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縁の旅人  作者: ネギ田。
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質問

6月1日



市内の宮坂駅からハマ電

(私鉄浜塚山電鉄浜塚山線)を使い、十五分もすると、海に近い河緒市が見えてくる。

ここにはファミレスのチェーン店、コルク・マットがある所だ。

僕たちには遠いので滅多に行かないが、ちょっと前までは室井さんが働いていたらしい。

今日ここに来たのは、三人で知鶴さんたちの存在をもっと詳しく聞いてみることにした。


「じゃあ、何から聞きたい?」

知鶴さんは嬉しそうな声で言った。


「まず、あなたたちが何故この時代に来たか、です(だ)」


僕と深空は意見一致した。適合者でない翔一も、何故だかかなり興味があるようだ。


適合者とは、日記の所持者と通じた人間のこと。

初めて所持者と一般人が触れる時、適合者であれば強制的に時代を“とんで”しまう。


「………」


知鶴さんは腕を組んみ、顔を伏せたままうつ向いた。

心配した明名さんは…


「?どうしたの知鶴?」


「いやぁ…私もよく解らないんだよねー…あれからもう60年も経ってるんだけど…」


「……はぁ…」


明名さんは溜め息をつきながら、代わりに答えることにした。


「この時代は一番文明が進んでいるから、が第一の理由ね。といっても、私たちは選んでこの時代に来たわけじゃないけど」


「どういうことだ?」


「私たちは各々、そして違う時間で起こった空襲の際、時代をとぶという時渡りの力を得た」


「そうそう!」


いつの間にか、知鶴さんはパフェを頼んで一人先に食べていた。この人…自分の問題なのに…。


「………まぁいいわ。とにかく、着いた時代を拠点とし、行動してきたのよ」


「ところで、昂介と深空ちゃん以外にも、適合者っているんですか?」


現在適合者は二人、その前に、知鶴さんたち以外にも特別な力を得た人はいるのか翔一は気になった。もちろん、適合者も。


「適合者は、私たちの他にも同じ力を持っている人がいれば、当然いることになるわ。確信は無いけれど…いないとは限らないわね…」


難しい顔で、珍しく自信無さげに明名さんは言った。


「言い忘れてたけど、君たちと通じていられるのは一年だけなの。そのルールで、私たちはたくさんの人達と通じてきた」


「一年?」


「そう、正確に言えば、知鶴とあなたが会ったのは今年の4月24日。だから来年の4月23日には、あなた達の側から離れなければならない」


「でも、別にいつまででもいいんじゃあ…」


頼んだオレンジジュースのグラスを強く握りしめながら言った。


「残念ながら、時間が来たら自動的に適合者の記憶から私たちの存在が消え、また私たちに関わった他の人も、それまでの記憶を無くす。だからこちらは通じた人の事を覚えていても、忘れてしまったあなたたちにとっては、赤の他人同然なのよ…」


明名さんは寂しそうな表情を浮かべながらコーヒーを煤っていた。


「でも…俺は忘れませんよ」


キッパリと言い放った。


「人の顔を簡単に忘れるような、そんなユルい頭じゃないんですよ」


「コウちゃん…」


まだ…数ヵ月しか行動を共にしてないが、なぜか僕にとって、離れがたい存在になっていた。

すると、明名さんはハッとため息をついた。


「ほんと…男って単純ね…」


「ほっ、他には何か質問あるかな?」


「知鶴さんたちが使っている日記の能力って、私にも使えないのか?」


知鶴さんたちの特殊な力に興味を持ったのか、深空はふとそんなことを問いた。

二人は顔を合わせたが、知鶴さんは静かに口を開けた。


「おっ、なに深空ちゃん。興味あるんだ?」


「前から、見てて面白そうだなって思って」


僕も同じようなことを考えていた。知鶴さんたちの力を使えたらどんなに便利だろうと。


「別に…使えないことはないけど…(カリソメ)の力だからねぇ…」


「本来の力は出せないわ」


「ある程度は、てことか」


「そうだね」


知鶴さんは頷いた。


「どうやって?」


「私とコウちゃんの“創造”は、頭に思い浮かんだものを具現化できるんだよ。例えば今ケーキがほしいと思い浮かべば…」


そう言うといつの間にか、目の前のテーブルに一切れのショートケーキが現れた。

それを見て、翔一の目は飛び出していた。


「こんな風に」


「す、すごい…」


そう言いながら、知鶴は出したショートケーキを食べた。案外、簡単そうだ。


「明名さんの能力は?」


「私の力は…」


すると明名さんは、出した日記を軽く僕に当てた。


「触点…痺…」

「だーダメだってぇ!!」


何かやろうとした明名さんから、知鶴さんは即座に日記を奪い取った。


「なっ、何をするのです!?返しなさい!」



取られた日記を明名さんは直ぐに取り返した。


「だ、だって明名、今痺点やろうとしたでしょ!?」


「ひてん?」


僕は知鶴さんの意味不明な言葉に理解できず、明名さんはキョトンとした顔で言った。


「?、そうですけど…」


「生身の人間にやっちゃダメだよ!ましてやコウちゃんに!」


何故知鶴さんが怒っているのかも解らない僕の前で、二人の口論は続いた。


「私はただ、能力を披露しようとしただけで…」


「それがダメだって言ってるんじゃない!」


「まぁまぁ二人とも…」


終わらない二人の間に深空が割り込む。


「明名も口で説明すればいいだろ?」


得策な方法を提案した深空に対して明名は、


「そうですわね」


ハッと気付いたように手をポンと叩く。


「私の能力は…」


パリーン!


突然、店内の大型ガラスが割れ、そこから数十人、また入り口から数人の黒ずくめの男たちが侵入してきた。


「あいつらって!」


「クドいわね…」


「話は後で!コウちゃん!早く手を繋いで!」


翔一を後ろに回し、四人は大勢の人数に立ち向かった。



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