっぱり知ってるんだな…。当時のここも、結構有名だったって言うし…。
「でも…ここは一度関東大震災で崩れて、再建されたのよね…」
そうだ…。確か知鶴さん達が生まれる前、大規模な被害を起こした地震…関東大震災があって、横浜もかなりの打撃を受けたんだっけ…。
これは確か再建された建物だったような…。
「そんな事より、さっさと行くぞ!さっきから腹の虫が鳴ってしょうがないんだ!」
さっきから興奮が止まらない深空。よっぽど腹が減ってんだな…。
「そ…そんな事より…ですって…?」
さりげに言った深空の「そんな事より」がかなり気に食わなかったようだ。明名さんが小刻みに震えている。
「実は私…来るの初めてなんだ〜」
初横浜の知鶴さんは、なんだかそわそわしている。
「中華街といったら中華まんですよ知鶴さん!」
「えっ?それってなに?」
「ほらっ、早速行きましょう!」
「うん!」
「あなたたち!ここに来た目的を…」
明名さんが注意した時には、既に人込みに紛れていた。
「まぁ…とりあえず今は楽しみましょうよ…」
「昔からいい加減な所と人の話を聞かない…」
愚痴を呟きながらも、俺らは人込みに紛れて行った。
「ん〜、このチーズまんおいしー!」
「知鶴さーん!試食でミニラーメン貰いましたよ〜」
いつになくハイテンションな深空と知鶴さん。(特に深空)加えて「どうしてこうなのかしら…」と愚痴を零しながらも横浜を満喫している明名さん。
翔一はというと、
「う〜ん…いないなぁ…」
あちこちをキョロキョロと見回している。変態に思われるぞ…?
「何やってんだ翔一」
「ん〜?知鶴さんみたいな人がいないかな〜って…」
そう簡単にぞろぞろいてたまるかってんだ。
てか、もしいたとしてもお前と通じるかどうか解らないのに…。
……こんなことなら、知依奈も連れていってやればよかったな。喜んだろうし…。
「あれ?もしかして都築くん?」
どこからか、聞き覚えのある声が聞こえた。振り向くと、
髪を一束に結んだ…。
「室井…さん?」
「おー偶然だなぁ。遊びにきたのか?」
まさか…こんなとこで知り合いに会うとは思わなかった…。
「ええまあ…室井さんも?」
「ん?いや、今日はちょっとな…。おっと、こんなことしてる暇はないな。じゃ」
そう言うと、室井さんはせわしく消えていった。
何の用なんだろ…?
「おい昂介っ!この中華まんうまいぞ!早く来い!」
深空が遠くから手招きしている。てかいつまで食ってんだよ…。
ここに来た目的をすっかり忘れ、遊び更けていた俺達であった。
影で昂介たちを見ていた男が、懐からトランシーバーを取り出した。
「No.3…例の五人組を発見しました」
シーバーの向こうから、若々しい男の声が聞こえた。
『わかった…その場にいろ。直ぐに向かう』
「了解」
男はシーバーをしまい、再び監視を始めた…。




