I/O
「あいおー?」
「I/O。ボスが伊藤と緒方のイニシャルでI/O」
「ね、ネーミングセンス無いなぁ…」
あの後私たちは、すぐに警察が来て沙汰になりそうだったので、ややこしいことになる前にコルク・マットを抜けた。
そして今、昂介の実家にお邪魔して、さっきのヤツら(I/O)のことについて聞いてみた。(深空談)
「ま、まぁそれは置いといて…」
「なんなんですかアイツら。前も会いましたね」
「前に学校のラウンジにいたね」
昂介と翔一は目を合わせて頷いた。
「前にも言ったと思うけど、彼らが私たちの日記を付け狙うヤツらよ」
明名は眉を潜めて言った。ヤクザ…とはちょっと違うようだけど…正義の敵、悪の軍団…みたいな…。
まぁ、あの状況を見たらまず間違い無いよな…。
「ヤツらに日記が渡ると何か不都合なことでも?」
とにかく俺は単刀直入に聞いた。
「元々私たちの日記だし、それに、あっちにも使えるヤツがいるのよ」
「使えるヤツ?」
翔一は首を傾げた。
「日記の力は、持ち主と適合者にしか使えないのよ。他の人間には反応しない」
ごもっとも。
以前翔一がやりたくて試しに知鶴さんの日記に触れて思いっ切り雄叫びを上げていたが、起きたのは周りの笑い声だけだった。
「じゃあ…その人たちも知鶴さんたちと同じ…過去から来た人なんですか…?」
「そこまでは解らないけど…可能性はあるわね」
明名さんは深くため息をついた。
「あなたたちを巻き込んでしまったことは深くお詫びするわ。けど関わってしまった以上、無理でも手伝ってもらうわ」
謝った途端、また強引なことを言った。
金持ちってみんなこうなのかな…?
「分かりました」
「私も」
「ぼ、僕は…知鶴さんたちみたいな力が手に入るなら…」
キッ!
鋭い目付きで明名は翔一を睨んだ。
昂介は背筋を伸ばし、深空は、はぁ…とため息をついた。
「な、なんでも無いです…」
ガックリと肩を落とした翔一であった。
「まぁとりあえず、I/Oの事を詳しく教えなきゃね」
「それよりっ!」
怒声を放って遮ったのは、
「あの赤髪の男は…誰なんですか!?」
身を乗り出して言うと、知鶴さんは少し身を引いた。
真っ黒なサングラスを掛けていたので解らなかったが、あの口調は………………。
「アイツが…毎回私たちの邪魔をしてくるのよ」
腕を組んで明名さんも頷く。
「それに、アイツの声…」
「No.2の赤髪のネル。あの子どもは、No.6のカロ。二人とも、I/Oの幹部よ」
「ネル…?それはヤツの本名なんですか?」
僕はどうしても、あの赤髪の男が気になって仕方がなかった。何故か、心の何処かで納得できないものが存在した。
「それはどうだか解らないわ。多分偽名よ、あのサングラスをはずした時に顔を見たけど、国外の人間ってわけじゃなさそうだったし」
明名さんはずっと真剣な表情だった。
No.X。
I/Oの幹部六人で構成されていて、数字の若い者から地位が上。
それぞれ個々に能力が分け与えられ、それの下に部下たちが動いている。
「それに、ヨネばぁが売っていた日記が今幾つ存在するかも解らないし…」
「けど私たちと同じ人がもしかしたらまだ…」
「あ、あの〜…なんの話っスか?」
置いてきぼりにされた三人が後を追う。
「ん、あ、いや、こっちの話」
「今日はもう遅いし、また明日にでも」
そうして、明名さんたちは退散していった。
「……………」
「さぁ、私たちも寝よっか」
「そうですね……ってオイ!」
「?」
押し入れから更に布団を出していた知鶴に昂介は怒声を上げた。
「こっ、この部屋で寝るんですか!?」
「えっ、ダメかな?」
ダメとかの問題じゃなくて…。
「知鶴さんには隣の部屋があるでしょう!?」
今日は明名さんは深空の家に泊まると言った。まだ深空と話さなければいけないと言って、一緒に帰っていった。
「あれ?そだっけ?」
そだっけ?って…。
「知鶴さんはいいんですか!?」
「何が?」
とぼけてるのか本心から言っているのか解らない。
「あそっか、お風呂に入らなきゃね」
「…………は?」
「というワケで、お先に入らしてもらうよ。あ、覗いちゃダメだよ?」
知鶴さんはニタリと笑って部屋を出て行った。
「…………は?」